3話 人は案外、簡単に一線を超える
エリアB-3に存在するショッピングモールの屋上。
灰色と白の毛皮を持った狼獣人の青年、狼我秀秋(おおか・ひであき)は、
室外機の陰に隠れ、デイパックの中身を漁っていた。
「バタフライナイフか。武器にはなるな。それと……」
銀色に光るバタフライナイフの他に、彼の支給品は二つあった。
「うぉ……こいつは馬の○ン○型デ○ルドじゃねえか。
碓井さんもこんなの使ってたな……ローションまである」
黒色の硬いゴム素材で作られた、牡馬のいきり立ったナニを模した玩具と、
内容量が多めのローションが出てくる。
「後で使うか。デカい事は良い事だ」
馬型動物デ○ルドとローションをしまい、バタフライナイフを装備する秀秋。
「しかし、殺し合いか……現実感湧かねえけど」
昨夜は特に変わった事は無かった。
いつものようにハッテン場仲間でありこの殺し合いにも呼ばれている、
虎獣人の長野高正、人間の暑苦しいオヤジ碓井守夫と殺し合いに呼ばれていないもう一人に、
夕方から深夜まで輪姦して貰い就寝した。
だが、一体いつどうやって自分はこの殺し合いの場に連れて来られたのか。
全く記憶が無い。
「さて、どうしようかな……」
秀秋は尻尾を振りながら思案する。
殺し合いの参加者の中で知っている者は何人かいる。
ハッテン場仲間の長野高正、福井知樹、鐘上真生、二宮嘉光。
ハッテン場のある公園に住み付く野良犬のハヤト。
元競走馬で今は乗馬用の馬として牧場暮らしのサラブレッド種の牡馬、シップウジンライ。
自分の年の離れた従兄弟で首都特務警察隊にいる狼我真夕美。
名簿には他にも二人自分と同じ名字の者がいたが覚えは無い。
知り合いは多い。この全員と殺し合わなくてはならないのだろうか。
秀秋は更に考える。
ハッテン場仲間は仲は良いが、友達と言う程でも無い。
ましてや犬と馬の方も尻を掘って貰っただけで親しくは無い。
従兄弟の真夕美はたまに会う程度で、やはり親しい訳では無い。
「むぅ……」
「おい、誰かいるのか? いるなら出て来てくれ」
「ん?」
秀秋が身を隠す室外機の向こう側から呼び掛ける声が聞こえた。
「その声は……」
秀秋はその男の声に聞き覚えがあった。
「碓井さんか?」
「ん? 何で俺の名前を、いや、その声、狼我君か!」
室外機の陰から狼青年が出る。
スーツ姿の妙に爽やかそうな中年男性の姿を認め、思わず笑みをこぼした。
中年男性――碓井守夫(うすい・もりお)は綺麗な歯並びの白い歯を覗かせながら、
心の底から嬉しそうな表情を浮かべた。
「いやあ、こんなにも早く知り合いと再会出来るとは。嬉しいよ狼我君」
「俺もだ。碓井さん」
「しかし、大変な事になった。殺し合いとはな……」
打って変わって深刻そうな表情になる守夫。
「…碓井さんは、この殺し合い、どうするんだ」
「何? どうするって決まっているだろう。こんな殺し合いなんかに乗らん!
何とかして殺し合いを潰すんだ」
この正義感の強さ、熱血さ。これと男好きのゲイという側面は余りにギャップがあると、
秀秋は心の中で思う。もっともそれは普段接している時から常々思っていた事だが。
それ故、碓井守夫は殺し合いには乗る事は無いだろうと考えていたが当たっていた。
そして、守夫の方も、自分は殺し合いに乗るなどとは微塵も考えていないようだ。
つまり自分の事を信頼している、と言う事なのだろう。
ある意味でそれは嬉しい。
しかし――――。
「勿論、君も協力してくれるだろう? 狼我君」
狼の青年に協力を仰いだ守夫は、その言葉の直後に腹部に打撃を感じた。
だが、ただ打撃されただけで、このように焼けるような熱さを感じるだろうか。
「……あ、ああ?」
何やら生温い液体が流れ出ている。
視線を下に向けると、毛皮に覆われた狼獣人の手が見えた。
この手で自分の息子を何度も扱いて貰い快感を得た。
しかし今握られているのは金属製の柄。その先は自分の腹に埋もれているが、間違い無く刀身。
刀身が引き抜かれた。秀秋は守夫に肉薄し、右手に持ったバタフライナイフを、
突き上げるように何度も何度も守夫の腹に突き刺した。
一度刺される度に守夫は声にならない呻き声を発し、遂には血反吐を吐いた。
そして十回目ぐらいだろうか。腹部が血塗れになった守夫は、
ズルズルと屋上の地面に崩れ落ちて行く。
秀秋は右手に真っ赤になったバタフライナイフを持ったままその様子を静観している。
「………狼我……君……どうして…こん……な………」
掠れた声でそう言った直後、守夫は地面に倒れ、血溜まりを作り、死んだ。
「…悪いな碓井さん。だけど……生き残るためだから」
