人類最強VS吸血鬼最強 ~観客はお馴染みのネタに命を賭ける~


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「殺しあえ、か……」

 闇に包まれた森林の中、レガート・ブルーサマーズはポツリと短く言葉を零した。
 普段通りの白コートに、頭部を飾る鮮やかな青髪。その右手には、銃身の上下に刃の備わった特異な型をした拳銃が握られている。

「つまらないな……こんな勝敗の決定付けられたゲーム、楽しむ余地すらないよ」

 レガートは動こうとしない。
 彼は兵藤が現れた教室で既に主の存在に気が付いていた。
 気が付いたからこそ、行動をとろうとしない。
 彼は知っているからだ。
 その主の力が前に人間の勝利などあり得ないと。
 たった一度の『解放』で、この場にある何十の命は一瞬で終焉を迎えると。
 その『力』が側に最も長い時間身を置いていた彼だからこそ分かる、絶対。
 成程それなりに腕の立ちそうな者もあの場にも居た。ともすればGUNG-HO-GUNSに並び立つ者もいただろう。
 だが、それだけだ。GUNG-HO-GUNSに並び立つ者が幾数幾万集まろうと話にすらならない。
 人間を超越した魔人であろうと、真なる人外には決して届きえない
 所詮はその程度なのだ。
 あの方を打ち倒すなど万が一つにも有り得ず、ゲームの結果は目に見えていた。
 参加者は全滅し、この殺し合いを開催した男も殺される。
 あの方は、このような首輪で制御できる存在ではない。
 唯一、ヴァッシュ・ザ・スタンピードの存在が盤上に変化を与える可能性を持つが、それも彼の持つ高尚で傲慢な信念により果たす事はできないだろう。
 そうでなくとも、あの方は融合に次ぐ融合を果たし、まさに絶対の存在となったのだ。
 たった一人の命すら切り捨てる事のできない夢見る聖者には、あの方を止める事など出来る筈がない。
 加えてあのお方に、こんな殺し合いに興じている暇などなく、ともすれば一瞬後には殺し合いは終わっている。
 だから、ツマラナイ。
 忠誠を見せる事すら出来やしない。
 この場にあのお方が居なければ、ならば進んで戦いに馳せ参じただろう。
 GUNG-HO-GUNSに並び立つ者を、この殺し合いの開催者を、ヴァッシュ・ザ・スタンピードを、
 この身一つで殺し尽くし、その生首で築いた丘を土産にあの方の元へ舞い戻ろう。
 これが僕の忠誠です、と。
 そして終わりの終わりが終わった後に、ゆっくりとこの首を切り落としたかった。
 人類の誰もが居なくなった世界で、最後の人間として、あの方の眼前で死なせて欲しかった。
 あの方は死に目を見せる事を許してもらいたかった。
 だが、それも無理だ。
 自分は此処で殺される。その他の参加者と同様に、殺されるのだろう。
 それもそうだ。
 あのような輩に連れ去られるような愚者を生かしておく訳がない。

「ああ、せめて最後はナイブズ様の手で……」

 それはレガートが思った最後の我儘であった。
 本来ならば最後のあの場で見せ付けたかった忠誠。
 だが忠誠すら示せないのならば、忠誠を示す機会すら与えられないのなら、せめて。
 せめて、ナイブズの手を煩わせる事になっても、ナイブズに滅殺されたい。
 それが彼の最後の望みであり、最後の我儘であっ。
 彼は立ち尽くす。
 殺し合いの最中、警戒もせずに立ち尽くす。
 まるで撃って下さいといわんばかりに堂々と、彼は最後の時を待つ。
 そして、


 BANG!!


