Loose

18話 Loose


淡い青髪の青年、ザックはエリアE-3の森の中にある獣道を歩いていた。
恐らく元々は登山路か何かだったのだろうがロクに手入れされていないようで、
ほとんど草に埋もれてしまっている。

「殺し合いなんて出来るか。あの比叡憲武とか言う奴、
一体何を考えているんだ……とにかく、アルベルトがいるみたいだからな、
早い所見付け出さないと」

殺し合う事を拒否し、自分の仲間を捜すため森の中を歩くザック。

「ねえねえそこのあなた」
「誰だ?」

突然若い女性の声で呼び止められザックが足を止める。

「……狐??」
「まあ、狐だけどね」

それは薄い黄金色の毛皮を持った二足歩行の雌狐だった。
獣足だが巨乳で、スタイルは抜群である。

「私は費覧。あなたは?」
「俺はザックだ……なあ、費覧と言ったか? 長い金髪の男を見てないか?
俺の仲間なんだが」

突然現れた狐の女性を怪しみながらも、いつでもアクションが起こせる状態にし、
ザックはこの殺し合いに呼ばれている自分の仲間である、
金髪の剣士、アルベルトの事を費覧に尋ねる。

「んー、ごめん。あなたが初めて会った人よ」
「そうか……費覧は知り合いはいるのか?」
「いや、名簿を見たけどいなかったわ」
「分かった。なあ費覧、俺はこの殺し合いを潰そうと思っているんだ。
良かったら協力してくれないか?」

恐らく信用しても良さそうだと判断したザックは費覧に共闘を持ち掛けた。
だが、費覧が出した答えは。

「あー、悪いけど、それはちょっと無理」
「……!」

ビュンッ!!

鋭い爪が生えた右手による斬撃だった。
咄嗟に後ろに跳んで回避するザック。まともに食らえば胸元を、
深々と抉り肉を引き裂かれ致命的な傷を負っていただろう。

「あら、凄いわね。大抵の人間は見切る前にやられるんだけど」
「くっ、費覧。お前、この殺し合いに乗っていたのか?」

ザックは腰のベルトに差し込んでいたショートソードを鞘から抜き、
費覧に向けて両手で構え戦闘態勢を取った。

「まあね。面白そうだし、それに、こんな所で死にたくも無いしね。
知り合いもいないから心おきなくやれるよ」
「……殺し合いに乗るって言うなら、お前をここで止めるしかないな」

この殺し合いを拒否する参加者も恐らくいるだろう。
ここでこの狐の女を放っておけばそういった人々も犠牲になるかもしれない。
勇者として、ここで阻止しなければとザックは思った。

「止める? 寝言は眠って言うものよ、ザック君……ガアア!!」

牙を剥き出し、獣の表情を浮かべ、雄叫びを上げながら費覧がザックに突進する。
そして鋭い爪の生えた両手による斬撃を凄まじい速さで繰り出してきた。
ザックも負けじと剣による斬撃で応対し、しばらく一進一退の攻防が続いた。

(ちぃっ、こいつ中々やるわね……やっぱ素手で行くのはきついかな?)

予想以上のザックの剣捌きに、費覧は自分が徐々に形勢不利になっている事を感じる。
このままだと拮抗する。そして、自分が負ける可能性が高い。

(やっぱりケチらず、あれ、使っちゃおう)

費覧は自分のデイパックの中に入っている、自分のランダム支給品である
武器を使う事にした。

「はぁ、はぁ、次で……決めるっ!」

息が上がってきていたザックは一気に勝負を決めようと、
ショートソードを構え費覧に突進した。

「ガアアアアアア!!」

対する費覧も雄叫びを上げザックに向かって走り出す。
二人の距離が近付く。10メートル、8メートル、6メートル、4メートル。
そこまで近付いた辺りで費覧が自分のデイパックから何かを取り出し、
それを右手で構えザックに向けた。

「!?」

突然費覧が出したそれに驚くザック。
費覧の口元がニヤリと歪み、鋭い牙がよく見えた。

ドォン!!

顔中に熱を感じ、視界がブラックアウトし、ザックの意識は途絶えた。



「いてて……さすがに、片手で散弾銃はキツかったなぁ」

右肩を左手で擦りながら、費覧は頭部が粉々になったザックの死体を見下ろす。
12ゲージバックショットの散弾を至近距離で顔面に食らったザックは、
首から上が粉砕し、頭部を形作っていた皮膚、毛髪、筋肉、頭蓋骨、脳漿、その他の肉片を
青々とした雑草や樹木に赤々とペイントを施し、息絶えた。

「うわー……散弾銃で頭撃たれるとこうなるんだ。おえ」

自分で作り出したグロテスク光景に思わず吐き気を催す費覧。

「しかし、やっぱケチらず使うべきだね……」

そう言って費覧は自分のランダム支給品であるセミオート射撃が可能な散弾銃、
レミントンM1100を眺めた。
美しい狐である彼女は過去何度か毛皮を狙う猟師に散弾銃で追われた事があったため、
そういう意味では因縁深い武器とも言えた。

ザックの持っていたショートソードと、デイパックの中に入っていた、
回転式拳銃コルト ローマンと予備弾、水と食糧を抜き取り自分のデイパックに
移し替える費覧。

「銃あるのに何で使わなかったんだろ……剣の方が使い慣れていたのかな。
まあどっちでも良いけどね……さてと……行こうかな」

ふさふさの尻尾を振り、白い毛皮に覆われた豊満な乳房を揺らしながら、
薄い黄金色の雌狐は森の奥へ歩き始めた。


【ザック@VIPRPG  死亡】
【残り  36人】


【一日目/朝方/E-3森西部】
【費覧@オリキャラ・再登場組】
[状態]肉体的疲労(小)
[装備]レミントンM1100(3/4)
[所持品]基本支給品一式、12ゲージショットシェル(12)、ショートソード、
 コルト ローマン(6/6)、.357マグナム弾(18)、水と食糧
[思考・行動]
 基本:殺し合いに乗る。優勝を目指す。
 1:次はどこへ行こうかな。
[備考]
 ※個人趣味ロワ本編開始前からの参戦です。
 ※ザックからアルベルトの情報を得ました。


※E-3一帯に銃声が響きました。
※E-3森西部にザックの死体とデイパック(水と食糧抜きの基本支給品一式入り))
が放置されています。


≪支給品紹介≫
【ショートソード】
その名の通り短い剣。切り先が鋭く、先端にいくに従って幅が狭くなっていくのが特徴。
乱戦や刺突などを考慮し丈夫に作られている。

【コルト ローマン】
1967年に発売された.357マグナム弾を使用する小型軽量の回転式拳銃。
「ローマン(Lawman)」とは「法執行者」という意味で、警察向けに設計された。

【レミントンM1100】
1963年にレミントン社が発売した自動散弾銃。
堅牢で確実な作動性や長い年月の間に築かれた信用は高く、
初心者からベテランハンターにまで愛好者の幅は広い。



A foolish man 時系列順 金色のアルベルト
A foolish man 投下順 金色のアルベルト

ゲーム開始 ザック 死亡
ゲーム開始 費覧 テトは犠牲になったのだ……。

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最終更新:2010年08月01日 14:39
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