7-257 What is a Pretence?

14 名前:What is a Pretence? 1/5:2007/04/08(日) 00:27:56
このMDという音の詰まった平たい板には、一体どのぐらい音を詰めることが出来るんだろう。
透き通った中に銀色の円盤が入っているが、これのどこからどうやって音が出て来るのかすら解らない。
理屈はともあれ、これを今太史慈がぶつぶつ言いながら操作している箱に入れれば、中に入っている音が
聞こえるのだから、とりあえず仕組の事は気にしないようにしよう、と李典は思った。

既に聴いた曲は7つ。
楊儀が疲れ気味なのと、何か役に立つ情報があることを期待して、休みながら小さな板の中身を全部確かめよう、
ということになったのだが、現在判っているのは、少なくとも1枚に7曲以上入っているということだ。


5曲目は、今までとは打って変わってやたら荘厳な曲だった。そして、歌詞の良く判らない曲だった。
今まで聴いた曲も本来知らない言語なのに、楊儀にも李典にもある程度の内容が頭の中に自然と入って来たのだが、
この曲だけは訳が解らなかった。太史慈に聴かせたところ、「汝の敵を愛せよ」という内容だった。

汝の敵、と聞いて、楊儀は魏延を連想した。李典は張遼を連想した。が、すぐに不可解な様子で2人とも首を捻る。
愛せよということは、和解せよということなのだろうか? 捜して合流しろということなのだろうか。
楊儀が首を左右にぶんぶん振る。絶対ありえない、とでも言いたそうだ。



15 名前:What is a Pretence? 2/5:2007/04/08(日) 00:28:56
6曲目は、4曲目と似た感じの軽快な曲だ。
歌詞を聞き漏らすまいと、楊儀と太史慈がイヤホンを耳に捻じ込んでいる。今回は李典は一旦お休み。


 この手を紅く染めるたび 閉じ込めたこの想い

 果てしなく続く絶望に 瞳を閉ざして 涙も枯れてた 空っぽの私でも
 ああ 広い宇宙で出会えた奇跡だけを 握り締めてまた翼広げる
 この手を紅く染める度 閉じ込めたこの想い 硬く結ぶ唇 零れ落ちた切なさ
 そう貴方を守るため強く誓う 今この時を戦い抜く そして光満ちた未来抱きしめる

 永遠に続く哀しみを 背負い歩いてる 誰かを傷つけ汚れきった翼でも
 ああ 触れた指先忘れられずに今も 記憶の中温もりを求める
 叶わぬ願いなど無いと突きつけたナイフさえ 戸惑い震えている溢れそうな愛しさ
 そう 貴方と描いてく新たな世界へ羽ばたこう 振り向かない 決して 紡ぎ出す未来輝かせる

 この手を紅く染める度 閉じ込めたこの想い 硬く結ぶ唇 零れ落ちた切なさ
 そう貴方を守るため強く誓う 今この時を戦い抜く そして光満ちた未来抱きしめる


果てしなく続く絶望……。楊儀がげんなりした顔になる。
だが、全体の内容は大切な誰かの為に手を汚すという崇高な歌のようだ。



16 名前:What is a Pretence? 3/5:2007/04/08(日) 00:30:16
李典も聞き終えた後、歌詞の内容について3人で考える。
「これはきっと、この歌のように、誰かを守る為に他の誰かを傷つけなくてはならなかった人が
 どこかにいるということなのではないでしょうか」
「う~ん、仮にそうだとして、その人は何か物事の解決に関係あるのか?」
「う……それは私には判りませんが」
思いついた推測を述べた李典だが、楊儀に聞き返されて言葉に詰まる。
「む……もしかすると、その人が手掛かりになる何かを知っている、ということなのではないか?」
太史慈が手をぽんと叩いて言った。
「おお……って、仮にそうだとして、それに該当する人をどう探してどう確認する気だ……」
「むむむ」
いい線を突いていると思ったのだが、やはり楊儀に突っ込まれて固まってしまい、さらに李典に「何がむむむだ」と
言われる始末である。
「まあでも、支給された物に入ってたんだから、全く意味が無いという訳でもなさそうだよな……」
楊儀は考えるが、果たしてそんな人がいたかどうか、全く思い当たる節がない。

