空を仰ぐ――――


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53話 空を仰ぐ――――


「そう言えばブライアン」
「何だ、太子」
「そろそろ放送だな」
「あ! そうだ、忘れてた!」

目的地の教会を目前にして、ブライアンと聖徳太子は大事な事を忘れていた事に気付く。
どこからか、ハウリング音が鳴り響き、続いて聞き覚えのある男の声が島中に鳴り響いた。

『えー、参加者の皆さん、6時間振りです、比叡憲武です』
「やべぇ、始まった!」
「まずい、メモ、メモを……」

定時放送を聞き取るための準備を全くしていなかった二人は狼狽した。



そして、放送が終わった。
どうにか放送内容を聞き取る事が出来たブライアンと聖徳太子。

「良かった、妹子は呼ばれなかったな……」

部下の名前が呼ばれず安堵した太子だったが、横のブライアンの様子を見て気まずそうな表情を浮かべる。
ブライアンは知り合いの名前が五人も呼ばれてしまった。
内、特に親しいリリアとヘレンの死は、彼に大きな衝撃を与える。

「何てこった、リリアが……ヘレンまで」
「ブライアン……」

この島のどこかで骸を晒しているであろう二人の死をブライアンは悼んだ。

「……悪いな太子。もう大丈夫だ」
「あ、ああ」
「……それより……教会のあるこのエリアが一時間後に禁止エリアになるらしいな。
これは教会を調べている場合じゃ無さそうだ。さっさとこのエリアから出よう」
「そうだな……」

目指していた教会はすぐ目の前だが、
教会のあるエリアA-2は他の三つのエリアと共に一時間後に禁止エリアとなる。
禁止エリアに侵入すると、放送で主催者比叡憲武が言っていたことには、
首輪が作動するらしい。作動とはその場で爆発するのか何らかの警告が起きるのかは
分からないが、とにかく禁止エリアには近付かない方が身のためであろう。

踵を返し元来た道を戻ろうとした二人。

ギイイイ……。

その時教会の玄関の大扉が音を立てて開いた。

振り向いたブライアンと聖徳太子の目に映ったものは、良く知っている人物だった。

「お、お前は……!」
「……あの時の二人か。また会ったな」

青髪に赤い鉢巻姿の青年、勤武尚晶は、クスクスと薄ら笑いを浮かべながら、
右手に刀を持ち、教会入口の階段をゆっくりと降りる。
その白いシャツと、灰色のズボンは、返り血で汚れていた。

「くっ……!」

ブライアンはバトルアックスを構えた。
太子も調達品であるスナイドル銃の銃口を尚晶に向ける。

「やる気か?」
「……ここで逃げてもまた追ってくるつもりだろ?
だったらここで倒してやるよ! 勿論禁止エリアになる前にな!」
「ま、前までの私達と思ったら大間違いだぞ!」
「そこの烏帽子ジャージ、足ガクガク震えてるんだが」
「うるさい!!」

必死に怖いのを我慢しながら、太子は虚勢を張る。

「……さっさと済ませたいのは、俺も一緒、だ!」

尚晶が二人に向け、刀を構えながら突進した。
今度はブライアンも聖徳太子も逃げない。ここで逃げてもどうせまた追われる。
太子はスナイドル銃の引き金を引いた。

ドゴォン!!

しかし、古く銃身のライフリングが摩耗しており尚且つ、元々命中精度が良く無い銃、
そして射手の太子が銃に関して完全に素人だった事が災いし、
放たれた銃弾は虚空を切り裂くに留まった。

「うおらああああっ!!」

ブライアンがバトルアックスで、尚晶の斬撃を受け止めようとした。
だが、尚晶の振るった刃はブライアンに向かうと見せかけ、太子の胴体を薙ぎ払った。

「あ……」

アスファルトの上に真っ赤な液体がぶちまけられ、ずるずると、
太子の上半身が横にずれ、地面に落ちた。
残った下半身も、動かす指令を送る頭を失い、ただの肉塊としてアスファルトの上に転がった。

「太子ぃぃ!!!」

ブライアンが叫ぶ。
尚晶は刃を返し、続けざまにブライアンに斬り掛かる。

ビュンッ!!