秀秋はそう言うとナイフと手に着いた血糊を守夫の衣服で拭き取り、
守夫のデイパックの中身を漁り始めた。
基本支給品の他に出てきた物は、ひんやりと冷たい青い水晶三個、
リボルバー式の拳銃と予備の弾薬だった。
説明書によれば、青い水晶は「アイスクリスタル」と言い、投げ付ければ、
相手に冷凍によるダメージが与えられる、らしい。
「クリスタルって何だろうな……まあ拳銃があるから良いや」
リボルバー拳銃、コルト パイソン.357マグナムをズボンに差し、
予備弾をポケットの中に入れ、アイスクリスタルを自分のデイパックに移し替える。
もう後戻りは出来ない。秀秋は守夫の死体を見下ろしながらそう思った。
自分はこの殺し合いに乗ると決めた。
優勝し生きて帰るために、知り合いも身内も、皆殺すつもりだ。
首には爆弾付きの首輪がはめられ逃げたり無理矢理外そうとしたりすれば爆発する仕組みになっている。
守夫が殺し合いを潰すと言っていたが、正直、それが可能とは思えない。
「それなら俺は確実な方を取るよ………ああでも、
人を殺したって言うのに、随分冷静だな。俺」
拭い切れなかった血の付いた手を見詰めながら、秀秋が言う。
【碓井守夫 死亡】
【残り 54人】
【一日目/深夜/B-3ショッピングモール屋上】
【狼我秀秋】
[状態]健康、右手に血痕付着
[装備]コルト パイソン(6/6)
[所持品]基本支給品一式、.357マグナム弾(18)、アイスクリスタル(3)、
バタフライナイフ、馬の○○○型デ○ルド、ローション
[思考・行動]
基本:殺し合いに乗り、優勝を目指す。知り合いも身内も殺すつもり。
1:次はどうしようかな。
[備考]
※特に無し。
※B-3ショッピングモール屋上に碓井守夫の死体と、
碓井守夫のデイパック(基本支給品一式入り)が放置されています。
≪キャラ紹介≫
【名前】狼我秀秋(おおか・ひであき)
【年齢】20歳
【性別】男
【職業】大学生
【性格】怠惰、若干マゾ
【身体的特徴】灰色と白の狼獣人。中肉中背
【服装】私服(白いシャツの上に黒いジャケットを羽織っている、カーキ色のズボン着用)
【趣味】ネトゲ、ハッテン場通い、ア○ニー、輪姦される事(男に)
【特技】締まりがとても良い(何の?)
【経歴】17歳の時からハッテン場通いを始めている
【備考】男一辺倒では無く女も好き。狼我真夕美というかなり年上の従兄弟がおり、
たまに会って肉体関係を持っている(二回妊娠させたが本人が堕胎している)
【名前】碓井守夫(うすい・もりお)
【年齢】43歳
【性別】男
【職業】サラリーマン(詳細は不明だがそこそこ偉いらしい)
【性格】明るく正義感、道徳心が強い、けど、ゲイな人
【身体的特徴】黒髪でがっしりとした体格。色黒
【服装】灰色のスーツ
【趣味】ドライブ、ゴルフ、釣り、カラオケ、ハッテン場通い
【特技】握力がかなり強い
【経歴】一年程前、ハッテン場仲間の狼我秀秋、二宮優光と共に深夜の牧場に侵入し、
繋がれていた元競走馬のサラブレット種の牡馬・シップウジンライと、
決死のア○○プレイを試みた(当然碓井が入れられる側)。その様子は優光により
ビデオに撮影されネットにも流れている。無事に生還、秀秋と優光もシップウジンライに掘られる。
以後何度か他の仲間と共にシップウジンライの元を訪れ、掘って貰っている。
そのためかシップウジンライとは仲が良い
【備考】
馬の○○○型デ○ルド愛用者でもある。妻子がいるが妻とは10年前に離婚、
子供も妻が育てている。離婚の理由は決して本人の趣味が原因によるものでは無い
≪支給品紹介≫
【バタフライナイフ】
折畳式の小型ナイフ。
【馬の○○○型デ○ルド】
その名の通り牡馬のいきり立った○○○を模した大人の玩具。
成人男性の腕程もあるので使用出来る者は上級者に限られるだろう。
恐らくローション必須。
【ローション】
性交時、挿入困難な場合に使用する潤滑剤。
強い粘性と潤滑性をもった水溶液で摩擦を軽減させる効果がある。
【コルト パイソン】
1955年に登場した.357マグナム弾を使用するリボルバー拳銃。
芸術品を思わせる形状ながら協力な.357マグナム弾の発射に耐えうる剛性を持ち、
「リボルバーのロールスロイス」と呼ばれている。
【アイスクリスタル】
強力な氷の魔法を封じ込めた水晶。青色で触ると冷たい。
投擲し砕けると半径三メートル以内が凍り付き、効果範囲にいた者は、
凍り付いて凍死、或いは凍傷によるダメージを負う。
ゲーム開始 |
狼我秀秋 |
[[]] |
ゲーム開始 |
碓井守夫 |
死亡 |
最終更新:2010年08月26日 00:04