7-241 疑うとか信じるとか


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94 名前:疑うとか信じるとか(修正版) 1/5 投稿日:2006/10/24(火) 00:09:20
戻ってきた趙雲が曹幹を連れていないことに、劉禅は表立って感情を見せなかった。

「すいません。随分と足の速い子のようで、もう辺りも暗いので一旦戻ったのですが」
「まぁ、お疲れ様です。それでは曹幹君が無事なのを祈るばかりですね」

一瞬、曹幹の名が出たことに趙雲は固まる。
しかしそれは本当に一瞬で、次に続いた魯粛の言葉で全てが氷解した。

「ああ、先ほどの間に名簿で調べたのですよ。幹という名は他には見当たらなくて。
 しかし、そうであれば彼は曹操の一族の者なのでしょうな」
「え、ええ」

少しどもった声は、曹幹の血筋に対して驚いたように聞こえただろうか。
魯粛の表情からはとくに疑問を持ったようには見受けられない。
会話に参加していない劉禅は、空に瞬く星を眺めているのでその表情はうかがい知ることができない。
が、趙雲の視線に気付いたのか、すぐにこちらに向き直った。
その劉禅からも、戻ってきた趙雲をねぎらう感情以外読み取ることは出来なかった。

「でもよかった。心配していたんですよ。
 私のときは、見つけるまで戻らずに父たちに心配をかけたと聞いていたので…」

まっすぐに見つめられ、趙雲は己の疑心を見透かされるような気恥ずかしさで、慌ててその場を取り繕った。
そう、初めは郭嘉らの名を出すことで、何らかの反応が得られるのではないかと思っていた。
けれど劉禅は無反応に星を眺めるだけだった。
そしてようやく振り向いたと思ったら、まるで何かに気付いたように表情をなくし、次第に翳りを帯びる。
気付かれまいと背を向けたのだろうが、もちろん趙雲も魯粛も、気付かないはずがなかった。

「劉禅殿。どうかなさいましたか?」
「なんでもないんです。大したことではないし。ああけれど、けれど…」

振り返った劉禅は涙こそ流していなかったが、それは今にも泣き出しそうな顔だった。



95 名前:疑うとか信じるとか(修正版) 2/5 投稿日:2006/10/24(火) 00:10:45
「子龍。もしかして、まさか…、私に何か隠し事をしていませんか?
 ああだけど、私がお前を責めるのは本当はお門違いなのだとわかっているんです。
 先に隠し事をしたのは私のほうなのですから」

思わぬ劉禅の告白に、趙雲も魯粛も一瞬言葉を失い顔を見合わせる。

「ど、どういうことです?」
「実は君たちと出会う前に、魏の人たちのグループにあったのです。
 よい人たちだと思ったのだけど、誤解を招く別れ方をしてしまいました。
 私はその方たちに疑われているのかもしれない。
 そして子龍。その人たちは決して足の速い武人ではないのです。
 幽州で別れたから、まだこの辺りにいるかもしれない。
 君は彼らに会ったのではないですか?
 そして彼らにあの子を託した。
 だって子龍が守ろうとしたあの子を、簡単に諦めるとは思えないのです」
「それは、つまり…」
「いいのです、魯粛殿。
 子龍。答えてくれなくともよいのです。只聞いてくれれば。
 子龍は彼らに会い、私のことを言って疑われたのではないですか?
 いや少なくとも、私が疑わしいことを聞いて、そしてまさか…」

趙雲は己の立場を呪った。
劉禅が嘘をついているはずが無い。そんなことは彼の態度を見れば明らかだ。
郭嘉の言っていた経緯にしても、それは「強運」の一言で片付けてしまえる。
いっそのこと郭嘉たちとの約束を破ることになっても、全てを打ち明けるべきではないかとすら思った。
だが答えずともよいという劉禅の言葉が、一つの留め金になって趙雲を押し黙らせる。
全てを話すということは、趙雲が僅かながら抱いた疑心を悟られる恐れがある。
それは趙雲自身がどう思われるか以前に、この張り詰めた劉禅を追い詰めることになるのだ。



