19話:お狐さま、射殺する。
古びた煉瓦作りの壁に囲まれた広場。
今はただ雑草が生い茂るだけの不毛な場所となっているが、
かつては様々な処刑道具が設置された処刑場だった。
青みがかった毛皮を持つ人狼の姿をした青年、月神雄牙は血が滲む腹を押さえ、
息を荒げていた。
「…何か言ってみなよ、遺言を」
「……」
雄牙の目の前には、自動拳銃――トカレフTT‐33の中国製コピー、
五四式拳銃の銃口を、雄牙に向ける二足歩行の雌狐が立っていた。
「ゴホッ……お前…何でこんな殺し合いに乗るんだ……?」
「……何でって」
しばらく間を置いてから、雌狐は笑みを浮かべながら言った。
「面白そうだからに決まってるじゃない。それ以外に何の理由があるのよ?」
「……ッ」
大勢の人々が強制的に殺し合わされるこの狂ったゲームを、
目の前の狐の獣人の女は「面白そう」だと言い放った。
身勝手な理由で数々の獣人化実験を繰り返してきた製薬会社に対してのものと
同様の怒りを雄牙は雌狐に覚えた。
出来る事なら、ここで彼女を止めたかったが、それはもう出来そうにない。
(駄目だ…身体に、力が入らない…腹と胸に食らい過ぎた……)
生温かい液体が際限無く流れ落ちる腹と胸元の感触に、雄牙は諦念を抱く。
いかに生命力に優れる獣人と言えど腹部や胸部に弾丸を食らえばタダでは済まない。
「喋り過ぎたね。それじゃあ……死んで」
ダァン! ダァン! ダァン! ダァン!
四発の銃声が響き、雄牙の頭部と心臓、首から鮮血が噴き出した。
(…真、白……すまない、俺は…もう…帰れそうに………無い………)
血飛沫に混じって見える青空を見ながら、心の中で雄牙はパートナーである兎の少女に謝った。
雌狐――費覧は五四式拳銃の空になったマガジンを抜き取り、
デイパックから予備のマガジンを取り出して装着した。
「ふぅ…」
そして、射殺した人狼が持っていたデイパックの中を漁る。
すると基本支給品に混じり、CZ75のこれまた中国製コピーNZ75と予備マガジンが
顔を出した。
「こっちもノリンコの? ふぅん…奇遇」
費覧は威力は高いが装弾数の少ない五四式拳銃をしまい、
威力はやや低いが装弾数の多いNZ75に装備を変えた。
殺し合いにおいて装弾数がより多い方が有利だと考えたためだ。
「さて、と…これからどこに行こうかな…知り合いもいないし……」
崩れ掛けた煉瓦の壁が囲む広場で、費覧は次の一手を考え始めた。
【月神雄牙@ブラッディロアシリーズ 死亡】
【残り35人】
【一日目/早朝/C-6処刑場跡】
【費覧@オリキャラ・再登場】
[状態]良好
[装備]NZ75(15/15)
[道具]基本支給品一式、NZ75のマガジン(3)、五四式拳銃(8/8)、五四式拳銃のマガジン(2)
[思考]
1:面白そうなので殺し合いに乗る。
2:次はどこに行こう……。
[備考]
※設定は個人趣味ロワに準拠しています。但し個人趣味ロワ参戦前からの参戦です。
※C-6一帯に銃声が響きました。
※C-6処刑場跡に月神雄牙の死体及びデイパック(基本支給品一式入り)が放置されています。
≪支給品紹介≫
【五四式拳銃】 支給者:費覧(予備マガジン3個とセット)
旧ソ連製の拳銃トカレフTT-33を中国がコピー生産した物。
ほぼオリジナルのままだが本家より火薬量の多い弾薬を使うため強力。
かつて日本に密輸されていた黒星拳銃ことトカレフは大抵これ。
【NZ75】 支給者:月神雄牙(予備マガジン3個とセット)
チェコスロバキア製の拳銃CZ75の中国ノリンコ社によるコピー生産モデル。
精度はそれなりだが、安価なCZ75と考えれば妥当か。
ちなみに「NZ」の「N」はノリンコの「N」。
最終更新:2011年01月18日 21:48