おじいちゃんのバトロワ

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第十四話≪おじいちゃんのバトロワ≫ 何て事だ。わし――山本良勝(やまもと・よしかつ)は、今日は孫と一緒に映画館へ行くはずじゃった。 だが気が付いたら全く知らない教室にいて、殺し合いをしろと言われた。 一人の男が首輪を爆破されて殺され、そして次の瞬間にはこの砂浜に倒れておった。 「最後の一人になるまで殺し合え、か」 そんな事は無理だ。わしにそんな度胸は無い。 日がな毎日縁側で近所の子供に将棋を教えたりしているこの77歳の隠居ジジィに何という過酷な仕打ちじゃ。 だが最後の一人になれなければ”死”あるのみ。 別にこの年になって死ぬのが怖い訳じゃないが、せめて布団の上で死にたかった。 こんな全く知らない土地の土になるのは嫌じゃ! 絶対にこんな馬鹿げたゲームから脱出するぞ! ん、脇に黒いバッグが……おおそう言えば支給品があるとか言っておったな。 バッグを開けて中身を調べる。せめて身を守れる物が入っていれば、と、思っていたが、 地図や懐中電灯といった基本的な物の他に入っていたのは双眼鏡ただ一つ。 何て事じゃ、武器は自弁しろと言うのか!? まあ、様子を見たりするのには使えそうじゃが……。 試しに覗いて見る。おお、遠くがよく見える見える。まあ双眼鏡だから当たり前じゃがな。 水平線の方を見ようとした時に、わしは妙な物を発見した。 「ん? あそこに島があるな……何か建物もあるようじゃが」 海の向こう数十キロ先じゃろうか、小さい島があるんじゃ。よく見ると白い建物もあるようじゃが……。 遠すぎて双眼鏡でもよく見えんな。 地図で確認する。おお、ゲーム会場も島だったか。うむ、今自分がいるのは、どうやら島の東にある砂浜地帯のようじゃな。 海の反対側を見ると少し遠くに草に埋もれた廃屋群らしき物が見えるから多分E-8が現在位置じゃろう。 遠くに見える島は地図には載っておらんな。会場の外か……まあ余り気にする事も無かろうて。 「とにかくここは目に付き過ぎて危険じゃな。あの廃屋群へ行ってみるか」 こんな開けた場所にいたらいつ襲われるか分かったものじゃない。 とりあえず武器も持っておらんし、身を潜めよう。あの廃屋群なら何かしら隠れられる場所はあるじゃろ。 わしはバッグを持って廃屋群を目指して歩き始めた。 しばらく歩いて、廃屋群に入った。 しかし意外と遠かったのう……この年で長距離歩くのは辛い物があるんじゃが。 廃屋は七、八軒あり、和風建築と洋風建築があるが、どれもガラスは割れ、屋根に穴が空いたりしていて酷い状態だ。 一番状態が良さそうな洋風建築の二階建ての廃屋に入る。 廃屋の中は埃っぽく、カビ臭い。この空気はかなり肺に悪いと思うが、生きるか死ぬかの状況で贅沢は言っていられん。 リビングに入ると、床には古びた雑誌や割れた食器、椅子の残骸等が散乱し、天井は雨漏りで腐り抜け落ちている有様。 よく見れば床も抜けており、とても休める状態では無い。 仕方無く二階へ上がり、階段を上がった所の一番手近な部屋に入る。 ここは夫婦の寝室だったのだろうか、大人用のベッドが二つあった。 しかしこの部屋も天井が抜け落ち床に敷かれた絨毯の上に苔が生えている有様。 寝室を出て奥にあるもう一つの部屋に入る。 ここは子供部屋か何かだったようだ。小さなベッドと勉強机があった。 この部屋は他の部屋に比べれば大分マシじゃな。床も天井も抜けておらんし、ガラス戸も残っている。 よし、とりあえずここに身を潜めるとしよう。 