戦場に咲く赤い華


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第九話≪戦場に咲く赤い華≫

エリアE-4の森の中にある山道を、
白いYシャツに灰色のズボン姿の狐獣人の青年である
高原正封(たかはら・まさとし)はとぼとぼと歩いていた。

「冗談じゃねーよ……何で殺し合いなんか……。
クソッ、俺が何したっつーんだよ……!」

ブツブツと愚痴を言いながら歩く正封。
彼は大学受験に失敗した後、ラーメン屋の皿洗いや
ガソリンスタンドの店員といったバイトを転々とする
いわゆるフリーターであった。
しかし生来の大雑把で消極的な性格が災いし、
どのバイト先でも何かしらのトラブルを起こし、
解雇させられてしまう事がほとんどだった。
バイトは長続きせず、自宅で部屋にこもりTVゲームやAVなどを見ながら
自慰に耽る惰性の毎日。
その事を両親に指摘されると逆ギレし大喧嘩になる……。
そんな生活を送っていた。
確かに真っ当な生き方はしていないかもしれないが、
だからと言ってこんな殺し合いにいきなり連れて来られる筋合いは無いはずだ。

「ああ~……もう、どうしろっつーんだよ!」

さっき自分のデイパックを確認した所、入っていたランダム支給品は
洗濯用の糊と千枚通しの二つ。
右手には千枚通しを気休めのように握っていた。
だがこんな物でどうやって戦えと言うのか。
銃や刃物を持った奴を相手にこんな千枚通しで
切り抜けられるような戦闘能力など自分には無い。

名簿を見たが自分の知り合いの名前は無かった。
幾つか有名人の名前はあったが。
知り合いがこの殺し合いに呼ばれてなくて良かったと安心した反面、
知り合いが一人もいないという事が少し寂しくも感じた。
地図を見たが、会場は周囲を海に囲まれた島らしい。
今自分がいるのは森なので島中央部の山のどこかなのだろう。
コンパスで方向は確認したので、とりあえず南に向かう事にしていた。

右手側が岩壁になっている細い切り通しを進んでいた時だった。
突然曲がり角から、ピンク色の猫獣人の女性が現れた。
露出度の高い服を着ており、抜群のスタイルの肢体が見て取れた。
しかし、女性の身体には、何やら細い棒のような物が何本も突き刺さっている。
よく見れば女性のピンク色の毛皮は血塗れで、息も絶え絶えだった。
女性がこちらに気付いた。大きく見開かれたその目には恐怖と絶望の色が宿り、
大粒の涙を流した跡があった。

「お……おねがい……助けて……助けて」

猫獣人の女性はよろよろと歩きながら正封に近付いていく。
右手を助けを求めるように前方に突き出しながら。
その時。

ドシュッ!

女性の左目から、何やら棒のような物が飛び出してきた。
そして女性はその場に崩れ落ち、
ピクピクと痙攣しながらその場に血溜まりを作り――二度と立ち上がらなかった。
正封はその光景に驚愕し、絶句していた。口を大きく上げ言葉を失っていた。
視線を女性の死体の奥へと移すと、黒いジャケットに灰色チェック柄スカート姿、紫のショートヘアの
人間の少女が立っていた。その手には――確か、あれはボウガンと言う奴だ――が握られていた。

「う、うわああああ!!」

正封は本能的に危険を察知し、元来た道を全速力で戻り始めた。
紫セミロングの少女はボウガンに矢を装填しながら、正封を猛追し始める。

正封は動揺しきっていた。目の前で人が殺されたのだから無理も無いが、
理由はそれだけでは無い。この理不尽な殺人ゲーム――バトルロワイアルを、
やる気になっている者がいるという事実が、彼をさらに恐慌させた。
ヒュンッ、という風を切る音が聞こえた直後、
前方数メートル先にある木の幹に矢が突き刺さった。
間違い無い。さっきの少女は自分を狙ってきている。
逃げなければ。逃げなければ殺される!
正封はとにかく全力で走った。

途中で道が枝分かれしている場所に出た。
行きの時はこんな場所無かったはずだった。
恐らく途中で別の道に入ってしまったのだろう。
どの道に行こうかと思案しているその時、突然誰かに腕を引っ張られ、
茂みの奥へ引きずり込まれた。

