EVE~逃亡劇~

27話:EVE~逃亡劇~


俺こと四宮勝憲は川を下流へ向け伝うように、森の中を移動していた。
このまま行けば市街地に出れるはず、多分。
殺し合いが始まって結構経つよな…時計を見る限り、2時間ちょっとか。
あと2時間もすれば放送が入る。その放送で麗雅や美琴の名前が呼ばれなけりゃ良いが。

「手ェ洗いてぇ…」

一時間程前か、俺を殺そうと襲い掛かってきやがったデカい狼を返り討ちにしてやった。
その時、キン○マ掴んで潰してやったんだ。
いやあ、ちょっと前まで威風堂々としていたのに、涙流して苦しむ様と来たらお笑いもんだったなありゃ。
だけど…汚ねぇキ○タマ直に触っちまったから、手を洗いたい。物凄く。
だったら側に流れている川の水で洗えば良いだろうって?
それが出来たらとっくにしてるよ。川の両岸は崖みたいになってて届かねぇんだよ!
下手したら川に落ちてドザエモンだ。俺は泳ぐのが苦手なんだ。

「あれ」

おっといけない、気付いたら川沿いから大分それちまってた。
ここで迷ったらイコール遭難イコール致命的だ。
俺は川沿いに戻ろうとした――――。

「……!」

背後の茂みから誰かが飛び出してきた。その手にはぎらりと光る刀。

ビュン!!

俺が地面に身体を伏せるのと、少し前まで俺の胴体があった位置を
風切り音を鳴らしながら刀の刀身が通過するのはほぼ同時だった。
おいおい勘弁してくれよ、またかよ。

「ちぃっ! 何しやがんだ!」

俺は前に転がり襲撃者と距離を取る。そして改めて相対した。
それは恐らく美琴と同年代の、セーラー服姿のハーフ狐獣人の少女だった。

「何をするって…殺し合いですよ」
「お前も…さっきの狼みてぇにこんな馬鹿げた殺し合いに乗るってのかよ…。
ったく…どいつもこいつも狂ってやがんぜ…!」
「狼…? なるほど、誰かに襲われたんですか」
「ああ…返り討ちにしてやったけどな」
「殺したんですか」
「…言っておくけどな、お前らみてぇに進んで殺し合ってる訳じゃねぇぞ」

まるで自分と同類だとでも言いたげな狐娘の視線が気に食わねぇ……。

「…実は私も一人殺しました」
「ふーん、そうか」
「そして、あなたで二人目です…覚悟!」

狐娘が剣を構え向かってくる。
馬鹿が。俺が手に持ってるのが見えないのかよ。
さっき狼から奪ったコルトM1917リボルバーを、俺は狐娘に向ける。
こいつもヤる気みたいだからな、悪いが女でも手加減無しで行かせて貰う。

ダァン! ダァン!

「甘い!」
「ちょ、マジか」

冗談がきつ過ぎる。かなり至近距離で撃ったのにかわしやがった。
まずい、これ以上距離を詰められると銃と刀の優位関係は逆転する。
そうなると俺の勝ち目は薄くなる一方だ。
ここは……逃げるか。

「おっと俺、今日頼んでたDVD届くんだった。料金引き換えだから帰らねぇと。
じゃ、そう言う事で」

適当な嘘を言って俺は川の下流の方向へと駆け出した。

「……逃がしませんよ」

当然、狐娘も追ってきた。
ちなみにDVDを頼んでいたのは本当だ。ただし代金はコンビニで払っちまったけど。
いやそう言う事じゃなく早い所逃げるか。くそっ、銃持ってるのに剣相手に
優位に立てねぇってどう言う事だ……!


相手は銃を持っている。銃と刀でどちらが有利か、と聞かれれば、
ほぼ全員が銃、と答えるだろう。
だが事実は小説より奇なりとはよく言ったもので、現に今刀を装備した私は、
銃を持った男を優位な立場で追撃している。

ダァン!

「おっと」

たまに振り向いて発砲してくるけど、当たらなければどうと言う事も無い。

「当たらねぇえ! 俺はこんなに銃が下手だったのかよ!」
「嘆く事ありませんよ。走りながら狙いを定めるのは銃の名手でも難しいはずです」
「お前が言うんじゃねぇよ! っていうかお前、名前は!?」
「志水セナです」
「そうか俺は四宮勝憲だ! 別に覚えなくても良いけどな!」

ダァン!

再び男――四宮さんが手にしたリボルバー銃を振り向きざまに発砲した。
耳元で空気を切り裂く音が聞こえた。かなり近かったみたい。
でも当たらなかった。なら大丈夫。
向こうの弾薬の数も無限じゃ無いはず。弾切れになれば私はもっと優勢になれる。
その調子で無駄弾をどんどん撃って頂戴、四宮さん。

「畜生…! ガキが…舐めやがって…!」
「うふふ……」

しばらく、この追いかけっこは続きそうね。



【一日目/朝方/D-7森】

【四宮勝憲】
[状態]肉体疲労(中)、D-8方面へ移動中
[装備]コルトM1917(1/6)
[持物]基本支給品一式、.45ACP弾6発入りフルムーンクリップ(1)
[思考・行動]
 基本:殺し合う気は無いが襲い掛かる者には容赦しない。朱雀麗雅と葛葉美琴の捜索。
 1:取り敢えず志水セナを倒したいが、今は逃げる。
 2:手を洗いたい。
[備考]
 ※特に無し。

【志水セナ】
[状態]良好、四宮勝憲を追跡中、D-8方面へ移動中
[装備]エイミス・フロリッヒャーの刀、パワーリング
[持物]基本支給品一式、コンバットナイフ、折込鋸
[思考・行動]
 基本:殺し合いに乗る。優勝を目指す。
 1:四宮勝憲を追撃し、殺す。
 2:川田喜雄は放置。会ったら殺す。
[備考]
 ※特に無し。


D-7一帯に銃声が響きました。


オヤジはそんな高位存在だったのか 時系列順 心の奥までは偽れない
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人間なめんな! 四宮勝憲 心の奥までは偽れない
女の子って怖いね 志水セナ 心の奥までは偽れない

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最終更新:2010年12月05日 02:19
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