狂わば死鐘、狂わば笑え

16話:狂わば死鐘、狂わば笑え


支給品である旧式の自動小銃、Gew41マウザー社試作型を携え、
濃い茶色と白の毛皮の人狼青年山崎孝一は緑の深い森を歩いていた。

「何で殺し合いなんかしなくちゃいけないんだ…」

自分は料理学校に通っている一般人だと言うのに、
なぜこのようなゲームをさせられなければならないのだろう。
首には爆弾が仕込まれていると言う金属製の首輪がはめられている。
ルール冊子によれば殺し合いを拒否してもいずれは死が待っているらしい。

「…くそぉ…何だよこれ…おかしいよこんなの! あああああ!」

やり場の無い苛立ちと怒りを、近くの木にぶつける。
何度も何度も木の幹を蹴り、息を荒げ涙目になり、孝一は動きを止めた。

「う、ううう……! 嫌だ嫌だ嫌だ、死にたくない……! 怖い…!」

頭を抱え、弱音を吐き続ける事しか出来ない。
元来は穏やかで優しい性格の彼だが、突然死と隣り合わせの状況に放り込まれ、
自分を見失い始めていた。

「……」

改めて自分の武器のGew41マウザー型試作自動小銃を見詰め直す。
ずしりと重みのある本物の銃が自分の手の中にある。
説明書に書かれていた通りに、ボルトを操作し初弾を装填し、ストックを肩に当てて構える。
そして、適当な木に狙いを定め、引き金を引いた。

ダァン!!

「!!」

強い反動が肩を襲ったが、制御出来ない程では無かった。
そして、狙った木には一個の、硬貨程の穴が空いていた。

「……ハァ、ハァ、ハァ」

本物の銃、人を殺せる武器を持っていると言う実感が今更ながらに沸く。
知らぬ内に身体が震える。これは恐怖から来るものか、それとも――――。

◆◆◆

「…何か聞こえたけど…まあ良いか…にしても、何だい、これは…」

錆に覆われた使われなくなって久しい、離島用の送電鉄塔を珍しげな目で見上げる
狼獣人――ウルフリングの女戦士、シェリー・ラクソマーコス。
彼女の生きる世界には見られない建造物である。

「使われてはいないようだけど…お、階段がある…昇ってみるか」

柄にも無く興味を惹かれシェリーは古びた階段を上がる。
そして点検用と思われる足場から、周囲の様子を眺めた。
この鉄塔は小高い山の丁度山頂部分に建てられているようで、もう少し上に上がれば、
殺し合いの舞台となっているこの島の様子を一望出来そうだ。
現在シェリーがいる位置からは鉄塔周辺の森林地帯ぐらいしか見えない。

「ふぅん…」

更に上に上がろうと思ったシェリーだったが、階段の錆が酷く、
これ以上は危険と判断し止める。
そして下へ下りる階段へ歩き出した。

ダァァン……。

「……ぐふっ」

銃声とほぼ同時に、シェリーは腹から背中にかけて何かが突き抜ける感覚を覚えた。
喉の奥から熱い液体が込み上げ、口から垂れる。
その液体は赤錆に塗れた足場を、新鮮な赤色で染めた。

「く……そぉ………」

迂闊だった。先程の銃声で察しておくべきであった。
そもそも、殺し合いの中で見晴らしの良い場所に居るのは好ましく無い。
しかし、もう手遅れのようだ。
シェリーは自分の軽率さを悔やみながら、その場に伏した。
そしてその意識は急速に闇に呑まれて行った。

「う、ううう……!」

森の中から現れる茶色と白の人狼、山崎孝一。
手に持たれたGew41マウザー型自動小銃は銃口から煙を噴いていた。
鉄塔にいた女性を狙った所、まさか一撃で仕留められるとは。
自分には料理の才能はあると思っていたが、射撃の才能もあるのかもしれない。

「ふ…ふふふふふふっ、あははははは……」

笑いだす孝一。
今、彼は自分が死なないようにするための方法を見出した。実に簡単な事だった。
全員殺害し優勝すれば良い、それだけの事。
普段の彼ならばそのような事は絶対に出来なかったであろうが今は状況が違っていた。
常に死の危険がある状況下に置かれ彼の精神は簡単に異常を来した。

「アハハハハ……クスクスクス」

涎を垂らし、焦点の合わない目で、孝一は虚空を見詰めていた。


【シェリー・ラクソマーコス@FEDA  死亡】
【残り37人】


【一日目/早朝/D-4離島線送電鉄塔跡】
【山崎孝一@オリキャラ・男】
[状態]狂化
[装備]Gew41マウザー社試作型(8/10)
[道具]基本支給品一式、Gew41マウザー社試作型のマガジン(5)
[思考]
1:みんな、殺してやる。
[備考]
※特に無し。


※D-4一帯に銃声が響きました。


≪支給品紹介≫
【Gew41マウザー社試作型】 支給者:山崎孝一(予備マガジン5個とセット)
正式名称Gew41(M)。1940年にドイツ軍からの命によりマウザー社が試作した自動小銃。
ボルトアクションで初弾を装填する仕組みとなっている。制式採用はされなかった。
使用弾薬は7.92㎜マウザー弾。

≪オリキャラ紹介≫
【名前】山崎孝一(やまざき・こういち)
【性別】男
【年齢】20歳
【職業】料理学校学生
【身体的特徴】茶色と白の毛皮を持つ人狼
【好きな事・もの】料理を作る事(和食も洋食も可能だが中華系は勉強中)
【苦手な事・もの】数学
【特技】やはり料理
【趣味】どうあがいても料理
【特筆すべき能力】嫌になるぐらい料理
【備考】基本的に温厚だが異常状況化にあると精神不安定になりやすい


精神崩壊クラッシュミタル 時系列順 もう一度与えられた命で彼は
精神崩壊クラッシュミタル 投下順 もう一度与えられた命で彼は
ゲーム開始 山崎孝一 飛べない鳥達のレクイエムがまた
ゲーム開始 シェリー・ラクソマーコス 死亡

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最終更新:2011年01月22日 17:01
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