コワレモノ~血飛沫に狂え~

「コワレモノ~血飛沫に狂え~」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

コワレモノ~血飛沫に狂え~」(2010/06/30 (水) 19:03:49) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

「はぁっ、はぁっ」 夜のオフィス街。普段なら静寂が支配するはずだがこの場は違う。 断続的に吐かれる息の音と地面を踏む足音。 その音を出す原因――それは二人の少女の“鬼ごっこ”。 竹内理緒は逃げていた。この夜の街を全速力で疾走して、時には後ろをふり返りながら。 ツインテールがゆらゆらと揺れる。髪が乱れに乱れてしまったがそんなのを気にしている余裕はない。 「抵抗はしないほうがいい」 後ろから追いかけてくる外敵はセーラー服の少女。鼻より少し上に横一文字に残っている傷が印象的だ。 津村斗貴子。“錬金の戦士”として活動していた少女、だが今は逃亡の身であり“錬金の戦士”とも敵対している。 「大人しく殺されろ!」 斗貴子はこのゲームを即座に理解し、自分の取るべき方針を決めた。 それは。 「……カズキのためなんだ。剛太でさえ殺さなくちゃいけないんだ。 私は――カズキをこのゲームで優勝させるって決めたんだ」 逃げている理緒には聞こえない小さな声でぼそっと斗貴子は言葉を吐いた。 もう斗貴子の意志に迷いはない。 ただ殺すために。目の前で逃げ回っている無力な少女を殺すために。 駆ける! (やばいな、これは。逃げ切れない) 一方、理緒は逃げながらも頭の中では冷静に分析をしていた。 ブレードチルドレンで破壊の魔女と呼ばれるのは伊達ではない。 有事の時の判断力に加えて行動力の高さ、どれをとっても常人より遥か上に位置している。 だがその理緒であっても今の状況は厳しいと言える。 理緒は再び後ろを振り返って斗貴子を見る。 「……っ!」 まだついてきている、逃げ切れない、と理緒は苦い表情を作り舌打ちをする。 (いきなり襲われたから武器の確認もしてないあたしに比べて…… あっちはあの腰に下げている刀、あれ一つでも十分脅威。八方塞がりだね) 武器の優劣の差。素手と得物が有るのとでは訳が違う。 それはどうあがいても揺るがないものであり、理緒が明らかに不利だと言うことを物語っている。 だから理緒は走る。下手に何かをするよりは逃亡した方が生きのこれる確率が上がると判斷したためだ。 (全然振り切れないなんて。ホント、嫌になっちゃう) だが理緒の誤算は斗貴子を普通の女子高校生だと思ったことだ。 斗貴子は“錬金の戦士”として訓練していたこともありそこらの一般人とは違うのだ。 そして“鬼ごっこ”は唐突に終わりを告げる。 「はうっ!」 理緒が転んでしまうことで。即座に起き上がろうとするが、 (足を捻った?どうしてこんな時に!) 起き上がろうとしても起き上がれない。そのために必然と歩みはそこで止まる。 「好機……だな」 斗貴子は理緒が動けないのを見て刀を抜き、斬り殺そうと迫る。 理緒の頭にあるのは―― (あたしはここで斬り殺されて終わるの?でも不思議。そんな感じが全然しない) 危機が目の前に迫っているというのに、なぜか浮かびあがる安堵感。 まるで“運命”がそう語っているかのような。 (おかしい、あたしは“死ぬ”――“死なない” これは何?この――) あたしが“操り人形”になっている感覚―――― その予告じみた“運命”の通り。 竹内理緒は死ななかった。 「おい」 理緒の耳に届くのは男――自分と同じくらいの年代の声だろうか、声に若さを感じる。 「何やってんだよ、ちびっ子苛めて」 声の発せられた方を見ると黒のブレザーを着て、顔は不機嫌そうで。 「あんたにとっちゃあ俺はお邪魔なんだろうが」 それでも不機嫌そうな表情とは裏腹に優しさを感じさせる声。 「人吉善吉だ。止めるぜ、あんたを」 そう名乗って斗貴子に向かっていった。       ◆ ◆ ◆       金属音が鳴り響く。戦いの、殺し合いの音が小刻みに辺りを支配する。 「おらっ!」 「はあっ!」 津村斗貴子、人吉善吉――――二人の少年少女が武器を持ち争っている。  斗貴子は刀を。善吉は左手には手甲を。   「これで!」 斗貴子は突き、薙ぎ払いと高速の勢いで斬撃を繰り出す。 全ては人の命を一撃で刈り取れる代物。 だがそれを。 