 爆音と共に飛来した銃弾を、レガートは一歩右側に歩き、回避した。
 いや、わざわざ回避することもなかったか、と着弾と共に思考するレガート。
 確かに着弾点からするに、弾丸がレガートへ命中する事はなかっただろう。
 おそらくコレは威嚇。命中を目的としたものではないようだ。
 そして自分が知るよりも遥かに遅く銃弾の速度と体の重み。
 レガート自身がいた世界の銃器・兵器は「プラント」技術により所謂「現実」の銃器などと比べ初速や威力がケタ外れの物になっているものである。
 今放たれていた銃弾はあまりにも遅かった。
 そして思う様に体が動かず、まるで肉体そのもの磔にされてるような感覚。
 今の事実に違和感を覚えつつもはあ、と溜息を一つ吐きレガートは、銃弾の飛んできた方へと面倒気に顔を向ける。
 どうやら僅かな『生』の時すら捨てたがる愚か者が、近くに居るらしい。
 あの方に殺されるまで、殺される訳にはいかないのだ。
 暇つぶしに相手してやろうと、レガートは応戦の構えを取る。
 とはいえ、立ち尽くしていた先までの姿勢と何かが変わった訳でもないのだが。
 ともかくレガートは、右手に持った拳銃をバックへと仕舞い、暗闇へ虚無に満ちた瞳を送る。

「こんばんわ、ヒューマン」

 勝負はほんの一瞬であった。
 笑顔と共に仰々しくお辞儀をしてきた襲撃者へと一足飛びに接近し、その胴体……鳩尾部へと右の手刀を奔らせる。
 ただの手刀。されどレガートの力で放たれた手刀は名刀のそれと大差なく、腸(はたわた)と共にその胴体を易々と貫通する。
 ゴフ、と深紅の血液を口の端から零しながら倒れる襲撃者。
 だが狂信者が願望成就を邪魔した罪はあまりに重い。地面に着く寸前の襲撃者に、レガートの駄目押しの追撃がぶちこまれる。
 レガートが選択した一撃は右の後ろ回し蹴り。
 血にまみれた右手を引き抜く勢いを利用し、身体を回転。
 左の軸足で更に回転の勢いを増加させ、右足を襲撃者の顔面に叩き込む。
 襲撃者の首が、達磨落としの台座が如く華麗にスライドし、吹き飛んだ。
 刹那に行われた二撃は共に必殺。一撃は胴を貫き、一撃は頭と胴体とをちぎり離した。
 その力は馬鹿げているの一言であった。
 体が思うように動かない感覚だが、この程度は造作もない。

「こんばんわ、ミスター。そしておやすみ」

 だが、いまだ狂信者が鬱憤は晴れず。
 コロコロと転がる生首へと近付くと、レガートは土と血塗れのそれを踏み潰した。
 ベチャリという音と一緒に、生首だった物体は赤と黄色の何かを辺りにぶちまけて、地面へとへばりつく。
 地面と一体化した生首を見てレガートもようやく気が晴れたのだろう、一つの溜息と共に足をどけた。

「救い難いね、残り少ない最期の時も有意義に使えないとは」

 それきりレガートはまた空を見上げる。
 待ち焦れるは最期の瞬間。
 想い続けた主に求める最後のお願い。
 しかしその願いが叶えられる事はなく、代わりとして―――

「それでもってお早うだ、ヒューマン。素晴らしい子守唄をありがとう」

 ―――悪魔の囁きが紡がれた。
 言葉のした方へ振り向くと、そこには確かに胴を貫き、首を吹き飛ばした筈の男が、無傷の状態で立っていた。
 レガートの眼が見開かれ、この会場に来て初めて、感情らしい感情がその双眸を染める。

「これはそのお礼だ」 

 そして、驚愕に動きを忘れたその身体に拳がめり込んだ。
 レガートが一撃と同等、それ以上の力を以て振り抜かれた右手は、レガートの身体を宙へ舞い散らすに充分すぎた。
 重力から強制的に解放された痩躯が、面白いように空を飛ぶ。
 遊泳の時間は凡そ五秒ほど。その間にレガートは十五、六メートルほど空を進み、地面へと背中から墜落した。

「な、に……?」

 衝撃に歪む視界。
 背中と腹部を支配する鈍痛に、横隔膜が本来の役割を忘れる。
 息を吸い込む事ができず、だがレガートは心底からの疑問を口にする。
 確実に殺害した筈の敵、。
 腹をぶち抜かれ、首をもがれ、それで尚生きているなど人間ではない。それこそ将に化け物が所業。
 この敵は何者なのだと、本能が答えを求める。
 この疑問の答えは自分が行く先に必要不可欠なものだと、レガートは何よりも先に察知していた。
 この男なら―――この男なら、相応しいのではないか?
 我が忠誠の強さを計るに値する、ともすればヴァッシュ・ザ・スタンピードと比肩しうる『力』を、眼前の何かは有しているのでは?
 もしかしたら念願を叶える事ができるのではないか?

