7-230 追憶のカノン


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9 名前:追憶のカノン 1/5 投稿日:2006/10/08(日) 18:20:31
この世界以外にも別の世界があって、そこでもこのようなゲームが行われているのだろうか。
そうならば私は願おう。何処かの『参加者』よ、負けるな、と。
こんな理不尽な世界に従うな。戦い、抗い、そしていつか世界に対して勝利してくれ。
決して我々の様な不幸な結末を受容するな、と―――。


「……あー?」
木陰で一時の休息を取っていた魏延は、寝ぼけた声と共に目を覚ました。
ほんの少し休むだけのつもりだったのに、いつの間にか眠ってしまっていたらしい。
戦闘が続き、思った以上に疲労が溜まっているのか。

―――決して我々の様な不幸な結末を

良く分からないが、どことなく不吉な言葉が脳裏に纏わりつく。
おかしな夢を見ていた気がする。馬鹿らしい、と頭を振り、木に手をついて立ち上がる。
……一瞬のめまい。
閃光のように脳裏に映像が走り抜ける。

 崩れゆく世界。遠雷が響く。星も月も無い黒の空。

……何だこれ?
魏延はもう一度ぶんぶんと頭を振った。まったくもって馬鹿らしい。



10 名前:追憶のカノン 2/5 投稿日:2006/10/08(日) 18:25:01
赤く染まりはじめた夕暮れの空、不意に影が差した。
鳥か。魏延はひとり頷くと、手ごろな大きさの石を拾い上げた。
狙い澄まして投げたそれは目にも留まらぬ速さで空を駆け、見事に鳥に命中する。
悲しげな鳴き声を上げて墜落する鳥。ばたばたと地面をのたうつのを拾い上げ首を捻る。
今日の夕食、確保。

この鳥、空を旋回していたな……
見上げると、頭上には果たして予想通りのものがあった。
ハルバードを置き、太い幹に手を掛ける。
木登りなんぞどれだけぶりかな、と思いながらも、軽やかに大木をよじ登った。
さっきまで魏延が眠っていた場所のちょうど真上に、ころころとした卵が入った巣。
……真上かよ。さっきの鳥、フンとか落としてないだろうな?
顔をしかめてわしゃわしゃと自分の髪に触れる。どうやら無事のようだ。
その結果に満足して魏延は巣に手を伸ばした。巣ごと卵を取る。
そして割らないように気をつけながら、慎重に木を降りた。
よし。明日の朝食も、確保。



11 名前:追憶のカノン 3/5 投稿日:2006/10/08(日) 18:30:34
日が完全に沈んでしまってからでは炎は目立ちすぎる。
鳥を焼くためにすぐに火をおこした。
一兵卒からの叩き上げである魏延にとっては、そう苦になる作業でもない。
塩でもあればいいんだがな、と思いながら焼き鳥の製作を開始する。
夕暮れの空と同じ色の火がぱちぱちと弾ける音を立てた。

こつん。

小さいが、確実に火が立てたのではない音。
ハルバードを引っ掴み、辺りを窺う。
こつ。こつん。
気配は無い。しかし音は確実に聞こえる。
魏延の鋭い目が周囲をぐるりと睨み、やがて一箇所で停止した。
こつ、こつ……ぴきっ。
巣に入れたまま脇に放置していた卵にひびが入っている。
まじまじとそれを見つめる魏延。広がるひび。
ぱきょん。
殻が割れ、その破片を頭に載せたヒナが顔を覗かせた。
どうしていいか分からなくなってハルバードを握ったまま停止した魏延を、ヒナのつぶらな瞳が見つめる。
ぴー!
小さいが、確かに生命の勢いに溢れた鳴き声。
残りの殻を振り落とし、よちよちと頼りなく魏延の足元に歩み寄る。
「う、うわ」
刷り込み。生まれたての鳥類や哺乳類の赤ん坊が、初めて見たものを親と思い込む現象。
まさしく、それが起こった瞬間であった。
ぴよ。ぴよ、ぴー!
気付けば他の卵にもひびが入っている。
顔を引きつらせる魏延にお構いなく卵は孵り、完全に日が沈む頃にはヒナまみれになって途方に暮れる魏延の姿がそこにあった。



12 名前:追憶のカノン 4/5 投稿日:2006/10/08(日) 18:34:33
あぐらを組んで焼き鳥を頬張りながら、魏延はなんとも居心地の悪い気分になっていた。
その魏延の頭の上に鳥のヒナが2羽。膝の上に3羽。腕に乗っかっている1羽がずり落ちそうになったので、
つまんで膝に置いてやる。計6羽。
「おい、お前ら。今俺が食ってんのはお前らの親だぞ? 親の仇だぞ? いいのか?」
意味がないと分かっていながらも、1人ごちる魏延。
もちろんヒナたちはぴよぴよと楽しそうに鳴いたり跳ねたりしているだけだ。
ふぅ、と溜息をつく。
こんなやかましいのを連れて歩くのは危険すぎる。しかし置いていくと獣か何かにすぐに食われてしまうだろうな……
ついさっきまで自分が卵を朝食にするつもりだったのは棚に上げ、そんな事を考える。
ちょっとだけ、ちょっとだけなら連れて歩いても……そうだ、非常食だ。
そう、こいつらは非常食だから持って行くしかないだろう。あぁ。
もちろん腹が減ったら食う。情け容赦なく食うぞ!

ヒナを連れ歩くために必死で自分への言い訳を考えるあたり、かなりヒナたちにほだされてしまっている魏延だった。




13 名前:追憶のカノン 5/5 投稿日:2006/10/08(日) 18:35:26
@魏延【ハルバード(少々溶解)、鳥のヒナ6匹】
※楊州北部より南下中。
※冒頭の4行は第一回のバトロワ優勝者である魏延の最期の思考です
※ヒナたちに癒されて若干戦闘意欲低下中

      ピョ
  ピョ
      , - 、, - 、
   , - 、i'・e・ ヽ,,・ァ, - 、
  4 ・   ゝ - 、i'e・ ヽ、・ァ
  ゝ   i e・  ヽ、 ,,.-''´|
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