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36 名前:1/11 投稿日:2006/10/11(水) 21:12:21
苦しかった。
息が出来ない。
目を開ける。
だれかが。ぼくの。くび。しめて。る。

日が傾いても張飛は帰ってこなかった。
探しに行くという案もあったが、
集合場所を離れてしまっては行き違いになるかもしれない。
禁止エリアが増え移動も盛んな今、単独行動は危険だ。
彼らはその場に留まることを余儀なくされ、今、交代で身体を休めていた。
「しかし劉禅様に見張りを任せて、のうのうと自分が休むわけには…」
「子龍、今はそんなことを気にする時ではないでしょう?
 お前も身体を休めておいたほうがいい。
 それに、私はいつまでも小さな阿斗ではないよ」
そういって劉禅は笑った。つられて趙雲も笑ってしまう。
劉禅はそう言うが、その人懐こい笑みは幼い頃と変わらないように思えた。

その趙雲は剣を抱いたまま木にもたれかかり静かに寝息を立てていた。
少し離れたところで魯粛が丸くなって眠っている。
そして劉禅の手の下で、曹幹がもがいている。

頸動脈を探るようにしながら、劉禅の手が曹幹の柔らかな首を絞めあげる。
武人は結構簡単にやっているように見えたが、意外と難しいものだ。
劉禅は淡々とそんなことを考える。



37 名前:2/11 投稿日:2006/10/11(水) 21:13:12
両手で絞めたほうが早く殺せるのだろうか?
劉禅の左手が伸びる。

くるし、い。
どこか楽しげな劉禅の表情が曹幹の瞳に焼き付けられる。
何かを掴もうとするように曹幹の手が揺れる。
その手の先に、煌めく星。

『私は、星になる』
お前を、守る。
『お前は、生きなさい』
いつか、私が、星になっても。
『…生きなさい』
『生きなさい』

空気を求め喘ぐ曹幹の唇が、声無きままに『とうさま』と戦慄いた。
その動きはただもがき、震えているようにしか見えない。
だがそれはそれは確かに言葉であり力であった。
曹幹の無垢な瞳に、輝く空の星が写っている。
両手でさらに強く絞め直そうと、劉禅の手が僅かに弛む。
「あああああああああああ!!」
それは反撃の狼煙であり、生きる意志の表明であった。
凍りついていた声の瞬間的な発露。
曹幹は無我夢中で劉禅の手を跳ね退け死に物狂いで走る。

「どうしました?!」
曹幹の叫びに二人とも目を覚ました。
逃した。あの子供は声を上げた。本当は喋れたのか?話すだろうか、首を絞められたと?
様々な動揺を抑えながら劉禅は言った。
「ああ、どうも怖い夢でも見たようで、急に叫び声をあげて…」



38 名前:3/11 投稿日:2006/10/11(水) 21:14:07
話すうちに劉禅は落ち着きを取り戻していた。
そうだ。何を言われようとも所詮子供の戯言、悪夢だと片づけてしまえばいい。
「私、探してきます!」
趙雲が駆けだした。
長坂で自分を救い出したように、またあの厄介な子供を拾って戻ってくるのだろうか?
劉禅は心底、うんざりした。

趙雲が曹幹を見つけたとき、曹幹は文官風の男二人と共にいた。
「その子を離せ!」
趙雲は吹毛剣を抜く。
曹幹の背を撫で宥めていた男はびくりと身を震わせしっかりと曹幹を抱き寄せた。
もう一人の男は特に動揺した様子もなく、さらりと言った。
「怯えてる子供の前で無闇に剣を抜くもんじゃないぜ」
確かに、助けに来た筈の曹幹でさえ怯えて、むしろ文官のほうにしがみついている。
「…失礼した」
趙雲は剣を納め、名乗り、曹幹を返してほしいと伝えた。
「…そんなマニアックなプレイが好きな奴に子供を渡すってのは、ちょっとな…。」
今にもはちきれそうなナース服をちらっと見て、男はげんなりとした表情になった。
最近はこのピチピチ感にすっかり馴染み、
もしかしたらちょっとクセになってるかもしれない自分を自覚して趙雲は少し慌てる。



