思いも寄らない、夢にも思わない

3:思いも寄らない、夢にも思わない

たまにな、興味本位でグーグル画像検索とかで、車に轢かれて身体がぐちゃぐちゃになって死んだ、
無惨な轢死体の写真なんかを見るんだけども。
脳味噌が飛び出して路面一杯に広がっていたり、身体が腰から両断されていたり、
はらわたが飛び出していたりする本当に気分の悪くなるような死体。
俺は至って平気なんだが。

そういった死体の写真を見るたび、俺はその死体が身に着けている衣服や装飾品に目をやるんだ。
靴下、ズボン、シャツ、スニーカー、ピアス……。
それらを身に着けた時、その当人は、まさか自分がこんな無惨な死に方をするとは、
恐らく夢にも思っていなかっただろうって、な。

そして、昨日は俺はいつものように勤めている役場へ出勤し、
いつものように余り面白みの無い業務をこなし帰りにコンビニで少し立ち読みして家に帰宅した。
そして夕食を取り映画のDVDを見て風呂に入って就寝した、はずだったんだけどなぁ。
まさか次起きたら、殺し合いなんてものに参加させられるなんて。

「おい、ちょ、待て、待てって――――」

ダァン!

…痛ぇ。

まさか、本物の拳銃で撃たれるなんて、昨日風呂入っていた時には夢にも思っていなかった。
森の中で遭遇したサラリーマン風の俺より幾分若そうに見える柴犬獣人の男が、
俺の事を銃で撃った。痛ぇ。これ、まずくねぇか。腹に当たったよ、血が止まらねぇ。

「ゲホッ! ……かっ……」

喉の奥から鉄錆の味がする液体が溢れてきやがった。

ダァン! ダァン!

胸と右肩にも衝撃を感じた。熱い。ただ焼けるように熱い。なのにそれ以外は凍えるように寒く感じる。
身体が、震える。力が入らない。

死ぬのか? 俺は……。

冗談じゃねぇ、やめろ。やめてくれよ。まだ死にたかないって…勘弁してくれ。
せめて70までは生きたいんだ。孫の顔も見たいんだよ。ああそういやレンタルショップで借りた
ダイハードシリーズまだ全部見てなかった。やべ、延滞料金とかどうなるんだ?

意識が遠退いて行く。もう音も遠い。寒い。寒い。寒いな、おい。
こんな事になるなん、て、昨日歯を磨いていた時には、思いもしなかった。

死にたくないな。ああ、死にたくない。死にたくないよ。

畜生。

思いもしなかった、よ。こんな事。


ダァン! ダァン! ダァン!


――――夢にも思わない、だろ。

◆◆◆

「……殺した、殺した殺した、コロシタ……!」

茶色と白の柴犬獣人の青年、三枝嘉隆はガクガクと震えながら、
たった今自分が撃ち殺した見知らぬ人間の男性の死体を見下ろす。
この前、誤ってハッテン痴漢車両に乗り込み痴漢達にアッーされてしまい、そっちの方に少し目覚めてしまった以外は、
至って普通のサラリーマンである彼は、自分の手で殺人を犯した。
自身に支給された自動拳銃シグP210によって。

「…もう後戻り出来ない」

嘉隆は殺した相手が持っていたデイパックを漁り始めた。
そして軍用小型短機関銃、イングラムM10と予備マガジン5個、更に十徳ナイフを発見し、
これを回収した。

「やってやる…やってやる…!」

険しい表情のまま、同じ事を何度も呟きながら、嘉隆はその場を後にした。

すぐ近くの茂みに一人のハスキー種の犬獣人の少女がいた事には気付かなかった。
そして少女にとってはそれが幸いした。

(行った…?)

柴犬獣人の青年が完全に立ち去った事を確認すると、
ハスキー犬獣人の少女、安田愛は安堵に胸を撫で下ろした。
彼女の支給品はバール一本のみ。これで銃を持った相手に襲われたら一溜まりも無い。

「はぁ…はぁ…うっ…し、死んでる…よね、やっぱり」

地面に血塗れで倒れる男に近付くが、良く調べなくても死んでいるというのは分かった。
目の前で銃撃されて殺されたのだ、間違うはずも無い。
それは、この殺し合いが冗談でも何でも無く本物である事を暗に示していた。

「どうしてこんな事に…どうすればいいのこれから……死にたくない……。
でも殺し合いなんかしたくない……」

あの頃に戻りたい。適当に男を漁り快楽に耽っていたあの頃に。
愛はただひたすらそう願った。

「…中元さんがいるみたいだけど、そんなに話した事無いしなぁ…。
一応捜そうか……」

愛はエリア表示機能付の懐中時計とコンパス、地図を取り出し、
先程の柴犬青年とは別方向の道を確認して、その方向へ歩き始めた。


【永久修康  死亡】
【残り40人】


【早朝/F-6森】
【三枝嘉隆】
[状態]精神不安定
[服装]仕事用のスーツ
[装備]シグP210(2/8)
[持物]基本支給品一式、シグP210予備マガジン(8×3)、イングラムM10(30/30)、
イングラムM10予備マガジン(30×5)、十徳ナイフ
[思考]
1:殺し合いに乗る。優勝を目指す。
[備考]
※安田愛には気付いていません。

【安田愛】
[状態]良好
[服装]高校制服
[装備]バール
[持物]基本支給品一式
[思考]
1:死にたくない。中元さんを捜す?
2:三枝嘉隆に注意。
[備考]
※三枝嘉隆とは別の方向に進んでいます。
※中元梓紗はクラスメイトです。


※F-6森に永久修康の死体及びデイパック(基本支給品一式入り)が放置されています。


≪オリキャラ紹介≫
【永久修康(ながひさ のぶやす)】
29歳の人間の男。地方の町の役場職員。186㎝と高身長だが痩せている。
スプラッター映画観賞やグロ画像閲覧等が趣味で、小学生の時家の近所で起きたひき逃げ事件の
現場を見た時からその趣味が始まったらしい。斜めに構えた性格。

【三枝嘉隆(さえぐさ よしたか)】
21歳の柴犬種犬獣人の青年。ごく普通のサラリーマンだったが、ある日ゲイ達が集うハッテン痴漢車両に
誤って乗り込んでしまい、後ろの童貞を失い更にそっちの方に目覚め始めてしまう。
本人は否定しているが身体は正直。また、極限状況だと冷静ではいられなくなりパニックを起こし易くなる。

【安田愛(やすだ あい)】
16歳のハスキー種犬獣人の少女。高校一年。黒と白の毛皮。身体を売って小遣い稼ぎをする淫乱犬娘。
父子家庭で父親とも肉体関係を持っているが、性格は至って善良。料理が得意。
参加者の一人中元梓紗はクラスメイトだが余り親しくは無い。


サイレントライブラリー 時系列順 おねショタと言うには年齢が高過ぎるか
サイレントライブラリー 投下順 おねショタと言うには年齢が高過ぎるか
GAME START 永久修康 死亡
GAME START 三枝嘉隆 怖心忘我
GAME START 安田愛 空っぽの器には何も入らず

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2011年03月27日 00:17
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。