幸福(プラス)と不幸(マイナス)

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(人吉くん…球磨川さん…) 江迎怒江はずっと考えていた。 病院に運ばれていたはずの自分が、なぜここに居るのかということも。 その原因となった腹部の傷が跡形もなくなっていることも。 そして、自分が何をすべきなのかも。 (私は、どうしたらいいの…?) 人吉善吉なら、殺し合いを止めるために動くだろう。 球磨川禊なら、殺し合いをめちゃくちゃにするために動くだろう。 それは、どちらも他人のための行動でありながら、まったく逆の行為。 一つは、人の幸せ(プラス)を守るための行為。 もう一つは、人に不幸(マイナス)を知ってもらうための行為。 ならば、自分はどう動く。 過負荷(マイナス)でありながら幸せになることを選んだ自分は、何をすればいいのだろうか。 人吉善吉。自分に、毎日味噌汁を作ってくれと言った男。 球磨川禊。転校から会計戦まで、自分を導いてくれた男。 「私は、なにをすればいいの…?」 「くだらないわね、そんなこと」 気が付いたら、数メートル先に華奢な女性が立っていた。 うすい着物に身を包んだ、二十代くらいの女性。 「何をするのかわからないなら、最初から何もしなければいいのよ」 女は言う。 「それすらできないというのなら」 女がこちらに近づいてくる。 「死になさい」 女の爪が急激に伸び、江迎の体を引き裂いた。 「あら?」 女―鑢七実はきょとんとした。 『忍法爪合わせ』で伸ばした爪は、江迎の肩から腹までを真っ直ぐに引き裂く筈だった。 しかし、実際には爪は肩のところで止まってしまっている。 そして、七実の指のみが、腹の位置に添えられている。 「ふうん、そういうこと」 至極つまらなそうに、七実は言う。 肩で止まったままの爪は、ドロドロに溶解していた。 「いいえ、この匂いは溶解、というより腐敗ね」 「そう…ですよ」 あの時、肩に爪が触れた瞬間に、江迎は爪へと手を伸ばしたのだ。 江迎怒江の持つ過負荷、『荒廃した腐花(ラフラフレシア)』。 それは、あらゆるものを腐敗、劣化させることができる。 オン・オフが可能になったとはいえ、いまだその威力は健在。 爪を腐らせ、指から引きはがすことなど容易に行えることなのだ。 「腐らせるなんて、なかなかいいわね。いいえ、悪いのかしら」 ふらりと、七実は江迎から一旦距離を置く。腐り落ちた爪が、目に見える速さで伸びていく。 「だから、もう一度『見せて』くれる?」 戦闘が、始まる。 「『荒廃した腐花(ラフラフレシア)』狂い咲きバージョン!」 江迎が土に手を触れた瞬間、地面から何体もの人型植物が出現する。 『荒廃した腐花(ラフラフレシア)』狂い咲きバージョン・タイプ『マンドラゴラ』。会計戦で球磨川に教えてもらった技術の応用。 土を腐らせることにより腐葉土を生成し、植物を操り人型に成長させたのだ。 それを、七実はその場から動くことなく破壊していく。 襲いかかる植物を、ただ無作為に破壊していく。 江迎は思う。 この女は、危険だと。 この女は、自分を殺すことを雑草毟りくらいにしか考えていない。 それはきっと、人吉や球磨川と対峙した時も同じであろう。 そんなことは絶対にさせない。 この女は、自分が今ここで殺す。 戦闘が始まってはや二十分ほど。 その間に、江迎は七実の攻撃パターンをある程度見抜いていた。 見抜き、近づけそうで近づけない距離から攻撃を繰り返していた。 しかし、このままではいずれ体力切れで追いつめられるのは確実。 だから、機会をうかがう。 支給品を使う、絶好の機会を。 