幕を引く時主役は舞台に

51話:幕を引く時主役は舞台に


「俺を入れてもう7人しか残ってないのか……」

第二回目の放送を聞き、高原正封は驚く。
藤堂リフィアは未だに生きているらしく、その上、
次の放送時刻――午後4時までに死亡者が一人も出無かった場合、
全員ゲームオーバーにすると放送者のセイファートが言っていた。
ゲームオーバーとは恐らく首輪を爆破すると言う意味だろう。

「さっさと残ってる奴捜さないと……」

下手をしたら4時間後に即死、と言う事態になり得る。
正封は荷物を纏め病院から出立する支度をした。
そして一階に下り、ロビーを通り掛かったその時。

「……!」

入口付近に見覚えのある狼獣人の少女が立っていた。
銀色の毛皮を血塗れにした、青いベストとスカート姿の少女。

「あなたは…高原、さん」
「お前…生きてたのか…その怪我で」

少女――藤堂リフィアは抜き身の直刀を持ちながらゆっくりと正封に近付いていく。
途中、肉塊の山があったため、それは避けていたが。
正封はスタームルガーGP100を構える。

「…今度は殺す」
「…高原さん」
「何だよ?」
「さっきの放送聞きましたよね…次の放送までに一人も死者が出なかったら、
全員ゲームオーバーだって」

確かにそう言っていたが――それがどうしたと言うのだろうか。

「…私、もう疲れてしまいました…もう、残り人数も少ないですし、
もう、脱出なんて出来ないのかもしれません」
「……」

リフィアは虚ろな目で、正封を見ながら言う。
どうも様子がおかしい、正封は少し後ずさりして様子を見続けた。

「…高原さん……私と一緒に死んで下さいぃぃいい!!」
「!!」

突然狂ったような叫び声を上げ、リフィアが直刀を構えたまま正封に突進した。


……


「あ…ぐ…はぁ、はぁ」

頭部に何度も.357マグナム弾を撃ち込まれ完全に破壊されたリフィアの死体を見下ろしながら、
腹の辺りを血塗れにした正封が息を荒げる。

「これで…完全に、死んだ、ろ…ざまあ見やがれってんだ…ちく、しょう、め」

そう言い切った直後に、口から大量の血を吐き出す。

「うげほっ…あ…やべ…これ…まずいか? あ、はは、はは。
は、早く、他の奴ら、捜しに、いかないと」

フラフラと出口に向かう正封だったが、途中で床に倒れ、そのまま動かなくなった。



D-4公民館の体育館倉庫。
稲垣葉月とレックスは放送を聞いて絶望した。
もう生き残りは自分達を含め7人しかおらず、次の放送までに死者が出無ければ、
全員ゲームオーバーになると告知された。

二人は脱出を諦め、心中する事にした。

天井からぶら下がる二本のロープの先には、輪が作られている。

「レックス…最期に、シよ?」
「うん…」

葉月は衣服を脱ぎ捨て、レックスを仰向けにし、包皮に包まれているそれを、
皮の上からゆっくりと愛撫を始める。

「ああ…気持ち良いよ……」
「…一杯、気持ち良くしてあげるからね」

二人とも、目に涙を浮かべていた。
快楽から来る涙では無い事は確かだった。


……


「レックス…あなたと会えて、幸せだったよ」
「俺もだよ、葉月……ありがとう」


ガタン。ギシィ……。



マティアスは警察署の屋上に下り立った。
生き残りもわずかになり、次の放送までに死者が出なければゲームオーバーになる。
早急に事を進める必要があった。
屋上の扉を開け、警察署の内部へと進む。

同じ頃、警察署二階の一室で放送を聞いた皐月眞矢も行動を起こす。
拳銃を構えながら警察署一階へ降りるために階段へ向かうが。

「おっと、早速発見したぞ」
「!!」

階段の上――屋上の方から、自動小銃を携えた翼の生えた人狼が現れる。
ニヤニヤと邪悪な笑みを浮かべるのを見た眞矢が咄嗟に危険人物だと悟る。

「へえ…可愛いなぁ、ただ殺すのはもったいないなぁ」

眞矢の身体を値踏みするように見詰め、舌舐めずりをするマティアス。

「……私の身体はそんなに安くない」

嫌悪感を露わにした眞矢は、自動拳銃をマティアスに向けて発砲した。

「おっと」

しかしあっさりとかわされ、マティアスによる自動小銃の銃撃を受けた。

「がはっ……!」

胸元を小銃弾が貫通し、眞矢は口から血を吐き致命傷を受ける。
持っていた銃を落とし、その場に跪いた。

「残念だなぁ」

マティアスは階段を下りて苦しむ眞矢に近付くと、
顎をぐいと持ち上げ、眞矢の顔を眺めた。

「こんなに可愛い子なのに、味わえないなんて……フフフフフ」
「……」

眞矢は最期の力を振り絞り、右手でマティアスの首輪を掴んだ。

「……!?」
「…死ねぇ!!」

そしてその首輪を力一杯、引っ張った。


ピィー、バァン!!


短い電子音の後、マティアスの喉笛が破裂した。
鮮血と肉片、そして首輪の破片が眞矢の顔に当たり、傷付けた。
マティアスは床に崩れ落ち、しばらく喉元を押さえ悶えていたが、やがて動かなくなった。
そして眞矢も間も無く、眠るように息を引き取った。


伊賀榛名は呆然と、市街地を歩いていた。
中村アヤも死んでしまった。
自分はこの殺し合いで一人きりになってしまったのだ。
しかも、生き残っている参加者は自分を含め僅か7人との事。
次の放送までに一人も死者が出なければ全員ゲームオ―バーになると、
主催者の一人セイファートが言っていた。

「もう、終わりなの…もうどうしようもないの…?」

自分を除き、残り6人の中に、この殺し合いからの脱出を目指している者が何人いるのか。
いや、もしかしたら自分以外は全員、殺し合いに乗っている者ばかりなのでは。

「……もう嫌だ」

絶望感が榛名の心に押し寄せる。

その時だった。

『……あーあー、マイクのテスト中、マイクのテスト中』
「…?」

突然、主催者の片割れ、柴田行隆の声で放送が入った。
突然の事に、榛名は驚いたが、耳を傾ける。

『最後の一人が決まったので、これにてバトルロワイアルは終了です。
伊賀榛名さん、おめでとうございます。見事、優勝しました!
おめでとうございます! では…禁止エリアを全て解除しますので、
お手数ですが学校までご足労下さい…おめでとうございます』



「…………え?」



午後12時25分、ゲーム開始8時間25分。
バトルロワイアル終了。



【藤堂リフィア    死亡】
【高原正封    死亡】
【稲垣葉月    死亡】
【レックス    死亡】
【マティアス    死亡】
【皐月眞矢    死亡】
[残り1人]



【参加者番号4番  伊賀榛名  優勝】



第二回放送(新訳俺オリロワ) 時系列順 誰にも見せられない傷
第二回放送(新訳俺オリロワ) 投下順 誰にも見せられない傷

お姉ちゃん、寂しいよ 高原正封 死亡
相反する二人 藤堂リフィア 死亡
カウントダウンBR 稲垣葉月 死亡
カウントダウンBR レックス 死亡
カウントダウンBR マティアス 死亡
光の途絶 皐月眞矢 死亡
廃墟探索に気を付けなければイケナイ事の一つ=崩落 伊賀榛名 誰にも見せられない傷
第一回放送(新訳俺オリロワ) 柴田行隆 誰にも見せられない傷

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最終更新:2010年12月27日 23:15
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