70話 オロカモノノタワムレノオワリニ
エリアE-5の学校。
この殺し合い最後の生存者となった6人、坂田銀時、エルフィ、沖田総悟、ダーエロ、リーヴァイ、ブライアン。
一階の教室にて、彼らはついにある事に踏み切ろうとしていた。
ダーエロが自分のデイパックから工具を取り出す。
目の前には廊下に飾ってあった物を外したと思われる巨大な鏡を
支えた坂田銀時とエルフィが立っていた。
数回深呼吸し、ダーエロは鏡を見ながら工具を自分の首にはめられた首輪に当てる。
鏡を持つ二人、そして総悟とリーヴァイは息を飲んでそれを見守った。
◆
数十人の人狼が働くバトルロワイアル管制室。
この人狼達は主催者香取亮太のものでは無く、ある人物から借りたものであった。
しかし、よく忠実に動き、働いていた。
「香取様……」
一匹の黒い毛皮を持った人狼が、様子を見に来た亮太と稲村由布子の元に近付く。
「ん? どうした?」
「それが……」
黒い人狼が何やら深刻そうな顔で亮太に報告する。
それによれば、生き残っていた参加者はエリアE-5の学校にて全滅したとの事だった。
「ふぅん…そうか…それじゃあ、確認部隊を現場によこしておいてくれ」
「はい」
亮太の命を受けた黒人狼は指令を実行すべく立ち去った。
「全滅したの?」
「そうらしいな…同士討ちでもしたか? うーん…あっさり過ぎて…まあいいか。
これも一つの結末だろうな」
約一時間後。
エリアF-3の病院の駐車場には四角い巨大なリフトが出現していた。
主催本部は、病院の地下に存在していたのだ。
確認部隊はこのリフトより、装甲車にて現場であるエリアE-5学校へ向かった。
そして現在は警備兵である、SVT-40自動小銃や打刀で武装した屈強そうな人狼達が
数体配置され、確認部隊の帰りを待っていた。
「はぁ…とっとと終わらないかねぇ」
「あの香取って奴、俺あんま好きじゃないな…まあ、主様の命だし仕方無いけれど」
「俺もだよ…早く帰ってオ○ニーしたい」
「すっかりご無沙汰だよ俺も…はぁ、人間の女の子と一発ヤりたいなぁ。
……やべっ、想像したら立ってきちった」
「おいおいww」
「ハァハァ、もう我慢できん、おい、そこの灰色のお前」
「え? おいら?」
「や ら な い か」
「アアアァッーーーー!!! ァアアァアアアッーーーーーーーーーーー!!!!?」
「オオオオォいいぞぉ、良い締め付けだあ!」
「らめええええ! こいみるくいっぱいれちゃうのおおお!」
「これは酷い」
「これは酷い」
卑猥な会話、そして行為をする人狼兵達。
「あ、来たぞ」
「お」
そして確認部隊の装甲車が帰還する。
「…あれ? 何かおかしくね?」
しかし、様子がおかしかった。
運転手が血まみれになり、更にその運転手を刀で脅す人間の青年の姿が見えた。
「ちょ、あれって――――」
赤毛の人狼兵が言い掛けた瞬間、その人狼兵は装甲車に撥ね飛ばされた。
装甲車は急停止し、ハッチが開く。
異変に気付いた人狼兵達は戦闘体勢を取る。
だが――ハッチから飛び出した二つの影に、その多くが一瞬で斬り伏せられてしまった。
「さあて…楽しいパーチーの始まりと行こうかァ?」
「俺も参加しやすぜ、旦那」
「俺達も混ぜてくれよ」
先陣を切った銀時、総悟に続き装甲車からエルフィ、ブライアン、ダーエロ、リーヴァイが続く。
「おい」
「はっ、はい!?」
銀時は唯一生き残っていた灰色の人狼――先程尻を掘られていた人狼――に、
刀を突き付け命令した。
「てめぇらの親玉の所へ連れて行け」
「か、香取様の事?」
「それ以外に誰がいんだよ」
「わ、分かりました…ああ、ケツの穴が痛い…」
灰色の人狼は激しく掘られた後門の心配をしつつ、リフトの操作盤へ歩き出した。
「にしてもまさか病院に主催者本部があったとは…」
「上手い事駐車場に偽装してあったみたいでさァ」
病院地下主催者本部、リフト室。
「確認部隊はまだ戻らないの?」
「は、はぁ、もうすぐ戻ると思いますが」
確認部隊の帰りが遅い事に白狐獣人の女性稲村由布子は不審に思う。
(嫌な予感…的中したんじゃ…)
「あ、リフトが来ます、稲村様」
「……」
上に昇っていた大型リフトが戻って来た。
だが、それに乗っているのは確認部隊などでは無かった。
「……! あなた、達は!」
「よぉ、あんた、香取の傍にいた白い狐じゃねぇか。
香取さんの所まで案内してくれるか? いや、案内して貰うぜ」
鋭い視線を由布子に向けながら、銀時が刀を突き付けて言い放つ。
「てめぇらの悪趣味なゲームもここまでだ…真選組一番隊隊長、沖田総悟、参る」
「ここまでです…覚悟して下さい」
「お前らのせいでアレックスは…! 許さねぇぞ!」
「ドラゴナスとムシャの無念、ここで晴らしてやる」
「お兄ちゃん…見守ってて」
沖田総悟、エルフィ、ブライアン、ダーエロ、リーヴァイも同様に啖呵を切る。
「あなた達…まさか自力で首輪を…っ!?」
「その通り。まぁ、内部構造を理解すんのは大変だったがな…」
ダーエロがしてやったりといった顔で由布子を見る。
(嫌な予感が的中していた…!? こうなったら仕方無い!)