当たりそうになった攻撃を避けるように、七実が大きく後ろへ飛んだ。 (今!) そう思った江迎の行動は早かった。 両腕を素早く袋の中に入れると、支給品―トンプソンM1A1を構える。 引き金を引き、全弾を七実へと発射する。 舞い上がる粉塵。倒れる七実。 終わった、と江迎は確信する。 しかし、 「そう、『これ』はそうやって使うのね」 逆再生のように起き上がった七実が、江迎と同じように銃を構える。 そして、 江迎の腹を、弾丸が引き裂いた。 「どう…して…?」 血を吐き地面に倒れながら、江迎は疑問に思っていた。 あの時、確かに銃弾は七実に当たったのではなかったのか。 当たっていないのなら、なぜ倒れたのか。 江迎は知らない。 七実が『忍法足軽』で銃弾が効かなかったことを。 倒れたのは、単に足元の袋へ手を伸ばすためだと。 七実が、江迎へと近づいてくる。 「これの使い方と面白いものを『見せて』くれてありがとう。お礼に」 七実が、江迎の顔へと手を伸ばす。 「あなたから『見せて』もらったもので殺してあげる」 手が触れた瞬間、江迎の顔がぐじゅりと腐敗を始めた。 「ああああああああああああ!!!」 痛みと苦しみが江迎の思考のすべてを塗りつぶす。 確信する。自分は、死ぬのだと。 (それ…でも…!) 自分は生きられない。 ならば、せめて生かすことに腐心しよう。 せめて、他の誰かが彼女に殺されない様にしよう。 七実の左腕を、江迎が握る。 江迎の顔と同じく、七実の腕も腐敗が始まる。 「…やめなさい」 七実が言う。しかし、江迎は離さない。 手を広げ、顔をさらに腐らせる。 それでも、江迎は離さない。 そこで七実は気づいた。 江迎がすでに、死んでいることに。 それでも、江迎は離さない。 「…ふう」 しかたない、とばかりに七実は右手の爪を『爪合わせ』で伸ばす。 そして、ちゅうちょなく左腕を切断した。 江迎の服をやぶり、片手で器用に止血を済ませると、七実は江迎の顔を踏みつぶす。 「草が、草が、草が、草が」 執拗に、完全に原型をとどめなくなるまで踏み続ける。 やがて、興味がなくなったとばかりに江迎から離れると、袋だけを回収し歩き出す。 「はあ、最初から腕一本失うなんて、先が思いやられるわね」 彼女は目指す。弟―七花とその所有者―とがめとの再会を。 それがなされるかどうかは、まだ、誰も知らない。 &color(red){【江迎怒江@めだかボックス、死亡】} ※江迎怒江の死体の足元にトンプソンM1A1(0/20)@現実が落ちています 【H-8・森/一日目・夜中】 【鑢七実@刀語】 [状態]左腕欠損、疲労(大) [装備]64式小銃(17/20)@現実 [道具]基本支給品×2、トンプソンM1A1用予備マガジン×2、ランダム支給品0~4 [思考]基本:七花ととがめさんを探す 1:それ以外の人間は一応殺しておく ※参戦時期は四話~六話の間 ※身稽古で『荒廃した腐花(ラフラフレシア)』と銃器の使い方を習得しました 【トンプソンM1A!@現実】 江迎怒江に支給。125万丁が生産された機関銃。今回は予備マガジン2個をつけて支給。 【64式小銃@現実】 鑢七実に支給。日本製のライフル銃。予備マガジンは支給されていない。 『荒廃した腐花(ラフラフレシア)』 江迎怒江の持つ過負荷(マイナス)。あらゆる物体を腐敗、劣化させることが可能。 応用で、植物を操る『荒廃した腐花(ラフラフレシア)』狂い咲きバージョンがある。 今回は、参戦時期が会計戦後なのでオン・オフが可能。 |[[フィリップのパーフェクト対主催教室]]|投下順|[[]]| |&color(cyan){実験開始}||&color(red){死亡}| |&color(cyan){実験開始}||[[]]|
