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25話 サキュバスと「マダオ」
「畜生、死んでやるよお! 俺なんかもう死ねばいいんだろぉ!」
「あー、えーと……」
エリアE-4住宅街の一角にある居酒屋にて、
一人の中年男が、カウンターで泥酔しながら愚痴をこぼしていた。
愚痴をこぼしている相手は桃色の髪を持ち、白いビキニのような扇情的な格好をした、
角と翼、尻尾を持ったサキュバスの美少女だった。
「姉ちゃん、俺はゴミなのか? いらなくなったらもうポイか?」
「そ、そんな事無いと思いますよ…」
「何なんだろうなぁ俺の人生、20年近くも真面目に勤めて来たってのに、
ある日いきなりリストラだぜ? 妻は子供連れて出て行っちまうし…この年じゃ、
再就職も望めねえ、挙句首輪はめられて殺し合えと来たもんだぁ……うっ、うっ…」
「……」
サキュバスの少女――リュティは完全に辟易していた。
こんな事なら軽い気持ちで愚痴の相手などするべきでは無かったと。
「畜生が、末期の酒だあ! 飲んで飲んで飲みまくってやらぁ!」
「ひぃ~……」
その後もリュティは中年男性――坂上正男の酒に付き合わされた。
どれくらい時間が経っただろうか、正男はすっかり酔い潰れて眠ってしまった。
リュティは完全に疲弊していた。酔った正男に胸を揉まれるなど、
セクハラ行為を多々受け、ブラがずれて乳房が露わになってしまっている。
「やっと解放された……はぁ」
安堵するリュティは、カウンターに置いていた自分のデイパックの中に手を入れ、
鋭利な刃を持ったハンティングナイフを取り出す。
鞘から抜き、カウンターに伏して眠っている正男の元へ歩み寄る。
(…ごめんなさい、坂上さん…でも、仕方無いの)
リュティは元より、殺し合いに乗りゲームを進める予定であった。
そのため、たまたま入った居酒屋で飲み潰れていたこの中年男を最初の獲物に定めたのだが、
ついいつものお人好しが出てしまい、酒に付き合う事になってしまった。
(私ってばお人好し過ぎるのよね…)
過去、自分の性分のせいで幾度となく酷い目に遭ってきた事を思い出しつつ、
リュティは正男の背中に向けて、刃を振り下ろそうとした。
「待ってくれ……」
「!!」
だが、予想外の事態が起こる。
眠っていると思っていた正男は起きていた。
だが、抵抗する様子は無い、むしろ、とても穏やかな表情に見えた。
正男は座っていた椅子から立ち上がると、衣服を整えリュティの方を見た。
「やっぱり…あんた、この殺し合いに乗ってるんだな」
「……そう、です」
「…いや、良いんだ。何と無くだけどそういう気はしていたさ。
それで…これから俺を殺す気なんだろ?」
「…逃げないんですか? 抵抗しないんですか?」
不思議に思ったリュティの問いに、正男は悲しげな笑みを浮かべて言う。
「どうせ生きて帰れたって…ロクな人生は送れねえよ。
それなら、あんたみたいな可愛い女の子に殺された方が、マシさ」
「……」
「さあ、やってくれリュティ」
「……馬鹿な人ですね、命を無駄にするなんて」
リュティは冷然とそう言い放つと、正男の心臓目掛けて、
ハンティングナイフを目にも止まらぬ速さで突き出した―――。
本当言うと、死にたくは無かったんだけどよ。
もうこうなったら仕方ねえよな。
奈々子、正宣、出来ればもう一度顔を見たかったな。
すまねえな、こんな――まるで駄目な親父―――で―――――
心臓を刺され絶命した中年男の死体からナイフを抜き、
リュティは男のデイパックを漁り始める。
すると、基本支給品の他、自動拳銃グロック19と予備マガジン3個を発見した。
自分の支給品であるハンティングナイフより遥かに上等な支給品である。
当然、リュティはグロック19と予備マガジンを抜き取り、装備を変更した。
「……これで少しは戦いが楽になるかな」
特殊な能力が一切封印されてしまった今、銃火器は強力な武器足り得る。
これから殺し合いを進めていくためには尚更だ。
「……」
衣服を整え、居酒屋を出る前、リュティは胸元を真っ赤に染め、
仰向けに倒れ目を閉じ息絶える男の死体に目をやった。
何故か知らない。何故かは分からないが。
とてもすっきりしない気分だった。
&color(red){【坂上正男@オリキャラ 死亡】}
&color(red){【残り43人】}
【一日目/深夜/E-4市街地の一角にある居酒屋】
【リュティ@オリキャラ】
[状態]健康、すっきりしない気持ち
[装備]グロック19(15/15)
