10話 ゴメス…
エリアG-1市街地、一角にあるカラオケ屋。
「やめろおおおお! やめてくれええええええ!!」
茶色の毛皮を持ったノーチラスは半べそをかきながら必死に懇願していた。
殺し合いで死んだと思ったら、今度は別の殺し合い。
身体の傷は癒え、服も元通りになり、自分と同じく殺し合いに参加させられた、
自分のクラスメイト数人の姿も確認出来た。
首には爆弾付きの首輪もはめられ、生き返ったとは言え、状況は好転していない。
ノーチラスは主催者である香取亮太がルールの説明をしている時から、
既に殺し合いを潰そうと決意していた。
やる事は変わらない。今度は自分の欲望でヘマをしたりはしない。
超能力は使えなくなっているようだがそんな事は問題では無い。そもそも、
殺し合いで役に立つような能力でも無かったので未練は然程無い。
(今度こそは、自分がやるべきことをやる!)
そう、ゲーム開始前、ノーチラスは決心していた。
だが。ゲーム開始早々、ノーチラスはカラオケ屋にて髭面の巨漢に追い回される事になった。
「悪いが、いつ死ぬのか分からんのでな。楽しませて貰うぞ」
ゴメスと名乗った男は、ズボンを下ろし、いきり立った己の巨大な分身を露わにする。
黒々としたそれは、さながら肉の凶器。大砲とも呼べる代物である。
それを見せられたノーチラスの恐怖はいよいよピークに達した。
このままでは、間違い無く、自分はあの肉槍で尻を貫かれてしまう。それだけは嫌だった。
だが、現在位置はカラオケ屋の個室。防音設備もバッチリ整っているだろう。
逃げ場が無い。大声で叫んでも外に届く事は無い。
万事休す。詰み。お終い。
ノーチラスの脳裏にそんな絶望的な単語が浮かんだ。
「う、うわあ、あああ」
ノーチラスは自分のデイパックの中を必死に漁る。
何とかしなければ。焦りと恐怖でまともに思考が働かない頭でそう考える。
そして、基本支給品を掻き分け、ノーチラスは刀の柄らしき物を握り――――――。
何が起きたのか、ゴメスは分からなかった。
分かっているのは、自分の胸元に真一文字の深い傷が入り、鮮血がほとばしっている事。
そして、今から性的な意味で食べようと思っていた、学生服姿の茶色い狼獣人の青年が、
刀身に血の付いた刀を横に突き出すような体勢で静止している事。
身体が、熱い。痛いのでは無く熱い。
狼青年の目と自分の目が合った。
先程までの怯え、混乱したそれでは無く、何か、恐ろしい、狂気の光を宿した目だった。
狼青年がなぜこんなにも豹変を遂げたのかは、分からない。
知ろうとしてもそんな時間は、ゴメスには残っていなかった。
殺し合いという状況で、いつ死ぬか分からないと言う事から、欲望に忠実になった結果がこれだ。
因果応報、自業自得と言う四文字熟語がよく似合うだろう。
間もなく自分は死ぬ、ゴメスはそう感じ取った。
アレックス達はこの殺し合いでどう動くのだろう、きっと殺し合いを潰す方向で行動してくれる、と信じたい。
もうアレックスの尻を掘る事も出来ない。
もう、何も出来ない。
悔いはあった。
沢山あった。
狼青年の尻を掘るより重要な事が。
成さねばならない事を今更ながらにいくつも見つけてしまった。
しかし、もう――
「ワシも焼きが回ったな……」
それが最期だった。
瞼を閉じると、ゴメスの身体は静かに活動を停止した。
ゴメスの意識は、急速に闇に捕われていった。
「くくく……ふははははは……ざまあ見やがれ…俺の尻を掘ろうとするからだ…変態が」
息絶えた髭面の巨漢の死体を見下ろしながら、明らかに先刻までとは雰囲気の違う
ノーチラスが言い放った。
「ああ、何だろうな、凄く楽しい気分だ……こんな気分、初めてだ……ふふふ」
どこか視線は遠くを見詰め、薄ら笑いを浮かべるノーチラスは、
普段の彼を知る者なら即座に異常だと思うだろう。
右手に持っている刀の刀身は、ぼうっと、紫色の光を放っていた。
しかし、持ち主のノーチラスはそれを気にする様子は全く無い、そればかりか、
刀身に付いた血を美味しそうに舐め始める。
「美味い…血の味…血ってこんなに美味かったんだな……。
もっと……もっとだ……もっと血を吸わせないと……こいつに……」
愛おしそうに、紫色に光る刀を見詰めるノーチラス。
「薄桜鬼……これからお前に、もっと血を吸わせてやるからな。
く…くくく…ふははは…あははははははははははははははははははははははははは」
刀の操り人形と化した狼は、狂ったように笑い続けた。
【ゴメス@VIPRPGシリーズ 死亡】
【残り47人】
【一日目/深夜/G-1市街地カラオケ屋】
【ノーチラス@自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]精神被支配、高揚感
[装備]妖刀「薄桜鬼」
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]
基本:薄桜鬼に血を与える。
1:あははははははははははははははははははははははははははははは
2:クラスメイトは…。
[備考]
※本編死亡後からの参戦です。
※妖刀「薄桜鬼」の力で身体能力が飛躍的に向上しています、が、
その内に身体が悲鳴を上げる可能性があります。
※妖刀「薄桜鬼」により精神を支配されていますが、ある程度自我はあります。
但し、薄桜鬼に基づいて行動するようになっています。
※G-1市街地カラオケ屋の個室の一つにゴメスの死体及び所持品が放置されています。
≪支給品紹介≫
【妖刀「薄桜鬼」】
装備した者の精神を操り、身体能力を限界まで向上させ自分に血を捧げさせるための
殺戮マシンに変貌させる妖刀。刀身はうっすら紫色の光を帯びており切れ味も抜群。
薄桜鬼(はくおうき)の持ち主はやがて身体が壊れ、死に至ると言う。
その支配から救うには、刀を持ち主から引き剥がすしか無い。
名前の元ネタは某漫画及びアニメのタイトルから。
ゲーム開始 |
ノーチラス |
闇より来る者 |
ゲーム開始 |
ゴメス |
死亡 |
最終更新:2010年09月23日 20:34