7-249 残された者たち


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141 名前:残された者たち 1/4 投稿日:2006/11/11(土) 04:30:35
死んだのだ。
感情の無い男の声と共にその名は紡がれた。
もうたった、二人になってしまった。


洞穴の外は、青白かった。
雨の後の月は驚くほど光り輝いていて、その美しさに思わず天を見上げたほどだった。
于禁が死んだ。
一兵卒から漢の左将軍にまで昇り詰め、やがて惨めな死を賜った男が、また、死んだ。
穴の入り口から聞こえてきたその事実は、張コウを意外に驚嘆させた。
・・・最初から、自分と信ずる主たちの事以外はさほど案じていなかったし、彼については、
雨に狂い、襲われ、そして軍師は腕を盗られまでした。なのに。
意外と、心にきた。
徐晃や、楽進のときに、特に何も感じなかったのは、自分がまだこの世界に
慣れていなかったからなのだと、今悟った。知りたくは無かった。
魏の誉れ高き五将軍は、もはやたった二人だけになってしまったのだ。



142 名前:残された者たち 2/4 投稿日:2006/11/11(土) 04:31:09
月明かりは明るかった。
もうすぐ夜明けともなろう時に、森を綺羅と照らしてくれていた。
近頃、生前から然程動くとはいえなかった方寸が、しきりに震わされている。
荀攸の志や、荀彧の不気味さ。于禁の死、など。
自分はこれほどに叙情的な人間だっただろうか。いまいち、己が不透明だ。
だからと言って、ずっとここで佇んでいる訳にもいくまい。
光る月を見ながら、ようやく心を落ち着けた。
許の方を向く。鬱蒼とした木々に阻まれて何も見えなかった。
彼が何処で死んだのかなど分からないが、魂が行くならそこは許だろうと思う。
(良かったな。)
剣を天に翳し、決別に哀悼を呟く。
(良かったなぁ。ようやく死ねたな。あんた。うん。良かった。)
狂うほどには、辛かったのだろう。
その最後がどのようなものかなど知りはしないが、彼が絶望から逃れられた
ことには心から祝福を述べた。ああ、辛かったのだろうと。
ひとしきり祈ったところで、剣を下ろし、腰に帯びた。
散らかる荷物をまとめ、未だ扱いなれぬ小銃を懐に隠す。
闇へ一歩踏み出したところで、近くから地を踏み締める音がした。



143 名前:残された者たち 3/4 投稿日:2006/11/11(土) 04:31:45
がさり。
がさり。
大地を踏み締める音が高々と鳴っていたが、今の彼にそれを直す気力は無かった。
それどころか、手に持った山刀で梢をむちゃくちゃに切り倒したいような気分だった。
(殺してしまった。)
殺してしまったのだ。ああ。
(狂っていた。曹植様が殺された。文帝陛下も殺されたのか。ああ狂っていたあの人は。)
でも。
殺してしまったのだ。無防備な背後をついてやつれた躯を地へ。縫い付けた。
不思議そうにこちらを見た、その表情が忘れられない。
時が一刻と経つごとに、後悔が襲ってくる。
自分はまた裏切ったのではないのか。あの人を。
ああでも、あの人は狂っていた。自分も殺されるかもしれなかった。
だけれど。嗚呼あの人は不思議そうにこちらを見たのだ。
何故お前が私を殺すのかと。そう言うかのように!
(つまりは結局私がまた人を信じられなかっただけではないのか。)
では殺さなければ良かったというのか。ならば主の子が肉片にされるのを黙って見ていれば
良かったというのか。そんなことができるか。あああどうすればよかったというのだ!!
叫びだしたかった。時が戻せるのならば戻したかった。たった一日で、いいのだ。
あの時、ギョウに行かなかったならば。もっと違う方向に向かっていたなら・・・・・・。
全ては妄想に過ぎなかった。時が戻らぬことなど、とうに知っている。
(・・・誰かに会いたい。)
李典や、関羽、夏侯惇。・・・いや、もう知っている人ならば誰でも良かった。
誰かに会って、何か言って欲しかった。叱咤でも批判でもいい。むしろそれが欲しい。
手にこびり付いた血糊が拭えない。誰か拭ってくれ。じゃないと泣き叫んでしまいそうだ!
(会いたい・・・誰でもいい。誰か・・・・・・。)