39 名前:4/11 投稿日:2006/10/11(水) 21:15:00
「教育上宜しくないという点ではあなたも似たようなものですよ郭嘉殿。
 立派な方だという評判はあちこちから伺っております、趙雲殿。
 何か深ーい事情がお有りとお察しいたしました」
微妙なフォローを入れてくれた男は陳羣と名乗った。
そして郭嘉と呼ばれた男。
天才軍師として、優秀な文官としてよく名を知られた二人である。
そして趙雲が素晴らしい武将であることもまたよく知られている。
同陣営であっても、顔を合わせ話す機会があまりない者もいる。
よく噂を耳にし、些細な情報でも必死で集めた敵陣営の名将の方が
時に近しくよく知っているような感覚があるから、皮肉なものだ。
「人の性癖についてとやかく言う気はないけど、この子のことは俺らに任せない?」
「いや、決してこの服装は私の趣味では…!」
「ああもう、混ぜっ返さないで下さい郭嘉殿!」
陳羣はしゃがんで曹幹の瞳を見つめて言った。
「曹幹様、私は陳羣と申します。覚えておいででしょうか?
 陛下…曹丕様は、私を『長文』と親しく呼んで下さいました」
曹丕の名を聞いた途端、曹幹の瞳が大きく見開かれ、
大粒の涙がぽろぽろとこぼれ落ちた。
陳羣にしがみついて曹幹は泣きじゃくる。



40 名前:5/11 投稿日:2006/10/11(水) 21:15:47
あの子が帰る場所はここなのかもしれない。
趙雲は大きな安堵と少しばかりの寂しさを抱きながらその光景を見ていた。
俺はその頃にはとっくにくたばってたから良く知らないけど、と前置いた上で、
郭嘉は曹幹が曹操の末子であること、
幼いうちに父母を亡くしたために長兄である曹丕が曹幹の面倒を見ていたこと、
陳羣は曹丕が親しくしていた四友の一人であり、
曹丕が可愛がっていた曹幹とも若干面識があることを説明してくれた。
「参加者リストがあるだろ?そこに名前が載ってるはずだ」
郭嘉に指摘され、趙雲は初めてリストの存在を思い出した。
確かに『曹幹』と書かれている。他に幹、という名の参加者はいないようだ。
「そうですか、曹操殿の…。
 それならば、私よりも曹操殿の臣下である貴方がたにお任せした方がいいんでしょうね…。」
ほろ苦い寂寥感を含んだ視線で趙雲はもう一度、曹幹を見やる。
陳羣の事を思い出したのか、或いは曹丕の名を知る人間に出会って安心したのか、
曹幹は陳羣の服をしっかりと握りしめている。
そんな曹幹の背を撫で、着物の襟を整えてやろうとして、陳羣はふと気付く。
「これは…賈ク殿の…?」
陳羣の呟きに郭嘉は片眉を吊り上げる。



41 名前:6/11 投稿日:2006/10/11(水) 21:16:36
間違いない。陳羣は曹幹が羽織っている着物に見覚えがあった。
賈クが軒下で脱いでいた、姿隠しの衣だ。
郭嘉は唐突に言った。
「あんた、劉禅って奴と一緒にいるのか?」
趙雲は驚いた。自分は同行者について一言も喋っていない。
「もしかしたらあんたが劉禅って奴を殺したのかもしれないけど、
 その割にゃあんた、血で汚れてないからさ。
 あんた、劉禅って奴に担がれてんの?」
「何を馬鹿なことを!これ以上阿斗様…劉禅様を侮辱するならば容赦せん!」
趙雲に本物の殺気が閃いた。凄まじい気圧が渦巻く。
しかし郭嘉は怯まない。
瞳に煌めく知略の鋭さは、研ぎ澄まされた殺意に勝るとも劣らない。
「その名簿を見ながら聞いてくれ。
 俺たちはその中の司馬孚、賈ク、劉禅って人物に出会った」
郭嘉は自分と陳羣のこれまでを趙雲に語った。
司馬孚が体験し、賈クに打ち明け、賈クが陳羣に話した出来事を。
散らされた舞姫の命。司馬孚の決意。その死。
劉禅との出会い。そして賈クの裏切りを。
「そんな話が信じられるか!何を証拠にそんな事を…」
あの劉禅が女性を手に掛けたなど、趙雲には信じられなかった。
「楽の入った小箱」
郭嘉は短く答える。



