11話 己がために
エリアG-2の海沿いに存在する豪邸。
「ひ、ひいいいっ、や、やめろ! やめてくれえええ!」
黒い衣服に身を包んだ気弱そうな男――牧野慶が部屋の隅に追い詰められ、
恐怖と絶望に怯え切った表情で必死に命乞いをしていた。
左肩と右太腿には銃創があり、ドクドクと血が流れ出ている。
もっとも、黒い衣服では、赤色の血は然程目立たない。
「ごめんね……でも、どうしても首輪が欲しいのよ」
牧野を襲い負傷させ追い詰めたのは、黒と白の毛皮に赤と青のオッドアイを持ち、
コートに似た詰襟の黒い服に身を包んだ、爆乳の狼獣人の女性――セイファート。
右手には小型の自動拳銃マカロフが握られ、腰のベルトには鞘に収められた
長剣バスタードソードが差し込まれている。
「牧野さん、だっけ? あなたも知ってると思うけど、
私とあなたを含めた殺し合いの参加者全員に首輪がはめられている。
そしてこの首輪は無理矢理外そうとしたり、逃げようとしたり、ゲームの邪魔をしたり
すれば、ボンッ……この首輪がある限り脱出なんて不可能……。
だからこの首輪をどうにかするしか無いんだけど、そのために首輪の内部がどういう構造に
なっているかが知りたいの。それには首輪のサンプルが必要……でも、
外せないよね? だ、か、ら……」
「私を殺して、首を切り取って外すとでも……!?」
「ご明答♪」
やはり、この狼の頭を持った女は自分を殺す気なのだと、
そして、もうすぐそこまで死が迫っている事を牧野は再確認した。
「お喋りが過ぎたなぁ。それじゃあ、さよなら、牧野さん」
「い、嫌だ、待って、待ってくれ、ああ、死にたくな――」
牧野の命乞いをこれ以上聞く耳はセイファートには無く。
数発の銃声が響き、牧野慶は、死んだ。
牧野が死んだ事を確認すると、セイファートはマカロフの弾倉を交換し、
腰のベルトに差し、バスタードソードを鞘から引き抜いた。
数分後。
血塗れの首輪、牧野のデイパックを持った、若干の返り血を浴びたセイファートが、
部屋から廊下に出て扉を閉めた。
セイファートは、厳密に言えば進んで殺し合いをする意志は無い。
この殺し合いからの脱出方法を探す事が彼女の目的であり、
首輪の調査はその橋頭堡とも言うべき行動だった――が。
それらはあくまで「自分のため」であり、この殺し合いを潰そうとか、
殺し合いに巻き込まれた人々を救おうなどという感情は一切存在しない。
「さて……首輪のサンプルは手に入った……」
すぐに首輪を調査したい所ではあったが、
一つ屋根の下、死体と一緒と言うのは嫌だった。
「街の方へ行こうかな」
セイファートは東の方角にある市街地へ向かう事にした。
多くの住宅や建物が建ち並ぶ街ならば隠れる場所の一つや二つはあるだろう。
セイファートは荷物を引っ提げ、豪邸を後にした。
【牧野慶@SIREN 死亡】
【残り 41人】
【一日目/朝方/G-2南部豪邸付近】
【セイファート@オリキャラ・再登場組】
[状態]健康
[装備]USSRマカロフ(8/8)、バスタードソード
[所持品]基本支給品一式、USSRマカロフ予備マガジン(8×2)、
首輪(牧野慶)、デイパック(牧野慶)
[思考・行動]
基本:殺し合いからの脱出(自分優先)。首輪を外す。
1:他参加者と遭遇したら自己の生存率上昇のため思想関係無く殺すつもり。
[備考]
※個人趣味ロワ構想前からの参戦です。
※魔法が一切使えなくなっています。
※G-2南部豪邸二階に牧野慶の死体が放置されています。
※屋内で発砲したため銃声はほとんど外には漏れなかったようです。
≪支給品紹介≫
【USSRマカロフ】
1952年に旧ソ連で開発され、それまでのソ連軍制式拳銃トカレフに代わる
新たな制式拳銃となった自動拳銃。携帯性に優れ取り回しが良い。
【バスタードソード】
両手、片手持ちの両用の剣。
バスタード(Bastard)とは、「雑種(または私生児)」という意味。
最終更新:2010年07月30日 00:12