96 名前:疑うとか信じるとか(修正版) 3/5 投稿日:2006/10/24(火) 00:11:36
「あの、差し出がましいことを言うようですが」

緊迫した沈黙の数秒は、魯粛によって破られた。

「どのような事情があったかは存じませんが、その誤解は速いうちに解いておいた方が宜しいでしょう。
 このような世界です。誤解一つで劉禅殿のお命に関わる事態になります」
「それは、もちろんそうだが、私は元来口下手なのです。正しく誤解が解けるかどうか…」
「その事ならご心配なく。
 私はこれでも外交官のはしくれですから、交渉事は、まぁ本職のようなものです」
「しかし…、やはり私は…」
「劉禅殿は此処に残っていて構いません。
 私は多少武も心得ておりますから、趙雲殿も残っていてくださいね」
「ええっ!!」

趙雲の、沈黙の後久しぶりに出した声は無様に裏返って響いた。

「いけません。もう夜もこんなに更けているのに単独行動など!!
 せめて張飛殿の期間を待たれてから…」
「その張飛殿もそろそろ探しに行こうと思っていたのです。
 趙運殿は今帰ってきたばかりですし、劉禅殿に行かせるわけにも行きません」
「なら、まず全員で張飛殿を探して、それから…」
「そのうちに、そのあなたに会ったかも知れない方々がどこかに行ってしまうでしょう。
 大丈夫です。私を信用してください。あなたは劉禅殿を守ることだけ考えて。
 ああ、ただ私の進むべき道をこっそり教えていただければ、私にはそれで十分なのです」

趙雲はこっそりとある方向を呟く。
近づかないと約束した手前、後ろめたさが無いわけではないが、他に道はないように思えた。
さらに言うなら、郭嘉たちの義理を立てることで、もうこの仲間たちに迷惑はかけたくはなかった。
もう魏の文官という人間がかなり少ない為だろうが、彼らの名すら聞かない魯粛に、むしろ感謝したくらいだった。



97 名前:疑うとか信じるとか(修正版) 4/5 投稿日:2006/10/24(火) 00:14:07
意気揚々と去っていく魯粛を二人は見送る。
「もう一つくらい武器があればよかったんですけどね」
そう呟く劉禅は、もう泣きそうな顔はしていなかった。
しかし、決して趙雲と目を合わせようとしない。

「私に何か怪しい動きがあったら、すぐに斬り捨てて構いませんよ」

なんでもない風を装った、しかし全然装えていない震えた声が届き、何かの堰が切れた。
趙雲は、自分が泣いていることに気付いた。

「も、申し訳ございません。申し訳ございません。私は、私は…」
趙雲は両手を地に付ける。顔を地に向ける。
魯粛はもう十分に見えなくなっている。
劉禅は笑った。
口の端を吊り上げて笑った。
頭をたれる趙雲に、それは見えない。

「子龍は私のことを信じてくれるのですか?」
「もちろんです!!」
「なら、なにも謝することはありません。
 顔を上げてください。私を信じてくれるのなら、それでいいんです。私が礼を述べるくらいです。
 ありがとう。私を信じてくれて。そしてお願いです。
 何があっても、私を信じてください。そして何があっても、私を守ってください。
 私は非力で、きっと子龍にはなにも応えられないだろうけど…」

趙雲は何度も「はい」「必ず」と繰り返す。
趙雲が見た劉禅は笑っていた。
穏やかな、心底安心した笑みという奴だ。

いつしか二人が、少なくとも一方は『硬い信頼の絆で結ばれた』と心から思ったとき、
趙雲を見張りに残し、劉禅は浅い眠りへと移っていった。



98 名前:疑うとか信じるとか(修正版) 5/5 投稿日:2006/10/24(火) 00:18:16
劉禅は思う。
張飛や魯粛が戻らないなら、それはそれでいいだろう。
だが趙雲を失うわけにはいかない。
忠義と実直さにおいて、趙雲は比類がない。
己を守る最後の盾として、彼にはいてもらわなければ困るのだ。
そして、この盾は決して揺るがぬものでなければならない。
疑うとか信じるとか、そんなくだらないことで鈍くなっては使えるものも使えない。
例えば再び曹幹に出くわしてしまったとき…。
例えば父に、出会ったときに…。
最優先事項が何なのか、趙雲にはよくわかっていてもらわなければならない。



<<皇帝とナース/2名>>
劉禅【バナナ半分、モーニングスター、オルゴール、吹き矢(矢9本)、救急箱、閃光弾×2】
趙雲【ナース服、化粧品】
※趙雲の疑念は完全に晴れました。
※現在趙雲が見張りをし、劉禅は仮眠中(浅い眠り)

魯粛【圧切長谷部】
※一旦ピンユニット化
※趙雲が先ほど郭嘉たちにあった場所に行きます。
※同時に張飛も探しています。
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