バッグを床に置き、入口の扉を閉め、わしは机の椅子に腰かけた。長距離を歩いたおかげで足が痛いわ。全く。 「ん……」 ふと勉強机に目をやる。幾つか教科書とノートが放置されていた。 ノートには名前が書かれている。『四年一組 岡田朋彦』とある。 どうやらこの家に住んでいたのは岡田という一家らしいな。 四年……小学校四年という事か? だとすれば丁度孫と同じ年齢だな。 まあこの家の荒廃ぶりからしてこの岡田朋彦という人物は恐らくかなりの大人になっているはずだが。 孫……わしはまた妻や息子夫婦、孫に会えるのだろうか。 もしかしたら、もう会えぬかもしれん。一応、遺書は書いてはおいたが。 「いや、絶対帰る。帰るぞわしは」 孫と映画館に行く約束、破る訳にはいかん。 それに50年もの間、苦楽を共にしてきた妻や老後の世話をしてくれる息子夫婦に何の礼も無く死ぬ訳にはいかん。 そう、わしはまだ、死ぬ訳にはいかない。 【一日目/明朝/E-7廃屋群・岡田家二階子供部屋】 【山本良勝】 [状態]:健康 [装備]:無し [所持品]:基本支給品一式、双眼鏡 [思考・行動] 基本:殺し合いからの脱出。 1:しばらく廃屋に身を潜める。 2:仲間を集める。 3:首輪を外す方法を探す。 【備考】 ※名簿を確認していません。 ※バトルロワイアル会場の東部数十キロ離れた所に小さな離島があり、建物があるようですが、 このバトルロワイアルと何か関連があるのかは今の所不明です。 |Back:013[[恐ろしい程ルナティック]]|時系列順で読む|Next:015[[遭遇]]| |Back:013[[恐ろしい程ルナティック]]|投下順で読む|Next:015[[遭遇]]| |&color(cyan){GAME START}|山本良勝|Next:[[]]|
第十四話≪おじいちゃんのバトロワ≫ 何て事だ。わし――山本良勝(やまもと・よしかつ)は、 今日は孫と一緒に映画館へ行くはずじゃった。 だが気が付いたら全く知らない教室にいて、殺し合いをしろと言われた。 一人の男が首輪を爆破されて殺され、そして次の瞬間にはこの砂浜に倒れておった。 「最後の一人になるまで殺し合え、か」 そんな事は無理だ。わしにそんな度胸は無い。 日がな毎日縁側で近所の子供に将棋を教えたりしている この77歳の隠居ジジィに何という過酷な仕打ちじゃ。 だが最後の一人になれなければ”死”あるのみ。 別にこの年になって死ぬのが怖い訳じゃないが、せめて布団の上で死にたかった。 こんな全く知らない土地の土になるのは嫌じゃ! 絶対にこんな馬鹿げたゲームから脱出するぞ! ん、脇に黒いバッグが……おおそう言えば支給品があるとか言っておったな。 バッグを開けて中身を調べる。せめて身を守れる物が入っていれば、と、思っていたが、 地図や懐中電灯といった基本的な物の他に入っていたのは双眼鏡ただ一つ。 何て事じゃ、武器は自弁しろと言うのか!? まあ、様子を見たりするのには使えそうじゃが……。 試しに覗いて見る。おお、遠くがよく見える見える。まあ双眼鏡だから当たり前じゃがな。 水平線の方を見ようとした時に、わしは妙な物を発見した。 「ん? あそこに島があるな……何か建物もあるようじゃが」 海の向こう数十キロ先じゃろうか、小さい島があるんじゃ。 よく見ると白い建物もあるようじゃが……。 遠すぎて双眼鏡でもよく見えんな。 地図で確認する。おお、ゲーム会場も島だったか。 うむ、今自分がいるのは、どうやら島の東にある砂浜地帯のようじゃな。 海の反対側を見ると少し遠くに草に埋もれた廃屋群らしき物が見えるから 多分E-8が現在位置じゃろう。 