7-239 虚像の都


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68 名前:虚像の都 1/6 投稿日:2006/10/16(月) 01:07:32
銅雀台から降りた于禁は奇跡と出会った。
いや、奇跡なんかじゃない。
あのスカした面に銃弾を叩き込むのは俺に与えられた当然の権利だ。
…なぁ、曹丕!!


「見て!ほら、銅雀台が見えてきたよ!」
水害の爪痕が生々しく残る街並みに顔を曇らせていた曹植だったが、
美しくも堂々たる銅雀台の姿を見て満面の笑みを浮かべた。
何があろうと揺るがず、曹植を待っていてくれた約束の地。
躍る心のままに曹植は駆け出す。
「子建様!!」
張遼の叫び。それに重なり響く銃声。

「あ…れ……?」
曹植は不思議そうに呟く。
こんなに一生懸命走っているのに、銅雀台はちっとも近づいてこない。
こんなに心が弾むのに、胸が痛くて仕方がなかった。
耳の奥でざあざあ音がする。また雨が降ってきたのだろうか?
何だか息が苦しい。咳込むと、ごぼ、と、やっぱり水みたいな音がした。

突き抜けた憎悪は悦楽に似ているのか?
于禁は幸福の絶頂にいた。
ありったけの弾を叩き込む。嬉しすぎて涙が出た。
曹丕を。曹丕をぶっ壊した!
俺だ。この俺が曹丕を殺ってやった!!
曹丕を殺したんだ!!!
幸せは眩しすぎて、于禁は泣きながら目を細める。



69 名前:虚像の都 2/6 投稿日:2006/10/16(月) 01:08:48
腹や胸に風穴を空けた曹丕がゆっくりと崩れ落ちる。
脳天を突き抜ける快楽。性交で得られるそれなど比べものにならない。
この世で一番気持ちがいいのは人殺しだ。
于禁は身を震わせながらげらげら笑う。
いつの間にか弾が切れていた銃を放り捨て于禁は走る。

「子建様!!」
無邪気に一人駆けだしてしまった曹植。張遼の叫びは間に合わない。
降り注ぐ銃弾の雨。張遼はとっさに地に伏せる。
銅雀台を目指し駆ける曹植は鉛弾に縫い止められ静止する。
その様は翅を針で止められた蝶の標本を思わせる。
まずその膝が折れ、上体がぱたりと倒れる。
あまりにも体重を感じさせないその倒れ方。
「貴様!!」
跳ね起きた張遼。その手には歯翼月牙刀。駆ける。

曹丕の死体がぐんぐん迫ってくる。
いや、まだ息があるのか?身体は時折大きく痙攣し、
ヒュー、ヒュー、と耳障りな呼吸音がする。
しかしそれは于禁を更なる幸福へと導く音色だった。
また曹丕を殺せる!
山刀を振りかぶった于禁の高笑いがうねりを増す。

「貴様!!」
張遼は怒りのままに歯翼月牙刀を薙いだ。
狂気にどっぷりと浸っていた于禁は、
それでも武人の本能がなせる技か、反射的にそれをかわす。



70 名前:虚像の都 3/6 投稿日:2006/10/16(月) 01:09:51
ごく浅い斬撃は刃の軌道に従うように于禁の鮮血を靡かせる。
この時、二人は初めて互いが誰であるかを認識した。
「于禁殿!何故!」
圧倒的な怒りに僅かに混じる戸惑い。対する于禁は至極上機嫌だ。
「あぁ、張遼!聞いてくれ、俺は曹丕を殺した!俺が殺してやったんだ!」
于禁は山刀を振り回しながら笑顔だった。
「でもな、また殺せるんだ。曹丕をいっぱい殺すんだよ。あはあははあはあ!!」
山刀を滅茶苦茶に振り回しながら張遼の脇をすり抜け曹植のもとへ―――
彼には、曹丕に見えているのだろう―――走る。
「何を…止せっ!!」
于禁は笑いながら曹植めがけ山刀を振りかぶる。全く無防備な背中だった。
張遼の歯翼月牙刀が真っ直ぐにそれを刺し貫く。
于禁が振り返った。
「張遼…。何故だ?」
ごふ、と血を吐きながら、ぱくぱくと口を動かす。
心底不思議そうに、于禁は問いかけた。
「おまえも、俺と、同じ……。」
于禁の最期の言葉は、そこで途切れた。