「はっ!遅いよ、あんた。この程度なら……」 善吉は意にでも返さない。 突きを手甲をつけた左手で弾き、薙ぎ払いを何もつけていない右手でなめらかに受け流す。 「めだかちゃんの方が数倍速いんだよ!」 そして、右足で渾身の蹴りを斗貴子の腹目がけて繰り出す。 当たったら一撃で地に沈むように重い一撃。 「お前の方こそ……遅いんだよ!」 斗貴子は咄嗟に後ろに跳ぶことで蹴りを悠々と躱す。 善吉は再び駆ける。先手必勝と言わんばかりに、斗貴子の懐に潜り右手でアッパーを放つ。 「その程度で、私を打倒出来るとでも?」 斗貴子は安々とアッパーを躱し、刀で首を刈ろうと刃を走らせる。 だがその一撃は惜しくも空を切り、首を刈るまでにはいかない。 「おい、お前何ぼさっとしてんだよ、速く逃げろ!」 「すいません足をくじいてしまって」 「だったら匍ってでも行け!俺だっていつまでも守ってらんねぇぞ!」 「余裕じゃないか、私を相手によそ見などとはな」 善吉が理緒に意識を向けた僅かの間、斗貴子は善吉の顎めがけて掌底で叩き上げる。 「――!」 声をあげる暇もなかった。善吉はそのまま吹っ飛び理緒の横に堕ちる。 (なんて威力だよ。こいつただのちょっと武道とかやってる女子高校生じゃねえぞ) 追撃。刃による振り下ろし。死がもうすぐやってくる。 おいおいここで終わるのか――いいや、まだだ。終わらせない。 「てめえのほうこそ、余裕ぶっこいてんじゃねえ!!!!」 振り下ろしが善吉の身体を裂く前に。 動く。 「なっ!」 善吉は旋転しながら振下ろしを避けて刀の側面を全力で蹴りつける! ガキン、と鉄が折れる音があたりに響いた。 「これで武器はなくなったぜ!」 善吉の蹴撃により刀身は折れてもはや使い物にならない。 斗貴子は一旦後退しようとするが。 「逃がさねえ」 善吉は再び右足での渾身の蹴りを叩きつける。 腕を交差してなんとか直撃を避けた斗貴子だがその威力に押されて吹っ飛んだ。 そのまま地面にゴミのように転がり動かない。 もう起き上がる気配はなく終りの空気があたりに漂う。 「おい大丈夫か」 「は、はい。どうもありがと……!?」 理緒の言葉が途中で止まる。 そしてなにか信じられない物を見るかのような顔を―― 「――ぁ」 それに数瞬遅れて善吉も振りかえる。理緒と同じように先程までの余裕の表情が一瞬にして霧散した。 「なっ!?」 「効いたよ。なかなかの一撃だった」 そこにいたのは幽鬼のように立つ津村斗貴子だった。殺気は消え去り、静かな空気が辺りに蔓延する。 表情は何も感じさせない無。 「最初だからいろいろと温存しておこうだとか」 ヤバイ。これはヤバイ。 理緒と善吉は怖気のような感触を斗貴子から感じた。 「せめて安らかに死なせてやろうとか」 善吉は理緒を抱えて今すぐにでも逃げ出そうと駆け出す。 「もう止めだ。お前ら二人とも――」 斗貴子がそう言ってデイバッグから取り出したものは。 「臓物をブチ撒けろ!」 その言葉と同時に善吉は全力で横に跳ぶ。 その一秒後、善吉がさっきまでいた場所を銃弾が蹂躙した。 斗貴子の手にあるのは無骨な突撃銃。アーマライトAR18。 「ちくしょう!?あんなの相手に真正面からやれるかよ」 その言葉を捨て台詞として跳んだ勢いそのままに善吉はすぐそばにあったビルに入った。 斗貴子が銃を使い慣れてないのか運がいいのかわからないが銃弾は奇跡的にも善吉達に一発も当たらなかった。   「っ!一発も当たらないとは。まあいいさ。このビルの中に追いつめた。ゆっくりと狩ろうじゃないか」 マガジンを交換して斗貴子は善吉達の逃げたビルに入る。 急がず慌てず冷静に。慢心はもうない。   「カズキ……こんなことぐらいしかできない私を許してくれ」 再び“鬼ごっこ”が始まった。 ◆ ◆ ◆ 「……なかなか広いな」 斗貴子はビルの三階にいた。隅々まで探しているため上の階に登るのが遅くなっているためにそれなりの時間が過ぎてしまっている。 だが、この“鬼ごっこ”にも転機が訪れる。 この三階もあらかた調べ終わって次の階へ行こうかと考えていたその時。 「っ、何だこれは!」 ビルの中の火災報知器の大きなベルの音が鳴り響いた。 ジリリリリとやかましいくらいに鳴り続ける。 「今度は……水か」 ベルのうるさい音と同時に襲来したのは上から降りかかる水。 火災報知器によって天井にあるスプリンクラーが発動したのだ。 「冷たい……!まふざけた嫌がらせをしてくれるじゃないか奴等」 斗貴子を水の雨が襲う。