闇に濡れたCatastrophe

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44話 闇に濡れたCatastrophe 「直美ー! 岸沼君ー! ……やっぱり駄目かぁ」 エリアE-7市街地跡にて、篠原世以子はクラスメイトの名前を呼ぶ。 傍には姫鶴一文字を携えた伊東鴨太郎が周囲を警戒に当たっている。 大声を出すのは賢い方法とは言い難いが一刻も早く友人を見付けたい世以子にとって、 危険を冒してでもその方法は試したかった。 「…この近くにはいないのかな…この島結構広いし……」 「…篠原君、そろそろ良いか」 「う……」 伊東が拠点である島役場への帰還を提案する。 島役場には首輪を解析している上杉憲顕と、島役場にて遭遇した少女、 北沢樹里がいるはずだが、彼らの事も心配であった。 「…はい」 心残りがある世以子だったが、伊東の言う事にも一理ある。 これ以上この周辺を捜しても友人が見付かる可能性は低い。 大人しく世以子は伊東に従う事にした。 「……ん?」 その時、伊東が何かを聞き付ける。 「足音…?」 その音は世以子も聞いた――走っている足音だった。近付いて来る。 伊東は姫鶴一文字を、世以子はS&WM36を持ち身構える。 曲がり角から一人の少女が必死な様子で伊東と世以子の前に飛び出した。 「……!」 その少女に、世以子は良く見覚えがあった。 「直美!!」 「…! せ、世以子」 少女――中嶋直美は息を切らし、一度足を止め、驚いた様子で世以子の事を見る。 目の前で死んだはずの親友が、生きて目の前に立っている。 最初名簿を見た時には半信半疑だったが、もう間違い無い。 「篠原世以子」が、目の前にいる。 直美と世以子の目に涙が溢れ、感極まった様子だった。 「せ、世以子ぉ…世以子なんだよね?」 「そうだよ、そうだよ、直美!」 「…! せ、世以――――」 ダァン!! 一発の銃声が感動の再会に水を差した。 水を差した、と言う生温いものでは無いが。 直美の腹から、真っ赤な赤い花が咲いた。 「…………?」 ドサッ、と音を立て、直美がうつ伏せに倒れるのを世以子が呆然と眺める。 その背後に、銃を構えた黄色い二足歩行の狐が立っていた。 「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、追いかけっこは終わりよ」 狐――費覧は息を切らせながらそう言った。 「……あ、あ、う、あああぁあああああああああああ―――ッ!!」 「! 篠原君! 待て!」 世以子が絶叫し、直美を撃った雌狐に向けて駆け出す。 伊東が制止しようとしたがそれを無視し世以子は費覧に向けM36を乱射する。 「よくも、よくも直美をおおおお!!」 「! 何この子、うわっ」 世以子が放った銃弾の内一発が費覧の頬を掠めた。 だがそれまでである、世以子は銃に関して素人であり、ロクに狙いも定めず、 更にM36は装弾数が5発と少なく、元々護身用が主なので命中率もさほど良く無い事もあり、 世以子はM36に装填されていた.38スペシャル弾5発を費覧に向けて撃ち放ったが、 結局前述の頬に掠めた一撃のみで終わってしまった。 カチッ、カチッ、と、M36から弾が出なくなる。 ダァン! ダァン! 「あ―――」 世以子の胴体に、費覧の持つNZ75から二発の銃弾が撃ち込まれた。 「う、嘘、あ、そんな」 痛みと言うより、熱かった。焼けるように熱い。 身体の力が一気に抜けていくのを感じ、世以子は直美と同じく地面に倒れ込んだ。 費覧は勝利を確信した。だが――。 「!!」 倒れ行く世以子の背後から、黒い制服を着た、眼鏡を掛けた男が、 刀を構え自分に向かって来ていた。 慌てて銃を構え直そうとした費覧だったがもう遅かった。 「ちぃっ……ヘマしちゃった……」 ドカァッ!! 費覧の首が、宙を舞った。 ◆◆◆ 「直……美」 朦朧とする意識の中、世以子は直美の元へ這いずり寄った。 「せ……世以子」 「直美……」 口から血を吐きながら、直美は震える手を、精一杯の力を振り絞って世以子の顔に近付ける。 「世以子……ごめんね……酷い事言って………」 直美が謝っているのはこの殺し合いに呼ばれる前の出来事の事。 世以子は首を横に振り、泣きながら笑みを作って言った。 「良いんだよ…もう良いんだよ……私こそ……ごめん」 「……世以子ぉ……また…会えて………良かった………」 それだけ言うと、直美はゆっくりと目を閉じ、ふっと息を吐いて静かになった。 「……直美……直美ぃ……折角会えたのに……」 「…篠原君」 伊東が涙を流す世以子の元へ近寄る。 銃撃された胴体からは真っ赤な血が溢れ、アスファルトが赤く染まっている。 