こんな村おこしは嫌だ


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29話:こんな村おこしは嫌だ


「ここは…廃村、だなぁ」
「そうね…」

430セドリックを運転した青年、志村正隆と助手席に乗る狐獣人の少女、伊賀榛名は、
崩れ掛けた廃家が建ち並ぶ廃村を訪れていた。
道路は雑草が生い茂り瓦礫やゴミが散乱し、お世辞にも車での移動が楽な道では無い。
また、折れた木製電柱が道を塞いでいたりもしており、思い通りには進めなかった。

「どうする榛名ちゃん、下りて調べてみる?」
「…埃っぽそうだし嫌。多分ここ調べても何も得られないと思う。
廃墟プレイは好きじゃないのよ身体痒くなるもん。全くやらない訳でも無いけど」
「……」

何かとそっちの話に持っていきたがる榛名を半ば呆れた目で見る正隆。
とは言え既に彼女においしい思い(勿論そっちの意味で)をさせて貰っていたので、
表立って文句を言う事は無かったが。

「それじゃ、さっさとこの村でる?」
「そうね…西の方行ってみようよ。あ、そこの道左に曲がれば西よ」

地図とコンパスを見ながら榛名が正隆に指示を出した。
言われた通り、セドリックのハンドルを左に切ろうとした正隆だったが。

「…ん?」
「どうしたの? …あら、誰か来る」

フロントガラス越しに、自分達の車に向かって走ってくる、
榛名とは違う制服に身を包んだ金髪桃色身体の竜人の少女が見えた。
車を止め、拳銃――シグザウアーP226を携えた榛名が助手席から下り、
竜人の少女に向け銃を構える。

「止まって!」
「!」
「持ってるそのナイフを捨てて。大丈夫、言う通りにしてくれれば何もしないから…」
「う…」

竜人の少女、津野美鈴は手にしていたバトルナイフを地面の上に置き、両手を上げる。

「あ、デイパックも置いて」
「……」

そしてデイパックも地面に置いた。

「…私は伊賀榛名。それで車に乗ってるのが志村さんって言うんだけど、
あなたは?」
「つ、津野美鈴」
「そう。津野さん、あなた、殺し合いには乗ってるの?」
「いいえ」

榛名の問いに美鈴は即答した。
二人のやり取りを正隆も運転席から下り、心配そうに見詰める。

「…そう。私達もよ。それなら私達と一緒に行かない?
そのつもりで車に寄ってきたんでしょ?」
「…良い、の? ありがとう……」
「ね? 志村さんも、良いよね?」
「あ、ああ…構わないけど」
「決定ね…それじゃ、宜しく津野さん」
「え、ええ。こちらこそ。伊賀さん」

榛名は新たに仲間に加わった美鈴を車へと案内した。


廃村を訪れていた婦警、一色利香と青年、八房利徳は凄惨な遺体を二つ見付けていた。

「……酷いわね」
「うう…」

一人は首を切り落とされた青髪の少女、もう一人は後頭部から額にかけて
何かに刺し貫かれた黒髪の高校生と思しき少女の死体だった。

「死後数時間って所かしら…この殺し合いが始まって程無く殺されたみたい」

首の落ちた少女の死体を冷静に分析する利香。
職業柄、人の死体を見るのには慣れていた。
一方の利徳は黒髪の少女の死体を見ていたが、吐き気を催していた。
彼は普通の大学生である、従って本物の死体を見るのは初めてであった。
見開かれたままの目には微かに生気が宿っており、それが不気味さを際立たせた。

(本当に、死人が出てるんだな…畜生…やべぇよ…俺、この先生き残れんのか…?)

