19話:お客様三名ご案内
ショッピングセンター屋上、小さな遊園地のようになったその場所で、
二本の尾を持った二足歩行の銀色雄狐、稲苗代儀重(いなわしろ・よししげ)は、
フェンス越しに見える市街地を見下ろしていた。
首に手をやり、はめられた金属製の首輪の感触を確かめる。
「……これ、下手な事すると爆発するんだよなぁ……厄介だな」
首輪から手を離し、近くのベンチに置いてある自分のデイパックに近付き、
チャックを開け中身を漁り、「それ」を取り出す。
ストックと先台が黒く塗られ、銃身とレシーバーが銀色に輝く散弾銃、
レミントンM870マリーナ・マグナムと、12ゲージ散弾12発。
更に煙幕手榴弾3発も入っていた。
「…殺し合い…か……知り合いもいないし、乗っても良いかな……」
M870マリーナ・マグナムを抱えながら、儀重は言う。
「取り敢えず、ここ、ショッピングモールか? 中でも見て回るか」
雄の銀狐はショッピングモール内を探索するため、中へ続く階段へと向かった。
◆
ショッピングモール中央の吹き抜けがある広場。
「広いなぁ…」
茶色の狼獣人の女戦士、エイミス・フロリッヒャーは吹き抜け広場の天井にある、
大きな天窓を見上げていた。
バーゲンセール等を宣伝する垂れ幕が幾つか吊り下げられている。
ベンチやテーブルも設置され、平時は買物客の憩いの場だったのだろう。
今となっては物寂しく感じるだけだが。
エイミスは適当なテーブルの上にデイパックを置き、中身を漁り、
ランダム支給品を取り出してテーブルの上に置く。
それはスローイングナイフ――いわゆる投げナイフだった。
5本セットでエイミスに支給されていた。
「出来れば剣が良かったんだけどなぁ…この際文句は言えない、か」
スローイングナイフの内一本を手に取り、数十メートル先にある柱に向け、
エイミスは狙いを定めて投げ付けた。
ドスッ
狙った場所からややズレたが、ナイフは柱に突き刺さった。
「良い感じ…」
思いの外コントロールが良かった事に満足し、エイミスは刺さったナイフを引き抜きに行った。
(…だけどやっぱり投げナイフだけじゃあね…これから先戦って行くには…。
ここ、ショッピングモールだし、武器屋的な所って無いのかしら)
スローイングナイフだけではどう考えても不安である。
エイミスはマシな武器を探しに、ショッピングモール内を回って見る事にした。
◆
ショッピングモール裏手に広がる森の中。
平崎吉治は先刻殺害した白い狼獣人の女性から奪い取ったデイパックの中身を漁っていた。
基本支給品一式に混じって出て来た物は、黒塗りのアサルトライフルと、
予備のマガジン5個であった。
吉治は口元をニヤリと歪め、興奮した様子で装備していたトカレフをベルトに差し込むと、
アサルトライフル――コルトAR-15に装備を切り替え、再び森の中を進み始める。
「あれは…」
そして、遂に森を抜け、大規模な建物を見付ける。
搬入口らしき入口などから、どうやら地図のエリアB-3のショッピングセンターのようであった。
「……」
吉治はショッピングセンターで獲物を探すべく駆け出した。
【一日目/早朝/B-3ショッピングセンター屋上】
【稲苗代儀重】
[状態]良好
[装備]レミントンM870マリーナ・マグナム(4/4)
[持物]基本支給品一式、12ゲージショットシェル(12)、煙幕手榴弾(3)
[思考・行動]
基本:殺し合いに乗る。
1:ショッピングモール内を探索してみる。
[備考]
※特に無し。
【一日目/早朝/B-3ショッピングセンター一階中央吹き抜け広場】
【エイミス・フロリッヒャー】
[状態]良好
[装備]スローイングナイフ(5)
[持物]基本支給品一式
[思考・行動]
基本:殺し合いには……。
1:ショッピングモール内の探索。もう少しマシな武器が欲しい。
[備考]
※特に無し。
【一日目/早朝/B-3ショッピングセンター裏手の森】
【平崎吉治】
[状態]錯乱気味
[装備]コルトAR-15(20/20)
[持物]基本支給品一式、コルトAR-15マガジン(5)、トカレフTT-33(8/8)、
トカレフTT-33マガジン(2)
[思考・行動]
0:殺し合いに乗る。優勝を目指す。
1:友人(石川昭武、香瀧宏叔)、学校の先生(立沢義)相手でも容赦しない。
2:ショッピングモールにて獲物を捜す。
[備考]
※レックスの存在には気付きませんでした。
≪支給品紹介≫
【レミントンM870マリーナ・マグナム】
稲苗代儀重に12ゲージショットシェル12発とセットで支給。
レミントン社製の信頼性が高いポンプアクション式散弾銃、レミントンM870に、
錆びにくいようクロームステンレス加工を施したモデル。
日本の海上保安庁の特別警備隊が採用している。
ストックと先台が黒、銃身とレシーバーが銀色で、ちょっとカッコ良い。
【スローイングナイフ】
エイミス・フロリッヒャーに5本セットで支給。
いわゆる投げナイフ。普通にナイフとしても使える。
投げて相手に刺すにはかなりの技術が必要。
【コルトAR-15】
冬月蒼羅にマガジン5個とセットで支給。
1957年にユージン・ストーナーが開発した突撃銃で、M16シリーズの大元に当たる。
5.56㎜NATO弾を使用しフルオートでも反動が少なく撃ち易い。
様々な改良を加えられる前の古いモデルなので後のM16シリーズに比べると欠点も多い。
≪キャラ紹介≫
【名前】稲苗代儀重(いなわしろ・よししげ)
【性別】男
【年齢】不明(外見年齢20代半ば)
【職業】とある稲荷神社のお稲荷様(と言う名の神社管理人)
【身体的特徴】銀色の人狐。尾が二本ある。引き締まった身体付き、獣足
【性格】飄々
【趣味】ツーリング
【特技】掃除
【経歴】代々大きな稲荷神社の管理を務める家系に生まれる
【好きなもの・こと】稲荷寿司
【苦手なもの・こと】神社に来るDQN共、悪ガキ共
【特殊技能の有無】それなりに妖力はあるが戦闘に役立つ程では無い。生命力は強い
【備考】ビッグスクーターを駆る異色狐でもある
【名前】エイミス・フロリッヒャー
【性別】女
【年齢】18
【職業】戦士
【身体的特徴】茶色と白の狼獣人。目の下に赤い模様がある。スタイルは普通。
灰色の丈が短めのローブの上に軽装鎧を着用
【性格】勝気
【趣味】剣術の稽古
【特技】剣術の達人、銃も使えるが下手
【経歴】14歳の時に家を出て世界中を旅している
【好きなもの・こと】紅茶、剣の手入れ
【苦手なもの・こと】魔道士
【特殊技能の有無】優れた反射神経
【備考】レイ・ブランチャード、エルザ・ウェイバー、フォナ・アンシュッツは
同じ冒険者ギルドの知人だが、特に親しい訳では無い
最終更新:2010年12月15日 21:38