闇より来る者

29話 闇より来る者


遊園地を出て、随分歩いたが、今自分はどこにいるのだろうか。
住宅街の道路を歩きながら、狐獣人の女性、桜川あいりは思った。
振り返るが、人影は見当たらない。あの眼鏡の少年は追い掛けてはいないようだ。

「そうだ、支給品……」

まだデイパックの中身を見ていなかった事を思い出す。
あいりはその場にしゃがみ込み、デイパックを開け中身を漁った。
そして出てきた物はマチェットナイフ。
鞘から抜き、装備するあいり。殺し合いはしたくないが、
襲われた時に自分の身を守るには武器は必要だ。

「……」

少し疲れたため、遊園地の時と比べればだいぶ冷静になった脳であいりは考える。

(あの子、本当に殺し合いに乗っていたのかな…)

遊園地で見掛けた眼鏡の少年が殺し合いに乗っていると思ったのは、
銃声が聞こえた後、物陰から、首の辺りから血を流して地面に伏している
竜と、右手に拳銃らしき物を持ち傍に立っている少年を目撃したためだが、
今考えてみると、それだけで少年が殺し合いに乗っていると決め付けるのは
尚早では無いだろうか。

もしかしたら、先に竜が襲い掛かり少年は止むを得ず反撃したのかもしれないし、
何らかの事故だった可能性もある。

「いけない…どうかしてる私」

殺し合いという異常状況に置かれ、正常な判断が難しくなっているような気がする。
このまま自分は狂ってしまうのではとあいりは恐怖した。

「と、とにかく、これからどうしよう…どこかに隠れようかな……ん?」

自分の左手方向に伸びる道をふと見た時、あいりはその道の先に人影を見付けた。
どうやら狼獣人の学生のようだ――右手に抜き身の刀を持っている。
一瞬、逃げ出そうとも思ったが、先刻の少年の件も考え、
今度は落ち着いてまず話し掛けてみる事にした。

「あ、あの……」

だが、残念な事にあいりの判断は誤っていた。
今度の相手は脇目を振らず逃げるのが正解だった。

「…二人目、見付けた」
「え? 何……」

狼の青年が呟いた言葉は、あいりは良く聞き取れなかった。

次の瞬間、狼青年――ノーチラスは物凄い速さであいりに向かい突進した。



ズルッ。

心臓と背骨を刺し貫かれ、事切れた狐の女性の身体から、
薄らと、紫色の光を帯びた刀――薄桜鬼を抜き取るノーチラス。
抜いた瞬間、糸の切れた操り人形のように、狐女性――あいりの身体は地面に崩れ落ちた。

「美味いか? 薄桜鬼よ……? ククク……」

血に濡れた刀身をノーチラスは愛おしそうに撫でた。
そして、刀身を汚していた血が見る見る内に乾き、無くなっていく。
いや、乾いていくと言うより「吸われている」。

「そうか、美味いか…たっぷり吸えよ…?」

ノーチラスは満足そうにそう言うと、薄桜鬼を携え、北の方へ向かい始めた。

エリアG-1のカラオケ屋で、髭面の巨漢を薄桜鬼で斬り殺してから、
ノーチラスの精神は薄桜鬼に支配されてしまっていた。
彼自身は自覚していない。いや、自覚出来ないようになっている。
なぜ自分が初めて手に取った刀に血を吸わせるために行動しているのか、
ノーチラスは全く疑問に思わない。
髭男が持っていたデイパックの中から、トカレフ式自動拳銃と予備のマガジンを手に入れ、
自分のデイパックに押し込んだ後、ノーチラスは刀が発する意思によって、
薄桜鬼の生贄になる参加者を捜し回るようになった。

ちなみに、拳銃を拾ったのは僅かに残っているノーチラスとしての意思による物である。
薄桜鬼自身は銃など使わせるつもりは無かった。
あくまで薄桜鬼そのもので獲物を斬らなければ、意味が無いのだ。