もう手の施しようが無い。伊東は拳を握り締めた。 「……伊東さん……ありがとう……直美に…会えた」 「…ああ…ああ」 「…私……もう駄目なんだよね………」 「……」 そんな事無いと、気休めなど言えなかった。 (……おかしいなぁ……死ぬのは二回目だけど……怖いや……) 徐々に暗くなっていく視界、失われて行く身体中の感覚。 二度目となる死を迎えるが、世以子はやはり、怖いと感じた。 「…伊東さん」 「何だ?」 「……お願いが……あります」 「……」 「…岸沼君に…会ったら…助けてあげて下さい………」 か細い声だったが、しっかりと世以子は伊東に伝えた。 まだどこかで生きているかもしれないクラスメイトの岸沼良樹。 せめて彼には助かって欲しいと世以子は願った。 「…分かったよ」 伊東のその言葉を聞き、世以子は穏やかな笑みを浮かべた。 「……ありがとう……ございます……」 伊東に礼を言うと、世以子は目を閉じ眠るように逝った。 親友の元へと、旅立った。 「……」 一人残された伊東鴨太郎は、しばらく静かに、その場に佇んでいた。 &color(red){【費覧@オリキャラ・再戦組  死亡】} &color(red){【中嶋直美@コープスパーティーBCRF  WRONG END】} &color(red){【篠原世以子@コープスパーティーBCRF  WRONG END】} &color(red){【残り9人】} 【一日目/昼/E-7市街地跡】 【伊東鴨太郎@銀魂】 [状態]良好 [装備]姫鶴一文字 [道具]基本支給品一式、インスタントカメラ(残り使用回数5) [思考] 1:殺し合いには乗らない。首輪を何とかしたい。 2:篠原君……。 [備考] ※本編死亡後からの参戦です。 ※シルヴィアの外見を記憶しました。 ※篠原世以子から中嶋直美、岸沼良樹、篠崎あゆみの情報を得ました。 ※E-7一帯に銃声が響きました。 |[[鬼姫]]|時系列順|[[青年は牡馬の夢を見る]]| |[[鬼姫]]|投下順|[[青年は牡馬の夢を見る]]| |[[分子記号片割れのよう]]|篠原世以子|&color(red){死亡}| |[[分子記号片割れのよう]]|伊東鴨太郎|[[]]| |[[直美千里行]]|中嶋直美|&color(red){死亡}| |[[直美千里行]]|費覧|&color(red){死亡}|
44話 闇に濡れたCatastrophe 「直美ー! 岸沼君ー! ……やっぱり駄目かぁ」 エリアE-7市街地跡にて、篠原世以子はクラスメイトの名前を呼ぶ。 傍には姫鶴一文字を携えた伊東鴨太郎が周囲を警戒に当たっている。 大声を出すのは賢い方法とは言い難いが一刻も早く友人を見付けたい世以子にとって、 危険を冒してでもその方法は試したかった。 「…この近くにはいないのかな…この島結構広いし……」 「…篠原君、そろそろ良いか」 「う……」 伊東が拠点である島役場への帰還を提案する。 島役場には首輪を解析している上杉憲顕と、島役場にて遭遇した少女、 北沢樹里がいるはずだが、彼らの事も心配であった。 「…はい」 心残りがある世以子だったが、伊東の言う事にも一理ある。 これ以上この周辺を捜しても友人が見付かる可能性は低い。 大人しく世以子は伊東に従う事にした。 「……ん?」 その時、伊東が何かを聞き付ける。 「足音…?」 その音は世以子も聞いた――走っている足音だった。近付いて来る。 伊東は姫鶴一文字を、世以子はS&WM36を持ち身構える。 曲がり角から一人の少女が必死な様子で伊東と世以子の前に飛び出した。 「……!」 その少女に、世以子は良く見覚えがあった。 「直美!!」 「…! せ、世以子」 少女――中嶋直美は息を切らし、一度足を止め、驚いた様子で世以子の事を見る。 目の前で死んだはずの親友が、生きて目の前に立っている。 最初名簿を見た時には半信半疑だったが、もう間違い無い。 「篠原世以子」が、目の前にいる。 直美と世以子の目に涙が溢れ、感極まった様子だった。 「せ、世以子ぉ…世以子なんだよね?」 「そうだよ、そうだよ、直美!」 「…! せ、世以――――」 ダァン!! 一発の銃声が感動の再会に水を差した。 水を差した、と言う生温いものでは無いが。 直美の腹から、真っ赤な赤い花が咲いた。 「…………?」 ドサッ、と音を立て、直美がうつ伏せに倒れるのを世以子が呆然と眺める。 その背後に、銃を構えた黄色い二足歩行の狐が立っていた。 「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、追いかけっこは終わりよ」 狐――費覧は息を切らせながらそう言った。 「……あ、あ、う、あああぁあああああああああああ―――ッ!!」 