12話 狼少女は罪を感じ、氷女は獲物を捜す
灰色の毛皮を持った狼獣人の少女、エルフィは、C-2エリアの海沿いの道路を、
鎌石村方面に向かって歩いていた。
その手には支給品である自動拳銃コルトM1911A1が握られている。
右手に背の高い雑草が生えている草原、左手に狭い陸地を挟んで海が広がっている。
草原から誰か飛び掛かってくるのではと思い、ビクビクとしていた。
エルフィは一度、別の殺し合いで死んだ身の筈だった。
だが、自分は何故か生き返り再び殺し合いに参加させられていた。
「二回も死んで生き返るなんて……凄い経験してる私。いやそうじゃなくて、
これからどうしよう……」
ダアン!!
草原の方から銃声が響き、エルフィの思考は中断される。
「え、何」
ダアン!! ダアン!!
「うおあああああ!!」
銃声と、何者かの声がどんどん近付いてくる。
エルフィはすぐさま近くに乗り捨てられていた軽自動車の陰に隠れた。
次の瞬間、必死の形相の青年が雑草を掻き分け道路に飛び出してきた。
「やばい、洒落にならない! マジで洒落にならない!」
黄色いTシャツに濃い緑色の半ズボン姿の青年は転びそうになりながらも走り出す。
と、青年が出てきた辺りの雑草が再び掻き分けられ、今度は、
白いカッターシャツに焦げ茶色のズボンを着た別の青年が飛び出してきた。
「うおおおお!!」
白いカッターシャツの青年――倉持忠敏は手に持った拳銃、
ベレッタM84を目の前を逃げる青年――中山淳太に向けて発砲する。
ダアン!! ダアン!! ダアン!! ダアン!!
四発が放たれ、内二発が淳太の背中に命中した。
淳太の動きが止まる。口の端から血が流れ出している。
「あ……折角、生き返れたの、に……畜生……」
意味深な遺言を残し、淳太はうつ伏せに倒れ、息絶えた。
「ふう……こんな感じか、人を殺すって、良い気持ちじゃないな、当たり前か」
忠敏は名も知らぬ青年の死体に近付きながら言った。
そして青年――淳太のデイパックに手を伸ばそうとした時。
何と無く、背後に乗り捨てられていた軽自動車が気に掛かった。
軽自動車の方を振り向き、銃を構えながらゆっくりと近付く。
一歩、二歩、三歩、四歩、五歩、六歩目まで歩み寄った、その時。
軽自動車の陰から学生らしい、灰色の狼獣人の少女が飛び出した。
何かに怯えた表情で、両手で構えたそれを自分に向けていた。
ドンッ!! ドンッ!! ドンッ!!
それが銃だと気付いた時には、銃弾が忠敏の胸元に三発食い込み、血が噴き出した。
「あ、ぁぁ……やべ、ミスった」
軽自動車の陰に誰か隠れているのではと言う憶測自体は正しかったと証明されたが、
その隠れている人物が武器を持っていたら、そして殺し合いに乗っているのか、
それとも自衛のためか、はたまた正気を失っているのか、どんな理由にせよ、
こちらに襲い掛かってくる、と言う可能性までは余り考えていなかった。
そしてこの結末である。自分はもう死ぬ。
「馬鹿じゃん、俺、カッコ、悪っ……」
遠退く意識の中、忠敏は自分の醜態を自分で嘲笑った。
遂に人を殺してしまった。自分の命を守るためとは言え、
前の殺し合いの時でも奪わ無かった人命を自分の手で奪った。
銃口から煙を噴き出すコルトM1911A1を持つエルフィの両手は震えている。
エルフィには罪は無い。立派な正当防衛である。
だが「殺人」という現実は彼女の肩に重く圧し掛かる。
「……」
エルフィは二人の死体に目を背けながら、元々進んでいた方向に、
再び歩き始めた。
エルフィが断ち去って数十分後、青年二人の死体と荷物が放置されていた現場を、
一人の参加者が訪れた。
銀髪に、茶色のコートと、冬着の格好をした若い女性――アイスⅢ。
銃声を聞き付け、支給品の額当てと木刀を携え、やって来たのだが。
「銃で撃たれて殺された死体が二つ……何があったのでしょうか。
まあ、それはさておき……どうも、武器がそのままのようですねえ」
白いカッターシャツの青年の死体、その手元に落ちている自動拳銃を見て、
アイスは荷物が漁られる事無く放置されていると推測する。
黄色いTシャツの青年の死体からデイパックを剥ぎ取り中身を調べると、
基本支給品の他、コンバットナイフと睡眠薬が入っていた。
