廻れ、廻れ

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第六話≪廻れ、廻れ≫ 「ごめんなさい! ごめんなさい! 許し……」 ガスッ!! 「ぎゃああああああ!!!」 ゴスッ!! 「あ゛っ」 グシャッ!! 「ぁ……」 ゴキィッ!! 「……」 エリアE-3の貯水池の畔で、息を荒げ肩を上下させているホオジロザメ種の鮫獣人がいた。 鮫獣人――堀越辰夫(ほりこし・たつお)の右手には、おびただしい量の血痕と、 毛髪や肉片がこびり付いた大きな石が握られ、彼の衣服にもかなりの量の返り血が付着していた。 そして彼の足元には、頭部を何度も殴打され、 目を背けたくなるような状態の人間の女性の死体が横たわっていた。 状況証拠からして、下手人は間違い無く彼である。事実、そうだった。 「この女……! 俺を、殺そうとするからだ……!」 辰夫は吐き捨てるように言った。 そう、実は最初に襲い掛かったのは今や惨殺死体と化した女性の方だった。 辰夫はゲーム開始直後、山を下り、この貯水池の畔で自分の支給品を確認していた。 このゲームで優勝しなければ、帰る事は出来ない。 しかも首には逆らったり逃げようとすると爆発する首輪がはめられている。 脱出などとても考えられなかった。だから、優勝を目指す事にしたのだ。 せっかくAV男優として撮影のためにほぼ毎日女性と****したり****出来る生活を 送れているというのに、 こんなどことも分からない辺鄙な島で人生を終える訳にはいかなかった。 (****の意味は言及しないでね~!) しかし、出てきた物は何と玩具のプラスチック製のバット一本。外れだった。 落胆している時、突然後頭部を何か棒のような物で殴打された。 突然の事に驚き、狼狽していると、すぐに第二撃が襲い掛かる。 いきり立って自分に襲い掛かった”そいつ”に飛び掛かり、武器を持った手を両手で押さえた。 ”そいつ”は、年の頃20代半ばと思われる若い人間の女性だった。 両目は殺気に満ちており、明らかにこの殺し合いに乗っているようだった。 辰夫は武器――角材を奪い取り、右手に持って女性の身体目がけ渾身の薙ぎ払いをかけた。 バキッ!! という音と共に角材は粉々に砕け、女性の身体が数メートル吹き飛んだ。 辰夫は角材の欠片を捨て、地面に落ちていた大きな石を手に取り、女性に馬乗りになった。 すると女性はさっきまでの威勢はどこへ行ったか、命乞いをしてきた。 だが、それに耳を貸すはずが無かった。 辰夫は手に持った石で、何度も女の頭部を殴った。 女性が悲鳴を上げても、身体をバタつかせても関係無い。 何度も、何度も、殴る。 殴る。 殴る。 ……そして気が付いた時には、女性――上田聖子(うえだ・せいこ)はもう動かなくなっていた。 「舐めんなよボケ! 角材なんかでやられるほど、ヤワじゃねーんだよ!」 聖子の死体に向けて悪態を付きながら、辰夫は聖子の持っていたデイパックを漁る。 さっきの角材の他に何か持っていないかと思ったためだが、 入っているのは基本支給品一式のみで、 ランダム支給品と思しき物は入っていなかった。 舌打ちをしながら、辰夫は聖子のデイパックから水と食糧のみを抜き取り、 自分のデイパックへ押し込んだ。 「おい」 「!!」 突然聞こえた男の声に振り向くと、黒っぽいスーツを着たサラリーマン風の、 濃い青色と白の毛皮を持った狼獣人が立っていた。 「そこに倒れている女、あんたが殺ったのか?」 狼獣人は聖子の死体を見ながら言った。 「あ、ああ、そうだよ。でもな、コイツが先に襲い掛かってきたんだ!」 「ふうん……まあ、それは別にいいんだけど」 「え?」 突然、狼獣人は自分の持っていたデイパックを辰夫に投げ渡した。 反射的にそれを受け取る辰夫。 その隙を突き、狼獣人が一気に距離を詰め、辰夫の頭頂部に思い切り何かを突き刺した。 「がっ!?」 辰夫にとってはそれは”殴られた”としか感じなかったが。 「いってえ……何すん、だ、……??」 怒鳴ってやろうと思った矢先、辰夫は自分の身体の異変に気付く。 手足の先が痺れる。まるでずっと血行を止めていたかのように。 そして、ぐらり、と、視界が歪む。 そのまま、辰夫の意識は完全にブラックアウトし、 二度と戻らなかった。 狼獣人――生鎌治伸(まなかり・はるのぶ)は、 鮫獣人――堀越辰夫が完全に息絶えたのを確認すると、 鮫獣人の頭頂部に突き刺さった物を抜き取った。 血と脳漿がこびり付き、ぬめりと光るそれは――マイナスドライバーだった。 治伸は鮫獣人の衣服で汚れを拭き取り、マイナスドライバーを上着の右ポケットにしまい込む。 「最初これを見た時がっかりしたけど、要は使い様って事か。 ……まあ、早めに良い武器見つけるのに越した事は無いけど」 治伸は鮫獣人のデイパックを漁り、水と食糧を自分のデイパックに移し替えた。 