「! 篠原君! 待て!」 世以子が絶叫し、直美を撃った雌狐に向けて駆け出す。 伊東が制止しようとしたがそれを無視し世以子は費覧に向けM36を乱射する。 「よくも、よくも直美をおおおお!!」 「! 何この子、うわっ」 世以子が放った銃弾の内一発が費覧の頬を掠めた。 だがそれまでである、世以子は銃に関して素人であり、ロクに狙いも定めず、 更にM36は装弾数が5発と少なく、元々護身用が主なので命中率もさほど良く無い事もあり、 世以子はM36に装填されていた.38スペシャル弾5発を費覧に向けて撃ち放ったが、 結局前述の頬に掠めた一撃のみで終わってしまった。 カチッ、カチッ、と、M36から弾が出なくなる。 ダァン! ダァン! 「あ―――」 世以子の胴体に、費覧の持つNZ75から二発の銃弾が撃ち込まれた。 「う、嘘、あ、そんな」 痛みと言うより、熱かった。焼けるように熱い。 身体の力が一気に抜けていくのを感じ、世以子は直美と同じく地面に倒れ込んだ。 費覧は勝利を確信した。だが――。 「!!」 倒れ行く世以子の背後から、黒い制服を着た、眼鏡を掛けた男が、 刀を構え自分に向かって来ていた。 慌てて銃を構え直そうとした費覧だったがもう遅かった。 「ちぃっ……ヘマしちゃった……」 ドカァッ!! 費覧の首が、宙を舞った。 ◆◆◆ 「直……美」 朦朧とする意識の中、世以子は直美の元へ這いずり寄った。 「せ……世以子」 「直美……」 口から血を吐きながら、直美は震える手を、精一杯の力を振り絞って世以子の顔に近付ける。 「世以子……ごめんね……酷い事言って………」 直美が謝っているのはこの殺し合いに呼ばれる前の出来事の事。 世以子は首を横に振り、泣きながら笑みを作って言った。 「良いんだよ…もう良いんだよ……私こそ……ごめん」 「……世以子ぉ……また…会えて………良かった………」 それだけ言うと、直美はゆっくりと目を閉じ、ふっと息を吐いて静かになった。 「……直美……直美ぃ……折角会えたのに……」 「…篠原君」 伊東が涙を流す世以子の元へ近寄る。 銃撃された胴体からは真っ赤な血が溢れ、アスファルトが赤く染まっている。 もう手の施しようが無い。伊東は拳を握り締めた。 「……伊東さん……ありがとう……直美に…会えた」 「…ああ…ああ」 「…私……もう駄目なんだよね………」 「……」 そんな事無いと、気休めなど言えなかった。 (……おかしいなぁ……死ぬのは二回目だけど……怖いや……) 徐々に暗くなっていく視界、失われて行く身体中の感覚。 二度目となる死を迎えるが、世以子はやはり、怖いと感じた。 「…伊東さん」 「何だ?」 「……お願いが……あります」 「……」 「…岸沼君に…会ったら…助けてあげて下さい………」 か細い声だったが、しっかりと世以子は伊東に伝えた。 まだどこかで生きているかもしれないクラスメイトの岸沼良樹。 せめて彼には助かって欲しいと世以子は願った。 「…分かったよ」 伊東のその言葉を聞き、世以子は穏やかな笑みを浮かべた。 「……ありがとう……ございます……」 伊東に礼を言うと、世以子は目を閉じ眠るように逝った。 親友の元へと、旅立った。 「……」 一人残された伊東鴨太郎は、しばらく静かに、その場に佇んでいた。 &color(red){【費覧@オリキャラ・再戦組  死亡】} &color(red){【中嶋直美@コープスパーティーBCRF  WRONG END】} &color(red){【篠原世以子@コープスパーティーBCRF  WRONG END】} &color(red){【残り9人】} 【一日目/昼/E-7市街地跡】 【伊東鴨太郎@銀魂】 [状態]良好 [装備]姫鶴一文字 [道具]基本支給品一式、インスタントカメラ(残り使用回数5) [思考] 1:殺し合いには乗らない。首輪を何とかしたい。 2:篠原君……。 [備考] ※本編死亡後からの参戦です。 ※シルヴィアの外見を記憶しました。 ※篠原世以子から中嶋直美、岸沼良樹、篠崎あゆみの情報を得ました。 ※E-7一帯に銃声が響きました。 |[[鬼姫]]|時系列順|[[青年は牡馬の夢を見る]]| |[[鬼姫]]|投下順|[[青年は牡馬の夢を見る]]| |[[分子記号片割れのよう]]|篠原世以子|&color(red){死亡}| |[[分子記号片割れのよう]]|伊東鴨太郎|[[導かれしバカたち]]| |[[直美千里行]]|中嶋直美|&color(red){死亡}| |[[直美千里行]]|費覧|&color(red){死亡}|

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