そして先の白いカッターシャツの青年の傍に落ちていたベレッタM84を拾い、
デイパックの中を調べると、ベレッタM84の予備弾倉3個が入っていた。
「拳銃……良いですね、貰いましょう」
死人にもはや武器や食糧など必要無い。
アイスは食糧、コンバットナイフ、睡眠薬、ベレッタM84の予備弾倉を抜き取り、
自分のデイパックに入れた。そして装備を木刀からベレッタM84に切り替える。
「これで殺し合いもやり易くなる筈……」
不敵な笑みを浮かべて、アイスは自分のデイパックを肩から提げ、
ベレッタM84を携え海沿いの道を進み始める。
この殺し合いには、勇者アレックスと仲間数人、魔王軍四天王のダーエロとムシャ、
自分と同じ魔法具現化の存在であり、親しく付き合っているウォーターⅠがいる。
しかし、この殺し合いで生き残れるのはたった一人。
自分はまだ死にたくは無い。自分の命と他人の命を天瓶に掛けどちらが重いかは明白。
知人達には悪いが、会ったら容赦無く殺す、アイスはそう決めていた。
【中山淳太@オリキャラ・再戦組 死亡】
【倉持忠敏@オリキャラ・新規組 死亡】
【残り53人】
【一日目/朝方/C-2海沿いの道路】
【エルフィ@自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]健康、罪悪感
[装備]コルトM1911A1(4/7)
[所持品]基本支給品一式、コルトM1911A1の予備弾倉(7×3)
[思考・行動]
基本:殺し合いはしたくない。死にたくない。
1:クラスメイトと合流?
[備考]
※本編死亡後からの参戦です。
※アイスⅢからかなり離れた場所を歩いています。
【アイスⅢ@VIPRPG】
[状態]健康
[装備]ベレッタM84(6/13)、額当て
[所持品]基本支給品一式、ベレッタM84の予備弾倉(13×3)、
木刀、コンバットナイフ、睡眠薬(12錠)、水と食糧(2人分)
[思考・行動]
基本:殺し合いに乗る。優勝を目指す。
1:知人に会っても容赦しない。
[備考]
※魔法に制限が掛かっている事を知りました。
※エルフィからかなり離れた場所を歩いています。
※キャラ設定はかなり作者のオリジナルが入っています。
※C-2一帯に銃声が響きました。
※C-2海沿いの道路に中山淳太、倉持忠敏の死体と、
二人のデイパック(水と食糧抜きの基本支給品一式入り)が放置されています。
≪支給品紹介≫
【コルトM1911A1】
1911年に米軍制式となった大型軍用自動拳銃。通称ガバメント。
登場から一世紀近く経った現在でもその洗練された外観や、シンプルで信頼性が高く、
バランスの取れた完成度の高い銃として多くの愛好家が存在する。
【ベレッタM84】
ベレッタ社が1976年に開発した中型自動拳銃。
ダブルカラムのため携帯するには少々大きめだが、癖が無いため
初心者や公的機関の制服組などによく使用されている。
【木刀】
木材で日本刀を模した物。日本の剣術で形稽古に使用するために作られ、
剣道、合気道においても素振りや形の稽古で使用される(実戦に用いられることもある)。
【額当て】
鉢巻の額の部分に薄い銅や鉄の板を入れた物。
【コンバットナイフ】
大型の軍用ナイフ。頑丈な作りで切れ味も鋭い。
【睡眠薬】
正式には「睡眠導入剤」。不眠状態や睡眠が必要な状態に用いる薬物。
睡眠時の緊張や不安を取り除き、寝付きを良くするなどの作用がある。
本ロワに登場する物は錠剤タイプ。
≪オリキャラ紹介≫
【名前】倉持忠敏(くらもち・ただとし)
【年齢】24
【性別】男
【職業】ゲーム製作会社プログラマ
【性格】軽い、恨みは根にもつタイプ
【身体的特徴】黒髪、中肉中背、やや垂れ目
【服装】白いカッターシャツに焦げ茶色のズボン
【趣味】テレビゲーム(主にRPGやホラーアクション)
【特技】プログラミング
【経歴】市販のRPG製作ソフトを使ってかなり凝った内容のRPGを製作し、
それをゲームコンテストに応募し賞を取った事がある
【備考】ツクラー的な人
ゲーム開始 |
エルフィ |
[[]] |
ゲーム開始 |
中山淳太 |
死亡 |
ゲーム開始 |
倉持忠敏 |
死亡 |
ゲーム開始 |
アイスⅢ |
[[]] |
最終更新:2010年07月03日 22:55