「君、は」
「自己紹介が必要か、ヒューマン? 我が名はアーカード、吸血鬼―――不死の化け物だ」
「不、死?」
「そう、不死だ。何千何万回と殺されようと死ぬことのない、正真正銘の化け物だ。さて、そんな化け物と相対したお前はなんだ? 狗か、人間か、それとも化け物か?」

 返答はない。
 レガートは呆けを以て人外が言葉に答えを返し、呆然とその存在を見つめていた。
 その反応に相対する男―――アーカードの表情が変化していく。
 弧を描いていた唇は徐々に平らになり、遂には逆側へ弧を描く。
 喜びに垂れていた目尻は怒りにつり上がっていく。
 表情が、嬉々としたものから憤怒に満ち満ちたものへと歪んでいく。

「そうか、立ち上がる事もできないか……狗にも劣る畜生めが」

 期待の大きさの分、失望も大きく。
 力無く跪くレガートへとアーカードは侮蔑の視線を送る。
 吸血鬼の肉体を腕力一つで貫き、ちぎり飛ばす人間。
 あのアンデルセンにすら届く、もしやそれ以上やも知れぬ人間―――だが、蓋を開けてみれば狗に及ばぬ存在であった。
 これを失望と呼ばぬなら何と呼ぶのか。
 アーカードは憤怒と共に殺意を剥き出しにして、レガートへと銃口を掲げる。
 その銃は、レガートも良く知る人物が愛用している大型のリヴォルヴァー。
 何十年もの間に何万、何十万と弾丸を放ち、だがどんな標的であっても殺害する事のなかった拳銃。
 それが、吸血鬼が右手に握られていた。
 そして、吸血鬼は一遍の躊躇いもなく、引き金を引く。
 矛先が敵を貫く為、重い轟音を纏いながら弾丸が射出された。

「……ほう」

 感嘆の呟きを零す吸血鬼。
 射出された弾丸は標的を食い破る事なく、虚空へと消えていった。
 寸前まで跪いていたレガートは、何時の間にかアーカードの眼前まで迫り、立ち尽くしていた。
 その表情は、歓喜に満ちている。

「はは………は、は、はははっははっははっははははははははははっははははははははははははははははははははっははははははははは! 最、高、だ!! 君のような存在が! 僕の忠誠を示す為に存在するかのような化け物が! この世界にいたなんて!!」

 そして、押さえ切れぬ歓喜は言葉となって吐かれた。
 口から血の混じった泡を飛ばしながら、興奮に任せて言葉を吐くレガート。
 その言葉と同時にレガートの四肢がかき消え、アーカードの顔面が、右腕が、左腕が、右足が、左足が、その全身がグシャグシャにへし折れながら跳ね上がる。
 それは知覚すら出来ない速度で放たれたレガートが連撃。
 一瞬に放たれた十数発の蹴撃、拳撃に吸血鬼の身体が宙に舞う。
 その身体へとレガートは弾丸を撃ち込む。
 デイバックに締まった筈の拳銃と、先の連撃の隙に吸血鬼から奪ったリヴォルヴァーを掲げて、容赦なしに引き金を引きまくる。
 音速で走る鉛弾が吸血鬼に注がれていき、両の拳銃が弾丸を無くすと同時に、吸血鬼は地に堕ちる。
 夥しい量の血液がその全身から流出し、地面にどす黒い水溜まりを形成していった。

