7-022

42 名前:1/4 投稿日:2006/07/08(土) 23:05:21
(なるほど・・・打撃用の武器であるようだが、威力のほうはタカが知れていそうだな・・・)
やれやれ、と呟きながら、張コウは己の支給武器『竹刀』を片手で振り回す。
銃でも当たれば未来も今より明るいものになっていたのかもしれないが
こんな武器で希望を見出せるほど、彼は天才でも阿呆でもない。
(やっぱり天下をつかめる素質のある奴ってのは、こういうところからも違うんだろうな)
曹操殿の武器はなんだったのだろう。
それを知る術は今の張コウにはないが、なぜか立派なものに思えて仕方がない。
ため息を吐きながら近くの切り株に腰を下ろし、かつて仕えた主君『曹操』のことを考える。
曹操には威厳と気品があった。袁紹にも確かにそれはあったが、曹操とはまったく別物だ。
『天下を握りまとめられるのは、きっとこういう人物なのだ』
そう感じずにはいられない感覚だった。
それと同時に、自分にはその器が無い事を思い知らされる。
仮にこの殺し合いで自分が生き残って天下を握っても、その天下の行く末は・・・?
そこまで彼が考えた時だった。
「おう、殺すぞー」
瞬間、張コウの背筋に凍るような感覚が走った。
腰掛けた体制から反射的に飛びのき、近くにあった木の陰に隠れる。
(ちっ、オレとした事が!こんな時にのんびり耽ってる場合か!!)
自戒しながら、声がした方を木の陰から覗き込む。
一応竹刀もいつでも振れる様に持つが、相手が銃を持っていたら意味は無い。
だが、張コウの目の先にいる男は銃どころか武器と呼べるようなものを何一つ構えていない。
それどころか、髭も髪も服もぼさぼさ、にやにやとした顔。
まるで今で言う浮浪者のような格好をしている。あまりにも貧相な風体だ。
しかしその姿に、逆に張コウは奇妙な違和感を感じた。
『天下を握れる者の風格』を、曹操とは別種ながらもその男がまとっていたからだ。
他愛の無い一言で自分が異常に恐怖を感じたのも、おそらくそのせいだろう。
「・・・あんた、何者だ?」
用心を忘れない張コウのそんな一言に、貧相な男はひゃははと笑いながらこう答えた。
「俺様か?俺様ぁ大賢良師、張角様よ」


43 名前:2/4 投稿日:2006/07/08(土) 23:06:30
(張角!?黄巾の乱の首謀者の、あの張角か!?)
思わず張コウは目を丸くする。
仰天するような一言だ。元を返せば、己が兵に志願したきっかけの人物ではないか。
「で、そこのお前さんはなんて名前だ?」
張コウの心を知ってか知らずか、あくまでのんびりした口調で張角が問う。
その問いに答えるべきか?張コウが迷っていると、張角は名簿を見ながらまた言い放った。
「ま、俺様の後からさほど時間もねぇで出てきたって事は・・・チョウ・・・の誰かってことか?」
「そんな事より、自分の命を心配したらどうだ?この糞虫以下の大悪党がッ!」
いや・・・違う。心の中で張コウは自分の行動を否定した。
『張角は油断している。ひょっとしたら、今飛びかかれば殺れるんじゃないか』
言葉など必要ない。飛びかかって殺せばいい。
例え自分の武器が殺傷力は低くても、喉などの人体の急所を狙えば殺すことは可能だろう。
殺戮ゲームに乗る乗らない以前に、『張角』という男は殺すべきなのだ。
ではなぜ飛び掛らないのか?それもわかっている。
唐突に現れた張角の武器は未知!あるいは恐ろしいものかも知れない!そんな恐怖が原因だ。
何より幻術を使えるらしい張角と、まともに対峙するのは馬鹿げている。
「糞虫以下の大悪党ってか?おめぇさん、なかなか言うじゃねえか」
頭をかきフケを撒き散らしながら、張角はひゃははと笑う。
「その糞虫以下の大悪党が、もしもこの殺し合いを終わらせるとしたらどうする?」
「・・・え?」
予想外の言葉だ。殺し合いを終わらせる?どういう意味だろうか?
戸惑っている張コウをよそに、張角は今までの不遜な態度が消え
別人であるかのように凛々しく、雄々しく、天を仰ぎ見て大きく叫んだ。
「蒼天既に死す!太平の世を築かんがため、俺は今より立ちて漢王朝を打ち滅ぼさん!」


