7-202 Subliminal

238 名前:【Subliminal】 1/2 投稿日:2006/08/24(木) 05:02:22


虞翻が死んだらしい。


夜が明け始めるにつれ段々と小降りになってきた雨を、城壁の上に備えられた
見張り小屋の中から眺めていた。
「ぱん」とかいう食べ物を齧りながら、滴る雨を眼で追う。
虞翻が、死んだらしい。
もう一度、口の中だけでその台詞を繰り返した。
(死んだのか。)
余り実感がわかなかった。
当然だ。自らの手で殺したわけではないのだから。
(誰が盗りやがったんだ。)
いらいらした。
同時に、(もうふくしゅうできない。)と思うと悲しくなった。
雨が、しとしと降っている。濡れた靴を絞った。
復讐が、したいのだ。
それはあたかも天啓の如くこの脳裏に刻みついて、消えない。
復讐が。したい。
したい?
動くことも眠ることも出来なかった夜の間に、ずっとこびり付く疑問があった。
だが、それを明確に思おうとすると、脳みそが内部から犯されたようにぐちゃぐちゃと
絡まって、次の瞬間には絶頂した直後のように頭が真っ白になる。
それはとても気持ちの悪い感触で、故にそれ以上考えることを脳が拒否した。
復讐が、したい。それでいい。



239 名前:【Subliminal】 2/4 投稿日:2006/08/24(木) 05:03:50
曹丕を殺す。
関羽とか、色々殺す。
自分を嘲った奴とか、嫌いな奴とかを。
殺す。

自我と自我との間に、細切れになったそれらの言葉が行きかう。
言葉はだんだんと自我と交じり合い、いつか完全な自我となる。
しかしだからといって、それを排除する気は無いのだ。
かんがえるときもちわるくなる。
だが「殺す」のだと反芻している間は、至極心地よいから。



240 名前:【Subliminal】 3/4 投稿日:2006/08/24(木) 05:04:36
先程微かに見えた光の事を唐突に思い出した
あれは何だったのだろう。
身に覚えの有る光だった。と、言うことは金物の光か。それとも。
小屋の中から、少しだけ身を乗り出してみる。
光の移動していった方向を眺めた。
(あ。)
朝の薄暗く、雨も滴る中に、その朱は余りにも美しかった。
司空府・銅雀台。
許都に比べ気に食わないギョウの中で、于禁が唯一好きな建物が、其処にあった。
思い出が、色を纏って甦る。

(ああ。)
(あの道は、確か文謙と一緒によく歩いた。)
(公明はあの店の飯が好きだって笑ってたな。)
(あの調練場で文遠と一騎打ちしたっけ。あんまり勝てなかったけど。)
(儁乂は何時も神出鬼没だったな。探して見付かるってのがあんまり無かった。)
(あの場所には曼成が良く居た。あっちは、令明。ああ、大将軍殿の邸宅だ。)

この街でも、幸せな時間は確かにあったのだ。
確かに、存在していたのだ。



241 名前:【Subliminal】 4/4 投稿日:2006/08/24(木) 05:05:27
(―――曹公。)
銅雀台。
再び、眼を移した。
数多の将・文官が勢い込んで昇った階段。
自分も何度か、登ったことがある。
そのたびに、曹公の偉大さに触れ、戦慄したものだ。
あの銅雀台は、曹公そのものだった。
華麗で、雄大で、それでいて繊細で、――――恐ろしくて。
なのに帰ってみたら彼の人は其処に居なかった。
(行ってみるか。)
曹丕が居るかもしれない。光は、確かにあの方向へ流れていった。
雨が止んだら。水がもう少し引いたら。行ってみよう。
居なかったとしても、少し時間を食うだけだ。構うまい。
先程見たあの様相では、動けるようでも無かったのだし。
自分が殺す前に死なれても困るけれど、それでも。
もう一度あの場所に立ちたかった。
曹公の、その栄華の墓所に。


@于禁[左耳破損、右手小指喪失、全身軽傷、洗脳?]『現在地 冀州・魏郡・ギョウ城壁上見張り小屋内部』
【山刀(刃こぼれ、持ち手下部破損)、煙幕弾×3、ガン鬼の銃(陰陽弾×25)】
※何だかぼーっとしています。水が引いたら銅雀台へ。
※曹丕など恨みのある将を狙います。
※曹操、張遼、張コウ相手には友好的です。 が・・・。

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最終更新:2007年11月17日 21:10
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