救いなんて有りはしない、どこにも。


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54話 救いなんて有りはしない、どこにも。


アルベルトは島役場の建物に裏側から近付いていた。
確証は無いが、中から人の気配がする。

(裏口があるな……よし、入るか)

裏口の扉のノブに手を掛け、開く。
役場内部は静まり返っていた。しかしよく調べない事には、人の有無は分からない。
武器であるマグロ切り包丁を握り締め、アルベルトは奥へと進む。



弟子五郎、エルフィ、宮田司郎の三人は食事も終え、いよいよ、
島役場を出立しようとしていた。
荷物を整理し武装を整え、三人は一階への階段を降り始める。
そして、まず弟子五郎、次にエルフィ、最後に宮田が、一階に下り立った。

「……?」

ふと、宮田は背後に気配のようなものを感じた。そして、振り向く。

「!!」

長い金色の髪を持った男が、自分に向かって刀のような物を振り下ろす瞬間。
その光景を、宮田の両目はしっかりと捉えていた。
振り下ろされた刃が自分の胸元の肉を深く斬り裂き、肋骨、肺、心臓、
生命活動を維持するために必要不可欠な臓器器官を容赦無く破壊する様子も。
真っ赤な液体が金髪の男と床を汚す。
斬られた部分が焼けるように熱い。喉の奥から鉄の味の生温い液体が込み上げるのを感じる。

「きゃああぁぁああ!?」
「宮田さん!!」

床に倒れゆく中、背後から侍の青年と狼獣人の少女の叫び声が聞こえた、ような気がした。
だが既に耳に入る音も遠く、視界も狭まってきている。
宮田は医者である。それ故、自分がもう死ぬという事も容易に理解出来た。

(ここで死ぬのか、俺は…………それも、悪く無い、かもな)

今まで、羽生蛇村の暗部を担う者として生きてきたが、正直な話、
死ぬ事によってそれから解放されるなら、それはそれで良いかもしれないと、
宮田は薄れゆく意識の中で思った。



弟子五郎は突然現れ、宮田を斬り捨てた金髪の男に見覚えがあった。

「あんたは……! 確か、アルベルトさん……」
「そう言うお前は魔王軍四天王のムシャの弟子の……」

エルフィは拳銃を構えたまま何も言わ無かったが、二人の会話から、
互いに多少なりとも面識がある事は理解出来た。

「……よくも宮田さんを! 殺し合いに乗っているなら、容赦しないっスよ!」

弟子五郎は腰に差していた刀を抜き、アルベルトに向かって構える。
対するアルベルトもマグロ切り包丁を構え直した。
そして、互いに相手に斬り掛かり、壮絶な打ち合いが始まった。
双方、斬撃を受け止め、僅かな隙を窺いつつ、必死に相手の急所を狙う。
ガキィッ、ガキィッ、という金属と金属のぶつかり合う音が役場一階のロビーに響く。

「チッ……やるな……」
「はぁ、はぁ……」

一進一退。まだ弟子五郎もアルベルトも頬や肩口に軽い切り傷しか負っていない。

「……っ」

エルフィは何とか拳銃の照準をアルベルトに合わせようとするも、
二人の動きは身体の一部が機械化されている事以外は普通の女子高生の少女に
過ぎないエルフィにはとても捉えられない程速かった。
下手に発砲すれば、弟子五郎を誤射してしまう恐れがある。

「だぁっ!」
「くっ!」

弟子五郎とアルベルトが鍔迫り合いを始め、動きが止まった。

(――今だ!)

アルベルトの背中に向けて、エルフィがコルト デルタエリートの引き金を引いた。

だが。

発砲する、ほんの数瞬前、体勢が入れ替わり、
アルベルトの背中があった場所には、弟子五郎の背中が。
発砲音とほぼ同時に、弟子五郎の背中から血が噴き出した。

「ぐ……あ……!?」

何が起きたか分からない弟子五郎。それはアルベルトも、撃った本人であるエルフィも同じだった。
弟子五郎は持っていた刀を床に落とし、うつ伏せに崩れ落ちた。

「……え?」

何故? 自分は確かに金髪の男の背中を狙ったはずなのに。
いや、間違い無く狙っていたのだ。だが、直前に体勢が入れ変わってしまった。
事故。これは不慮の事故。だがエルフィにとっては、同行者を撃ってしまった事には変わり無い。

(何故か知らんがこれはチャンスだ!)

アルベルトは弟子五郎が持っていた刀を拾いマグロ切り包丁から持ち替え、
エルフィに向かって斬り掛かった。
自分は防弾チョッキを服の下に着込んでいる。相手は拳銃を所持しているが、
拳銃弾程度なら防いでくれるはず。何より相手は仲間を誤射したショックで呆然自失となっている。
今なら十分仕留められる。

アルベルトはそう考えていた。

ドンッ!!

いくら防弾チョッキを着ていても、着ていない部分を撃たれれば何の意味も無いのだが。
額に小さな穴が空き、後頭部辺りから鮮血と何やらピンク色の物体が噴出したアルベルトは、
後ろへ吹き飛び、仰向けに倒れ、動かなくなった。

「……」

エルフィは呆然と、床に転がる二人の男の死体を見詰めていた。
二人共自分が殺してしまった。しかも、片方は、本当は殺してはいけないはずだったと言うのに。
事故とは言え、自分の手に掛けてしまった。

「……あ……あ」

もう何も考えられない。何をしていいのか分からない。
エルフィは、デルタエリートの銃口を、狼族の長い口に咥え込んだ。
その両目からは、涙が溢れていた。


……ォォン……。


島役場の中から、一発の銃声が響いた。
その後はもう、何も聞こえなくなった。



【宮田司郎@SIREN  死亡】
【弟子五郎@VIPRPG  死亡】
【アルベルト@VIPRPG  死亡】
【エルフィ@自作キャラでバトルロワイアル  死亡】
【残り  3人】



空を仰ぐ―――― 時系列順 THE END OF THE GAME
空を仰ぐ―――― 投下順 THE END OF THE GAME

衝撃のアルベルト アルベルト 死亡
侍、狼少女、医者、幕間 弟子五郎 死亡
侍、狼少女、医者、幕間 エルフィ 死亡
侍、狼少女、医者、幕間 宮田司郎 死亡
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