42 名前:7/11 投稿日:2006/10/11(水) 21:17:49
「その貂蝉って女の子の支給品だそうだ。そいつ、持ってない?」
…確かに、持っていたように思う。
だが、殺して奪い取ったとは限るまい。
自分の今着ている服のように、譲られることだって…。
「賈クが司馬孚を殺した。俺たちは逃げ延びた。
 劉禅と賈クの二人が残った。
 最初から司馬孚と俺たちを殺すって事で話がついてたんだろうな。だが」
無意識にリストに目を走らせる趙雲。一応、死者にチェックは入れている。
今挙がった名の中で、劉禅の名前だけに×印が付いていない。
「賈クは死んだ。劉禅は生きている。
 そして劉禅は賈クの支給品を持っている」
曹幹に着せてやるためにザックから光学迷彩スーツを取り出した劉禅。
その時は、やはり優しいお方だと思った。
だが…それは、どこで、どうやって手に入れた?
もしかしたら…。
…もしかしたら…?
郭嘉の淀み無い弁舌は趙雲を揺さぶる。
「そこまで難しく推理しなくても、簡単だろ?
 一個くらいなら、偶然手に入れたってことも有りうるかもしれない。
 けど支給品を複数持ってるってことは」
郭嘉はきっぱりと言い切った。
「殺して奪い取ったってことだよ」

郭嘉の推理には多分に推測が含まれている。



43 名前:8/11 投稿日:2006/10/11(水) 21:19:00
だが劉禅が油断ならない人物であるということに変わりはない。
恐らく、『あの』賈クと化かし合いをし、生き延びた男だ。
そして自分たちは、多分その現場に最も近しい場所にいた。
次に遭遇すればきっと殺される。
しかし、今の自分たちにあるのは目くらましの爆弾が一つだけ。
ならば己の最強の武器である、この知略と弁舌を揮うまで。
郭嘉の脳裏にぼんやりとかかっていた霞は、
北を離れるほどに鮮やかに晴れ冴えていく気がする。

「…劉禅様は、人を、殺したのかもしれん。
 だがそれは粗暴な輩に襲われて、止むを得なかったのかも…」
「これ」
趙雲の言葉を遮り、郭嘉はザックから閃光弾を取り出して陳羣を顎で指す。
「こいつの支給品だよ。これも、劉禅は持ってるはずだ。
 ちなみに劉禅自身の支給品は、バナナって果物だってさ」
要するに郭嘉は、自分たちが劉禅に襲いかかるような
血に飢えた人間に見えるか?と問うているのだ。
さらに、他に様々な果物が自生している現状で
バナナを奪うためだけに襲いかかるような愚か者に見えるか?とも。

この二人と劉禅、どちらを信じるか?
ほんの少し前までなら、躊躇い無く劉禅を選んだだろう。
だが趙雲は今、確かに郭嘉の言葉に揺れ動いていた。



44 名前:9/11 投稿日:2006/10/11(水) 21:22:41
その揺れは今は気が付かぬほど微かでも、いつか小さなヒビを作り、
もしかしたらそれはやがて――。