「ク……クク、ハハハハハハハハ。前言を撤回しよう。貴様は人間だ。どうしようもない程に狂った、どうしようもない程に狂いきった―――人間だ」
「それがどうした化け物。まだ終わりじゃないんだろう? まだまだ見せてくれるんだろう? 不死者の、化け物の戦い方を」

 血だまりの中で笑う吸血鬼に、狂信者は求める。
 自分の忠誠に見合った闘争を。
 ただ、それだけの闘争を。

「そうだ、見せてやろうヒューマン。化け物の、夜に生きるものの戦い方を」
「簡単に死なないでくれよ、不死者……この忠誠に見合うだけの『力』を、僕に見せてくれ!」

 吸血鬼も求める。
 この不死の身体を粉砕してくれる闘争を。
 ただ、それだけの闘争を。

 同時に駆け出す両者。
 レガートは、リヴォルヴァーをデイバックへと押し込み、もう片方の拳銃を操りながら前へ。
 アーカードは、右腕を限界まで引き絞られた弓矢のように構えないがら、前へ。
 数字にして凡そ二十メートル離れていた距離。
 たたそれだけの距離など二人の人外にとっては存在しないと同等で、瞬きの間に二人は互いの射程圏に身を置いていた。


「オオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 雄々しく咆哮するはレガート・ブルーサマーズ。
 拳銃に仕組まれた刃を操り、眼前が敵を切り刻まんと腕をふるう。
 鋏のように稼動し、銃身を挟むように何度も何度も開閉を繰り返す仕込み刃。
 そのトリッキーな稼動に高速で振るわれるレガートの手腕が加わり、刃は、ともすれば幻想的なまでに複雑な軌道を描いて、いつか見せたルーク・バレンタインをも軽々と上回る速度でアーカードへ迫る。

「良い動きだ、ヒューマン。―――だが、我が『第三の目』を奪うには少しばかり足りんなあ」

 仕込み刃は、アーカードの表皮に幾数もの切り傷を形成する。
 しかし、精々その程度。
 幾ら振るえどその刃が急所を捉える事はなく、薄皮を傷付けるに終わっている。
 レガートの頬に流れる一筋の汗。
 届かない刃を全力で振るい続けながら、レガートは僅かな焦燥と膨大な歓喜との間で思考する。
 完全に見切られている、と。
 その判断に行き着いたと同時に、レガートは攻め方を変化させた。
 瞬発力の限りに地面を蹴り抜き、音速を遥かに超える移動を以てアーカードの後方に回り込む。
 遭遇時には反応すらされなかったスピード。
 その速度にレガートは起死回生を賭けた。



 が、
 それすらも吸血鬼にはもはや通用せず。



「素晴らしいスピードだ」

 回り込むと同時に放たれた左のハイキックは、ガシリと、アーカードの左手により受け止められた。
 交差する視線。アーカードの瞳からは愉悦が見て取れる。

「だが、それはもう見飽きた」

 左足を拘束されたレガートに、返しの右拳を避ける事は不可能であった。
 型も何もなく振り抜かれた拳がレガートの顔面にめり込み、そして本日二度目の空中遊泳。
 グルグルと独楽のように物凄い勢いで回転しながら、叩き付けられる。

「あッ……ガっ……!!」

 首から上が吹き飛んだと錯覚するような衝撃であった。
 その未知の衝撃から来る痛みに、レガートは動きを強制的に止められた。
 あの魔人が単純な痛みに悶絶して動きを止める……それはレガートを知る者であれば、レガートの狂気を知る者であれば、驚愕せずにはいられない出来事。
 銃弾を延髄に撃ち込まれ、それでも尚反撃に移る化け物がレガート・ブルーサマーズだ。
 そのレガートを拳一つで動きを止めたアーカード。
 これこそがアーカードの持つ絶対的力。
 人間を紙切れのように引きちぎる力。
 それが吸血鬼を最強たらしめる、単純にして脅威の力。
 その力が、レガート・ブルーサマーズに振るわれたのだ。

