自殺志願の竜とお節介な女


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2話 自殺志願の竜とお節介な女


青と白の竜、セルゲイ・アナトーリエヴィチ・ルシコフは、街灯が灯る橋の欄干から、
満月の光が反射する川の水面を眺めていた。

「《……何でこんな事に……》」

溜息を吐きながらロシア語で呟く(《》で囲まれた台詞はロシア語だと思って下さい)。
セルゲイの祖国は、彼のような獣人、竜、獣に対する差別が酷かった。
彼自身ももれなく差別を経験しており、父親は自分が物心付く前に、
冤罪で処刑されたと母親から言われた。
その母親も二年前に病死し、独り身となった彼は、獣人、竜、獣と人間が差別無く暮らすという、
俗に日本と呼ばれている国に、裏ブローカーの手を借りて密入国を果たした。
日本語は日常生活に困らない程度には習得はしていた。

だが、差別から解放されたものの、身元がはっきりしない遠い異国の者であるセルゲイが、
働き口と住居を確保するのは至難の業。
密入国者とばれれば祖国へ強制送還される恐れもある。
同じ竜や、獣人達からも奇異の目で見られる毎日が続いた。

そして最終的に彼が行きついた職業は。

男娼。

彼のように理由があり祖国から逃げてきたり、或いは家出人だったりと、
訳ありの竜、獣人、竜人、獣達を専門に雇う、少し危ない雰囲気の男娼館で、
セルゲイはそこの支配人にスカウトされ、悩んだ末男娼になる事を決意した。

毎日のように、不特定多数の男に弄ばれる毎日。
慣らしもせず無理矢理突っ込まれた日は、激痛で眠れなかった事もある。
給料はとても良いし、生活には困らない。
だが、セルゲイは自分の人生の結末を見てしまったようで、絶望していた。
自分は男に弄ばれ、一生を過ごすんだと。

そして、突然巻き込まれた、この殺し合い。

「《もう嫌だ……俺の人生って何なんだろう………もう…生きていくのが嫌になっちゃったよ》」

殺し合い――香取亮太と名乗ったあの白衣姿の男はそう言っていた。
首には黒い金属製の首輪。無理に外そうとしたり、逃げようとしたりすれば、
爆発するらしい。いや、爆発する事は確実だろう。マネキンによる実演を見たのだから。
生きて帰るには、参加者達を殺して最後の一人になるしかない。
だが、セルゲイは人殺しはしたくなかった。他人を殺してまで、生き延びたくない。
それに、生きて帰れたとしても、また夢も希望も無く、男に抱かれる日々に戻るだけだ。

「《そうだ……死のう》」

セルゲイは橋の片足を上げ、橋の欄干を乗り越えようとした。
だが。

「ちょ、ちょっと! やめなよ!」
「《……え?》」

少女と思しき声が、セルゲイを引き止めた。




遠目から、橋の上にいる青い竜の様子を窺っていた、
青い髪に白い鉢巻を巻いた少女、紺野優佳は、
竜が明らかに欄干を越えようとしているのを見て、考えるよりも先に身体が動いていた。

「ねえ、馬鹿な真似はよしなって。命は無駄にするもんじゃないよ」

取り敢えず飛び込みは阻止するべく、竜を宥める優佳。

「《か、関係無いだろ! 放っといてくれ! あっち行けよ!》」
「……え? な、何語?」

竜が返した返事は、優佳には理解不能なロシア語だった。
優佳自身はそれがロシア語だという事すら分からない。
ただ、声の調子と竜の表情から、拒絶している、向こうへ行けと言っているらしい
と言う事だけは推測出来た。

「え、えーと、ごめん、日本語出来る?」
「……」

何やらハッとしたように、青い竜は軽く咳払いをした後、
やや訛りのある日本語で優佳に話し掛け始めた。

「あんたには、関係、無い。あっちへ、行け」
「あ、日本語話せるんだ。良かった……訛ってるけど。
あのさ、私、紺野優佳って言うの」
「……こん、の…ゆう、か」
「そうそう。あなたは? 名前教えてよ。ここで会ったのも何かの縁だしさ」
「……セルゲイ・アナトーリエヴィチ・ルシコフ」
「うーん、長いなあ……セルゲイで良い?」
「……」

その問いにセルゲイは答えない。優佳は肯定の意と取った。

「ねえセルゲイ、そこ、欄干の先何も無いから危ないよ?
何だか、下川みたいだけど、深そうだし……」
「……」
「確かに、いきなりこんな殺し合いに参加させられて、嫌になっちゃうのは分かるけどさ。
だからって自分で死ぬのは駄目だよ。生きていれば何とかなるかもしれないじゃん」
「……そんなん、じゃ、無い。もう、いいから、あっち行ってくれ」

