食物連鎖

4話 食物連鎖


満月の光が照らす深夜の市街地。
一頭のサラブレッド種の牡馬がアスファルトの道路の上をとぼとぼと歩いていた。
首には黒い首輪、背中にはデイパック。
この殺し合いの参加者の一人、元競走馬のシップウジンライである。

(殺し合いなんて……何でそんな事しなくちゃいけないんだよ)

心の中でシップウジンライが呟く。
支給品を確認しようにも、馬である彼はデイパックが開けられない。
それ以前に喋れないため、他の参加者と遭遇しても意思疎通が図れるかどうか。

(碓井さんとか、碓井さんの友達の人もいるみたいだけど……)

開催式の広間にいた、かつて自分を薬で欲情させ、自らの尻を掘らせた、
好色家だが好人物の碓井守夫とその友人達の事を思い出す。
特に碓井守夫とはその後、かなり親密となっているため、この殺し合いにおいて、
信用出来そうな人物ではあった。

(碓井さん達を捜そうか…うん、そうしよう)

一人ぼっちで心細いシップウジンライは、碓井やその友人達の姿を捜そうと決めた。
その時、背後に何かが降り立った。

「ブルルッ!?」

気配を感じ、シップウジンライが振り向くと、そこには、
大鷲と獅子を合わせたような外見の、翼を持った魔獣がいた。
その魔獣の外見に、シップウジンライは覚えがある。

(確か、グリフォン、だっけ? そう言えばあの開催式の時にも見たような……)

「おお、これは美味そうな馬だ……」

人語を話しながら、グリフォンはご馳走でも見付けたような目でシップウジンライを見詰め、
舌舐めずりをする。
シップウジンライは知る由も無いが、グリフォンの大好物は、馬なのだ。

(あ、あれ、やばいかな。逃げた方が……)

シップウジンライがそう考えた時にはもう遅かった。

「頂きます」



バリッグシャガツガツガツブチッバリバリバリッ………。



深夜の市街地に、形容し難い、生々しい音が響いた。



数十分後。

「ふぅ…美味かった」

ほとんど骨だけになった牡馬の死体の傍で、口元や胸元、両前足を血塗れにした、
雄のグリフォン――ロディオンが少し膨れた腹を擦りながら満足そうに言う。

「さて……食事は取ったが、これからどうするかな。
取り敢えず、ヘルムートとマレーネの奴でも捜すか……」

殺し合いに呼ばれている二人の知人の名前を呟き、
ロディオンは牡馬が持っていたデイパックと、

「ん………首輪……」

何と無く、転がっていた血と脂塗れの参加者用の首輪を拾い上げた。



【シップウジンライ  死亡】
【残り  53人】



【一日目/深夜/A-8市街地】

【ロディオン】
[状態]健康、血塗れ、満腹
[装備]無し
[所持品]基本支給品一式、不明支給品(未確認)、シップウジンライのデイパック、
 シップウジンライの首輪(血と脂塗れ)
[思考・行動]
 基本:殺し合いをする気は無い。ヘルムートとマレーネを捜す。
 1:襲われたら戦う。
[備考]
 ※特に無し。



※A-8市街地にシップウジンライの死体が放置されています。




≪キャラ紹介≫
【名前】シップウジンライ
【年齢】人間で言えば20代半ば
【性別】雄
【職業】乗馬用の馬(元競走馬)
【性格】至って温厚
【身体的特徴】茶色のサラブレッド種の馬。肉付きは良い
【服装】無し
【趣味】走る事
【特技】やっぱり走る事
【経歴】競走馬だったが怪我により若くして引退。乗馬用の馬として余生を送っていた。
 一年程前、飼育されている牧場に侵入した碓井守夫、狼我秀秋、二宮優光に、
 欲情させられる薬を飲まされ、碓井守夫の尻を掘ってしまった。だが以来、
 碓井守夫と親密になった
【備考】足を怪我したが、一応走る事は可能

【名前】ロディオン
【年齢】30歳
【性別】雄
【職業】野生のグリフォン
【性格】飄々としている、何気に残虐
【身体的特徴】白い大鷲の頭と翼と前足、獅子の身体と後足、尻尾を持ったグリフォン
【服装】無し
【趣味】毛繕い、水浴び
【特技】翼を使っての飛翔、風を起こす事が出来る
【経歴】冒険者との交戦歴あり
【備考】三十路だと言うのに未だに独り身なのでそれを気にしている。
 ドラゴンのヘルムート、エルフのマレーネの二人の友人とよく行動している




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ゲーム開始 シップウジンライ 死亡
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最終更新:2010年08月28日 12:18
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