愚者の舞

58話 愚者の舞


思えば俺や新八、神楽は、いつ死んでもおかしくないような戦いを幾つも繰り広げてきたな。
えーと何だ…どこかの星のバカ皇子のペットに新八が食われそうになったり、
そのバカ皇子のコレクションの一つだったえいりあんに神楽が殺されかけたり、
変態人斬りの似蔵の野郎の紅桜に俺が殺されかけたり……他にも色々あるが、
枚挙に暇がねえからこの辺でやめとこう。詳しく知りたい奴はコミックスかアニメのDVDを買え。

話が逸れちまったな…まあそんなこんなで、幾つもの死線を掻い潜ってきた。
それでも、俺と新八、神楽は怪我こそ負う時はあったが、生きて帰れた。
だけど俺も馬鹿じゃねえ、万が一の時の覚悟もしておいてあるさ。

だが…その覚悟もアテになりゃしねぇ。

実際に、新八の死体を見た時なんかは、な…。

「新八…」

市街地の路上の上に新八は血塗れで横たわっていた。
背中にある刺し傷が致命傷になったんだろう。
トレードマークの眼鏡は割れて離れた所に転がっていた。

「銀さん……」

隣にいる灰色狼娘エルフィが心配そうに声を掛けてくる。

「新八…全く、こんな知らねぇ所でくたばりやがって。
どーすんだ、万事屋の雑用。代わりなんてそうそう雇えねえぞ。
って言うか、姉貴とか神楽とか、定春とか、お前の大好きなお通ちゃんとか、
文通相手の…きららちゃんだったっけ? 泣いちまうだろ。
まあ俺は泣かないけどね」

……。

……。

静かだ。当然か。
いつもならこの辺で鋭い突っ込みが入ったりするんだがな。

……。

……。

「エルフィ…手伝ってくれるか」
「え? 何を…」
「…新八をこのまま野ざらしにしておきたくねぇんだ。
埋葬はちと無理だろうが、どこかの建物の中に……」
「…分かりました」

俺とエルフィの二人がかりで新八の亡骸を近くの適当なビルの中へ運ぶ。


……新八。俺は絶対、あの香取って野郎をブン殴って、このクソったれな殺し合いから脱出する。
お前の眼鏡は悪いが預からせて貰うぜ。
……お前の事、生きて帰ったら、伝えないといけねぇからな。
神楽に。そしてお前の姉貴に。




銀さんの知人である新八さんの死体をビルの中に安置した後、
私と銀さんはビルから再び道路に出た。
銀さんの手には新八さんの壊れた眼鏡が握られている。

「すまねぇなエルフィ」
「い、いえ…」

銀さん、表面では平静に見えるけど、本当は凄く悲しんでいる。
何となく分かる。銀さんよく話していたから、新八さんの事。
「ダメガネ」とか「眼鏡が本体」とか色々酷い事も言っていたけど、
とても信頼している、家族同然の大切な人だって。
私は……こんな時どう接して良いか分からない。駄目だな私……。

「それじゃ行くか」
「はい」

新八さんの眼鏡を懐にしまい、銀さんが道路を進み始め私も続いた。

……ン……ダァン……。

「!」
「今の…」
「銃声だな…」

しばらく歩いた時、遠くから銃声らしき音が響いてきた。
そしてその音はどんどん近くなる。
銀さんと私は身構えた。
そして、前方の、北方向へ続く曲がり角から一人の人影が。
私と同じ制服――灰色の猫族の女の子――テトさん!?

「テトさん!?」

私は思わず声をあげた。するとテトさんも私に気付いたようでこっちに向いた。

「た、助けて!」


ダァン!


一発の銃声が響いて、テトさんが倒れた。
そしてテトさんが現れた道からもう一人、背中に翼を持った、
青い髪の少女が拳銃らしき物を携えながら歩いてきた。

「うぐ…ああ……やめて…やめて……!」

苦しむテトさんにその少女は銃を突き付け――――。

「! よせ!」
「駄目―――!」


ダァン! ダァン!


二発の銃声と同時にテトさんの身体から血しぶきがあがり、
テトさんは大量の血を吐いて動かなくなった。
唐突の事だった――私も、多分銀さんも、助けようと思った時には手遅れだった。