まるで傘もささずに台風の吹き荒れる外にいるかのようだ。 あっという間に全身びしょ濡れになってしまった。 「殺してやる。臓物を盛大にブチ撒けてグシャグシャにしてやる」 そして斗貴子は上へ上へ登っていく。 善吉達を一刻も早く見つけて殺すために。その“鬼ごっこ”は突然の終焉を迎えた。 「よお」 「!?」 突然の陽気な声。まるで親友に挨拶するかのような気軽な口調で。 人吉善吉が現れた。 「ほう、わざわざ殺されに来てくれたか。あの小さな女の子は?」 「さあ?」 「ふざけるな、ヤケになったのか。お前の命を握っているのは私だぞ?」 斗貴子はアーマライトAR18の銃口を善吉に向けて威嚇する。いつでも撃てるように安全装置も外した。 これでチェック。この場は津村斗貴子が支配している。 斗貴子の頭の中にはすでに善吉を殺すシュミレートが出来ていた。 「それよりさ」 「何だ、命乞いか?それならもう……」 「違う。一つ聞きたいことがあってさ。アンタ、こんな殺し合いの場でも落ち着いていられる胆力に加えて、戦闘もできる。  それなのになぜあいつら……主催者に反抗しない?」 「……」 善吉の問いに斗貴子は沈黙で答え、そのまま数秒過ぎる。 「やっぱ、自分が生き残りたいから「違う!!そんなくだらない理由じゃない!!!」……っ。  じゃあ何だよ」 そして再び数秒過ぎ、沈黙が二人を包む。二人の耳に入るのはスプリンクラーから吐き出される雨の音のみ。 善吉が何か言葉を発しようとしたその時。斗貴子がポツリと声を出した。 「大切な……私の命を投げ売ってでも守りたい人がいる。そのバカはお人好しでな。  どんな奴も無条件で信じようとする。……そいつを死なせたくない!……ただそれだけだ」 斗貴子の小さな声は段々と大きくなり、善吉にはそれは哭くような悲しい声色に聞こえた。 「……主催者に抗う?私達は既に命を奴等に握られているんだぞ?それに私達をさらう手際の良さ。  勝てると思うか?私は思わない。だったらいくら悔しくても乗るしかないだろう!!  文句など言わせない。私だって必死に考えたんだ。それで、この道を選んだのだから」 「……そうかよ」 斗貴子の言葉を善吉は静かに返す。説得は今は不可能。そう悟った。 「じゃあ俺はあんたを倒す。生憎とあきらめが悪いんだよ、俺は。  こんなところで死ねない。あのふざけたおばさんに一発かますまではな」 「勇ましいな、だがそれは無理だ。お前はここで死ぬんだからな」 「だから言っただろ……」 瞬間。 「一発かますまで死ねないって!」 善吉が斗貴子に向けて走り出した。斗貴子は冷静に銃口を善吉の胸に向けて、トリガーを引く。 それで終わり。善吉は弾丸に貫かれて死ぬ、そして理緒をいぶり出して殺す。 だがその考えは粉々に打ち砕かれた。 「な!?なぜ弾がでない!!」 斗貴子の持つ突撃銃、アーマライトAR18は何の動きも示さない。 銃弾がでない、なぜ? さっきまでは使えたはずなのに、なぜ? 「何でだ、何で出ない!!!くそっ!!!!」 斗貴子は子供がわめき散らすように叫ぶ。その間にも善吉は斗貴子の元へ勢いよく迫って来る。 「くそっ!」 斗貴子は使えない突撃銃を捨てて迎撃しようとするが。 「もう遅い」 善吉は懐に入り、黒い何かを斗貴子の腹部に押し当てる。 「しばらく寝てろ、そんで頭冷やせ」 バチッ、と小さな音が鳴った。 斗貴子は腹部に当てられた黒い何かによる痛みに苦悶の声を上げて気絶した。 ◆ ◆ ◆ ここで時は少し前に戻そう。 まだスプリンクラーの雨が吹き荒れる前のビルの中。善吉と理緒は二人で相談をしていた。 「このビルは十三階建てか、不吉な数字だ。どっかの会社みてえだけど今はそんなことより――」 「はい、そのようですね。善吉さんすぐにあの人はやってきます、早々に戦略を立てないと」 二人は斗貴子を何とか撃退するためにどう動くべきか思考を重ねている。 (おいおいどうするよ、あれ。あんなのに立ち向かえるか!  拳銃ならともかくあんな突撃銃だと蹴り飛ばす前に蜂の巣になっちまう) 善吉の内心は焦りでいっぱいだった。 かっこをつけてみたはいいが、やっぱり失敗したかなどと考えがネガティブの方向へ向かってしまう。 自分は普通の男子高校生なのだ。幼なじみの黒神めだかとは違うんだ。 ただの凡人には荷が重すぎるだよ、と善吉は自嘲する。 「善吉さん」 「ん?何だ理緒ちゃん?」 