37話 揺れる蜃気楼
「! い、委員長が…そんな……」
「鈴木が死んだか……」
B-6ホテル跡にて、知人の死を知った中嶋直美とノーチラスがショックを受ける。
ドーラ・システィールも知っている人物の名前が呼ばれたが、
別段親しい訳では無かったため特に悲しむような素振りは見せなかった。
佐藤真由美はこの場では唯一、殺し合いに知っている人物が誰も呼ばれていなかったが、
友人の死を悲しむ直美とノーチラスを見ると他人事のようには思えず心を痛めた。
「うううっ……」
怪談好きだった委員長――篠崎あゆみの事を思い浮かべながら直美は涙を流した。
その一方で、「篠原世以子」の名前は呼ばれる事は無かった。
悲しみと安堵の入り混じった複雑な気持ちを直美は上手く受け止められない。
「…中嶋さん…」
「…佐藤さん…ぐすっ…す、すみません……」
「謝る事なんか無いよ……」
嗚咽を漏らす直美を、真由美は放っておけず慰めようとした。
「…ノーチラスも、知り合いが死んだのかい」
「ああ…鈴木正一郎って奴がな…と言っても余り話した事なんて無かったけど」
「アタシもさね…でもアンタと似たようなモンさ」
「…これからどうするか」
「そうさねぇ……」
ノーチラスとドーラはこれからの行動方針に付いて協議し始めた。
「……」
四人の様子を、角から覗き込む、二足歩行の雌狐がいた。
右手には自動拳銃NZ75、左手には同じく自動拳銃の五四式拳銃を握っている。
雌狐――費覧は放送の情報を纏めた後、廃墟のホテルに裏口から侵入した。
そして入口方面へ歩いて行くと少女の鳴き声や話声が聞こえてきた。
(四人か…行けるかな?)
四人は費覧には気付いていない。
費覧は決行の時を今か今かと探っていた。
「ナオミ、大丈夫かい?」
そして、身長の高い狐獣人の女性が背を向けた。
続いて傍にいた制服姿の狼獣人の少年もまた然り。
(今だ!)
費覧は意を決して、両手に拳銃を携え飛び出した。
その姿は、一番奥にいた直美が目撃したが、気付いた時にはもう手遅れであった。
「! 後ろ――――」
直美が叫ぼうとしたのと同時に、費覧が両手に持った拳銃の引き金を交互に引いた。
ダンッ、ダンッと言う破裂音が断続的に何発も響き渡る。
ドーラ・システィールは胸と首、左上腕に熱を感じた。
ノーチラスは腹と胸に集中的に弾丸を受け、大量に吐血し倒れる。
佐藤真由美は咄嗟に直美を庇い、幾つもの銃弾を直美の分までその身に受けた。
中嶋直美は少し弾丸が掠ったが、ほとんど無傷でいられた。
数分もかからず銃弾の雨は止んだ。
NZ75と五四式拳銃の、それぞれ空になった弾倉を捨て、弾薬がフルに詰め込まれた、
新しい弾倉をそれぞれ装着する費覧。
「あ……あ……!?」
直美はその場に座り込んだまま、呆然と目の前の地獄絵図を見ていた。
さっきまで元気だった三人が、血塗れで床に伏している。
さっきまで自分を慰め、励ましてくれていた佐藤真由美が、大きな血溜まりを作って動かなくなっている。
「……(ペロリ)」
舌舐めずりをしながら、費覧がNZ75を片手に直美に近付いていく。
「い、嫌、来ないで、来ないでぇ! 嫌あああ」
ズルズルと、恐怖しながら後ずさりする直美。
立ち上がろうとしたが完全に腰が砕け言う事を聞いてくれない。
目の前に迫る本物の死。剥き出しの殺意。
そして、費覧がゆっくりとNZ75の銃口を、直美の顔面に向けようとした。
ガシッ。
「……!?」
「ガハッ……ゼェ、ゼェ、ゼェ……このクソアマ……!!」
「! ど、ドーラさん……!」
口から血を吐き、苦しげに息を吐きながら、ドーラが費覧の足を掴んでいた。
「うわぁっ!」
そしてドーラが無理矢理費覧を床に引き倒し両手を必死に押さえ付ける。
「ドーラさん!」
「逃げな!」
「え…!?」
「早く…! アタシがこいつを押さえているから、早く逃げな!!」
「で、でも……!」
「早く!!」
吐血しながらドーラは直美に逃げるように叫んだ。
胴体に銃弾を食らった自分はそう長くはこの雌狐を押さえる事は出来ない。
直美は迷った。同行してくれたドーラを、佐藤真由美やノーチラスを見捨てたく無かった。
だが――――結局、直美はドーラに従う事にした。
「う……うわああああぁぁぁあああぁああああぁぁっ!!」
涙を流し、喚きながら直美は全速力で駆け出した。
「このっ!」
そして、ついにドーラに限界の時が訪れる。
費覧が上に乗っていたドーラを突き飛ばし立ち上がった。
その顔は眉間に皺が寄り、牙を剥き出し、怒れる獣そのものになっている。
「一人取り逃がしちゃったじゃない……邪 魔 す ん じ ゃ ね ぇ よ オ゛ラァ!!!」
「がぁっ!! ァ゛…」
乱暴な言葉を吐き捨て、費覧はドーラの腹を思い切り踏み付けた。
ドーラの口から押し出されるようにドス黒い血が噴き出した。
まともに呼吸も出来なくなり声にならない悲鳴を上げドーラは床でのたうち回り、
やがて、動かなくなった。
「ヒャハハハハハハハ!! 面白いねぇ~。
…じゃ、私はあの子追いかけないといけないから、バイバーイ!」
いつもの表情に戻った費覧は軽く手を振ると、直美を追ってホテル跡から立ち去った。
【ドーラ・システィール@FEDA 死亡】
【佐藤真由美@オリキャラ・女 死亡】
【ノーチラス@自作キャラでバトルロワイアル 死亡】
【残り20人】
【一日目/午前/B-6ホテル跡周辺】
【中嶋直美@コープスパーティーBCRF】
[状態]精神疲労(大)、悲しみ、疾走中
[装備]バタフライナイフ
[道具]基本支給品一式、大量の十円玉入り給食袋
[思考]
1:殺し合いはしたくない。岸沼、「篠原世以子」を捜す。
2:二足歩行の狐(費覧)から逃げる。
[備考]
※本編Cp1で世以子が死亡した直後からの参戦です。
※名簿に書かれた「篠原世以子」が本人なのかどうか疑っています。
※足の怪我は治っています。
※ドーラ・システィールよりシェリー・ラクソマーコスの情報を得ました。
【費覧@オリキャラ・再登場】
[状態]良好、中嶋直美を追跡中
[装備]NZ75(15/15)
[道具]基本支給品一式、NZ75のマガジン(2)、五四式拳銃(8/8)、五四式拳銃のマガジン(1)
[思考]
1:面白そうなので殺し合いに乗る。
2:街に行こう。
[備考]
※設定は個人趣味ロワに準拠しています。但し個人趣味ロワ参戦前からの参戦です。
※B-6ホテル一階にドーラ・システィール、ノーチラス、佐藤真由美の死体と、
それぞれの所持品が放置されています。
最終更新:2011年01月23日 18:32