良い人ほど報われない法則

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第二話≪良い人ほど報われない法則≫ 「殺し合いだと……ふざけるなッ」 F-4の林の中で、シェパード種の頭を持った犬獣人の警官、 川辺利也(かわべ・としなり)が怒りを露わにしていた。 何の罪も無い人々を殺し合わせるとは、このゲームの主催者はどういう神経の持ち主なのか。 そもそも大勢の人々を個人の同意も無く拉致している時点で、許されざる大罪だ。 無論、警官である彼は殺し合いに乗る気など毛頭無かった。 「まずは他の参加者の保護だな……」 警官である自分のやるべき事はただ一つ。 ゲームに乗る気の無い参加者の保護及びこのゲームを潰す事である。 利也は腰のベルトに差し込んだ自分の支給品である登山ナイフに触れる。 いないと信じたいが、もしこのゲームに乗っている他参加者がいたら、 身を守るため戦わなければならない。 元々支給されていた拳銃、警棒、無線機、手錠は全て没収されてしまったので、 デイパックの中には入っていたこの登山ナイフが今の武器だ。 「お巡りさん!!」 「!?」 若い女性の声がした突然背後から抱き締められた。 と同時に背中に感じる、柔らかい感触。 女性の方へ向き直ると、そこには若い狐獣人の女性がいた。 白い長髪があり、白いジャケットの下は黒いシャツ、赤いロングスカートを履いている。 そしてその両目は潤んでいた。 「あ、ああ、ど、どうしました?」 「ひぐっ、えぐ……すみません、でも、私、怖くて、怖くて」 女性は嗚咽を漏らしながら言葉を紡いだ。 そうか、と、利也は考えた。 この女性は恐らく、いつ殺されるか分からない状況に放り込まれ、怯えきっていたのだろう。 そして途方も無く歩いていて、警官の制服を着た自分を見つけ、安心して飛び込んできた。 利也はそう考えた。 「大丈夫、大丈夫です。とりあえず一緒にいましょう」 利也は女性を宥めるように穏やかな口調で話しかけた。 「うっ……うわあああああああん」 すると女性は再び利也に抱き付き、大声で泣いた。 しかも今度は背面では無く、正面から。 女性の胸にある二つの房が、自分の胸元に押し付けられた。 (―――――!!) 利也は制服の中で自分の全身の毛皮が逆立ち、心臓の心拍数が急上昇するのを感じた。 そして赤面する。 職業柄、女性には全くと言って良い程縁が無かった彼にとって、 女性に正面から抱き付かれるという状況はとんでも無い刺激だった。 (い、いやいや、落ち着け、KOOLになれ川辺利也。 俺は警官だ。一般民間人の安全を守るのが仕事だろう? 助けを求めてきている女性に対して邪な感情を抱くなどもってのほかだぞ!!) 本能と理性の間で揺れる自分を必死で戒める利也。 この時、利也は完全にその事で一杯一杯になっていた。 だからだろうか、女性が自分の腰にあるナイフを抜いていた事に気付かなかったのは。 ドス。 「いっ?」 右脇腹を強く叩かれた。いや、叩かれただけなら、こんなに右脇腹が焼けるように熱くなる事は無いだろう。 喉の奥から鉄の味がする熱い液体が込み上げてくる事は無いだろう。 「……な……何……!?」 何が起きたのか全く理解出来ない。 右脇腹が焼けるように熱い。喉の奥から鉄の味がする液体がどんどん込み上げ、口の端から垂れ落ちる。 女性が後退した。その左手には、自分が腰に差しておいたはずの登山用ナイフが握られている。 ナイフは赤い液体で汚れていた。 「ごめんね、お巡りさん」 女性がナイフを右手に持ち替えて、振り上げる。 次の瞬間、ナイフの刃が胸元を抉った。 利也は声にならない悲鳴をあげた。 バランスを崩し、後ろへ仰向けに倒れてしまった。 すかさず女性が利也に馬乗りになり、利也の胸元を何度も何度も突き刺した。 何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も――。 