「文遠どのか?」




144 名前:残された者たち 4/5 投稿日:2006/11/11(土) 04:33:07
それは生まれたばかりの幼子のような顔をしていた。
今にも喚き出しそうな心を、理性が必死に抑えているような顔だった。
・・・何故声をかけてしまったのだ。
厄介ごとになったら嫌だから無視しようと思ったのに。
「文遠どの。その、何かあったか。」
何も無かったらこんな顔しないだろうに。自分の拙さに涙が出る。
声をかけた途端涙を流して崩れ落ちた張遼を引きずって、張コウは
結局先程まで居た洞穴に舞い戻ってきていた。
なんとまあ、ほんの先程行動するぞと決意を新たにしたばかりだというのに。
まったく、ため息が出た。
「・・・申し訳、ない。」
「あ、いや貴殿についてのため息では無いぞ。うん。」
と言いつつも、いったいこの男をどうするべきか分からず、心は再び嘆息した。
張遼は見るからに憔悴していた。顔に「私は今とても後悔しています」と書いてあるのが
見て取れる程だ。自責の念が鬱々と彼を取り囲んでいて、うんざりした。
「何かあったなら聞くぞ。言いたくないのなら構わんが。」



145 名前:残された者たち 5/5 投稿日:2006/11/11(土) 04:34:33
―――とはいえ。
大体何があったのかはなんとなく、分かっていた。
どこか見覚えの有る山刀があった。それだけで、十分だ。
ただあの男の死体を探っただけならば――もしくは他の者から得ただけならば――
これほど憔悴はしないだろうし、それはつまり良く知るものを殺し奪ったか、
もしくはあの男自身を殺し―――嗚呼。
・・・昔から、責任感の強い男だった。情に厚い、男だった。
必要に駆られて、だったのだろう。それでもこの始末だ。
自分だったら、すぐに頭を切り替えて飄々としているだろう。
心の隅でずっと責める者はあろうが、それでも平気で生きようとするに違いなかった。
(好ましくもあるが厄介な男だな。)
「儁乂どの。・・・申し訳ない。先程までは、・・・お会いするまでは、誰かに話して
 叱咤でも批判でもして頂こうと思っていたのだ。・・・でも、いざとなったら怖気づいた。」
「そんなものだ。気にするなよ。」
「もう少し・・・もう少し、だけ、時を頂きたい。必ず、私が何を、・・・したのか話しますから。
 お願いします。その時は、聞いてください。」
「ああ。聞いてやる。」
張遼はもう一度だけ「申し訳ない」と呟いて、倒れた。
眠らずにふら付いてでもいたのだろう。まあ、寝かせておく事にした。
別に急いているわけでもない。心のどこかで、何かが喚いているような気はするが、無視した。
泥のように眠る彼の顔を見て、ああもう二人だけなのだ、と今一度思った。



146 名前:残された者たち 結果 投稿日:2006/11/11(土) 04:35:24
<<残された二人/2名>>
@張コウ[顔面負傷、全身軽傷]【斬鉄剣(腰伸び)、デリンジャー、首輪解体新書?、DEATH NOTE】
@張遼[爆睡中]【歯翼月牙刀、山刀(刃こぼれ、持ち手下部破損)、煙幕弾×3】
『現在地 司隷・東の洞穴』
※張遼が起きるまでしばし休憩。
※張遼は李典、関羽、夏侯惇を探しています。
※張コウは何かきっかけがあればマーダー化も?


※DEATH NOTEに参加者の名前を綴った場合、
その人物を殺さなければならないという激しい強迫観念に囚われ、
身体能力は大幅に増加します。
※DEATH NOTEの持ち主でなくなったあとも影響は継続します。
※一度誰かが書いたあとに、他の誰かが拾っても影響はありません。
※ただ新たに名前を書き込むか、もう一つのノートに名前を書き込まれれば、持ち主に同上の影響が出ます。
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