「!!? !? !!!?」
「しっ! 静かにして!」

突然の出来事に混乱し大声で騒ごうとする正封に、女性の叱責の声が飛ぶ。
正封は言われた通り騒ぐのをやめ、息を潜めた。
しばらくして、ついさっきまで正封がいた場所に、
息を切らせながら、ボウガンを持った少女が現れた。
少女はしばらく辺りを見回していたが、
茂みに隠れた正封達には気付かなかったらしく、
舌打ちをすると、元来た道を戻って行った。
どうやら危険は去ったらしい。正封は安堵の溜息を漏らした。

「大丈夫? ケガは無い?」

女性の声に顔を声の方向へ向けると、
赤いロングヘアーに赤い瞳の人間の女性が、自分の顔を覗き込んでいた。
白い縁の赤い着物を着ており、右手には籠手をはめている。

「あ、はい、大丈夫っす。助けて、くれて、ありがとうございます」
「それなら良かったわ。私は朱雀麗雅(すざく・れいか)。あなたは?」

女性――朱雀麗雅は正封の無事を確認すると、手短に自己紹介をした。

「俺は高原正封と言います」

正封も応えるように自己紹介をする。

「高原さん、ここは危ないから、すぐ近くに岩室があるの。
とりあえず一緒にそこに行きましょう」
「はい、分かりました……」

正封はこの朱雀麗雅と名乗った女性がとりあえず信用出来そうだと判断し、
麗雅に付いて行く事にした。


【一日目/明朝/E-4森】

【高原正封】
[状態]:疲労(少)
[装備]:千枚通し
[所持品]:基本支給品一式、洗濯用の糊
[思考・行動]
基本:死にたくない。とにかく生き残る。
1:朱雀さんに付いて行く。

【朱雀麗雅】
[状態]:健康
[装備]:不明
[所持品]:基本支給品一式、不明支給品(1~2個、本人確認済)
[思考・行動]
基本:殺し合いには乗らない。
1:自分と同じくこの殺し合いに呼ばれた知り合いを探す。
2:高原さんを一緒に連れて行く。
[備考]
※参加者の中に何人か知り合いがいるようです。




一方その頃、ピンク色の猫獣人――入間あやな(いるま・あやな)をクロスボウで射殺し、
高原正封を殺害しようとした紫ショートヘアの少女――島村露柏(しまむら・ろはく)は、
あやなの死体の所まで戻り、あやなのデイパックの中身を漁っていた。

「ナイフか……貰っとこう」

ホルスターに収められたダイバーズナイフと、水と食糧を自分のデイパックに移し替えると、
露柏はデイパックを肩から下げ、立ち上がった。

「殺し合い……いいわ、やってやるわよ。
凡愚共にむざむざ殺されるようでは、真流協会(しんりゅうきょうかい)の司祭の名折れだわ」

真流協会とは、彼女が司祭を務める、とある地域で絶大な人気を誇る宗教団体である。
実は彼女は外見こそ17歳の少女だったが、それは教団の教祖が彼女に
肉体年齢を若返らせる特別な術をかけたためで、彼女の実際の年齢は39歳。
すでに40手前の中年女性だった。

「でも、苦労して覚えた術が全部使えなくなってるのは痛いわね……。
せめて回復術だけでも使えれば、楽になったかもしれないけど」

彼女は元々は普通の人間だったが、教団教祖の元で修業を積んだ結果、
幾つかの術を使えるようになっていた。
しかし今発動しようとしても、外部から何らかの妨害の力が加わり、発動出来ないのだ。

「まあ無い物ねだりしても仕方が無いわ」

露柏はダイバーズナイフのホルスターのベルトをを自分の腰に装着し、
手に持ったクロスボウに矢を装填した。
――余談だが、”ボウガン”と言うのは和製英語で、
本来は”クロスボウ”と言うのが正しいのだ。

「さあ、狩りと行きましょうか、凡愚共!!」

17歳の紫セミロングの可愛らしい少女――の外見をした39歳の傲慢な中年女性は、
優勝を狙うべく新たな獲物を求め、南にある市街地へ向かった。


【一日目/明朝/E-4森】

【島村露柏】
[状態]:健康
[装備]:クロスボウ(1/1)
[所持品]:基本支給品一式、ボウガンの矢(89)、ダイバーズナイフ、入間あやなの水と食糧
[思考・行動]
基本:優勝を目指す。
1:凡愚共(他参加者)を片っ端から殺していく。
2:さっきの狐獣人(高原正封)もいつか必ず仕留める。
[備考]
※朱雀麗雅の存在を把握していません。


【入間あやな  死亡】
【残り45人】


※E-4森に入間あやなの死体、入間あやなのデイパック(水と食糧抜きの基本支給品一式入り)が
放置されています。
※E-4森一帯には岩室が点在しているようです。





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