カラーバットも入っていたが、役に立ちそうに無いので放っておいた。 女性――上田聖子の方のデイパックは確認しなかった。 先程草むらの陰から、鮫獣人が女性のデイパックから水と食糧を移し替えるのを見たためである。 「しかしまあ、面白い事になったじゃないか」 治伸は笑みを浮かべていた。 普段、大手物流会社に勤め、色々とストレスのたまる事が多い治伸は、 犯罪者となり一般市民を次々虐殺していくというネットゲームでストレスを発散させていた。 しかし、そのゲームにのめり込んでいく内、彼の中にはある歪んだ欲望が生まれていた。 『本当に人を殺してみたい』と。 しかし本当にそんな事をすれば、自分の社会的地位や立場は一瞬にして瓦解する事となる。 だが、今は違う。今は殺人が公然と許されるバトルロワイアルの中。 「よっしゃ~。この機会に、どんどん殺してやるぜ!」 治伸は自分の歪んだ欲求を満足させるべく、このバトルロワイアルに向かっていく。 その行為が、どんな惨劇を生もうとも、彼は顧みる事など一切しないだろう。 【一日目/明朝/E-3貯水池畔】 【生鎌治伸】 [状態]:健康 [装備]:マイナスドライバー [所持品]:基本支給品一式、上田聖子の水と食糧、堀越辰夫の水と食糧 [思考・行動] 基本:他参加者を探し、片っ端から殺す。ついでに優勝も狙う。 1:もっと良い武器が欲しい。出来れば拳銃。 &color(red){【上田聖子  死亡】} &color(red){【堀越辰夫  死亡】} &color(red){【残り46人】} ※E-3貯水池畔に上田聖子の死体、上田聖子のデイパック(水と食糧抜きの基本支給品一式)、 堀越辰夫の死体、堀越辰夫のデイパック(水と食糧抜きの基本支給品一式、カラーバット)、 角材の残骸が放置されています。 |Back:005[[狂笑]]|時系列順で読む|Next:007[[Silver&white]]| |Back:005[[狂笑]]|投下順で読む|Next:007[[Silver&white]]| |&color(cyan){GAME START}|上田聖子|&color(red){死亡}| |&color(cyan){GAME START}|堀越辰夫|&color(red){死亡}| |&color(cyan){GAME START}|生鎌治伸|Next:|
第六話≪廻れ、廻れ≫ 「ごめんなさい! ごめんなさい! 許し……」 ガスッ!! 「ぎゃああああああ!!!」 ゴスッ!! 「あ゛っ」 グシャッ!! 「ぁ……」 ゴキィッ!! 「……」 エリアE-3の貯水池の畔で、息を荒げ肩を上下させているホオジロザメ種の鮫獣人がいた。 鮫獣人――堀越辰夫(ほりこし・たつお)の右手には、おびただしい量の血痕と、 毛髪や肉片がこびり付いた大きな石が握られ、彼の衣服にもかなりの量の返り血が付着していた。 そして彼の足元には、頭部を何度も殴打され、 目を背けたくなるような状態の人間の女性の死体が横たわっていた。 状況証拠からして、下手人は間違い無く彼である。事実、そうだった。 「この女……! 俺を、殺そうとするからだ……!」 辰夫は吐き捨てるように言った。 そう、実は最初に襲い掛かったのは今や惨殺死体と化した女性の方だった。 辰夫はゲーム開始直後、山を下り、この貯水池の畔で自分の支給品を確認していた。 このゲームで優勝しなければ、帰る事は出来ない。 しかも首には逆らったり逃げようとすると爆発する首輪がはめられている。 脱出などとても考えられなかった。だから、優勝を目指す事にしたのだ。 せっかくAV男優として撮影のためにほぼ毎日女性と****したり****出来る生活を 送れているというのに、 こんなどことも分からない辺鄙な島で人生を終える訳にはいかなかった。 (****の意味は言及しないでね~!) しかし、出てきた物は何と玩具のプラスチック製のバット一本。外れだった。 落胆している時、突然後頭部を何か棒のような物で殴打された。 突然の事に驚き、狼狽していると、すぐに第二撃が襲い掛かる。 いきり立って自分に襲い掛かった”そいつ”に飛び掛かり、武器を持った手を両手で押さえた。 ”そいつ”は、年の頃20代半ばと思われる若い人間の女性だった。 両目は殺気に満ちており、明らかにこの殺し合いに乗っているようだった。 辰夫は武器――角材を奪い取り、右手に持って女性の身体目がけ渾身の薙ぎ払いをかけた。 バキッ!! という音と共に角材は粉々に砕け、女性の身体が数メートル吹き飛んだ。 辰夫は角材の欠片を捨て、地面に落ちていた大きな石を手に取り、女性に馬乗りになった。 すると女性はさっきまでの威勢はどこへ行ったか、命乞いをしてきた。 だが、それに耳を貸すはずが無かった。 辰夫は手に持った石で、何度も女の頭部を殴った。 