「何だじゃないですよ、戦略を立てなくちゃって言ったじゃないですか。  それと理緒ちゃんとか子供扱いしないで下さい!これでも高校二年生です!」 「本当に?」 「冗談でこんなこと言いますか。こーすけ君といい亮子ちゃんといい。善吉さんも!  そんなにあたしは子供に見えますか!ロリですか!」 「まぁ落ち着けって。そんなことどうでもいいじゃんか」 「どうでもよくありません!」 理緒はむすっとした顔で善吉を見る。 くりっとした目に子供のような愛らしい顔、身体も発育途中の小さな体。 これで高校二年生とは何の冗談だと善吉は苦笑する。 こんな時じゃなければかわいいものだとか笑って考えれるが今はそんな状況ではない。 命がかかっているんだ。 頭の中の余計な思考をやめて理緒とこれからについて相談する。 「わかってるって。竹内は高校二年生、そうだろ?」 「何度も言ってるじゃないですか、ってこんな口論してる暇はありません。  戦略ですよ、戦略。速く考えないとあたし達二人とも血の海に沈みますよ」 「縁起でもないこというなよ。だけどよ戦略っていっても奴がどうするんだ。  俺の支給品にはあんな突撃銃に太刀打ちできる物はないぞ。  さすがにこの篭手じゃあ無理だ」 そう言って善吉は腕を振り上げて理緒に篭手を見せる。 「これ……何です?かなり大きくて、面白い形状をしてますね」 「リボルバーナックルって言うらしい。 何かストレージデバイスだの何だかんだ書いてあったが役に立ちそうもない。  他には……これだ。奴を無効化出来るかもしれねえけど……」 デイバッグからとり出されたのはスタンガン。 近づいてこれを使えば相手を気絶させられることが出来るかもしれないが、そもそも近づくことができないのだ。意味はない。 「あたしもこんなのしか……」 理緒が出したのもあまり戦闘に向くものではなかった。当然突撃銃相手には何の役にも立たない。 (だめだだめだめだめだ!これじゃあ勝てねえ。やっぱりあの女が来るのを見計らってどっかに隠れてる。  階段近くとかがいい。そしてあいつが出てきた瞬間に強襲……いや、リスクが大きすぎる!) 強襲作戦はリスクがあまりにも大きすぎる。故に善吉は頭の中で却下とし、ゴミ箱行きを決める。 (うまく隠れて、あの人が隙を見せているうちに階段に全速力で向かって逃げる…… こんなの戦略ですらない。分が悪すぎるよ、本当) 理緒もいろいろと考えるがどれも現実味のないもので成功する可能性も低い。 (俺達二人があいつをなんとか撃退出来る方法) (あの銃をかいくぐれる何か……) 二人は押し黙って自分の世界に入る。生きてこの場を抜けるための策を深く考えるために。 (つーか銃をどうにかしないと始まらないだろ。あの銃さえなければ) (銃を封じるだけじゃ駄目だ。あの人は近接戦闘もできる。それに善吉さんの蹴りを受けて立っていられる人だ。  仮定としてまず銃を封じたとする。何か一撃で意識を刈り取れるのは……) さらに考える。考える、考える。 (ああいう銃の弱点は水だ。水に浸れば動作不良を起こして銃弾が発射されないはずだ。  だがここに水はない。飲み水でも使うか?) (スタンガンなら……!でもこれ程度で気絶するとは思えない。 水でもかければ電気が良く通って効くと思うけど) 考えろ、考えろ考えろ!頭をフル回転させてどう動くべきかをさらにさらに考える!! ((水を安全に相手にかけるには……)) ――――思いついた。 ◆ ◆ ◆ 「はぁ、疲れた」 そして今に至る。善吉達の考えた戦略は簡単なものだ。 火災報知器を鳴らし、スプリンクラーを発動させる。上から降る水によって銃はびしょ濡れになり動作不良を起こす。 斗貴子自身も水に濡れることによってスタンガンの通りもよくなる。 これだけだ。 理緒は足の怪我の都合で別の安全な場所で待機している。善吉が出てきても足手纏いになるだけだと言ったためだ。 「さて、竹内のところにでも戻るかな。こいつが起きる前にさっさと逃げねえと」 善吉は身を翻し、理緒のいる場所に戻ろうと歩き出した。 「……ズ…………に」 小さな囁きのような声。 「………ズキ…………めに」 善吉は気づかない。 「……ズキのために」 斗貴子が勢いよく起き上がり善吉に弾丸のような速さで駆ける。 「カズキのために!貴様を殺す!!」 やっと善吉が気づいた。 「!?」 そして半ば無意識に“左腕”で横一閃に振り抜いてしまった。 それは鬱陶しい虫を払うかのように。 「え?」 グシャッ、と肉が潰れる音が響いた。 ([[コワレモノ~血飛沫に嗤え~へ]])
