『業』

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『業』」(2011/03/29 (火) 23:44:30) の最新版変更点

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 目を覚ますと其処には良く分からない光景が広がっていた。  薄暗い部屋に何人かの人の気配。  立ちあがろうとするも両手両脚が椅子に固定されていて動く事ができない。  動かせるのは首ぐらいで、それでも左右に振るので精一杯だ。  暗い部屋で四肢が拘束されているという状況に、思考が沸騰しかける。  ここは何処だ?  何がどうなっている?  誘拐? 拉致?  何が目的で僕を捕まえたんだ?  ?マークが浮かんでは消える。  僕―――梶隆臣は、殆どパニック状態になっていた。  唯一動く首を必死に左右へ回し、状況を把握しようとする。  だが、駄目であった。  纏まらない思考で何をしようが意味がない。  何となくではるが、僕は察知した。  これは何かに巻き込まれている、これは異常事態だ、と。  ここ最近での経験が語っているのだ。  何か良くない事が、とても良くない事が始まろうとしている。 「全員起きたようだな」  そして、それが始まった。  この一言がゲームの開始を告げる合図であった。  唐突に灯った照明が暗闇を照らし、僕達がいる空間を明晰にする。  小学校の体育館のような空間に、僕を含めて四十人ばかりの人々がいた。  誰もが僕と同じ様に手足を椅子に縛り付けられている。  その光景は異常の一言だった。 「俺は切間撻器。賭朗・零號立会人だ。今回のゲームを取り仕切るにあたり、ルールの説明をさせてもらう」  そうこうしている内に事態は進展していく。  賭朗。  立会人。  零號。  その言葉の数々は僕にも覚えのあるものだ。  だが、いきなり、こんな形で、ゲーム?  賭朗が立ち会うゲームとは、対戦相手と対戦相手が合意を取った上で行われる。  でも、僕は何も知らされていない。  そもそもこの人数でゲームを行うのか?  全てが全て異例づくめ。  僕の理解が追い付く事はない。 「このゲームは二人一組のチームで行って貰う。つまりは『相棒』だ。『相棒』と『プレイヤー』は一蓮托生。何をするにも『相棒』の事を思考にいれながらゲームは進行していくだろう」  そんな僕を置いて切間立会人は説明を続けていく。  ゲームはコンビで行うものらしく、恐らくは十数組のコンビで競っていくものなのだろう。  僕だって色々なゲームを行い生き抜いてきた。  その中では自ら命を賭けた事もあったし、卑劣なイカサマを破り勝利した事もある。  ゲームに関しては、以前と比べてそれなりの自信があった。 「では、先にゲームの内容について話してしまおう。今回のゲームは、品のない言い方をさせて貰えば―――殺し合いだ。最後の一組か最後の一人になれば勝利となる」  だが、その自信も一瞬で崩れ去る事となる。  ころしあい?  コロシアイ?  殺し合い?  仮にも法治国家である日本で、殺し合い?  殺し合いが、ゲーム?  そりゃ今までだって数多の異質なゲームを経験してきた。  でも……殺し合い?  ゲームに敗北し、罰として死に至るのではなく?  殺し合い??? 「君達の腕に時計が巻かれているだろう? そこに二時間毎に『相棒』の情報が伝達される。健康体か、怪我をしているか、満身創痍か、死んでしまっているか……その時により送られてくる情報には違いがあるだろう」  混乱する僕はその後の切間立会人の言葉を上手く聞き取れない。  何が何だか分からない。 「気付いてる奴もいるだろうが、お前たちが寝てる間に首輪を付けさせてもらった。その首輪から情報は送信される。それと首輪には爆薬が仕込まれていてな。ま、人一人なら容易く即死させられる代物だ。  二時間毎の定時報告にて『相棒』が死亡していた場合、その定時報告から六時間後に『プレイヤー』の首輪は爆発する。ゲームオーバーだ」  首元に手を触れると、そこには確かにヒヤリとした金属の触感がある。  軽く引っ張ってみるがビクともしない。  さっきまでは気にならなかったのに、認識した途端なんとなく息苦しくなってくる。 「ゲームオーバーを回避したければ他の参加者の首輪を集めろ。首輪は一つにつき1ポイントが加算される。2ポイント集めれば『プレイヤー自身』か『相棒』の怪我を完全に回復させる『回復コマンド』、3ポイント集めれば『プレイヤー自身』か『相棒』の首輪の爆発機能を止められる『首輪爆発解除コマンド』が使用できるぞ。  『回復コマンド』はどんな致命傷だろうと生きてさえすれば完全に回復する。その点については約束しよう」  切間立会人はつらつらと事務報告のように、ルールを語っていく。  その表情は至って真剣であり、実は冗談でしたといった雰囲気は微塵も感じない。 「各コマンドはポイントを貯めれば腕時計に現れる。また首輪を手にした時点で、自動的にポイントは加算される。自分が有するポイント数は腕時計に常時表示されている。また一旦入手した首輪を手放そうと、ポイントは減少したりしないので心配せず首輪を集めろ。  それとお前達の装備には手を付けていない。素手もあり、武器もあり、魔術や超能力、ギアスに悪魔の実の能力といった異能も勿論ありだ。気兼ねせず使え。それと装備の譲渡、強奪は自由になっている。  また六時間毎に先の定時報告とはまた別に放送を行い、それまでの死者を発表させてもらうぞ。各々絶望なり、歓喜なりを味わってくれ」  僕は切間立会人が嘘を吐いているようには思えなかった。  傷を治すやら異能やらと、言葉の端々に意味不明な事を混ぜているにも関わらず、だ。 「会場は賭朗が所有する3km四方の市街地だ。会場と枠されている空間から出ると警告が鳴る。それも無視して進んだ場合は首輪がドカンだ。会場の地図は支給する。それと食糧もな。まあ、そう長引く事もないだろうから、そんなに大量ではないがな。  ……それと優勝者には特典が贈与される。特典の内容は『好きな願い事を何でも叶える』との事だ。死者の蘇生も可能だぞ? 言ってしまえばこのゲームで死亡した全ての参加者を蘇らせる事も可能とのことだ」  そして、切間立会人は一度言葉を区切って、グルリと辺りを見回す。  その顔は歪に歪んでいた。  愉悦という感情に歪みきっていた。  思わず身体が震え、肌が粟立つ。  この男は楽しんでいるのだ。  これから起こる殺し合いを、人々が殺し合う姿を、楽しんでいる。  異常だ、と感じずにはいられなかった。 「では、これよりゲーム―――『バトルロワイアル』を開始する」  地獄の扉は開かれた。  この先に待っていたのは想像を遥かに越える陰惨なゲームであった―――、 |&color(blue){GAME START}|投下順|001:[[]]| |&color(blue){GAME START}|梶隆臣|[[]]| |&color(blue){GAME START}|切間撻器|[[]]|

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