23話:立沢義の憂鬱
虎の耳に尻尾を持った女物のスーツ姿の女性、立沢義(たちざわ・よし)は
病院と思しき建物の中を支給品であるSVS-1936自動小銃を構えながら探索していた。
病室一つ一つ見て回るのは正直言ってかなり骨の折れる作業だが、
大切な生徒がいるかもしれないという思いから義は作業を続ける。
「平崎君、香瀧君、石川君…みんな無事だと良いけれど…。
どこにいるのかしら……」
殺し合いに呼ばれた教え子の名前を呟きながら、義は病室を見て回る。
そしてある病室の扉――この病院の扉は窓は無く木製の扉になっている――を
開けた直後。
「グォォウ!」
「え?」
雄叫びが聞こえたのと同時に義の顔に何かが掛かった。
とても粘っこく、生臭く、白く濁った色をしていた。
「……あ」
「……」
呆然とする義は、前方、病室のベッドの上にいる竜人体型の雄竜を発見する。
黒と白の身体を持った雄竜は驚愕の表情を浮かべ固まっていた。
大きく股を広げ、そこには先端から先程義の顔に掛かった液体を噴き出す、
いきり立った雄の――――。
「こ…この変態がああああああああああああ!!!」
「ま、待ってえええぎゃあああああああああああ!!!」
◆
「すみませんでした、本当に」
「…もう良いわよ」
顔を病室内で発見したタオルで拭きながら、義は不機嫌そうに返事をする。
冷たい床に土下座をする黒と白の竜――本間秀龍(ほんま・ひでたつ)は、
ただひたすらに義に詫び続けた。
病室内には幾つかの銃弾の跡が残り、秀龍自身も致命傷では無いが
腹部に一発食らっていた。義による怒りの発砲によるものである。
「その…支給品に、あの、俺好みのエロ本があったんで…誰もいないと思って」
「エロ本が支給されたの…?」
「い、いや、エロ本ともう一つ、大型のリボルバーと予備弾が入ってました」
「そう…」
エロ本が入っていたからと言って殺し合いの最中に自分を慰めるのはどうだろうか。
心の中で雄竜に呆れる義。
「それで? 本間秀龍さんだったっけ?」
「は、はい」
「あなたは殺し合いをする気はあるの?」
「…いえ、無いです。他人殺してまで生き残ろうとは思ってませんし…」
「それじゃあ…私と一緒に来てくれない?」
「え?」
「私…高校で教師をしているんだけど…大事な教え子が三人呼ばれてるのよ。
その子達を捜して…何とかしてこの殺し合いから脱出したいの。だから、協力して欲しいのよ」
正直、顔に雄の種を掛けられるという女性として最悪の行為をされた事は
許す気にはなれなかったが、今はそんな事を言っている場合でも無い。
秀龍が殺し合う気は無いならば是非とも仲間になって貰いたかった。
教え子三人の捜索、首にはめられた爆弾内蔵の首輪の解除方法の捜索、
そして殺し合いからの脱出を目指すには自分一人の力では無理があるためだ。
「た、立沢さん…顔に○液掛けた俺が同行していいんですか」
「その事は言わないで…もう忘れたいから」
「すみません」
「あなたが殺し合う気が無いなら良いわ…」
「……分かりました。俺もこんな殺し合い嫌ですからね、一緒に、頑張りましょう」
秀龍は先程の自分のしでかした事への負い目もあってか、
義の申し出を受け入れる事にした。
「ありがとう、本間さん」
「ええ、いや……」
「……取り敢えず、病院内を見て回りましょうか。その途中で教え子達の事も話すわ」
「そうですね」
ハーフの虎獣人の数学女教師と、竜人体型竜種のとある教会の警護竜は、
共にこの殺し合いから逃れる術を探す事になった。
「…本間さん」
「はい?」
「いい加減しまって、それ」
「……!! す、すみません!」
「手洗ってね」
「はい…」
義に指摘され、収納口から飛び出したままのナニを秀龍は急いでしまった。
(…何か不安)
もしかしたら仲間にすべき人物を間違えたかもしれないと、義は心の中で若干後悔していた。
【一日目/早朝/F-3病院3階】
【立沢義】
[状態]良好
[装備]SVS-1936自動小銃(7/15)
[持物]基本支給品一式、SVS-1936自動小銃マガジン(5)
[思考・行動]
基本:教え子(平崎吉治、香瀧宏叔、石川昭武)の捜索及び脱出手段の模索。
1:本間秀龍と行動。
[備考]
※特に無し。
【本間秀龍】
[状態]腹部に銃創(応急処置済)
[装備]S&WM500(5/5)
[持物]基本支給品一式、.500S&W弾(10)、エロ本(5)
[思考・行動]
基本:殺し合いはしない。何とかして脱出したい。
1:立沢義と行動。
[備考]
※特に無し。
※F-3病院周辺に銃声が漏れました。
≪支給品紹介≫
【SVS-1936自動小銃】
立沢義にマガジン5個とセットで支給。
1936年に旧ソ連が採用した自動小銃。使用弾薬や構造上の問題で
作動不良が多く信頼性は低かった。
【S&WM500】
本間秀龍に.500S&W弾10発とセットで支給。
S&W社が「世界最強の拳銃」として2003年に発表した超大型リボルバー拳銃。
威力も反動も凄まじく下手に撃つと射手が危険。
【エロ本】
本間秀龍に5冊セットで支給。
読んで字の如く。
≪キャラ紹介≫
【名前】立沢義(たちざわ・よし)
【性別】女
【年齢】33
【職業】高校数学教諭
【身体的特徴】ハーフの虎獣人。赤みがかった髪に虎の耳と尻尾、
二十代前半に見え巨乳でスタイル抜群、スーツ姿だが、実は
虎柄のビキニを着けている
【性格】思いやりがあり優しい
【趣味】料理
【特技】暗算
【経歴】高校で数学の教師を務めている。分かりやすいと評判
【好きなもの・こと】カレーライス、教え子
【苦手なもの・こと】豆腐
【特殊技能の有無】 数学教諭なのでそれなりに数学的思考力は高い
【備考】平崎吉治、香瀧宏叔、石川昭武は高校の教え子
【名前】本間秀龍(ほんま・ひでたつ)
【性別】男
【年齢】24
【職業】とある有名教会の警護竜(要は竜の警備員)
【身体的特徴】黒と白の身体を持つ竜人体型の竜。引き締まった身体
【性格】やや軽いが基本的に善人
【趣味】ネットでエロ画像集め
【特技】剣術がそれなりに上手い、射撃もそれなり
【経歴】至って平穏に育つ
【好きなもの・こと】人間の女性のエロ画像、焼き鳥
【苦手なもの・こと】騒音
【特殊技能の有無】人間より体力、生命力は強い
【備考】勤務先の教会の聖堂で自慰をした事がある(今の所バレてはいない)
最終更新:2010年12月12日 10:00