[所持品]基本支給品一式、グロック19マガジン(15×3)、ハンティングナイフ
[思考・行動]
基本:殺し合いに乗る。優勝を目指す。
1:……何だろう、この気持ち。
2:獲物を捜す。
[備考]
※特に無し。
※E-4市街地の一角にある居酒屋に坂上正男の死体、
坂上正男のデイパック(基本支給品一式入り)が放置されています。
≪支給品紹介≫
【ハンティングナイフ】
狩猟において仕留めた獲物を解体するのに使われる鋭利で頑丈なナイフ。
【グロック19】
オーストリアのグロック社の自動拳銃、グロック17のコンパクトモデル。
手頃な大きさで装弾数も多く使い勝手は良い。
≪オリキャラ紹介≫
【名前】坂上正男(さかがみ・まさお)
【年齢】43
【性別】男
【職業】求職中(数か月前に20年近く勤めた会社をリストラされた)
【性格】以前は真面目だったが現在は荒れている
【身体的特徴】年相応の中年男、痩せ型、後頭部の毛が薄い
【服装】くたびれたスーツ
【趣味】以前は家族サービス、現在はパチンコ、競馬
【特技】ブラインドタッチ
【経歴】一カ月前に妻と息子に逃げられた
【備考】まるで駄目な親父=マダオと化している
【名前】リュティ
【年齢】不明(外見及び精神は10代後半)
【性別】女
【職業】サキュバス
【性格】冷徹を装っているが、性根は優しくお人好し
【身体的特徴】桃色の髪に角、黒い烏のような翼、悪魔の尻尾を持ったサキュバス
【服装】白いビキニっぽい服、ちょっと透けてたりする
【趣味】甘い物を食べる事
【特技】淫靡な夢を見せ精気を吸い取る、ある程度の状態異変魔法
【経歴】過去に何度か人間に捕まり報復として輪姦された事がある
【備考】サキュバスとしては結構優秀らしいが肝心な部分で
非情になり切れない優しさがあるため人間の精気を奪う事に失敗する事もある。
本ロワでは特殊能力は全て封印されている
|[[Uninhabited police station]]|時系列順|[[死亡フラグに気をつけろ]]|
|[[Uninhabited police station]]|投下順|[[死亡フラグに気をつけろ]]|
|&color(aqua){ゲーム開始}|リュティ|[[]]|
|&color(aqua){ゲーム開始}|&color(red){坂上正男}|&color(red){死亡}|
25話 サキュバスと「マダオ」
「畜生、死んでやるよお! 俺なんかもう死ねばいいんだろぉ!」
「あー、えーと……」
エリアE-4住宅街の一角にある居酒屋にて、
一人の中年男が、カウンターで泥酔しながら愚痴をこぼしていた。
愚痴をこぼしている相手は桃色の髪を持ち、白いビキニのような扇情的な格好をした、
角と翼、尻尾を持ったサキュバスの美少女だった。
「姉ちゃん、俺はゴミなのか? いらなくなったらもうポイか?」
「そ、そんな事無いと思いますよ…」
「何なんだろうなぁ俺の人生、20年近くも真面目に勤めて来たってのに、
ある日いきなりリストラだぜ? 妻は子供連れて出て行っちまうし…この年じゃ、
再就職も望めねえ、挙句首輪はめられて殺し合えと来たもんだぁ……うっ、うっ…」
「……」
サキュバスの少女――リュティは完全に辟易していた。
こんな事なら軽い気持ちで愚痴の相手などするべきでは無かったと。
「畜生が、末期の酒だあ! 飲んで飲んで飲みまくってやらぁ!」
「ひぃ~……」
その後もリュティは中年男性――坂上正男の酒に付き合わされた。
どれくらい時間が経っただろうか、正男はすっかり酔い潰れて眠ってしまった。
リュティは完全に疲弊していた。酔った正男に胸を揉まれるなど、
セクハラ行為を多々受け、ブラがずれて乳房が露わになってしまっている。
「やっと解放された……はぁ」
安堵するリュティは、カウンターに置いていた自分のデイパックの中に手を入れ、
鋭利な刃を持ったハンティングナイフを取り出す。
鞘から抜き、カウンターに伏して眠っている正男の元へ歩み寄る。
(…ごめんなさい、坂上さん…でも、仕方無いの)
リュティは元より、殺し合いに乗りゲームを進める予定であった。
そのため、たまたま入った居酒屋で飲み潰れていたこの中年男を最初の獲物に定めたのだが、
ついいつものお人好しが出てしまい、酒に付き合う事になってしまった。
(私ってばお人好し過ぎるのよね…)
過去、自分の性分のせいで幾度となく酷い目に遭ってきた事を思い出しつつ、
リュティは正男の背中に向けて、刃を振り下ろそうとした。
「待ってくれ……」
「!!」
だが、予想外の事態が起こる。
眠っていると思っていた正男は起きていた。