女性が悲鳴を上げても、身体をバタつかせても関係無い。 何度も、何度も、殴る。 殴る。 殴る。 ……そして気が付いた時には、女性――上田聖子(うえだ・せいこ)はもう動かなくなっていた。 「舐めんなよボケ! 角材なんかでやられるほど、ヤワじゃねーんだよ!」 聖子の死体に向けて悪態を付きながら、辰夫は聖子の持っていたデイパックを漁る。 さっきの角材の他に何か持っていないかと思ったためだが、 入っているのは基本支給品一式のみで、 ランダム支給品と思しき物は入っていなかった。 舌打ちをしながら、辰夫は聖子のデイパックから水と食糧のみを抜き取り、 自分のデイパックへ押し込んだ。 「おい」 「!!」 突然聞こえた男の声に振り向くと、黒っぽいスーツを着たサラリーマン風の、 濃い青色と白の毛皮を持った狼獣人が立っていた。 「そこに倒れている女、あんたが殺ったのか?」 狼獣人は聖子の死体を見ながら言った。 「あ、ああ、そうだよ。でもな、コイツが先に襲い掛かってきたんだ!」 「ふうん……まあ、それは別にいいんだけど」 「え?」 突然、狼獣人は自分の持っていたデイパックを辰夫に投げ渡した。 反射的にそれを受け取る辰夫。 その隙を突き、狼獣人が一気に距離を詰め、辰夫の頭頂部に思い切り何かを突き刺した。 「がっ!?」 辰夫にとってはそれは”殴られた”としか感じなかったが。 「いってえ……何すん、だ、……??」 怒鳴ってやろうと思った矢先、辰夫は自分の身体の異変に気付く。 手足の先が痺れる。まるでずっと血行を止めていたかのように。 そして、ぐらり、と、視界が歪む。 そのまま、辰夫の意識は完全にブラックアウトし、 二度と戻らなかった。 狼獣人――生鎌治伸(まなかり・はるのぶ)は、 鮫獣人――堀越辰夫が完全に息絶えたのを確認すると、 鮫獣人の頭頂部に突き刺さった物を抜き取った。 血と脳漿がこびり付き、ぬめりと光るそれは――マイナスドライバーだった。 治伸は鮫獣人の衣服で汚れを拭き取り、マイナスドライバーを上着の右ポケットにしまい込む。 「最初これを見た時がっかりしたけど、要は使い様って事か。 ……まあ、早めに良い武器見つけるのに越した事は無いけど」 治伸は鮫獣人のデイパックを漁り、水と食糧を自分のデイパックに移し替えた。 カラーバットも入っていたが、役に立ちそうに無いので放っておいた。 女性――上田聖子の方のデイパックは確認しなかった。 先程草むらの陰から、鮫獣人が女性のデイパックから水と食糧を移し替えるのを見たためである。 「しかしまあ、面白い事になったじゃないか」 治伸は笑みを浮かべていた。 普段、大手物流会社に勤め、色々とストレスのたまる事が多い治伸は、 犯罪者となり一般市民を次々虐殺していくというネットゲームでストレスを発散させていた。 しかし、そのゲームにのめり込んでいく内、彼の中にはある歪んだ欲望が生まれていた。 『本当に人を殺してみたい』と。 しかし本当にそんな事をすれば、自分の社会的地位や立場は一瞬にして瓦解する事となる。 だが、今は違う。今は殺人が公然と許されるバトルロワイアルの中。 「よっしゃ~。この機会に、どんどん殺してやるぜ!」 治伸は自分の歪んだ欲求を満足させるべく、このバトルロワイアルに向かっていく。 その行為が、どんな惨劇を生もうとも、彼は顧みる事など一切しないだろう。 【一日目/明朝/E-3貯水池畔】 【生鎌治伸】 [状態]:健康 [装備]:マイナスドライバー [所持品]:基本支給品一式、上田聖子の水と食糧、堀越辰夫の水と食糧 [思考・行動] 基本:他参加者を探し、片っ端から殺す。ついでに優勝も狙う。 1:もっと良い武器が欲しい。出来れば拳銃。 &color(red){【上田聖子  死亡】} &color(red){【堀越辰夫  死亡】} &color(red){【残り46人】} ※E-3貯水池畔に上田聖子の死体、上田聖子のデイパック(水と食糧抜きの基本支給品一式)、 堀越辰夫の死体、堀越辰夫のデイパック(水と食糧抜きの基本支給品一式、カラーバット)、 角材の残骸が放置されています。 |Back:005[[狂笑]]|時系列順で読む|Next:007[[Silver&white]]| |Back:005[[狂笑]]|投下順で読む|Next:007[[Silver&white]]| |&color(cyan){GAME START}|上田聖子|&color(red){死亡}| |&color(cyan){GAME START}|堀越辰夫|&color(red){死亡}| |&color(cyan){GAME START}|生鎌治伸|Next:029[[魔手接近]]|

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