……数分後。
「とりあえずこの曲は保留! 次行ってみよう!」
気持ちの切り替えだけは早い楊儀であった。



17 名前:What is a Pretence? 4/5:2007/04/08(日) 00:31:26
7曲目。スイッチを押すと、柔らかいが力のある女性の声が聴こえてきた。


 夢から覚めてもこの手を伸ばすよ

 同じ強さで呼び合う心になれるのならば 何人分の傷でも僕は受け止められるよ
 もう少しだって気がするんだ この壁が崩れる黎明
 夢から覚めてもまだ見ない夢の方まで 僕らは一人で走り続けるしかないんだ
 転がり迷って作り出す僕の引力が いつか君へ

 寂しさに流されたり 嘘を嘘で隠したり 何度も間違えたのにまた最後の恋をして
 見飽きた筈の黄昏がこんなに綺麗だと泣いた
 ゴールのつもりでリセットボタンに飛び込んで 僕らはぐるぐる同じ場所を回ってるんだ
 勢い任せでいつかは昨日の引力を超える 君と

 僕は君に出会う
 夢から覚めても僕らは夢を乗り継いで まだ見ぬ誰かに懲りずにこの手を伸ばすんだ
 足りない心と身体が愛を捜す引力が届く 君に

 夢から覚めてもこの手を伸ばすよ……


聞き終えた楊儀の顔が少し明るくなった。「もう少しだって気がするんだ、この壁が崩れる~」の辺りに
現状から抜け出す希望を見出したらしい。
「確かに、今いる所から別のどこかへ渡って行けそうな歌詞ですな」
うんうんと李典が頷く。だが、太史慈はどうやら他の箇所に注目したようだ。



18 名前:What is a Pretence? 5/5:2007/04/08(日) 00:32:38
「俺はどちらかというと、こっちの『ゴールのつもりでリセットボタンに飛び込んで、僕らはぐるぐる同じ場所を回ってるんだ』
 の方が気になるのだがな」
ごーる? りせっと? 訳が解らない楊儀と李典が聞くと、ゴールというのは終着点で、リセットというのは全てを破棄してやり直す
ことだ、と太史慈が説明してくれた。
「終着点のつもりなのに、また最初からやり直し……。全体の中でここだけが妙に徒労感を感じるのだが」
「うーん……何か成し遂げたと思ったら夢でした、とかじゃないですか、他の箇所との繋がりで」
「うむ、その『夢』というのも少し気になっていた。ひょっとすると、そもそも根本的に矛盾しているこの世界を端的に
 表している語なのだろうか、とも思った」
太史慈が一応それっぽい推測を口にすると、李典も思った事を言う。
「私は『何人分の傷でも僕は受け止められるよ』というのが気になりまして。そんな人いるんですかね?」
……さあ? 楊儀と太史慈は顔を見合わせて肩をすくめた。


<<楊儀くんと子義マンセー/3名>>
太史慈【ジョジョの奇妙な冒険全巻】
李典【SPAS12】
楊儀【MDウォークマン】
※手掛かりを求めてMD鑑賞中。明確にそれと解る手掛かりが得られるまでMD聴き尽くし。
 現在位置、微妙に移動して荊州中部。

※6曲目は「DAWN」、7曲目は「Silly-Go-Round」。(5曲目は詳細を定めていません)
※歌詞が本来のものと表記が異なっています。(耳で聞いた際に考え得る表記に極力準拠しています)



「ときに、最初の3曲とその後の4曲の雰囲気が妙に違う気がするな。5曲目は例外として、おそらく3曲目までと
 4・6・7曲目を選んだのは別の人間ではなかろうか」
「なるほど、それは考えられますね。最初の3曲は直接的な手掛かりと言うよりは楊儀殿の行動指針だったようですし。
 となると、8曲目以降も何か手掛かりっぽい歌が入っている可能性が期待できますな……」
もっとも3曲目までも、これらが無ければ今こうして3人で手掛かりを模索することなど有り得なかった訳で、
ある意味手助けにはなっていたのだろう……と、太史慈と李典の会話を聞いていた楊儀は思った。

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最終更新:2007年11月23日 04:50
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