「はぁっ、はぁっ」 夜のオフィス街。普段なら静寂が支配するはずだがこの場は違う。 断続的に吐かれる息の音と地面を踏む足音。 その音を出す原因――それは二人の少女の“鬼ごっこ”。 竹内理緒は逃げていた。この夜の街を全速力で疾走して、時には後ろをふり返りながら。 ツインテールがゆらゆらと揺れる。髪が乱れに乱れてしまったがそんなのを気にしている余裕はない。 「抵抗はしないほうがいい」 後ろから追いかけてくる外敵はセーラー服の少女。鼻より少し上に横一文字に残っている傷が印象的だ。 津村斗貴子。“錬金の戦士”として活動していた少女、だが今は逃亡の身であり“錬金の戦士”とも敵対している。 「大人しく殺されろ!」 斗貴子はこのゲームを即座に理解し、自分の取るべき方針を決めた。 それは。 「……カズキのためなんだ。剛太でさえ殺さなくちゃいけないんだ。 私は――カズキをこのゲームで優勝させるって決めたんだ」 逃げている理緒には聞こえない小さな声でぼそっと斗貴子は言葉を吐いた。 もう斗貴子の意志に迷いはない。 ただ殺すために。目の前で逃げ回っている無力な少女を殺すために。 駆ける! (やばいな、これは。逃げ切れない) 一方、理緒は逃げながらも頭の中では冷静に分析をしていた。 ブレードチルドレンで破壊の魔女と呼ばれるのは伊達ではない。 有事の時の判断力に加えて行動力の高さ、どれをとっても常人より遥か上に位置している。 だがその理緒であっても今の状況は厳しいと言える。 理緒は再び後ろを振り返って斗貴子を見る。 「……っ!」 まだついてきている、逃げ切れない、と理緒は苦い表情を作り舌打ちをする。 (いきなり襲われたから武器の確認もしてないあたしに比べて…… あっちはあの腰に下げている刀、あれ一つでも十分脅威。八方塞がりだね) 武器の優劣の差。素手と得物が有るのとでは訳が違う。 それはどうあがいても揺るがないものであり、理緒が明らかに不利だと言うことを物語っている。 だから理緒は走る。下手に何かをするよりは逃亡した方が生きのこれる確率が上がると判斷したためだ。 (全然振り切れないなんて。ホント、嫌になっちゃう) だが理緒の誤算は斗貴子を普通の女子高校生だと思ったことだ。 斗貴子は“錬金の戦士”として訓練していたこともありそこらの一般人とは違うのだ。 そして“鬼ごっこ”は唐突に終わりを告げる。 「はうっ!」 理緒が転んでしまうことで。即座に起き上がろうとするが、 (足を捻った?どうしてこんな時に!) 起き上がろうとしても起き上がれない。そのために必然と歩みはそこで止まる。 「好機……だな」 斗貴子は理緒が動けないのを見て刀を抜き、斬り殺そうと迫る。 理緒の頭にあるのは―― (あたしはここで斬り殺されて終わるの?でも不思議。そんな感じが全然しない) 危機が目の前に迫っているというのに、なぜか浮かびあがる安堵感。 まるで“運命”がそう語っているかのような。 (おかしい、あたしは“死ぬ”――“死なない” これは何?この――) あたしが“操り人形”になっている感覚―――― その予告じみた“運命”の通り。 竹内理緒は死ななかった。 「おい」 理緒の耳に届くのは男――自分と同じくらいの年代の声だろうか、声に若さを感じる。 「何やってんだよ、ちびっ子苛めて」 声の発せられた方を見ると黒のブレザーを着て、顔は不機嫌そうで。 「あんたにとっちゃあ俺はお邪魔なんだろうが」 それでも不機嫌そうな表情とは裏腹に優しさを感じさせる声。 「人吉善吉だ。止めるぜ、あんたを」 そう名乗って斗貴子に向かっていった。       ◆ ◆ ◆       金属音が鳴り響く。戦いの、殺し合いの音が小刻みに辺りを支配する。 「おらっ!」 「はあっ!」 津村斗貴子、人吉善吉――――二人の少年少女が武器を持ち争っている。  斗貴子は刀を。善吉は左手には手甲を。   「これで!」 斗貴子は突き、薙ぎ払いと高速の勢いで斬撃を繰り出す。 全ては人の命を一撃で刈り取れる代物。 だがそれを。 「はっ!遅いよ、あんた。この程度なら……」 善吉は意にでも返さない。 突きを手甲をつけた左手で弾き、薙ぎ払いを何もつけていない右手でなめらかに受け流す。 「めだかちゃんの方が数倍速いんだよ!」 そして、右足で渾身の蹴りを斗貴子の腹目がけて繰り出す。 当たったら一撃で地に沈むように重い一撃。 