血みどろの輪舞曲（ロンド）

22話　血みどろの輪舞曲（ロンド）

緑色の髪に、露出の多い変わった巫女服という姿の少女、
東風谷早苗は、緩やかな坂になっている森林地帯を、坂を下るようにして歩いていた。
右手には鉈が握られ、周囲を警戒しながら歩みを進んでいた。

「とりあえず、どこか隠れられる場所を……」
「……！　やめて！　誰か助けて！」
「え！？　何？」

突然、少女の助けを求める声がどこからともなく響いてきた。
驚き、慌ててすぐ近くの茂みに隠れる早苗。
そして茂みの葉の間から様子を窺い始めた。

「はぁ、はぁ、はぁ」

森の奥から、黒いブレザーを着た、桃髪の少女が必死の形相で走ってくる。
良く見ると牛の角に耳、尻尾を持ち、爆乳である事から、いわゆる牛娘であろう。
見るからにとろそうだが正にその通りのようだった。

「ぐあっ！！」

突然、牛娘が悲鳴をあげて地面に倒れ込んだ。

「うぎゃああああ！！　痛い！！　痛いいいいい！！」

泣き叫ぶ牛娘の背中には小さな斧らしき物が刺さっていた。
そして牛娘が走ってきた道筋から、今度は青い髪に青いマント、
白い丈の短いローブを着た別の少女が現れた。
青髪の少女は地面でのたうち回る牛娘から斧を引き抜いた。

「ひぎいいっ！！　な、何で？　何でこんな事するのっ！？
私が何をしたって言うのぉ！？」

半狂乱になりながら牛娘は青髪の少女に問い質す。

「……あなたは何もしてないわ。あなたが悪い訳じゃない。だけど……。
私はこんな所で、死にたくないの」

青髪の少女は、右手に持っていた手斧をゆっくりと振り上げた。

「……！　嫌、嫌嫌嫌お願いやめて！！　死にたくない！　死にたく――」

ゴスッ。

振り上げられた斧が牛娘の脳天目掛け振り下ろされ、
とても嫌な音が響き、それ以降、牛娘の声は永遠に聞こえなくなった。

青髪の少女――女賢者ことフィーナは、
牛娘――中村アヤの衣服で手斧に付着した血と脳漿を拭き取り、
アヤの持っていたデイパックの中身を漁り始める。
基本支給品の他に出てきた物は、回転式拳銃コルト パイソンと予備弾だった。
説明書を読み、おおよその使い方を理解したフィーナは、
手斧と予備弾を自分のデイパックにしまい込み、コルト パイソンを装備した。

「……」

不意にフィーナが動きを止め、周囲に意識を巡らせる。
そして、気配を感じた箇所があった。

「ッ！」

気配を感じた茂みに向かって、フィーナはコルト パイソンを構え、
引き金を引いた。

ドォン！！　ドォン！！　ドォン！！

三発の銃声が森の中に響いた。
直後、狙った茂みの向こうへ遠退く足音と思しき音がフィーナの耳に入る。
誰かがいた事は確かだったようだが、どうやら逃げられたようだ。
無理に追う事も無いとフィーナは判断し、荷物を纏め、南の方角へ歩き始めた。

「はぁ……はぁ……はぁ……」

血が流れる左上腕を右手で――鉈はスカートに差し込んでいた――押さえながら、
当初向かっていた坂道を下る南方向では無く東方向へ走る早苗。
.357マグナム弾が貫通した銃創は今まで感じた事の無い激痛を早苗に与えるが、
先刻の青髪青マントの少女から少しでも離れるため、
苦痛に顔を歪めながらも早苗は走った。

「痛い……でも、もっと遠くまで、行かなきゃ……！」

茂みに隠れながら、目の前で人が殺される場面を実際に目撃し、
早苗は自分が置かれた状況を再確認する。

殺し合い――バトルロワイアルという死のゲームのプレイヤーだという事を。

あの小部屋で、モニター越しに少女の首にはめられた、
自分の首にはめられている物と恐らく同じ代物の首輪が爆破され、
喉笛に大穴が空いた少女が血を撒き散らして倒れていく映像を
見せられた時も、ゲームが始まり気が付いた時には見知らぬ森の中で、
傍には黒いデイパック、中には地図や名簿、コンパスと言った基本的な物と、
今自分が武器として装備している鉈が入っている事を確認した時も、
早苗は今一つ実感が湧いていなかった、が。

惨劇を実際に目撃する事でようやく自覚するに至った。

いくら走っただろうか、気が付けば早苗は森を抜けていた。

「はぁ、はぁ、こ、ここは？」

息を整えながら前方を見る早苗。
そこには、古めかしい木造の体育館が建っていた。

「ここは……学校、かな？」

地図を取り出して見ると、エリアE-5に小中学校とある。
周囲の地形やコンパスによる方角などから推測すると、
小中学校が現在位置である事はほぼ間違い無かった。

「ここなら隠れられる場所も多いかも……って言うか誰かいるかも」

決して大きくない規模の敷地と建物だがそれでも一人で回るには広い。
他の参加者がいる可能性も高い。
そして、その者が先程の少女と同じく殺し合いに乗っている、という可能性も。

「……出来れば誰もいないで下さい」

早苗は傷の手当ても済ますべく、小中学校の校内へ足を進めた。

【中村アヤ＠オリキャラ・再登場組　　死亡】
【残り　　35人】

【一日目/朝方/E-5中央部小中学校敷地内】
【東風谷早苗＠東方Project】
[状態]肉体的疲労（中）、左上腕に銃創（出血多）
[装備]鉈
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]
　基本：殺し合いはしたくない。生き残りたい。
　1：小中学校内で手当て出来る道具と隠れられる場所を探す。
[備考]
　※特殊能力は一切使えなくなっています。
　※女賢者（フィーナ、名前は知らない）の容姿を記憶しました。

【一日目/朝方/E-4森南部】
【女賢者＠ドラゴンクエストⅢ】
[状態]健康、F-4方面へ移動中
[装備]コルト パイソン（3/6）
[所持品]基本支給品一式、.357マグナム弾（18）、手斧
[思考・行動]
　基本：殺し合いに乗る。優勝を目指す。
　1：女勇者（エリス）、女遊び人（ミルカ）とは出来れば会いたくない。
[備考]
　※ゾーマ討伐以降の参戦です。
　※呪文は一切使えなくなっています。
　※本名は「フィーナ」という設定です。

※E-4一帯に銃声が響きました。
※E-4森南部に中村アヤの死体とデイパック（基本支給品一式入り）が
放置されています。

≪支給品紹介≫
【鉈】
枝打ち、木を削る、雑草を払う、動物を解体するなどの目的で使われる刃物。
刀身が厚く丈夫で、刀身の重さを利用して叩き切る。

【手斧】
片手で扱えるよう作られた小型の斧。

【コルト パイソン】
1955年に登場した.357マグナム弾を使用する回転式拳銃。
芸術品を思わせる形状ながら協力な.357マグナム弾の発射に耐えうる剛性を持ち、
「リボルバーのロールスロイス」と呼ばれている。

もしも弟子五郎と狼獣人の少女	時系列順	ちょっと危ないケモ竜娘
もしも弟子五郎と狼獣人の少女	投下順	ちょっと危ないケモ竜娘

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ゲーム開始	女賢者	集え、学び舎に