身体中から感覚が消えて行く。寒さにも似たこの感じは――死。
私、死ぬんだ…嫌だ…死にたくない……。
やっとクラスメイトに会えたのに……。

こんな事になるなら……健康センターになんて寄らなければ良かった。

まさか、殺し合いに乗った人に襲われて、追撃されるなんて……。


ラト……せめて……あなたに想いを………伝えたかった…………。


もし………もし………生まれ変われるの…なら………―――――




「てめぇ…!」

銀時は怒りの表情を浮かべながら、黒作大刀を鞘から抜き構える。
エルフィも自動拳銃インベルM911の銃口を前方の半竜人の少女――ドラゴナスに向けた。

「銀さん……気を付けて下さい」
「分かってる…」
「……銀さん?」

ドラゴナスがエルフィが隣の銀髪天然パーマの侍の男に向かって言った呼称に引っ掛かるものを感じる。
どこかで聞いたはずだ。確かあれは―――。

「…そうか、あんたが銀さんか」
「…お前、何で俺の名前を知ってるんだ?」
「……あの眼鏡の少年が言っていたからな」

それを聞いた瞬間、銀時の中で何かが弾けた。

「……おい」
「何だ?」

明らかに雰囲気が変わっている銀髪の侍の様子が気になりつつも、
ドラゴナスは銀時の呼び掛けに返事をした。
銀時は静かながらも、激しい怒りを宿した瞳をドラゴナスに向け、問いを投げかける。

「……その眼鏡の少年ってのは……青と白の着物着た、地味な感じの奴か」

その質問に対するドラゴナスの答えは。

「そうだ。お前の知り合いか?」

肯定。

この瞬間、ドラゴナスの運命は確定した。

「お前が――――」




「お前が新八を殺したのかアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」




静かな市街地に、血の雨が降った。




家族の元に帰りたい。家族にもう一度会いたい。

それだけのために、俺は見知らぬ人物を四人も手に掛けた。

優勝して、生きて帰るために。

でも、間違ってるなんて事は、分かってた。

そんな事して帰っても、ハーたんやハーナス、チビドラ、ハー妹は喜ぶ訳無いって。

分かってたんだ。

分かってた、はずなのに。



ハーたん、ハーナス、チビドラ、ハー妹。ごめんよ。もう俺帰れないや。

ムシャ、ダーエロ。お前らまだ生きてるんだろ。だったら勝手だけど頼まれてくれるか?



――――頼む。どうか。絶対に。生きて。帰っ





肉塊同然となったドラゴナスの死体の傍で、返り血を浴びた銀時が佇んでいた。

その後ろで、事の一部始終を目撃したエルフィが、腰を抜かし震えていた。

街は再び静けさを取り戻した。



【テト@自作キャラでバトルロワイアル  死亡】
【ドラゴナス@VIPRPGシリーズ  死亡】
【残り18人】



【一日目/朝方/B-5市街地】
【坂田銀時@銀魂】
[状態]肉体的疲労(中)、悲しみ、香取亮太に対する怒り、返り血(大)
[装備]黒作大刀
[所持品]基本支給品一式、イチゴ牛乳(3、2本消費)、志村新八の眼鏡(破損、使用不可)
[思考・行動]
 基本:殺し合いからの脱出。そのために首輪を何とかしたい。
 1:……。
 2:エルフィと行動。 仲間を集う。
 3:真選組の二人を捜す。
[備考]
 ※原作かぶき町四天王篇終了後からの参戦です。
 ※エルフィのクラスメイト(森屋英太、銀鏖院水晶、ノーチラス、フラウ)と、
 ブライアンの仲間、知人(アレックス、リリア、ドラゴナス、ダーエロ、ムシャ、クレアス)
 の情報を得ました。

【エルフィ@自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]腰が抜けている、坂田銀時に対する畏怖の念
[装備]インベルM911(7/7)
[所持品]基本支給品一式、インベルM911マガジン(3)
[思考・行動]
 基本:殺し合いには乗らない。死にたくない。
 1:ぎ、銀さん……。
 2:銀さんと行動。 仲間を集う。
 3:クラスメイトと合流?
[備考]
 ※本編死亡後からの参戦です。
 ※志村新八、土方十四郎、沖田総悟の三人と、ブライアンの仲間、知人
 (アレックス、リリア、ドラゴナス、ダーエロ、ムシャ、クレアス)の情報を得ました。



※B-5、A-5一帯と周辺に銃声が響きました。
※B-4市街地路上に放置されていた志村新八の死体は放置されていた場所のすぐ近くの
ビル内に安置されました。
※B-5市街地交差点にテトの死体、シグP210(0/8)、テトのデイパック(基本支給品一式入り)、
ドラゴナスの死体、コルト アナコンダ(2/6)、ドラゴナスのデイパック(基本支給品一式、
.44マグナム弾(12)、フランベルジェ、ファイアクリスタル(2)入り)が放置されています。



マコトノヤイバ、アヤカシノヤイバ 時系列順 涙を拭いて
マコトノヤイバ、アヤカシノヤイバ 投下順 涙を拭いて

背筋伸ばして生きていけ 坂田銀時 修羅場乗り越え今に至る
背筋伸ばして生きていけ エルフィ 修羅場乗り越え今に至る
「兄を超えられる弟はいない」 テト 死亡
父よあなたは ドラゴナス 死亡

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最終更新:2012年07月16日 19:15
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