44 名前:3/4 投稿日:2006/07/08(土) 23:07:44
叫んだ後、天を仰ぎながら張角は大きく息を吐いた。安堵のため息だ。
「・・・ひゃはは、どうやらこの程度ではこの首輪は爆発しないらしいな」
「不遜の一言だな」
張コウはただ一言呟く。だが、その言葉とは裏腹に張コウの心は少し躍った。
(確かに献帝を倒せば、この戦いは終わるのかもしれない・・・)
「・・・というわけだ。どうだ?おめぇさん、俺様と一緒にブッ潰さねぇか?王朝を、よ」
張角が誘いの言葉を投げかける。だが、張コウはそれを否定した。
「・・・御免だな。いや、オレじゃなくてもあんたと行動する奴はいないだろうよ。
 同じ黄巾賊の仲間を探す事だな」
「そいつぁどうか知らねぇが、まあいいさ」
張角が、木陰に隠れている張コウに背を向ける。今なら殺せるかもしれない。
が、張角の話の内容に気を惹かれた彼はすでにその意志はなくなっていた。
「なぜ、オレに声をかけた?オレがお前を殺すとは考えなかったのか?」
去り際に、張コウは張角の背に疑問を投げかける。
振り返りらず、張角はその疑問に答えた。
「そんな武器をもらった奴は、人の話を素直に聞くかと思ってな」
「オレが他に武器を隠しもっているとは考えなかったのか?」
「そん時ゃ、俺様も応戦させてもらうつもりだったさ」
そこまで言うと張角は振り返り、まだ木陰に隠れている張コウに一言発した。
「ま、よく考えろ。100人全員殺すのがいいか、帝1人殺すのがいいかってのをな」

「やれやれ・・・まさか張角にあんな事を言われるとはな」
張角が去った後、木の陰で尻餅をつきながら張コウは軽く頭を抱える。
数で考えれば確かに帝は1人。側近あわせても100人はいかないはずだ。
戦を知らない者たちが相手なら、十何人かで武器を持てば太刀打ちできそうな気がする。


45 名前:4/4 投稿日:2006/07/08(土) 23:08:38
帝が持っていた、この首輪を爆発させるアレを奪取できれば・・・。
そこまで考えて、張コウは自嘲するように笑う。
あるいは自分も銃器を与えられていれば、今頃無差別に殺していたかもしれない。
戦いに不利な武器だからこそ、他と協力して生き延びる道を探そうとしているのだ。
それが武器次第で主張が変わるとは、世の中はなんと不思議なのだろう。
「まあ、いいさ。張角に会ったのも何かの縁だ。オレがそう考えたのなら、それでいい」
自分には天下を握る素質は無い、ならば天下を握る素質を探し、ともに帝を倒した後
その人間の下で将軍として働くのも悪くはない。だが張角と組む気は無い。
ならば、自分が認める素質とは誰だ?
一瞬袁紹の顔が思い浮かぶが、張コウは頭を振ってそれをかき消した。
認める素質はただ1人。決まっている、曹操しかいない。
「よし、曹操殿や夏侯惇殿、他の方々を探そう。
 あとはこの話に乗ってくれるかどうかだが・・・」
洛陽城を西門から出た彼は、東門の騒乱に気づいていない。
夕日に変わった太陽を一瞥し、彼は曹操を探す。
その曹操がすでに騒乱に巻き込まれていることも知らずに。

@張コウ【竹刀】
※曹操や信用できる魏の人間を探します。現在地は洛陽西の森林。

@張角【???】
※ゲームに乗っていなさそうな人間、弱い武器を持っている人間に声をかけます。
 現時点では打倒献帝。

【袁紹、夏侯惇 生存確認】
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最終更新:2007年11月18日 10:34
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