清く正しく残酷に

26話 清く正しく残酷に


エロリアは娼館にて二人の参加者を殺害した後、
戦利品である突撃銃、大宇K2を携え、次の標的となり得る
他参加者の姿を捜していた。
しかし、今の所誰も捕捉出来てはいない。

「意外と見付からないものね……」

そして、いつしかエロリアは遠方に海が見える広々とした平野に出ていた。

「おお、これはいい草原、遠くには海も見えるし、
所々にある茂みがいい感じ」

冷たい潮風を顔に感じながら、解放感に浸るエロリア。
周囲が建物だらけの場所から広々とした草原地帯に出た事、
まして今が殺し合いという終始神経を削られる状況下なら無理も無い。
だが、やはり警戒は怠らない。自分の方に近付く人影を確認した。
人影の方はエロリアには気付いていないようだった。
この機を逃すまいと、エロリアは人影がすぐ目の前を通るであろう茂みに身を隠した。
そして待つ事数分。

(あれは……)

目の前の道路を通ろうとしている二人の内一人は、エロリアが知る人物だった。



リリアと石川昭武は、殺し合いの会場である島の北西部の市街地に向かおうと、
最短距離である平野部の道路を通っていた。

「海風は余り好きじゃ無いですね、毛皮がベタついて嫌なんすよ」
「私も髪の毛が……」

二人は今の所、誰とも遭遇しておらず、誰にも襲われていなかった。
警戒は怠っていなかったつもりだったが、見晴らしの良い場所で、
他愛も無い会話をしている時点で、若干の油断があったのだろう。
故に、リリアがしっかり神経を研ぎ澄ませていれば分かった筈の、
すぐ近くにある茂みからの殺気にも、リリアは気付かなかった。
茂みの葉の間からゆっくりと突き出す銃口。黒い穴は確実にリリアと昭武を狙っていた。

そして。

ダダダダダダダダダダダダダダッ!!

リリアと昭武は、一瞬自分の身に何が起こったのか分からなかった。
連射音が響いたと同時に、自分の身体の至る所に火箸を押し付けられたかのような、
凄まじい熱を感じた。直後に、熱は激痛となり、喉の奥から鉄錆の味のする
液体が込み上げ、口から溢れた。
口だけでは無い、身体中に空いた穴から同じ赤い液体が噴き出した。

「うぐ……あ……」
「ぐ……ぅう」

道路に倒れ苦しむリリアと昭武。
もはや自力で立ち上がる事も、呼吸する事もままならない。

「殺し合いの時にそんな無防備じゃ駄目でしょ~」
「あ……あなたは……」

茂みから、銃口から煙を噴き出す突撃銃、大宇K2を携えた
黒髪赤目の美女――エロリアが出て来る。
リリアもまた彼女を知っていた。アンデッドナイ軍の、自分の偽物。

「これで私が本物のリリア? まあそんな事どうでも良いけども」
「……そんな……ここで終わりなの……」

必死に立ち上がろうとするが、もう手にも足にも力が入らず、
意識も薄くなっていった。

「アレックス……」

最愛の人物の名前を、何とか紡いだ。
そして、リリアの命の火は消えた。

「くそ……何て、こった……」
「狼君、あなたももう助からないよ」

もはや虫の息の昭武に向かってエロリアが言い放つ。

「あんた、何でこんな殺し合いなんかに、乗るんだよ……」
「理由ね……面白そうだからじゃ、駄目?」
「ぐぅ……絶対あんた……地獄に、落ちる……ぞ」

それだけ言い終えると、昭武はうつ伏せに倒れ、動かなくなった。
詳しく調べなくても、死んでいるのは分かる。

「地獄に落ちる? 馬鹿ねえ……今、このゲームが地獄じゃない」

そう、今現在自身が身を置いている殺し合い。
ある意味で、それが地獄とも言える。
狼青年は死んだ後の事を言ったに違い無いが。比喩的な表現だ。
エロリアは死後の世界に興味は無かった、だが地獄に落ちると言うのなら、
それも良しと受け入れていた。

「さて、さっさと持ち物漁って行こうか」

エロリアはまずリリアの所持品を調べ始めた。

「ロングソードに拳銃型催涙スプレー……催涙スプレーだけ貰っていこ。
次はこっちの狼君……」

拳銃型催涙スプレーを自分のデイパックの中に入れ、
続いて昭武の所持品を調べるエロリア。

「ゴルフクラブに……何これ? ファイル? 写真が一杯……」

発見した、大量の写真が収められたファイルを手に取り開く。



「………………」


パタ。

エロリアはゴルフクラブと共にそのファイルを昭武の死体の傍に捨てた。

「私の趣味じゃないわね。もし女の子の奴だったら欲しかったけど」

ファイルに収められていた写真は、
彼女の趣味に沿うものでは無かった。



【リリア@VIPRPG  死亡】
【石川昭武@オリキャラ・再登場組  死亡】
【残り  31人】



【一日目/午前/A-6平野中央部】
【エロリア@VIPRPG】
[状態]健康
[装備]大宇K2(5/30)
[所持品]基本支給品一式、大宇K2予備マガジン(30×5)、青竜刀、
 デ○ルド、M24型柄付手榴弾(2)、拳銃型催涙スプレー(容量満タン)、
 水と食糧(2人分)
[思考・行動]
 基本:殺し合いを楽しむ。知り合いや同僚(ディオナ)と遭遇しても容赦しない。
 1:他参加者を捜す。
[備考]
 ※特に無し。



※A-6一帯に銃声が響きました。
※A-6平野中央部にリリア、石川昭武の死体、
リリアのデイパック(基本支給品一式入り)、石川昭武のデイパック(基本支給品一式入り)、
更に二人の死体の傍にロングソード、ゴルフクラブ、雄獣人エロ写真ファイルが
放置されています。




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あの世までイきました エロリア 男は愛する人のために、女は己のために
二つの「青」 リリア 死亡
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最終更新:2010年08月14日 00:09
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