古城×群像劇×戦いの予感


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第十話≪古城×群像劇×戦いの予感≫

B-6に存在する西洋風の古城。
人が住まなくなって久しいのか、外壁は所々崩れ落ち、窓ガラスもその多くが割れ、
内部のカーテンが風に揺れていた。

カーキ色のブレザーを着た狐獣人の少女、
葛葉美琴(くずは・みこと)は窮地に立たされていた。
現在彼女は古城二階にある大広間の飾り付けカーテンの陰に隠れている。
と言うのも、この古城内を探索していた際、
ゲームに乗っている他参加者と鉢合わせになり、
その参加者に襲われ、逃げ回っていた最中なのだ。
美琴の手には彼女の支給武器である出刃包丁が握られていたが、
相手は拳銃を所持しており、正面から戦う事は出来なかった。
逃げている途中、何度も銃撃され、幸い被弾はしなかったが一発が彼女の頬を掠めていた。

大広間の扉が開く音が聞こえ、美琴の先端の色が濃い狐の耳がぴくんっと動いた。
それと同時に、美琴の身体全体が強張った。

(入ってきた……!?)

美琴はカーテンの隙間からそっと向こうの様子を見る。
大広間を探索する、白いTシャツに紺色のスカート姿の、
緑がかったロングヘアーの人間の女性の姿が見えた。

(あ、あいつだ!)

その女性こそ、鉢合わせするなり問答無用で自分に襲い掛かってきた張本人だった。

(お願い……そのままどこかへ行って! お願いだから……)

美琴は祈るような気持ちで女性がこのまま自分に気付かず
別の部屋へ移動してくれる事を願った。
しばらくして、美琴の思いが通じたのか、
女性は大広間の探索をやめ、奥にある別の扉から去って行った。
足音が遠退くのを確認すると、美琴は安堵の溜息を洩らし、
胸を撫で下ろした。
そして、隠れていた飾り付けカーテンの陰から出ると、足早に元来た道を引き返し、階段を下り、
厨房にあった裏口から外へ出た。
まだ中で先ほどの女性が巡回しているはずだ。ここにいるのは危険過ぎる。
南の方角の山を見る。あそこは木々が生い茂っており、身を隠す場所もあるかもしれない。
美琴は山の方へ歩き始めた。

(早い所、四宮さん、朱雀さんと合流したいな……)

あの開催式が行われた教室にいた、
自分の知人二人の事を思い出す。名簿にも名前が書かれていた。
四宮さん――四宮勝憲(しのみや・かつのり)は自分がよく行く雑貨店の店主。
荒っぽく傍若無人な性格だが人情に厚く、
自分もよく相談に乗ってもらったりして世話になっている。
朱雀さん――朱雀麗雅(すざく・れいか)は四宮さんの友人で、
剣術道場を切り盛りしている。
他人にも自分にも厳しい性格だが優しい一面もあり、
自分のお姉さん的な存在でもあった。
どちらも殺し合いに乗るような人では無いと美琴は確信していた。
早々に二人と合流したい。一人では不安なのだ。

(とにかくまずは、山に行って隠れられそうな所を探して、
後の事はそれから考えよう)

美琴はデイパックを提げ直すと、
木々が生い茂る森林地帯で覆われた山の方向へと歩き出した。


【一日目/明朝/B-6古城周辺】

【葛葉美琴】
[状態]:左頬に掠り傷
[装備]:出刃包丁
[所持品]:基本支給品一式
[思考・行動]
基本:殺し合いはしたくない。生き残りたい。
1:山へ向かい、身を隠せそうな場所を探す。
2:知人(四宮勝憲、朱雀麗雅)と合流したい。