 レガート自身、本来の身体能力であれば互角以上の戦いになっていただろう。
 ほぼ半身不随状態でもわずか数センチから発射された銃弾を避けれる自分自身が、
 10m程先からでも避ける事が出来なかった速度の「釘」とその釘を全方位から発射しても発射音一つしか
 聞こえさせない動き、音速の数百倍もの速度を持つGUNG-HO-GUNS最強のエレンディラ、完全状態の自身ならばソレさえも超える身体能力を持つ。
 さらには数十トンもの鉄球を片手で持ち、鎖を波打たせて上空へ浮き上がらせる膂力。
 砂の星では人類では最強の身体能力を持つ。
 肉体に多大な制限がなければこの結果にはならなかった。


「どうした? この程度で悶絶していては、私を殺すことなど未来永劫不可能だぞ?」

 吸血鬼の手は止まらない。
 悶絶するレガートの襟元を掴み上げ、その顔面や腹部へと執拗に拳を飛ばす。
 その度にレガートの口から血が飛び散り、身体が跳ね上がる。

「……さ、い、こう、だ……!」

 レガートは笑っていた。
 アーカードが剛腕に殴られ続け、頭から口から鼻から顔から出血しながら、それでも笑っていた。
 そしてレガートが動く。
 ブズリと音をたて、アーカードの胴体へと突き刺さるレガートの右腕。
 殴られながらも放った手刀がアーカードの腹部に二度目の貫通傷を創る。
 再び腹に風穴を空けられたアーカードは動きを止め、面白そうにレガートを眺める。

「そうでなくてはな……人間とは、そうでなくてはいけない! どんな化け物が相手であろうと! どんな絶望的な状況であろうと! 諦めなどに、絶望などに、死などに逃げ込むな! 闘え! それこそが唯一化け物に届きうる牙となる!」

 アーカードも同様に笑っていた。
 笑いながら、驚喜に破顔しながら、至る所から滝のように血を流しているレガートを、投げ捨てる。
 レガートは土埃に塗れながら地を転がり、立ち上がる。
 フラリと、僅かに身体を傾けながら、立つ。
 その儚げで今にも倒れそうな姿は、まるで風に翻弄される雑草のよう。
 ただ、その瞳に映る狂気は一分の陰りもない。
 一度、二度と引かれる引き金。
 その胴体にめり込む弾丸。
 ダメージは与えられど、その命には届かない。与えた僅かなダメージも、瞬きの間に回復する。
 完全な不死身が、そこにはあった。

「あ、あ……君のような存在が……あったなんて……この、殺し合いを……開、いたあの老人に、僕は感謝すら覚える……!」

 不死者を前に狂信者は笑う。
 鮮血にまみれた身体で、それでも楽しげに。

「そうか、人間。お前はどうしようもなく狂っているな。だが、それで良い。それでこそ人間だ!」

 狂信者を前に不死者は笑う。
 傷一つない身体で、心底から楽しげに。

「僕の、忠誠の……糧になれ、吸血鬼」
「この心臓を貫いてみせろ、人間!」

 地を蹴るは狂信者。
 右手の貫手を武器として、全力でその懐へと踏み込んだ。
 両者の間にあった僅かな距離がみるみるうちに縮まっていく。
 そして―――、




「おいおいおい、どうなってんだコイツは! ようやくパーティーも終わったかと思えば、最低最悪の二次会に突入かよ。嫌になるぜ、オイ。なぁ、アンタ達もそう思うだろ」




 その男が、現れた。
 舞台に立つ役者のようにオーバーな挙動で天を仰ぎながら、男は暗闇の中から歩いてくる。
 その動作はまるで二人の注目を集めるかのように。
 何処までも仰々しく飄々としたものが、男の振る舞いから感じ取れた。

「おっと、お楽しみの真っ最中だったか。こりゃ失礼、謝るよお二人さん。俺の事は気にしないでじゃんじゃんやっちゃってくれ。ホラホラ、遠慮するなよ」

 ズボン一丁に赤コートを纏っただけという、時代の遥か先をいく奇抜なファッション。
 鮮やかな銀髪と青色の瞳、背中には一振りの巨刀。
 人外達の前に舞い降りた男は、寸分のおくびすら面に出さずにふざけた調子で口を回す。