遠くに見える島は地図には載っておらんな。 会場の外か……まあ余り気にする事も無かろうて。 「とにかくここは目に付き過ぎて危険じゃな。あの廃屋群へ行ってみるか」 こんな開けた場所にいたらいつ襲われるか分かったものじゃない。 とりあえず武器も持っておらんし、身を潜めよう。 あの廃屋群なら何かしら隠れられる場所はあるじゃろ。 わしはバッグを持って廃屋群を目指して歩き始めた。 しばらく歩いて、廃屋群に入った。 しかし意外と遠かったのう……この年で長距離歩くのは 辛い物があるんじゃが。 廃屋は七、八軒あり、和風建築と洋風建築があるが、 どれもガラスは割れ、屋根に穴が空いたりしていて酷い状態だ。 一番状態が良さそうな洋風建築の二階建ての廃屋に入る。 廃屋の中は埃っぽく、カビ臭い。この空気はかなり肺に悪いと思うが、生きるか死ぬかの状況で贅沢は言っていられん。 リビングに入ると、床には古びた雑誌や割れた食器、椅子の残骸等が散乱し、天井は雨漏りで腐り抜け落ちている有様。 よく見れば床も抜けており、とても休める状態では無い。 仕方無く二階へ上がり、階段を上がった所の一番手近な部屋に入る。 ここは夫婦の寝室だったのだろうか、大人用のベッドが二つあった。 しかしこの部屋も天井が抜け落ち 床に敷かれた絨毯の上に苔が生えている有様。 寝室を出て奥にあるもう一つの部屋に入る。 ここは子供部屋か何かだったようだ。小さなベッドと勉強机があった。 この部屋は他の部屋に比べれば大分マシじゃな。床も天井も抜けておらんし、ガラス戸も残っている。 よし、とりあえずここに身を潜めるとしよう。 バッグを床に置き、入口の扉を閉め、わしは机の椅子に腰かけた。 長距離を歩いたおかげで足が痛いわ。全く。 「ん……」 ふと勉強机に目をやる。幾つか教科書とノートが放置されていた。 ノートには名前が書かれている。『四年一組 岡田朋彦』とある。 どうやらこの家に住んでいたのは岡田という一家らしいな。 四年……小学校四年という事か? だとすれば丁度孫と同じ年齢だな。 まあこの家の荒廃ぶりからしてこの岡田朋彦という人物は恐らく かなりの大人になっているはずだが。 孫……わしはまた妻や息子夫婦、孫に会えるのだろうか。 もしかしたら、もう会えぬかもしれん。一応、遺書は書いてはおいたが。 「いや、絶対帰る。帰るぞわしは」 孫と映画館に行く約束、破る訳にはいかん。 それに50年もの間、苦楽を共にしてきた妻や老後の世話をしてくれる 息子夫婦に何の礼も無く死ぬ訳にはいかん。 そう、わしはまだ、死ぬ訳にはいかない。 【一日目/明朝/E-7廃屋群・岡田家二階子供部屋】 【山本良勝】 [状態]:健康 [装備]:無し [所持品]:基本支給品一式、双眼鏡 [思考・行動] 基本:殺し合いからの脱出。 1:しばらく廃屋に身を潜める。 2:仲間を集める。 3:首輪を外す方法を探す。 【備考】 ※名簿を確認していません。 ※バトルロワイアル会場の東部数十キロ離れた所に小さな離島があり、建物があるようですが、 このバトルロワイアルと何か関連があるのかは今の所不明です。 |Back:013[[恐ろしい程ルナティック]]|時系列順で読む|Next:015[[遭遇]]| |Back:013[[恐ろしい程ルナティック]]|投下順で読む|Next:015[[遭遇]]| |&color(cyan){GAME START}|山本良勝|Next:027[[”Old Army”~老兵は死なず~]]|

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