「ふう~やっと死んだかな」 女性――霧島弥生(きりしま・やよい)は、今や物言わぬ屍と化した犬獣人の警官を見下ろしながら、 一仕事終えたような表情を浮かべていた。 「人を殺すのって、思ったより簡単なのね。 みんなこんな感じだったらいいんだけど」 そう言いながら弥生は警官が持っていたデイパックの中身を漁る。 他にランダム支給品が無い事を確認すると、水と食糧だけ抜いて、それを自分のデイパックに入れる。 そして警官の制服の裾で、ナイフに付いた血を拭き取った。 「私の支給品、ロクなの無かったから、こんな小さなナイフでも心強いわ~。 でも早めにもっといい武器手に入れないと」 弥生は警官の腰からナイフのホルスターを外し、自分のベルトに装着した。 そのホルスターにナイフを収納する。 そして警官の死体を一瞥すると、弥生はフサフサの尻尾を揺らしながら、 自分のデイパックを持って歩き去った。 【一日目/明朝/F-4林】 【霧島弥生】 [状態]:健康、返り血(中) [装備]:登山ナイフ [所持品]:基本支給品一式、不明支給品(1~2個)、川辺利也の水と食糧 [思考・行動] 基本:優勝を目指す。 1:基本的に正面から戦うというより、不意を突いて殺すという手段を取る。 2:返り血が付いてしまったので服を着替えたい。出来ればシャワーも浴びたい。 &color(red){【川辺利也  死亡】} &color(red){【残り49人】} ※F-4林に川辺利也の死体、川辺利也のデイパック(水と食糧抜き)が放置されています。 |Back:001[[絶望青年と傍観少女]]|時系列順で読む|Next:003[[俊治、草原に立つ]]| |Back:001[[絶望青年と傍観少女]]|投下順で読む|Next:003[[俊治、草原に立つ]]| |&color(cyan){GAME START}|川辺利也|&color(red){死亡}| |&color(cyan){GAME START}|霧島弥生|Next:[[]]|
第二話≪良い人ほど報われない法則≫ 「殺し合いだと……ふざけるなッ」 F-4の林の中で、シェパード種の頭を持った犬獣人の警官、 川辺利也(かわべ・としなり)が怒りを露わにしていた。 何の罪も無い人々を殺し合わせるとは、このゲームの主催者はどういう神経の持ち主なのか。 そもそも大勢の人々を個人の同意も無く拉致している時点で、許されざる大罪だ。 無論、警官である彼は殺し合いに乗る気など毛頭無かった。 「まずは他の参加者の保護だな……」 警官である自分のやるべき事はただ一つ。 ゲームに乗る気の無い参加者の保護及びこのゲームを潰す事である。 利也は腰のベルトに差し込んだ自分の支給品である登山ナイフに触れる。 いないと信じたいが、もしこのゲームに乗っている他参加者がいたら、 身を守るため戦わなければならない。 元々支給されていた拳銃、警棒、無線機、手錠は全て没収されてしまったので、 デイパックの中には入っていたこの登山ナイフが今の武器だ。 「お巡りさん!!」 「!?」 若い女性の声がした突然背後から抱き締められた。 と同時に背中に感じる、柔らかい感触。 女性の方へ向き直ると、そこには若い狐獣人の女性がいた。 白い長髪があり、白いジャケットの下は黒いシャツ、赤いロングスカートを履いている。 そしてその両目は潤んでいた。 「あ、ああ、ど、どうしました?」 「ひぐっ、えぐ……すみません、でも、私、怖くて、怖くて」 女性は嗚咽を漏らしながら言葉を紡いだ。 そうか、と、利也は考えた。 この女性は恐らく、いつ殺されるか分からない状況に放り込まれ、怯えきっていたのだろう。 そして途方も無く歩いていて、警官の制服を着た自分を見つけ、安心して飛び込んできた。 利也はそう考えた。 「大丈夫、大丈夫です。とりあえず一緒にいましょう」 利也は女性を宥めるように穏やかな口調で話しかけた。 「うっ……うわあああああああん」 すると女性は再び利也に抱き付き、大声で泣いた。 しかも今度は背面では無く、正面から。 