7-037

84 名前:1/3 投稿日:2006/07/10(月) 21:52:38
陳到は汝南に至る間道を歩いていた。
「ひとまず知ってる場所に行かんことにはな。劉備様は蜀へ行かれるかもしれんが……」
不自然に縮小された中華。その外はどうなっているのだろうかという疑問もあったが、今の陳到にそれを確認するほどの余裕はない。
支給された武器──二丁の奇妙な銃を構えながら、彼は南へと歩いていった。


十分ほど歩いただろうか。空は夕闇に包まれ、陳到の歩む道も次第に暗くなっていく。月が出そうなのが不幸中の幸いであるが。
やがて林を通る道に差し掛かったところで、彼はぴたりと歩を止めた。
(いる……。一人、いや二人か)
五十歩ほど先に、何者かが隠れている。おそらくは待ち伏せだろう。
(フ……だが俺程度に悟られているようではまだまだか。この距離で仕掛けてこないということは飛び道具はないようだが。さて、どうしたものかな)
陳到は劉備軍の親衛騎兵隊を率いていた男である。趙雲に比するとされたその武才は、決して凡庸ではない。
早速この銃とやらを試してみるか。それとも相手を見極めてみるか。体力を消耗させたくはないので、無駄な戦いは避けたい。
そこで、足元にあった小石を二つ拾うと敵が隠れているとおぼしき茂みに投げこんでみた。

「痛っ!」
「ぐ……」

一投目で見事命中。声からしてどうやら知り合いではないようだが、この後どう出るか。
そう考えた陳到の足元に細長い何かが転がり、直後爆音と閃光を放った。



85 名前:2/3 投稿日:2006/07/10(月) 21:53:15
咄嗟に顔を庇ったとは言え、想定もしていなかった事態に一瞬動きが固まってしまう。
「うおっ、まぶしっ!」
その隙に、敵のもう一方が陳到に向かって驀進する。その手には、鍛え上げられた鋼鉄の剣。
暴風の如き一撃が、陳到に襲い掛かる。
「くたばれっ!!」
「何の!」
その斬撃をバックステップして回避する。間一髪だった。
そしてようやく視界が戻ってきた陳到は、銃を構える。確か「ガン鬼の銃」だったか。
「……くそっ、陰陽弾をくらえっ!!」
慣れない銃を乱射する。驚いた相手が慌てて距離をとったが、運良く急所に当たってくれれば御の字だ。
陳到に斬りかかってきた男は、二三発銃弾を浴びて転がるように逃げていった。
(さて、追うか?)
血痕が残っている。辿っていけばもう一人の居場所もわかるかもしれない。
敵はおそらく二人組。気配が少しばかり遠のいた。追撃して殲滅するのも手だが……。
長年磨いてきた勘が発言する。やめておけ、と。
「まあ、いいか。こっちは言われなくてもスタコラサッサだ」
あの二人があれ以上の武器を持っていないとも限らないしな。

それにしても、この銃を持つと自分がやたら馬鹿になるような気がするのだが。なぜなのだろうか。
「むう……」
自分を救ってくれた銃を見て、陳到は首をかしげた。


86 名前:3/3 投稿日:2006/07/10(月) 21:56:08
「ううう、痛いっ……早く、早くこの傷を何とかしてくれええっ……」
辛くも小集落に逃げ込んだ襲撃者の二人。孫呉の朱然と朱桓の二人組。朱然は陳到に撃たれ、重傷を負っている。
「朱桓、何をしている。お、俺の手当てをっ!」
「…………」
朱然との二人で、不意を突いて奇襲すればあの程度の敵、何とかなると思っていた。
自分の策が甘かったのか、敵が自分の知らない猛将だったのか。はたまた腕と脚を撃ち抜かれてもがいている朱然の腕が未熟だったのか。どちらにしても……。
「……右腕、左脚、それと左肘か。かなり出血したし、これじゃもう走れんしろくに武器も扱えんやろ。残念や」
「朱桓? ……な、何を言っている?」
「別にぃ。でもな、もうあんたが俺と共に戦うことはできなくなったってのは確かや、と思ってな」
言いながら、朱桓は剣を手にする。
「ま、まままさか、お前!?」
驚愕する『相棒』の声を聞きながら、鋼鉄の剣をかざす。月光に冷たげな刀身が映えた。
「まさか二人目の相手で同盟解消になるとは思わなかったわ。ま、足手まといにならん限り仲間でいるつもりやったし……要は相手を倒せなかったあんたの自業自得ってわけやな」
夜の帳に包まれたその地に、断末魔の声が響いた。

「やれやれ、諸葛瑾の時は少しはうまく行ったんやが」
結局逃げ切られて命までは奪えなかったが、諸葛瑾の道具は奪うことに成功したのが一戦目。さっきの失敗したのが二戦目。
膂力なら遥かに朱然を勝っていても、身の安全のために敢えて彼に近接武器を預けていたのも朱桓の策だった。

「まあええわ。さしあたり狩りのための道具は整ったんやから」
そう言うと、彼は朱然の遺体に手を振って集落を後にした。


【朱然 死亡確認】

@陳到【ガン鬼の銃(陰陽弾×50)】
※汝南~予州方面へ。

@朱桓【鋼鉄の剣、スタン・グレネード×5、携帯型地雷×5(諸葛瑾の武器)】
※合肥方面へ。

@諸葛瑾【なし】
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最終更新:2007年11月18日 10:49
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