今一つ実感の湧かなかった殺し合いと言う状況が、
二人の少女の惨殺死体を目の当たりにして明確に見えてきた。
首を切り落とす、頭を串刺しにする。このような惨い殺し方をする者が、
この殺し合いの場をうろついていると考えるとたまらなく恐ろしい。

(冗談じゃない…せめて死ぬ前に一発ヤらないと…でも、相手がなぁ。
運良くヤらせてくれる変態女でも現れないもんかね)

状況を理解はしたが相も変わらず煩悩まみれの思考で利徳は考える。

「…そろそろ行きましょう八房君…余り長居するのも危険だわ」
「そうっすね…」

少女の死体が持っていたデイパックには使えそうな物は入っていなかった。
これ以上調べる事も無いと判断し、利香は利徳を連れてこの場を後にしようとした。

ガラッ。

「?」

利香が被る婦警棒の上に埃と、小さな木材の破片が降り注いだ。
目の前の老朽化した蔵からのようだった。
何気無く、利香と利徳は蔵の屋根の方を見上げる。

そして見た。屋根から刀と思しき物を振り上げ、飛び降りる人影を。

「えぇ――――」

ドカァ!!

次の瞬間、利香の身体が、文字通り裂けた。
鮮血が辺り一面に飛び散り、利香の着ていた青い婦警制服が黒く染まる。
一瞬でただの肉塊と化してしまったシェパード犬獣人の婦警は、
血溜まりの中に崩れ落ちた。

「…え? い、一色さ、え?」

利徳は目の前で起きた事が一瞬理解出来なかったが、血溜まりの中にある、
さっきまで一色利香と言う婦警「だったもの」、そして返り血を浴び着ている白いカッターシャツが
赤く染まっている、刀を持った青髪の赤い鉢巻をした青年を交互に見て、嫌でも状況を理解した。

「うあ、あ、あああぁあああぁあぁあああああああ!!!」

そして理解した時には、利徳は絶叫しながら持っていた自動拳銃、
タウルスPT92を青年に向けて乱射していた。


「…ねえ、今の、銃声じゃない?」
「…そうね、銃声ね」
「しかも…結構近かったぞ。誰かこの廃村にいるんじゃないのか?」

閉め切った窓越しからでも、銃声がはっきりと車の中の三人に聞こえていた。
430セドリックを運転する正隆は周囲に目を配る。
助手席の伊賀榛名、後部座席の津野美鈴も同様だ。
そして、前方の建物の陰から人影が飛び出し、正隆はセドリックを停めた。
それは血まみれの狼獣人の青年だった。
青年は恐怖に怯え切った表情で辺りを見渡し、正隆達の乗る茶色のセドリックを確認すると、
助けを求めるように腕を伸ばしながら近付いた。
よく見ると、右腕が切断されていた。

「た、助け、」

ザシュッ!

しかし青年は助からなかった。首が宙に舞い、鮮血が断面から噴き出した。

「ひっ、あ、ああぁああ!?」
「ちょ、え? う、嘘、何よあれ!?」
「……!」

激しく動揺する三人。正隆は急いで車をバックさせようとした。
だが焦っていたのか手元が狂い、前進してしまった。
それがたった今、狼青年の首を飛ばした青髪の赤い鉢巻を巻いた青年との距離を一気に縮める事となった。

「し、志村さん! 早く! 早く出して!」
「わ、分かってるよ! 今……」

ガスッ!

「……あ」

聞いた事の無い音が車内に響いた。
そして榛名と美鈴は見た。運転席に座っていた正隆の左目から後頭部にかけ、
刀の刀身が刺し貫いている様子を。
青年がフロントガラス越し突き刺した刀身は、いとも容易く正隆を亡き者にした。

「あ、ああぁあ!? アァアアァアアァアーーーーーー!!?」

完全に恐慌状態に陥った榛名は狂ったように叫び、助手席から飛び出し走り出した。

「嫌ああ! 待って! 置いてかないでよぉ!!」

背後から美鈴の声が聞こえたが、足を止める事など出来ない。
逃げなければ殺される。あの狼青年のように、志村さんのように、殺される。
逃げなきゃ。逃げなきゃ。逃げなきゃ――――。
涙を流し、息を切らせ、制服が乱れるのも構わず一心不乱に逃げる狐獣人の少女。
そこにいつもの淫乱ながらも穏やかな彼女の姿は無かった。