「もっと、もっとだな……もっと血が要る……」

うわ言のように呟きながら、ノーチラス――薄桜鬼は獲物を捜す。


数分後。ノーチラスが立ち去った現場に、一人の少年が訪れた。

「こ、この人は……」

少年――野比のび太は、血溜まりの中に倒れ息絶えている、
狐獣人の女性の死体を見て愕然とする。
服装からして、先刻遊園地で自分が誤って竜を殺した所を目撃した、
あの狐の女性に間違い無かった。
周囲に漂う血の臭いや、歩道に広がる血が固まっていない事を見るに、
殺されてからまだ時間が経っていないようだった。

「何て事だ…」

知り合いでは無かったが、つい数時間前まで生きていた人物が今、
物言わぬ屍となっているのは良い気分では無い。
恐らくこの女性は自分が殺し合いに乗っていると誤解していただろう。
だが、女性が死んだ今、誤解を解く必要も無くなった。
決して嬉しい事、でも無い。

「ごめんなさい…」

のび太は女性の死体をそのままにしておくしか出来なかった。
もしこの状況をまた誰かに見られたら、この女性を殺したのは自分だと、
再びあらぬ誤解を招く可能性もある。流石にそれはのび太も避けたかった。

「…ジャイアン、スネ夫、静香ちゃん…」

ますます不安になってくる、この殺し合いに呼ばれた三人の友人の事を案じつつ、
のび太は北の方角へ道路を歩き始める。



のび太は気が付かなかった。
すぐ近くの、別の道路に、彼自身が良く知る、
ピンク色の服を着た少女の死体が転がっていた事に。



【桜川あいり@オリキャラ  死亡】
【残り41人】



【一日目/黎明/G-3住宅街】
【ノーチラス@自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]精神被支配、現在は冷静
[装備]妖刀「薄桜鬼」
[所持品]基本支給品一式、トカレフ式自動拳銃(8/8)、トカレフのマガジン(8×3)
[思考・行動]
 基本:薄桜鬼に血を与える。
 1:獲物を捜す。
 2:クラスメイトは…。
[備考]
 ※本編死亡後からの参戦です。
 ※妖刀「薄桜鬼」の力で身体能力が飛躍的に向上しています、が、
 その内に身体が悲鳴を上げる可能性があります。
 ※妖刀「薄桜鬼」により精神を支配されていますが、ある程度自我はあります。
 但し、薄桜鬼に基づいて行動するようになっています。

【野比のび太@ドラえもん】
[状態]健康
[装備]グロック26(11/12)
[所持品]基本支給品一式、サーベル、蜘蛛糸玉(3)
[思考・行動]
 基本:殺し合いからの脱出。友達と合流する。
 1:ジャイアン、スネ夫、静香ちゃん、大丈夫かな…。
[備考]
 ※桜川あいり(名前は知らない)の死亡を確認しました。
 ※源静香の死体が近くを通る別の道路に放置されていますが気付いていません。
 ※ノーチラスから後方にかなり離れた場所を移動しています。



※G-3市街地、源静香の死体がある場所とは別の道路に、
桜川あいりの死体、マチェットナイフ、桜川あいりのデイパック(基本支給品一式入り)が
放置されています。



≪支給品紹介≫
【トカレフ式自動拳銃】
トカレフTT-33。1933年に旧ソ連軍制式拳銃となった。
徹底的な簡略化(安全装置さえも)を図り、極寒など過酷な環境下でも、
確実に作動する堅牢さを誇る。貫通力の高い弾薬を使用する。

【マチェットナイフ】
主に農業や林業で用いられる大型の刃物。
鉈のように重量を利用して叩き切るといった用途に使う。



バーニングブライアン 時系列順 もう聞く事叶わぬ彼の歌声
バーニングブライアン 投下順 もう聞く事叶わぬ彼の歌声

時と場合によっては誤解されるのは致命的 桜川あいり 死亡
時と場合によっては誤解されるのは致命的 野比のび太 疾走スル狂刃
ゴメス… ノーチラス 疾走スル狂刃

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最終更新:2010年10月02日 20:49
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