第一話≪絶望青年と傍観少女≫
C-4の森。
鬱蒼と茂った木々の間から、朝日の光が差し込んでいる。
黄色いTシャツに濃い緑色の半ズボン姿の青年――中山淳太（なかやま・じゅんた）は
激しく混乱していた。
昨日、彼は出演している――とは言っても、まだモブシーンのみだったが――ドラマの撮影を終えた後、帰宅し自分の寝床で就寝したはずだった。
しかし目覚めた時には自分は大勢の人が押し込められた古い木造の教室にいて、
首には謎の首輪。
スピーカーから男の声が聞こえ「殺し合いをしてもらう」と宣言されたのだ。
そして一人の中年の男が首輪を爆破され、殺された。
そして気絶させられ、目が覚めたら今度は黒いデイパックと共に森の中だ。
再び目覚めてから数分経っていたが、淳太はまだ混乱していた。
「有り得ないって。有り得ないって。有り得ないって。有り得ないって。
何で殺し合いしなきゃならないんだ？ 俺が何したって言うんだよ」
自分はただの俳優だ。しかもまだドラマのモブシーンにしか出させて貰えないような駆け出しの。
どう考えても戦闘とは無関係の日常を過ごしてきた。
「！ そうだ、支給品……」
再び目覚めた時に傍に落ちていた黒いデイパックの事を思い出し、
淳太はデイパックを開け、中身を漁った。
名簿を見ると、テレビや雑誌等でよく見かける有名プロ野球選手や世界最高齢の女性と言った有名人の名前が幾つか書かれていたが、別に友人でも知り合いでも無いのでどうでも良かった。
地図を広げると、どうやらバトルロワイアルの会場は周囲を海に囲まれた小さな島であるらしい事が分かった。
現在位置を確認しようとしたが、周囲は木。木。木。木。木ばかりの森。
目印になるような物が無く、諦めた。
他に懐中電灯、懐中時計、小さなメモ帳と赤と黒の二色が一緒になったボールペン、
コンパス、2リットルペットボトルに入った水が二つとコンビニおにぎり、サンドイッチといった食料。
そして、最後に出てきた二つの品。
袋に詰められた割り箸（50本）と、タコ糸が出て来た。
「……………………………………………………（*^_^*）」
しばらく笑顔で沈黙する淳太。
しかし突然、鬼のような形相に変わり、割り箸とタコ糸を投げ捨てた。
「あーーーーもう無理ぃ！！ 無理無理無理！！ 俺終わった！ 俺＼(^o^)／！！
生き残れる要素が感じられません本当にありがとうございました！！」
あまりに貧弱過ぎるランダム支給品を目にし、淳太の心は絶望感に支配されてしまった。
大声を張り上げ喚き散らす淳太は、今自分が行っている行為が大変危険な行為であるという事に
気付くはずも無かった。
絶望感の余り叫んでいる淳太の近くで、その様子を呆然としながら見つめている一人の人物。
白と水色のセーラー服を着た、水色ショートヘアの少女、桂川八重（かつらがわ・やえ）は、
移動中に見つけた青年の様子を茂みに隠れながら観察していた。
右手には古めかしいデザインのリボルバー銃が握られている。
（関わってもロクな事無さそうね……さっさと行こう。
しかしあの人……あんな事してたら絶好の的だって、分からないのかな）
いつ、どこから襲い掛かられるか分からないといった状況では、
みだりに大声を上げたりするのは自殺行為以外の何物でも無い。
どうもあの青年は混乱状態にあるようで、恐らくそういった判断が困難になっているのだろう。
だが、あの青年がどうなろうと、彼女の知った事では無かった。
（それより早くここを離れた方がいいわね。
あの大声で、やる気になってる人が寄ってくるかもしれないし）
八重は坂を滑るように下りながら、その場を離れた。
（絶対、生き残ってみせる。簡単に死んだりするもんか……）
【一日目/明朝/C-4・森】
【中山淳太】
[状態]：健康、絶望
[装備]：無し
[所持品]：基本支給品一式
[思考・行動]
1：俺＼(^o^)／！！ 俺＼(^o^)／！！ 俺＼(^o^)／！！！
2：死にたくない。
3：助けて下さい！！ 助けて下さい！！
[備考]
※C-4一帯に中山淳太の大声が響きました。
【桂川八重】
[状態]：健康
[装備]：S＆Wスコフィールド（6/6）
[所持品]：基本支給品一式、45LC弾（60）
[思考・行動]
基本：何が何でも生き残る。手段は問わない。
1：仲間になってくれそうな人を探す（生存率アップのため）。
2：やる気になっている人と出くわしたら可能な限り逃げるかやり過ごす。
3：進んで殺し合う気は無いが、必要とあらば……。
※C-4のどこかに割り箸（50本入り）とタコ糸が放置されています。
最終更新：2009年09月11日 21:08