「お前の方こそ……遅いんだよ!」 斗貴子は咄嗟に後ろに跳ぶことで蹴りを悠々と躱す。 善吉は再び駆ける。先手必勝と言わんばかりに、斗貴子の懐に潜り右手でアッパーを放つ。 「その程度で、私を打倒出来るとでも?」 斗貴子は安々とアッパーを躱し、刀で首を刈ろうと刃を走らせる。 だがその一撃は惜しくも空を切り、首を刈るまでにはいかない。 「おい、お前何ぼさっとしてんだよ、速く逃げろ!」 「すいません足をくじいてしまって」 「だったら匍ってでも行け!俺だっていつまでも守ってらんねぇぞ!」 「余裕じゃないか、私を相手によそ見などとはな」 善吉が理緒に意識を向けた僅かの間、斗貴子は善吉の顎めがけて掌底で叩き上げる。 「――!」 声をあげる暇もなかった。善吉はそのまま吹っ飛び理緒の横に堕ちる。 (なんて威力だよ。こいつただのちょっと武道とかやってる女子高校生じゃねえぞ) 追撃。刃による振り下ろし。死がもうすぐやってくる。 おいおいここで終わるのか――いいや、まだだ。終わらせない。 「てめえのほうこそ、余裕ぶっこいてんじゃねえ!!!!」 振り下ろしが善吉の身体を裂く前に。 動く。 「なっ!」 善吉は旋転しながら振下ろしを避けて刀の側面を全力で蹴りつける! ガキン、と鉄が折れる音があたりに響いた。 「これで武器はなくなったぜ!」 善吉の蹴撃により刀身は折れてもはや使い物にならない。 斗貴子は一旦後退しようとするが。 「逃がさねえ」 善吉は再び右足での渾身の蹴りを叩きつける。 腕を交差してなんとか直撃を避けた斗貴子だがその威力に押されて吹っ飛んだ。 そのまま地面にゴミのように転がり動かない。 もう起き上がる気配はなく終りの空気があたりに漂う。 「おい大丈夫か」 「は、はい。どうもありがと……!?」 理緒の言葉が途中で止まる。 そしてなにか信じられない物を見るかのような顔を―― 「――ぁ」 それに数瞬遅れて善吉も振りかえる。理緒と同じように先程までの余裕の表情が一瞬にして霧散した。 「なっ!?」 「効いたよ。なかなかの一撃だった」 そこにいたのは幽鬼のように立つ津村斗貴子だった。殺気は消え去り、静かな空気が辺りに蔓延する。 表情は何も感じさせない無。 「最初だからいろいろと温存しておこうだとか」 ヤバイ。これはヤバイ。 理緒と善吉は怖気のような感触を斗貴子から感じた。 「せめて安らかに死なせてやろうとか」 善吉は理緒を抱えて今すぐにでも逃げ出そうと駆け出す。 「もう止めだ。お前ら二人とも――」 斗貴子がそう言ってデイバッグから取り出したものは。 「臓物をブチ撒けろ!」 その言葉と同時に善吉は全力で横に跳ぶ。 その一秒後、善吉がさっきまでいた場所を銃弾が蹂躙した。 斗貴子の手にあるのは無骨な突撃銃。アーマライトAR18。 「ちくしょう!?あんなの相手に真正面からやれるかよ」 その言葉を捨て台詞として跳んだ勢いそのままに善吉はすぐそばにあったビルに入った。 斗貴子が銃を使い慣れてないのか運がいいのかわからないが銃弾は奇跡的にも善吉達に一発も当たらなかった。   「っ!一発も当たらないとは。まあいいさ。このビルの中に追いつめた。ゆっくりと狩ろうじゃないか」 マガジンを交換して斗貴子は善吉達の逃げたビルに入る。 急がず慌てず冷静に。慢心はもうない。   「カズキ……こんなことぐらいしかできない私を許してくれ」 再び“鬼ごっこ”が始まった。 ◆ ◆ ◆ 「……なかなか広いな」 斗貴子はビルの三階にいた。隅々まで探しているため上の階に登るのが遅くなっているためにそれなりの時間が過ぎてしまっている。 だが、この“鬼ごっこ”にも転機が訪れる。 この三階もあらかた調べ終わって次の階へ行こうかと考えていたその時。 「っ、何だこれは!」 ビルの中の火災報知器の大きなベルの音が鳴り響いた。 ジリリリリとやかましいくらいに鳴り続ける。 「今度は……水か」 ベルのうるさい音と同時に襲来したのは上から降りかかる水。 火災報知器によって天井にあるスプリンクラーが発動したのだ。 「冷たい……!まふざけた嫌がらせをしてくれるじゃないか奴等」 斗貴子を水の雨が襲う。まるで傘もささずに台風の吹き荒れる外にいるかのようだ。 あっという間に全身びしょ濡れになってしまった。 「殺してやる。臓物を盛大にブチ撒けてグシャグシャにしてやる」 そして斗貴子は上へ上へ登っていく。 善吉達を一刻も早く見つけて殺すために。その“鬼ごっこ”は突然の終焉を迎えた。 