「どうした? 良い感じに盛り上がってたとこなんだろ? 気にすんなよ、な―――」



 ―――ズブリ、



 狂人達のお楽しみを邪魔した罪は、あまりに重かった。
 何時の間にやら背後に回り込んでいた狂人達が、ピタリと息の合った動作で同時に手刀を振り抜く。
 レガートは右から、アーカードは左から。男の体内で腕を交差させあって、その身体を貫通させる。
 軽口を吐き続けていたその口から赤黒の液体が溢れ出た。

「「邪魔だ」」

 言い捨てると同時に男の全身から力が抜け、空気の抜けた風船のように倒れ込んだ。
 胴体に二つの風穴を空けた男は、そのままピクリとも動かず風穴から血を流すだけであった。

「……人間」
「何だ、吸血鬼」

 そして二人の狂人は、物言わぬ屍と化した男を見下ろしたままどちらとも無く口を開く。
 彼等を包み込んでいた筈の狂気の熱は、何時の間にやら消えていた。

「興がそがれた」
「……確かに死闘を行うような空気ではないね」

 遊んでいた玩具を取り上げられた子供のような表情で、狂人達は言葉を交わす。
 最強にして最凶の人間は思わず溜め息を零し、最強にして最凶の人外は小さく笑いを零す。

「ならば、私は待つとしようか」
「何をだ」
「貴様と再び合間見える時をだ」

 吸血鬼の言葉に、魔人も口を喜びに歪めた。
 頭からダラダラと血を流しながら、全身を血に染めながら、笑う。

「レガート、それがお前を殺す者の名前だ」
「我が名はアーカード、その挑戦を楽しみにしていよう」

 そうして二人の狂人は背を向けあい、死闘の場を後にする。
 一歩、一歩と離れていきながらも、胸中を狂喜と興奮に詰まらせながら。
 まだ見ぬ未来に、来るべき闘争の時に心踊らせて、二人は一旦の離別を選択した。
 そして互いの姿が生い茂る木々に隠れ見えなくなった時、レガートが膝を折って倒れ伏す。
 限界だったのだ。
 生身で吸血鬼の圧倒的暴力を食らい続け、既にレガートの身体は限界を突破していた。
 単分子鎖ナノ鋼糸も没収された今、神経レベルでの超速治療を行う事もできない。
 だからこそ、倒れてしまう。
 全身を包む鈍痛と激痛に意識を手放した。

(……ク、クク……良いよ、此処は……僕の忠誠に、見合う存在が、二人も……いるなんて……)

 ただ意識を手放す寸前にあっても、レガートの顔に張り付いた笑みは陰る事がない。
 ヴァッシュ・ザ・スタンピード。
 アーカード。
 戦うに値する人間が二人に増えたのだ。
 身体をどれ程の痛みが支配していても、その喜びを消す事だけは出来ない。

(……ナイ、ブズ様……願わく、ば……僕に、チャンスを…………)

 深淵に意識を沈めていくレガート。
 その表情は最後まで笑顔であった。



【一日目/深夜/A-3・森林】
【レガート・ブルーサマーズ@トライガン・マキシマム】
[状態]疲労(大)、全身にダメージ(大)、気絶中
[装備]レガートのワイヤー@トライガン・マキシマム、レガートの拳銃@トライガン・マキシマム
[道具]ヴァッシュの拳銃@トライガン・マキシマム、基本支給品一式、ランダム支給品×0~2
[思考]
1:自分の忠誠に値する敵と戦いたい
2:アーカードと戦う。その為に装備を整えたい
[備考]
※原作12巻・ビースト殺害の直後から参戦しています


【一日目/深夜/A-3・森林】
【アーカード@ヘルシング】
[状態]疲労(小)
[装備]なし
[道具]基本支給品一式、ランダム支給品×0~2
[思考]
1:闘争を楽しむ。
2:ロビンに期待。レガートにもの凄く期待
[備考]
※制限の存在に気が付きました