勤武尚晶は、桃色の身体の竜人少女が着ていた制服で刀に着いた血糊と脂を拭き取る。
竜人の少女は、心臓を刺し貫かれ、苦悶と絶望の表情のまま息絶えていた。
この集落で彼は、これで6人もの参加者を殺害した事になる。

「……一人逃がしたな。まあ、いい……」

一人取り逃がした黒いブレザー姿――そう言えば二人目に殺した少女も
似たような制服を着ていたが――の狐獣人の少女の事が気になったが、
無理して追う事も無いと、尚晶は殺害した者達の所持品回収に移った。

「…そろそろ移動するか…車も手に入ったからな」


どれくらい走ったのだろうか、気付けば伊賀榛名は森の中の廃道に立っていた。
どこをどう走ったのか覚えていない。だが、あの男は追っては来ていないようだった。

「はぁ…はぁ…」

適当な木の幹の根元に座り呼吸を整える榛名。

「…何なのよあいつ…チートにも程あるでしょ…化け物じゃない…!」

頭を抱え震えながら、先程の青髪赤鉢巻の青年の事を思い出す。
恐らく津野美鈴はあの後殺されたのだろう。
自分は逃げ切れただけまだ運が良かった。
しかし、これでまた一人になってしまった。

「…ああ、もう嫌だ…」

一緒に殺し合いに呼ばれたクラスメイト二人の安否も分からず、
折角出来た仲間も殺されてしまった。
かつて感じた事の無い絶望感が榛名の心を支配した。

「…疲れた…ちょっと休もう……」

精神的にも肉体的にも疲弊し切っていた榛名は、芝生の上に身を横たえしばしの休息を取る事にした。

(志村さん…結局、一回しかヤれなかったな…)


【一色利香    死亡】
【八房利徳    死亡】
【志村正隆    死亡】
【津野美鈴    死亡】
[残り29人]


【一日目/朝方/H-6森】

【伊賀榛名】
[状態]肉体的疲労(大)、精神的疲労(大)、服装に乱れ
[装備]シグザウアーP226(15/15)
[持物]基本支給品一式(ポケットティッシュ一個消費)、シグザウアーP226マガジン(3)
[思考・行動]
 基本:殺し合いはしない。平池千穂、中村アヤの二人の捜索。
 1:少し休む。
 2:首輪を外せそうな人物も捜索する。
[備考]
 ※勤武尚晶(名前は知らない)の外見を記憶しました。


【一日目/朝方/G-6廃村】

【勤武尚晶】
[状態]良好
[装備]九五式軍刀
[持物]基本支給品一式、スタームルガーP85(15/15)、スタームルガーP85マガジン(3)
[思考・行動]
 基本:殺し合いを楽しむ。
 1:殺害した参加者の武装を回収後、廃村を出る。
[備考]
 ※伊賀榛名(名前は知らない)の外見を記憶しました。


※G-6一帯に銃声が響きました。
※G-6廃村に一色利香、八房利徳、志村正隆、津野美鈴の死体及びそれぞれの所持品、
430セドリックが放置されています。勤武尚晶が武装を回収しています。


心の奥までは偽れない 時系列順 アザヤカナキセキ
心の奥までは偽れない 投下順 アザヤカナキセキ

愉しまなきゃ損 伊賀榛名 甘美なるネクロマンス
愉しまなきゃ損 志村正隆 死亡
落ち着く場所ありますか? 津野美鈴 死亡
ナイスバディも良い事ばかりじゃない 一色利香 死亡
ナイスバディも良い事ばかりじゃない 八房利徳 死亡
隠れていれば安全……とは限らない 勤武尚晶 朱の色と空の色
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