だが、抵抗する様子は無い、むしろ、とても穏やかな表情に見えた。
正男は座っていた椅子から立ち上がると、衣服を整えリュティの方を見た。
「やっぱり…あんた、この殺し合いに乗ってるんだな」
「……そう、です」
「…いや、良いんだ。何と無くだけどそういう気はしていたさ。
それで…これから俺を殺す気なんだろ?」
「…逃げないんですか? 抵抗しないんですか?」
不思議に思ったリュティの問いに、正男は悲しげな笑みを浮かべて言う。
「どうせ生きて帰れたって…ロクな人生は送れねえよ。
それなら、あんたみたいな可愛い女の子に殺された方が、マシさ」
「……」
「さあ、やってくれリュティ」
「……馬鹿な人ですね、命を無駄にするなんて」
リュティは冷然とそう言い放つと、正男の心臓目掛けて、
ハンティングナイフを目にも止まらぬ速さで突き出した―――。
本当言うと、死にたくは無かったんだけどよ。
もうこうなったら仕方ねえよな。
奈々子、正宣、出来ればもう一度顔を見たかったな。
すまねえな、こんな――まるで駄目な親父―――で―――――
心臓を刺され絶命した中年男の死体からナイフを抜き、
リュティは男のデイパックを漁り始める。
すると、基本支給品の他、自動拳銃グロック19と予備マガジン3個を発見した。
自分の支給品であるハンティングナイフより遥かに上等な支給品である。
当然、リュティはグロック19と予備マガジンを抜き取り、装備を変更した。
「……これで少しは戦いが楽になるかな」
特殊な能力が一切封印されてしまった今、銃火器は強力な武器足り得る。
これから殺し合いを進めていくためには尚更だ。
「……」
衣服を整え、居酒屋を出る前、リュティは胸元を真っ赤に染め、
仰向けに倒れ目を閉じ息絶える男の死体に目をやった。
何故か知らない。何故かは分からないが。
とてもすっきりしない気分だった。
&color(red){【坂上正男@オリキャラ 死亡】}
&color(red){【残り43人】}
【一日目/深夜/E-4市街地の一角にある居酒屋】
【リュティ@オリキャラ】
[状態]健康、すっきりしない気持ち
[装備]グロック19(15/15)
[所持品]基本支給品一式、グロック19マガジン(15×3)、ハンティングナイフ
[思考・行動]
基本:殺し合いに乗る。優勝を目指す。
1:……何だろう、この気持ち。
2:獲物を捜す。
[備考]
※特に無し。
※E-4市街地の一角にある居酒屋に坂上正男の死体、
坂上正男のデイパック(基本支給品一式入り)が放置されています。
≪支給品紹介≫
【ハンティングナイフ】
狩猟において仕留めた獲物を解体するのに使われる鋭利で頑丈なナイフ。
【グロック19】
オーストリアのグロック社の自動拳銃、グロック17のコンパクトモデル。
手頃な大きさで装弾数も多く使い勝手は良い。
≪オリキャラ紹介≫
【名前】坂上正男(さかがみ・まさお)
【年齢】43
【性別】男
【職業】求職中(数か月前に20年近く勤めた会社をリストラされた)
【性格】以前は真面目だったが現在は荒れている
【身体的特徴】年相応の中年男、痩せ型、後頭部の毛が薄い
【服装】くたびれたスーツ
【趣味】以前は家族サービス、現在はパチンコ、競馬
【特技】ブラインドタッチ
【経歴】一カ月前に妻と息子に逃げられた
【備考】まるで駄目な親父=マダオと化している
【名前】リュティ
【年齢】不明(外見及び精神は10代後半)
【性別】女
【職業】サキュバス
【性格】冷徹を装っているが、性根は優しくお人好し
【身体的特徴】桃色の髪に角、黒い烏のような翼、悪魔の尻尾を持ったサキュバス
【服装】白いビキニっぽい服、ちょっと透けてたりする
【趣味】甘い物を食べる事
【特技】淫靡な夢を見せ精気を吸い取る、ある程度の状態異変魔法
【経歴】過去に何度か人間に捕まり報復として輪姦された事がある
【備考】サキュバスとしては結構優秀らしいが肝心な部分で
非情になり切れない優しさがあるため人間の精気を奪う事に失敗する事もある。
本ロワでは特殊能力は全て封印されている
|[[Uninhabited police station]]|時系列順|[[死亡フラグに気をつけろ]]|
|[[Uninhabited police station]]|投下順|[[死亡フラグに気をつけろ]]|
|&color(aqua){ゲーム開始}|リュティ|[[時を待つ、白む空]]|
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