(人吉くん…球磨川さん…) 江迎怒江はずっと考えていた。 病院に運ばれていたはずの自分が、なぜここに居るのかということも。 その原因となった腹部の傷が跡形もなくなっていることも。 そして、自分が何をすべきなのかも。 (私は、どうしたらいいの…?) 人吉善吉なら、殺し合いを止めるために動くだろう。 球磨川禊なら、殺し合いをめちゃくちゃにするために動くだろう。 それは、どちらも他人のための行動でありながら、まったく逆の行為。 一つは、人の幸せ(プラス)を守るための行為。 もう一つは、人に不幸(マイナス)を知ってもらうための行為。 ならば、自分はどう動く。 過負荷(マイナス)でありながら幸せになることを選んだ自分は、何をすればいいのだろうか。 人吉善吉。自分に、毎日味噌汁を作ってくれと言った男。 球磨川禊。転校から会計戦まで、自分を導いてくれた男。 「私は、なにをすればいいの…?」 「くだらないわね、そんなこと」 気が付いたら、数メートル先に華奢な女性が立っていた。 うすい着物に身を包んだ、二十代くらいの女性。 「何をするのかわからないなら、最初から何もしなければいいのよ」 女は言う。 「それすらできないというのなら」 女がこちらに近づいてくる。 「死になさい」 女の爪が急激に伸び、江迎の体を引き裂いた。 「あら?」 女―鑢七実はきょとんとした。 『忍法爪合わせ』で伸ばした爪は、江迎の肩から腹までを真っ直ぐに引き裂く筈だった。 しかし、実際には爪は肩のところで止まってしまっている。 そして、七実の指のみが、腹の位置に添えられている。 「ふうん、そういうこと」 至極つまらなそうに、七実は言う。 肩で止まったままの爪は、ドロドロに溶解していた。 「いいえ、この匂いは溶解、というより腐敗ね」 「そう…ですよ」 あの時、肩に爪が触れた瞬間に、江迎は爪へと手を伸ばしたのだ。 江迎怒江の持つ過負荷、『荒廃した腐花(ラフラフレシア)』。 それは、あらゆるものを腐敗、劣化させることができる。 オン・オフが可能になったとはいえ、いまだその威力は健在。 爪を腐らせ、指から引きはがすことなど容易に行えることなのだ。 「腐らせるなんて、なかなかいいわね。いいえ、悪いのかしら」 ふらりと、七実は江迎から一旦距離を置く。腐り落ちた爪が、目に見える速さで伸びていく。 「だから、もう一度『見せて』くれる?」 戦闘が、始まる。 「『荒廃した腐花(ラフラフレシア)』狂い咲きバージョン!」 江迎が土に手を触れた瞬間、地面から何体もの人型植物が出現する。 『荒廃した腐花(ラフラフレシア)』狂い咲きバージョン・タイプ『マンドラゴラ』。会計戦で球磨川に教えてもらった技術の応用。 土を腐らせることにより腐葉土を生成し、植物を操り人型に成長させたのだ。 それを、七実はその場から動くことなく破壊していく。 襲いかかる植物を、ただ無作為に破壊していく。 江迎は思う。 この女は、危険だと。 この女は、自分を殺すことを雑草毟りくらいにしか考えていない。 それはきっと、人吉や球磨川と対峙した時も同じであろう。 そんなことは絶対にさせない。 この女は、自分が今ここで殺す。 戦闘が始まってはや二十分ほど。 その間に、江迎は七実の攻撃パターンをある程度見抜いていた。 見抜き、近づけそうで近づけない距離から攻撃を繰り返していた。 しかし、このままではいずれ体力切れで追いつめられるのは確実。 だから、機会をうかがう。 支給品を使う、絶好の機会を。 当たりそうになった攻撃を避けるように、七実が大きく後ろへ飛んだ。 (今!) そう思った江迎の行動は早かった。 両腕を素早く袋の中に入れると、支給品―トンプソンM1A1を構える。 