優佳の説得に、セルゲイは余り耳を貸さない。
だが、優佳としては自殺志願者を目の前にして見て見ぬ振りは出来ない。

「出来ないよ。見ちゃったから。そうだね……もうあれだね。
あなたが飛ぶなら私も飛ぶわ」
「……は??」

優佳の言う事に目を丸くするセルゲイ。
次の瞬間、優佳はデイパックを地面に置き、自分の靴を脱いで欄干を登り始めた。

「お、おい!?」
「うはぁ~……結構高いね。落ちた衝撃もかなりのものかも。
って言うか、今夜結構寒いね……水温低そう」
「……っ」

一体どこまで本気なのか分からないが、優佳の行動により、
セルゲイはどんどん、飛び降り辛くなっていく。

「私が死んだらあなたのせいね」
「……お前、馬鹿じゃ、ないのか?」
「よく言われる。けど言わせて貰うけど、そこから飛び降りようとするあなたはどうなの?」
「……」

しばらくセルゲイは考え込んだ。
自分一人が死ぬならまだしも、見ず知らずの会ったばかりの女性を巻き添えにするのは後味が悪い。
と言うよりこの女性も初対面の自分になぜここまで構うのか分からないが。
少なくとも女性の瞳に、嘘偽りと言ったものは見当たらない。

「……負けた、よ」

遂に、セルゲイは欄干から足を下ろした。
それを見た優佳は笑顔を浮かべ、欄干から下りる。

「ふぅ……良かった」

正直な所、優佳はあれでセルゲイを止められそうになかったらもう後が無いと焦っていた。
靴を履き、デイパックを拾い上げ、優佳がセルゲイに近付く。

「セルゲイ。折角だから一緒に行動しようよ。良いでしょ?」
「……ああ。宜しく」
「うん、こちらこそ!」

青い竜と、青髪の女性は手を取り合い、共に行動する事となった。



【一日目/深夜/E-2橋の上】

【セルゲイ・ルシコフ】
[状態]健康
[装備]無し
[所持品]基本支給品一式、不明支給品(未確認)
[思考・行動]
 基本:殺し合いをする気は無い。
 1:紺野優佳と行動。
[備考]
 ※可能な限り日本語で喋りますが、興奮した時はロシア語に戻るかもしれません。

【紺野優佳】
[状態]健康
[装備]無し
[所持品]基本支給品一式、不明支給品(未確認)
[思考・行動]
 基本:殺し合いはしない。何とかして脱出したい。
 1:セルゲイと行動。
[備考]
 ※特に無し。






≪キャラ紹介≫
【名前】セルゲイ・アナトーリエヴィチ・ルシコフ(Сергей Анатольевич Лужко́в)
【年齢】21歳
【性別】男
【職業】男娼
【性格】大人しい、内向的
【身体的特徴】青と白の竜人体型の竜。身体付きは良い
【服装】全裸(服を着る習慣が無い)
【趣味】祖国の歌(カチューシャ、スラヴ娘の別れ等)を歌う、聴く事
【特技】翼を使い飛べる。竜なので筋力と体力はある
【経歴】人間至上主義の国に生まれ、人間から様々な差別を受けてきた。
 物心つく前に父親を亡くし、二年前に母親も病死し天涯孤独の身となる。
 裏ルートを経て日本風の国家(俗称日本)に密入国し、働き口に困った末、
 訳有りの危険な匂いのする男娼館で男娼として働く事になり今に至る
【備考】男娼としての腕はそれなりに良いらしい。自分の人生に半ば絶望している。
 女性(雌)との経験は無し。名前は「ルシコフ家のアナトリーの息子のセルゲイ」という意味。
 人間は嫌いでは無い

【名前】紺野優佳(こんの・ゆうか)
【年齢】20歳
【性別】女
【職業】大学生・ピザ屋でバイト
【性格】明朗、お節介
【身体的特徴】青い髪に白い鉢巻を巻いている。鉢巻は本人曰く「ファッション」、胸は大きく無い
【服装】私服(赤色の半袖ジャケットに白いシャツ、オリーブ色のミニスカート、黒いリストバンド)
【趣味】料理、メール
【特技】料理
【経歴】両親と妹のいる普通の家庭で育った
【備考】世話好きだが度が過ぎウザがられる事もしばしば。
 また困っている人を放っておけないタチでもある





満月照らす夜の森 時系列順 人は案外、簡単に一線を超える
満月照らす夜の森 投下順 人は案外、簡単に一線を超える

ゲーム開始 セルゲイ・ルシコフ [[]]
ゲーム開始 紺野優佳 [[]]
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