「総員、奴らを殺せ!」
「おおっ!」
由布子の命により、自動小銃や刀で武装した獰猛そうな人狼兵士が大勢、
銀時達の前に立ちはだかる。由布子は所持していた小型自動拳銃FNM1910を装備しながらも、
戦闘を人狼兵達に任せ亮太の元へと走った。
「行くぜ…てめぇら。この殺し合い…ここでゲームセットとしようや!」
銀時達はそれぞれ得物を携えながら、人狼兵達に突進して行った。
◆
「はぁ、はぁ、何て事だ、何て事だ、くそっ!」
由布子から事の次第を聞かされた亮太は凄まじく焦り、動揺していた。
一体なぜこのような事に。完璧だった、計画は完璧だったはずなのに。
まさか首輪を自力で外され本部を攻撃されるとは。
人狼兵達が応戦しているが、生存者6人は怒涛の如く進撃し勢いは止まらない。
「早く! 早く緊急用脱出装置へ……!」
「亮太……!」
亮太と由布子は主催本部最深部にある、この殺し合いの会場のある、
異世界から脱出する装置の元へと急いだ。
巨大な特殊合金製の扉に辿り着き、亮太は震える手で側に設置されたコンソールパネルを
叩き、複雑なパスコードを素早く、正確に打ち込んでいく。
『音声パスワードを入力して下さい』
「香取亮太!」
『音声照合中………照合完了。香取亮太様、お入り下さい』
ロックを解除した事を知らせる電子音が鳴り響き、扉が開いた。
その奥に広がるのは大空間。中央に円形の筒状の機械が設置されている。
手前にある制御盤に亮太は飛び付き、操作し緊急用脱出装置を起動させる。
筒状の円筒が青白い光を放ち起動した事を知らせる。
「よし……! 早くあの中に――――」
香取が由布子の手を引っ張って円筒の中に行こうとした。
だが。
ダァン! ダァン! ダァン!
三発の銃声が響いた、
一発は亮太のこめかみを正確に撃ち抜いた。
二発は由布子の胴体に命中し、致命傷を負わせた。
「うぐ……あ……」
吐血しながら、由布子は自分と亮太を狙撃したその男を睨んだ。
「……やれやれ、失敗したか。まあ、そうなる可能性も考えていたけどさ」
拳銃を片手に、虫の息となった由布子に近付くのは、
取り立てて特徴の無い、人間の若い男。
だが、彼こそが、亮太と由布子に協力し、大勢の人狼兵を貸し出した、
言わばこの殺し合いの黒幕とも言うべき存在。
「……あなたも…悪趣味よね……創造主……◆ymCx/I3enU」
「クク…大勢の人間や獣人が、たった一つの椅子を巡って殺し合うなんて、
とても面白い催しだろ? 俺はその魅力に取りつかれてしまったんだよ……。
俺一人で出来なくも無いんだけど協力者が必要な時もあるからね。
お前らもその内の一人、いや二人って訳だ。
……喋り過ぎたかな。俺はこれで失礼するよ。この殺し合いももう終わりだ。
お前ももう死ぬ……後から来る生き残りのためにそこの装置の説明でもしてやれよ。
遺言代わりにな……じゃあ、これで。もしアレだったら別の世界で会おう」
そう言い残すと、男――◆ymCx/I3enUは、文字通り「姿を消した」。
「……」
数分もしない内に、身体中返り血塗れになった銀時一行が緊急脱出室に到着した。
「! どういう事だ、こいつは…!?」
頭を撃ち抜かれ脳漿を床に撒き散らしている主催者、香取亮太と、
血塗れになり虫の息で横たわっている由布子の姿を見付け、
銀時達は驚いた表情を見せる。
「…おい、何があったんだ?」
ブライアンが由布子に駆け寄り尋ねる。
「…天罰…かな…」
「え?」
「…そんな事より、あれ……を」
息も絶え絶えの様子で由布子が脱出装置を指差す。
「…あれに…入れば…あなた達は帰れる…わ……ごほっ……」
「! お、おい…!」
いかに主催側の人物とは言え、目の前で消えようとする命を放っておける程、
ブライアンは、いや、銀時、総悟、ダーエロ、エルフィ、リーヴァイは薄情では無い。
「………りょう……た……いま……そっち……に………」
それが由布子の最期の言葉となった。
白い狐の女性は、目を開けたまま、愛する人物の後を追った。
とても釈然としない終わり方ではあったが――――。
「……これで、終わりだ。この殺し合いは、終わったんだ。
…俺達は、生き残った」
銀時が亮太と由布子の亡骸を見下ろしながら言った。
【香取亮太@オリキャラ 死亡】
【稲村由布子@オリキャラ 死亡】
【ゲーム終了】
【坂田銀時@銀魂】
【沖田総悟@銀魂】
【ブライアン@VIPRPGシリーズ】
【ダーエロ@VIPRPGシリーズ】
【エルフィ@自作キャラでバトルロワイアル】
【リーヴァイ@オリキャラ】
【以上6人、バトルロワイアルより生還】
最終更新:2010年11月19日 22:16