「…貴方は、どう思われていますか?」
趙雲は陳羣に水を向けてみる。
陳羣の腕の中では、曹幹が安心してその身体を彼に委ねきっている。
あの無垢なぬくもりが信じるのならば、その意見には耳を傾けてみようと思った。
「…私は、郭嘉殿のような戦略眼は持ち合わせてはいませんが」
郭嘉の“未来を見通す瞳”のような派手さはないが、
陳羣もまた曹操が認めた“真実を見る瞳”を持っていた。
それは、人を見る眼。誠実と不実を見抜く眼だ。
あの小箱の楽に聴き惚れていた安らかさは本物だっただろう。
だがその前後の、慇懃なやりとりの中笑みを形作っていたあの目は――。
「彼は信用ならない人物だと、私は思いました」
「……そうですか……。」
長い長い沈黙の後、趙雲は吐息と共にそう言った。
だがやはり、趙雲には信じられない。

あの小さな阿斗様が。自分をあんなに慕ってくれた阿斗様が。無邪気な阿斗様が……。

「別に信じられないんだったらそれでもいいさ。
 あんたにどうこうしろとは言ってないし」
趙雲の内心の葛藤に答えるように郭嘉は言った。



45 名前:10/11 投稿日:2006/10/11(水) 21:23:57
「ただ俺たちは劉禅を信用できないし、
 それにはそれなりの理由や根拠があるって事。
 それだけわかってくれりゃいいよ」
趙雲は辛そうに、そしてゆっくりと、肯いた。

趙雲は二人と出会ったことは劉禅には伏せること、
少し曹幹を休ませたいので、なるべく今出会ったこの辺りには
近づかない、近づかせないようにする事を約束し、剣を曹幹に返して彼らと別れた。

趙雲の足取りは重い。

『私はいつまでも小さな阿斗ではないよ』

頼もしく聞いたその言葉が、今は複雑な色を伴って、響いた。


「曹幹様、お身体が冷えますよ。中にお入り下さい」
民家を見つけた郭嘉たちはひとまずここに落ち着くことにして、
陳羣はあの時賈クに教わった糸を使った仕掛けを家の周りに仕掛けていた。
複雑な思いと共に仕事を終えると、曹幹はじっと空を見上げ立ち尽くしていた。
「あ……星が……。」
曹幹の視線の先には、見事な美しい星があった。
多分、昨日まではなかった星だ。あんな見事な星を見落とす筈はない。
未だ言葉を失っている曹幹は、どこか必死な様子でその星へと手を伸ばす。

もちろん、届くはずもない。





46 名前:11/11 投稿日:2006/10/11(水) 21:27:31
そんな曹幹の様子と何故か懐かしさを感じる星の輝きに、陳羣の瞼が熱くなる。
「曹幹様……。今は、どうぞお眠り下さい……。」
震える声を励まして、陳羣は曹幹を促した。
陳羣の手は暖かい。
曹幹はもう一度振り返った。星は、やはり変わらず輝いている。
でも、もう決して届かない。

『遠い輝きよりも、こうして触れあえる距離の方が得難いものなのだよ』

曹幹は知る。

とうさまがおしえてくださったことは、ほんとうだった。



<<皇帝とナースと外交才能零/3名>>
劉禅【バナナ半分、モーニングスター、オルゴール、吹き矢(矢9本)、救急箱、閃光弾×2】
趙雲【ナース服、化粧品】
魯粛【圧切長谷部】
※趙雲は再合流しました。劉禅にやや疑心?
※現在冀州南部。 張飛を待っています。

<<不品行と品行方正と忘れ形見/3名>>
郭嘉[左脇腹負傷、失血、発熱]【閃光弾×1】
陳羣【なし】
曹幹[失語症]【光学迷彩スーツ(故障中)、吹毛剣】
※現在冀州南部、劉禅たちの現在位置より東側の民家。しばし休息。
※賈クに教わった、誰かが近づくと小石が落ちる罠を張ってあります。



47 名前:12/11 すまん入らんかった 投稿日:2006/10/11(水) 21:28:46
@張飛【鉈、桃三個】
     VS
<<カミキリムシとオナモミ/2名>>
呂布【関羽の青龍偃月刀、ドラグノフ・スナイパーライフル】
諸葛瑾【なし】
※冀州南部で交戦中。位置は劉禅たちより南。
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