「よお」 「!?」 突然の陽気な声。まるで親友に挨拶するかのような気軽な口調で。 人吉善吉が現れた。 「ほう、わざわざ殺されに来てくれたか。あの小さな女の子は?」 「さあ?」 「ふざけるな、ヤケになったのか。お前の命を握っているのは私だぞ?」 斗貴子はアーマライトAR18の銃口を善吉に向けて威嚇する。いつでも撃てるように安全装置も外した。 これでチェック。この場は津村斗貴子が支配している。 斗貴子の頭の中にはすでに善吉を殺すシュミレートが出来ていた。 「それよりさ」 「何だ、命乞いか?それならもう……」 「違う。一つ聞きたいことがあってさ。アンタ、こんな殺し合いの場でも落ち着いていられる胆力に加えて、戦闘もできる。  それなのになぜあいつら……主催者に反抗しない?」 「……」 善吉の問いに斗貴子は沈黙で答え、そのまま数秒過ぎる。 「やっぱ、自分が生き残りたいから「違う!!そんなくだらない理由じゃない!!!」……っ。  じゃあ何だよ」 そして再び数秒過ぎ、沈黙が二人を包む。二人の耳に入るのはスプリンクラーから吐き出される雨の音のみ。 善吉が何か言葉を発しようとしたその時。斗貴子がポツリと声を出した。 「大切な……私の命を投げ売ってでも守りたい人がいる。そのバカはお人好しでな。  どんな奴も無条件で信じようとする。……そいつを死なせたくない!……ただそれだけだ」 斗貴子の小さな声は段々と大きくなり、善吉にはそれは哭くような悲しい声色に聞こえた。 「……主催者に抗う?私達は既に命を奴等に握られているんだぞ?それに私達をさらう手際の良さ。  勝てると思うか?私は思わない。だったらいくら悔しくても乗るしかないだろう!!  文句など言わせない。私だって必死に考えたんだ。それで、この道を選んだのだから」 「……そうかよ」 斗貴子の言葉を善吉は静かに返す。説得は今は不可能。そう悟った。 「じゃあ俺はあんたを倒す。生憎とあきらめが悪いんだよ、俺は。  こんなところで死ねない。あのふざけたおばさんに一発かますまではな」 「勇ましいな、だがそれは無理だ。お前はここで死ぬんだからな」 「だから言っただろ……」 瞬間。 「一発かますまで死ねないって!」 善吉が斗貴子に向けて走り出した。斗貴子は冷静に銃口を善吉の胸に向けて、トリガーを引く。 それで終わり。善吉は弾丸に貫かれて死ぬ、そして理緒をいぶり出して殺す。 だがその考えは粉々に打ち砕かれた。 「な!?なぜ弾がでない!!」 斗貴子の持つ突撃銃、アーマライトAR18は何の動きも示さない。 銃弾がでない、なぜ? さっきまでは使えたはずなのに、なぜ? 「何でだ、何で出ない!!!くそっ!!!!」 斗貴子は子供がわめき散らすように叫ぶ。その間にも善吉は斗貴子の元へ勢いよく迫って来る。 「くそっ!」 斗貴子は使えない突撃銃を捨てて迎撃しようとするが。 「もう遅い」 善吉は懐に入り、黒い何かを斗貴子の腹部に押し当てる。 「しばらく寝てろ、そんで頭冷やせ」 バチッ、と小さな音が鳴った。 斗貴子は腹部に当てられた黒い何かによる痛みに苦悶の声を上げて気絶した。 ◆ ◆ ◆ ここで時は少し前に戻そう。 まだスプリンクラーの雨が吹き荒れる前のビルの中。善吉と理緒は二人で相談をしていた。 「このビルは十三階建てか、不吉な数字だ。どっかの会社みてえだけど今はそんなことより――」 「はい、そのようですね。善吉さんすぐにあの人はやってきます、早々に戦略を立てないと」 二人は斗貴子を何とか撃退するためにどう動くべきか思考を重ねている。 (おいおいどうするよ、あれ。あんなのに立ち向かえるか!  拳銃ならともかくあんな突撃銃だと蹴り飛ばす前に蜂の巣になっちまう) 善吉の内心は焦りでいっぱいだった。 かっこをつけてみたはいいが、やっぱり失敗したかなどと考えがネガティブの方向へ向かってしまう。 自分は普通の男子高校生なのだ。幼なじみの黒神めだかとは違うんだ。 ただの凡人には荷が重すぎるだよ、と善吉は自嘲する。 「善吉さん」 「ん?何だ理緒ちゃん?」 「何だじゃないですよ、戦略を立てなくちゃって言ったじゃないですか。  それと理緒ちゃんとか子供扱いしないで下さい!これでも高校二年生です!」 「本当に?」 「冗談でこんなこと言いますか。こーすけ君といい亮子ちゃんといい。善吉さんも!  そんなにあたしは子供に見えますか!ロリですか!」 「まぁ落ち着けって。