引き金を引き、全弾を七実へと発射する。 舞い上がる粉塵。倒れる七実。 終わった、と江迎は確信する。 しかし、 「そう、『これ』はそうやって使うのね」 逆再生のように起き上がった七実が、江迎と同じように銃を構える。 そして、 江迎の腹を、弾丸が引き裂いた。 「どう…して…?」 血を吐き地面に倒れながら、江迎は疑問に思っていた。 あの時、確かに銃弾は七実に当たったのではなかったのか。 当たっていないのなら、なぜ倒れたのか。 江迎は知らない。 七実が『忍法足軽』で銃弾が効かなかったことを。 倒れたのは、単に足元の袋へ手を伸ばすためだと。 七実が、江迎へと近づいてくる。 「これの使い方と面白いものを『見せて』くれてありがとう。お礼に」 七実が、江迎の顔へと手を伸ばす。 「あなたから『見せて』もらったもので殺してあげる」 手が触れた瞬間、江迎の顔がぐじゅりと腐敗を始めた。 「ああああああああああああ!!!」 痛みと苦しみが江迎の思考のすべてを塗りつぶす。 確信する。自分は、死ぬのだと。 (それ…でも…!) 自分は生きられない。 ならば、せめて生かすことに腐心しよう。 せめて、他の誰かが彼女に殺されない様にしよう。 七実の左腕を、江迎が握る。 江迎の顔と同じく、七実の腕も腐敗が始まる。 「…やめなさい」 七実が言う。しかし、江迎は離さない。 手を広げ、顔をさらに腐らせる。 それでも、江迎は離さない。 そこで七実は気づいた。 江迎がすでに、死んでいることに。 それでも、江迎は離さない。 「…ふう」 しかたない、とばかりに七実は右手の爪を『爪合わせ』で伸ばす。 そして、ちゅうちょなく左腕を切断した。 江迎の服をやぶり、片手で器用に止血を済ませると、七実は江迎の顔を踏みつぶす。 「草が、草が、草が、草が」 執拗に、完全に原型をとどめなくなるまで踏み続ける。 やがて、興味がなくなったとばかりに江迎から離れると、袋だけを回収し歩き出す。 「はあ、最初から腕一本失うなんて、先が思いやられるわね」 彼女は目指す。弟―七花とその所有者―とがめとの再会を。 それがなされるかどうかは、まだ、誰も知らない。 &color(red){【江迎怒江@めだかボックス、死亡】} ※江迎怒江の死体の足元にトンプソンM1A1(0/20)@現実が落ちています 【H-8・森/一日目・夜中】 【鑢七実@刀語】 [状態]左腕欠損、疲労(大) [装備]64式小銃(17/20)@現実 [道具]基本支給品×2、トンプソンM1A1用予備マガジン×2、ランダム支給品0~4 [思考]基本:七花ととがめさんを探す 1:それ以外の人間は一応殺しておく ※参戦時期は四話~六話の間 ※身稽古で『荒廃した腐花(ラフラフレシア)』と銃器の使い方を習得しました 【トンプソンM1A!@現実】 江迎怒江に支給。125万丁が生産された機関銃。今回は予備マガジン2個をつけて支給。 【64式小銃@現実】 鑢七実に支給。日本製のライフル銃。予備マガジンは支給されていない。 『荒廃した腐花(ラフラフレシア)』 江迎怒江の持つ過負荷(マイナス)。あらゆる物体を腐敗、劣化させることが可能。 応用で、植物を操る『荒廃した腐花(ラフラフレシア)』狂い咲きバージョンがある。 今回は、参戦時期が会計戦後なのでオン・オフが可能。 |[[フィリップのパーフェクト対主催教室]]|投下順|[[]]| |&color(cyan){実験開始}|江迎怒江|&color(red){死亡}| |&color(cyan){実験開始}|鑢七実|[[]]|

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