女性の胸にある二つの房が、自分の胸元に押し付けられた。 (―――――!!) 利也は制服の中で自分の全身の毛皮が逆立ち、心臓の心拍数が急上昇するのを感じた。 そして赤面する。 職業柄、女性には全くと言って良い程縁が無かった彼にとって、 女性に正面から抱き付かれるという状況はとんでも無い刺激だった。 (い、いやいや、落ち着け、KOOLになれ川辺利也。 俺は警官だ。一般民間人の安全を守るのが仕事だろう? 助けを求めてきている女性に対して邪な感情を抱くなどもってのほかだぞ!!) 本能と理性の間で揺れる自分を必死で戒める利也。 この時、利也は完全にその事で一杯一杯になっていた。 だからだろうか、女性が自分の腰にあるナイフを抜いていた事に気付かなかったのは。 ドス。 「いっ?」 右脇腹を強く叩かれた。いや、叩かれただけなら、こんなに右脇腹が焼けるように熱くなる事は無いだろう。 喉の奥から鉄の味がする熱い液体が込み上げてくる事は無いだろう。 「……な……何……!?」 何が起きたのか全く理解出来ない。 右脇腹が焼けるように熱い。喉の奥から鉄の味がする液体がどんどん込み上げ、口の端から垂れ落ちる。 女性が後退した。その左手には、自分が腰に差しておいたはずの登山用ナイフが握られている。 ナイフは赤い液体で汚れていた。 「ごめんね、お巡りさん」 女性がナイフを右手に持ち替えて、振り上げる。 次の瞬間、ナイフの刃が胸元を抉った。 利也は声にならない悲鳴をあげた。 バランスを崩し、後ろへ仰向けに倒れてしまった。 すかさず女性が利也に馬乗りになり、利也の胸元を何度も何度も突き刺した。 何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も――。 「ふう~やっと死んだかな」 女性――霧島弥生(きりしま・やよい)は、今や物言わぬ屍と化した犬獣人の警官を見下ろしながら、 一仕事終えたような表情を浮かべていた。 「人を殺すのって、思ったより簡単なのね。 みんなこんな感じだったらいいんだけど」 そう言いながら弥生は警官が持っていたデイパックの中身を漁る。 他にランダム支給品が無い事を確認すると、水と食糧だけ抜いて、それを自分のデイパックに入れる。 そして警官の制服の裾で、ナイフに付いた血を拭き取った。 「私の支給品、ロクなの無かったから、こんな小さなナイフでも心強いわ~。 でも早めにもっといい武器手に入れないと」 弥生は警官の腰からナイフのホルスターを外し、自分のベルトに装着した。 そのホルスターにナイフを収納する。 そして警官の死体を一瞥すると、弥生はフサフサの尻尾を揺らしながら、 自分のデイパックを持って歩き去った。 【一日目/明朝/F-4林】 【霧島弥生】 [状態]:健康、返り血(中) [装備]:登山ナイフ [所持品]:基本支給品一式、不明支給品(1~2個)、川辺利也の水と食糧 [思考・行動] 基本:優勝を目指す。 1:基本的に正面から戦うというより、不意を突いて殺すという手段を取る。 2:返り血が付いてしまったので服を着替えたい。出来ればシャワーも浴びたい。 &color(red){【川辺利也  死亡】} &color(red){【残り49人】} ※F-4林に川辺利也の死体、川辺利也のデイパック(水と食糧抜き)が放置されています。 |Back:001[[絶望青年と傍観少女]]|時系列順で読む|Next:003[[俊治、草原に立つ]]| |Back:001[[絶望青年と傍観少女]]|投下順で読む|Next:003[[俊治、草原に立つ]]| |&color(cyan){GAME START}|川辺利也|&color(red){死亡}| |&color(cyan){GAME START}|霧島弥生|028Next:[[欲望に忠実になってた結果がこれだよ!]]|

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