そんなことどうでもいいじゃんか」 「どうでもよくありません!」 理緒はむすっとした顔で善吉を見る。 くりっとした目に子供のような愛らしい顔、身体も発育途中の小さな体。 これで高校二年生とは何の冗談だと善吉は苦笑する。 こんな時じゃなければかわいいものだとか笑って考えれるが今はそんな状況ではない。 命がかかっているんだ。 頭の中の余計な思考をやめて理緒とこれからについて相談する。 「わかってるって。竹内は高校二年生、そうだろ?」 「何度も言ってるじゃないですか、ってこんな口論してる暇はありません。  戦略ですよ、戦略。速く考えないとあたし達二人とも血の海に沈みますよ」 「縁起でもないこというなよ。だけどよ戦略っていっても奴がどうするんだ。  俺の支給品にはあんな突撃銃に太刀打ちできる物はないぞ。  さすがにこの篭手じゃあ無理だ」 そう言って善吉は腕を振り上げて理緒に篭手を見せる。 「これ……何です?かなり大きくて、面白い形状をしてますね」 「リボルバーナックルって言うらしい。 何かストレージデバイスだの何だかんだ書いてあったが役に立ちそうもない。  他には……これだ。奴を無効化出来るかもしれねえけど……」 デイバッグからとり出されたのはスタンガン。 近づいてこれを使えば相手を気絶させられることが出来るかもしれないが、そもそも近づくことができないのだ。意味はない。 「あたしもこんなのしか……」 理緒が出したのもあまり戦闘に向くものではなかった。当然突撃銃相手には何の役にも立たない。 (だめだだめだめだめだ!これじゃあ勝てねえ。やっぱりあの女が来るのを見計らってどっかに隠れてる。  階段近くとかがいい。そしてあいつが出てきた瞬間に強襲……いや、リスクが大きすぎる!) 強襲作戦はリスクがあまりにも大きすぎる。故に善吉は頭の中で却下とし、ゴミ箱行きを決める。 (うまく隠れて、あの人が隙を見せているうちに階段に全速力で向かって逃げる…… こんなの戦略ですらない。分が悪すぎるよ、本当) 理緒もいろいろと考えるがどれも現実味のないもので成功する可能性も低い。 (俺達二人があいつをなんとか撃退出来る方法) (あの銃をかいくぐれる何か……) 二人は押し黙って自分の世界に入る。生きてこの場を抜けるための策を深く考えるために。 (つーか銃をどうにかしないと始まらないだろ。あの銃さえなければ) (銃を封じるだけじゃ駄目だ。あの人は近接戦闘もできる。それに善吉さんの蹴りを受けて立っていられる人だ。  仮定としてまず銃を封じたとする。何か一撃で意識を刈り取れるのは……) さらに考える。考える、考える。 (ああいう銃の弱点は水だ。水に浸れば動作不良を起こして銃弾が発射されないはずだ。  だがここに水はない。飲み水でも使うか?) (スタンガンなら……!でもこれ程度で気絶するとは思えない。 水でもかければ電気が良く通って効くと思うけど) 考えろ、考えろ考えろ!頭をフル回転させてどう動くべきかをさらにさらに考える!! ((水を安全に相手にかけるには……)) ――――思いついた。 ◆ ◆ ◆ 「はぁ、疲れた」 そして今に至る。善吉達の考えた戦略は簡単なものだ。 火災報知器を鳴らし、スプリンクラーを発動させる。上から降る水によって銃はびしょ濡れになり動作不良を起こす。 斗貴子自身も水に濡れることによってスタンガンの通りもよくなる。 これだけだ。 理緒は足の怪我の都合で別の安全な場所で待機している。善吉が出てきても足手纏いになるだけだと言ったためだ。 「さて、竹内のところにでも戻るかな。こいつが起きる前にさっさと逃げねえと」 善吉は身を翻し、理緒のいる場所に戻ろうと歩き出した。 「……ズ…………に」 小さな囁きのような声。 「………ズキ…………めに」 善吉は気づかない。 「……ズキのために」 斗貴子が勢いよく起き上がり善吉に弾丸のような速さで駆ける。 「カズキのために!貴様を殺す!!」 やっと善吉が気づいた。 「!?」 そして半ば無意識に“左腕”で横一閃に振り抜いてしまった。 それは鬱陶しい虫を払うかのように。 「え?」 グシャッ、と肉が潰れる音が響いた。 ([[コワレモノ~血飛沫に嗤え~]])へ

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示:
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。