 ◇



 レガートが倒れ伏す地点より、凡そ十数メートル程の所に一つの死体が転がっていた。
 腹部から夥しい量の血を流し、地面を染め上げている男。
 それは狂人達の死闘に割って入った者の成れの果て。
 もう少し状況を理解していれば、男もこのような目に合わずにすんだであろう。
 心底から『男も』そう思っていた。

「……物語のスタートにしては少々ハードなもんだぜ」

 何処からか声が聞こえたかと思いきや、ピクリとと動き出すものがあった。
 それは既に死んだ筈のもの。
 腹に大きな穴を開け死亡したと思われていた男が、まるで何事もなかったかのように立ち上がった。

 種を明かせば何てことはない。

 男もまた人外の域に存在する者なのだ。
 悪魔と人間の間にできた子ども。ようするに悪魔と人間のハーフ、それが男だ。
 名はダンテ。何でも屋・『Devil May Cry』の店主、凄腕の悪魔狩りにして半魔半人の人外である。

「くそ、やってくれたな。せっかくの一張羅がパーだ」

 身に纏った赤コートの裾を摘まんで愚痴を零すダンテ。
 服よりもまず自分の身体を気に掛けろとも思うが、彼にとっては身体よりも服の方が重要らしい。

「……殺し合い、ね」

 マントに空いた穴を眺めたり、手を通してみたりと、数分ばかり時間を無駄にしたところで、ダンテはようやく面を上げる。
 その脳裏に浮かぶは、この風穴を作った二人の人外。
 多少の油断があったとはいえダンテの後ろを易々と取り、常人であれば致命傷となりうる傷を刻んだ人外達。
 ダンテであっても警戒に値する化け物達であった。

「ハッ、忙しくなりそうだ」

 あれだけの存在がこの会場にどれだけいるのか、ダンテには分からない。
 だが、決意はする。
 何があろうと魂の思うがままに行動しようと、堅く決意する。
 偉大なる父から受け継いだ高貴なる魂の導くままに進もうと、決意する。
 そして、ダンテは前に進もうと足を一歩出す。

「お?」

 だがしかし、此処で彼にとっても予想外の出来事が起きる。
 前に進もうとする意志に反して、身体がパタリと横に倒れたのだ。
 それは制限が影響しての事だった。
 本来の彼ならば腹に穴が空こうと、脳天を銃で撃ち貫かれようと行動に支障はでない。
 その馬鹿げた耐久力と治癒力が、まさに半魔半人を象徴していると云っても過言ではない。
 悪魔と人間のハーフは伊達ではないのだ。
 だがしかし、この殺し合いの場ではそう上手く事は進まない。
 参加者全員に掛けられている『制限』が、彼の耐久力と治癒力を著しく低下させているのだ。

「……とりあえず休憩だな」

 動かない身体に見切りを付けて、ダンテは大人しく目を閉じる。
 いつも通りとまではいかないが、傷の治癒はされている。
 一、二時間も休めれば問題はない筈だ。
 そう考え、ダンテは休息に全霊をかけることにした。

 ―――こうして様々な受難の末にダンテのバトルロワイアルは開始された。


【一日目/深夜/A-3・森林】
【ダンテ@Devil May Cry】
[状態]腹部に貫通傷(治癒中)、気絶中
[装備]フランベルジェ@とある魔術の禁書目録
[道具]基本支給品一式、ランダム支給品×0~2
[思考]
0:気絶中
1:殺し合いを止める。ひとまずは他の参加者と会いたい
2:傷が治るまで休息をとる
3:赤コートの大男(アーカード)と白コートの男(レガート)を警戒
[備考]
※制限の存在に気が付きました
※Devil May Cry3終了直後から参戦しています

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Back:鬼に金棒/永遠の想い 投下順で読む Next:神が下すその答えは―――、
GAME START レガート・ブルーサマーズ Next:超高校級の『希望』がその背中に背負うは超最大級の『厄ネタ』なのか?
ヒカリノソトへ アーカード Next:
GAME START ダンテ Next:When They Cry
ツールボックス

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