「子建様、どうか、お気を確かに…!」
曹植はもう助からない。
張遼にはそれが解ってしまった。
だが曹植本人はどこか夢を見ているような様子で
それが幸いでもあり、哀れでもあった。



71 名前:虚像の都 4/6 投稿日:2006/10/16(月) 01:11:23
張遼は曹植を抱いて銅雀台に上った。
曹植の最期の望み、輝く都を見渡すために。
だが張遼は絶句する。
「…ちょ…りょ…」
曹植の瞳からはすでに光が失われつつあった。
「くら、くて…よく、見えない…」
譫言のように曹植は言う。
「…どう?ぼくら、の…輝く、都は…。」

水に蹂躙され、見渡す限り無惨に荒れた大地。
「…豊かな緑が広がり…」
美しい庭園はずたずたに引き裂かれ。
「…庭には、花々が溢れ…」
血の匂いに怯え、動物たちの影も見えない。
「…池の魚が跳ねる音、鳥の鳴く声が、聞こえまする…。」

張遼の偽りの言葉が、曹植の瞼の裏に輝く都を造り上げた。
誰もが笑っていた。全てが美しかった。彼の愛した楽園だった。
曹植は本当に嬉しそうに笑って、あの日心の底から願った一節を詠った。

 千秋長えに…斯くの若く、ならん…。


張遼がもう一つ、曹植についた嘘。
銅雀台に静かに横たわっていた…曹丕の亡骸。
銃弾で抉られた無惨な傷跡と穏やかな表情は不釣り合いだったが、
その二面性が彼の人らしいような気もした。
その隣に、まだ温かい曹植の亡骸をそっと横たえる。
意図的にそうしたつもりはなかったが、
まるで二人が微笑みあっているように見えた。



72 名前:虚像の都 5/6 投稿日:2006/10/16(月) 01:12:23
荒れた地に墓を築くよりも、
あの日のままに残った銅雀台で二人を眠らせてやりたい。
墓標の代わりに、曹植が夢中になったPSPとテルミンを置く。
こんなことならば、思う存分テルミンを弾かせて差し上げればよかった。
今更のように、涙が溢れた。

『張遼 何故だ?』
于禁の言葉が、張遼の中で渦巻いている。
『おまえも 俺と 同じ』
お前も、俺と同じ…何だと言いたかったのだろう?
俺と同じ魏将なのに。
俺と同じ五大将なのに。
于禁は何と言おうとしていたのか。張遼はこう思った。

おまえも 俺と同じ穴の狢なのに。

あの時。于禁の凶弾が曹植を襲った時。
張遼は冷静にもう間に合わない、と思った。そして伏せた。
曹植を守ろうと思っていた。自分のその誓いは真実だったのだろうか?
本気で守ろうと思っていたなら、無駄かもしれぬと解っていても
身を挺して主を庇うものではないだろうか?
例え自分が死んだとしてもだ。

自分は幾度も主を変えてきた。
その都度、自分なりに忠節を尽くしてきたつもりだ。
だがそれは建前で、
結局は生き延びて戦いの場を与えてくれる所へと流れていただけなのか?
張遼は、自分で自分が解らなかった。



73 名前:虚像の都 6/6 投稿日:2006/10/16(月) 01:13:37
関羽。そして夏侯惇。
頑ななまでに忠節を貫いた彼らは、今この世界でどうしているのだろう。
彼らは彼らのままなのか。それとも狂ってしまっているのか。

不意に、李典の蔑むような目を思い出す。
もしかすると、彼は自分のこんな性根を見抜いていたのだろうか。
彼はもし自分と会ったらどうするのだろう。
無視するか。あの軽蔑しきった視線を寄越すのか。
それとも殺すのか?
昔は苦手でむしろ避けていた彼に、今は不思議と会ってみたいと思う。

テルミンに手を伸ばす。
周瑜が素晴らしい楽を奏でてみせたからくりだったが、
張遼が手を伸ばしてもただ雑音を発するだけだった。
于禁と曹植の血で汚れた手。
結局自分は人殺ししか出来ないのだな、と思った。


【于禁 曹植 死亡確認】

@張遼【歯翼月牙刀、山刀(刃こぼれ、持ち手下部破損)、煙幕弾×3】
※<<フライングディスクシステム搭載>>解散。ピンユニット化。
※現在地は銅雀台。李典、関羽、夏侯惇を探します。
※ガン鬼の銃(弾切れ)、PSP、テルミンは放置。
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