「見失ったか……」

緑がかったロングヘアーの人間の女性――新藤真紀(しんどう・まき)は、
先ほどまで追っていた高校生と思しき狐獣人の少女を見失った事を確信し、
落胆の色を見せる。
この殺し合いが始まって、真紀は名簿を確認した。
そして自分の知人である警官、須牙襲禅(すが・しゅうぜん)の名前は見付けた。
しかし、須牙襲禅は容疑者に対する度を超えた暴力行為や
押収品の横領及び私物化など、
警察官にあるまじき行為を繰り返す全く市民のお手本にならない警察官で、
しかも常日頃から、「好きなだけ人を撃ちまくりたい」など危険な発言をしている。
はっきり言って合流する気は全く無かった。
むしろ合流しない方が得策かもしれない。
そうなると、自分にはこの殺し合いを拒否する理由も特に無い。
なれば、優勝を目指すのも悪くは無いと思ったのだ。
そして古城内に侵入し、鉢合わせた狐獣人の少女を最初の標的に定め、
自分の支給武器のリボルバー拳銃――二六年式拳銃で襲い掛かった。
ところが自分の腕が悪いのか銃自体の命中精度が悪いのか、
狙って撃っても全く当たらなかった。
いや恐らく動きながらでロクに狙いも定めず撃っていたためかもしれないが。
そしていつしか見失ってしまい、今に至るのだが。

「しょうがないな……もうちょっとこの城を探索したら、
別の場所へ移動し……ん?」

ふと、真紀は窓の外、遠くからこの古城に近付いてくる
一人の人影を見付けた。
遠くなのでよく分からないが、どうやら人間の男性のようだ。
この城を目指していると見て間違い無いだろう。
真紀は二六年式拳銃に弾丸を装填し、急いで古城の正面玄関付近へ向かった。
目的はただ一つである。真紀は古城に向かってくる男性を新たな標的に定めた。


【一日目/明朝/B-6古城内部】

【新藤真紀】
[状態]:健康、古城正面玄関付近へ移動中
[装備]:二六年式拳銃(6/6)
[所持品]:基本支給品一式、9㎜×22R弾(49)
[思考・行動]
基本:優勝を目指す。積極的に他参加者と戦う。
1:古城に近付いてくる男性を待ち伏せし、殺す。
2:古城内部を探索し、武器になりそうな物を探す。
3:知人(須牙襲禅)とは出来れば会いたくない。
4:狐の少女(葛葉美琴)はまた会ったら今度は必ず仕留める。




男性――長谷川俊治は、スタート地点から歩き続け、
ようやく古城の正面玄関へと辿り着いた。
近くで見て見ると、豪勢な作りではあるが、
かなり荒廃が進んでいる事が分かった。
正面玄関の扉は木製で、色あせ劣化が進んでいるが、
木工職人の手彫りと思われる植物の紋様が微かに往時の美しさを思わせる。

「誰かいるだろうか……」

この古城にはすでに先客がいるかもしれない。
それが自分と同じ考えを持った、殺し合いに乗っていない者だったらいいが、
殺し合いに乗っている者だったら、最悪の場合、交戦も有り得るだろう。
俊治は右手に持ったラドムVIS-wz1935を眺めた。
そしてデイパックの中には手榴弾が5個入っている。
自分は一介の野球選手だ。警察官でも憲兵でも兵士でも無い。
勿論、銃や爆弾など一度も扱った事など無い。
説明書は一通り読んだが、実戦となったら勝手も違うだろう。
一番良いのは武器など使わず、言葉で説得出来ればいいのだが。

「考えていても始まらないな」

俊治は意を決して、古城正面玄関の扉の取っ手に手をかけた。


【一日目/明朝/B-6古城正面玄関】

【長谷川俊治】
[状態]:健康
[装備]:ラドムVIS-wz1935(8/8)
[所持品]:基本支給品一式、ラドムの予備マガジン(8×10)、マークⅡ手榴弾(5)
[思考・行動]
基本:殺し合いには乗らない。
1:襲い掛かってくる者にはそれなりの対処はする。
2:古城内部の探索。
[備考]
※名簿を確認していません。


※古城周辺に銃声は漏れていないようです。





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