紙一重で後ろに跳び回避するブライアン。
そして二人は一旦距離を取り、対峙する。

(……次で、勝負が決まる!)
(さっさと始末して、このエリアから出ないとな……しかし、この戦士の男、中々やる)

それぞれの思いを胸に抱きながら、双方、武器を構え、睨み合う。

そして、数秒後。

「うおおおおおおおおおおお!!」
「……!!」

雄叫びをあげながらブライアンが、無言のまま尚晶が、互いに相手に向かって突撃する。



静かな市街地に金属音、そして、何かを斬り裂いた音が鳴り響いた。





(……俺は、負けたのか)

胴体に強烈な斬撃を食らった尚晶は、大量の血液をアスファルトの上に流し、
両膝を突き、持っていた刀を落とした。
痛みは無い。いや、それどころか身体中の感覚が消えていくのを感じる。
視覚も聴覚も、段々とその機能を果たさなくなっていく。

(フ……血の池地獄でも見に行くか……)

薄れゆく意識の中、勤武尚晶は薄ら笑いを浮かべた。




戦いには勝った。だが、大切な仲間を失った。

「太子……すまねぇ……俺がついていながら」

身体が腰で真っ二つになってしまった聖徳太子の死体の傍で、
ブライアンは悲しみに暮れる。つい先程放送で多くの知り合いが死んだ事を知ったばかり
だと言うのに、今度は目の前で同行していた仲間が死んでしまった。

「くそ……お前の死は無駄にしねぇ……絶対にこの殺し合いかr」


ダダダダダダダダダダダッ!!


突如響いた連射音と同時に、ブライアンは身体中に灼熱を感じた。

「な……?」

何故か動かし辛い首を無理矢理下の方に向けると、鎧に無数の穴が空き、
そこから血が溢れ、鎧を伝って路面に垂れ落ちているのが見えた。
撃たれた、のだとブライアンは確信する。
確信した途端、視界がぐるりと暗転し、ブライアンはうつ伏せに血に伏した。



「こいつは確か、ブライアンだったっけ……」

突撃銃大宇K2を携えた黒髪の美女、エロリアが、たった今銃撃した、
紅白鎧の男の死体を見下ろしながら言う。

「にしても、上手い事行ったわ。漁夫の利って奴?
さっさと武器回収して、このエリアから出ないとね」

意気揚々と、エロリアは放りだされた武器の回収を始めた。
目的地の教会付近で、青い髪の剣士と思しき青年と、どこかで見た事のある紅白鎧の男と、
ジャージに烏帽子というミスマッチな外見の男の二人組が戦っているのを見付け、
このまま互いに殺し合って貰い、残った生き残りを襲って殺し武装を奪うという、
エロリアの目論見は成功した。

成功した、と、彼女は思っていた。


ガシ。


「……?」

誰かに足を掴まれエロリアの動きが止まる。
誰か、誰かとは誰か? ここには今、自分一人しか生きている者はいないはずだ。
だが、足は確かに掴まれ――――。

「――――!!!?」

エロリアの顔が驚愕の色に染まった。



「ふふ、はは、ざまぁ、みやがれ……油断したなぁ?
まさか……俺が生きているなんて……思わ無かった、ろ?」

驚愕の表情のまま、胴体を切り裂かれ絶命したエロリアの死体を見下ろし、
口から血を吐きながらも、ブライアンは笑みを浮かべエロリアを嘲る。

「ああ、だけど……俺ももう、駄目だな、こりゃ」

しかし、ブライアンにも、死の時が訪れようとしていた。
全身に5.56㎜NATOライフル弾を食らったブライアンの身体は、
最早後数分も生命活動を維持出来ない。
アスファルトの上に仰向けに寝そべり、天を仰ぐブライアン。
気持ち良いぐらいに晴れた青空が見えた。

「俺にしちゃ……頑張ったよ、な……? アレックス…………」

戦士の男が最期に呟いたのは、この殺し合いにはいない、親友の名前だった。




【聖徳太子@ギャグマンガ日和  死亡】
【勤武尚晶@オリキャラ  死亡】
【エロリア@VIPRPG  死亡】
【ブライアン@VIPRPG  死亡】
【残り  7人】




侍、狼少女、医者、幕間 時系列順 救いなんて有りはしない、どこにも。
侍、狼少女、医者、幕間 投下順 救いなんて有りはしない、どこにも。

勇気を出せばきっと何かが変わる ブライアン 死亡
勇気を出せばきっと何かが変わる 聖徳太子 死亡
血塗られた聖堂 勤武尚晶 死亡
人は何故……。 エロリア 死亡
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