7-215 桃園を後に


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296 名前:桃園を後に 1/3 投稿日:2006/09/01(金) 19:54:01
劉禅が桃園に着いたとき、張飛は寝ていた。
時はまだ朝を向かえていない。もう数十分もすれば十分早朝といえるようになるだろうが、今はまだほんのりと明るくなっている程度だ。
「叔父上」
張飛は返事をしない。実をならせた桃の木々の中、雷のようないびきを立て、目を怒らせたように開けたまま、寝ている。
そばに大きな壺が転がっており、中には酒の臭いが充満していた。
やれやれ、こんな無防備な……本当にこの人を当てにするべきなのか?
この状態の張飛を起こすのは、不可能だと劉禅は分かっていた。まだ幼いころ、無理矢理起こそうとして、蹴り殺されかけたことを劉禅は思い出した。
だがなんにせよ、睡眠を取るのは重要だ。
劉禅は側の民家まで、張飛を引きずっていった。父・劉備の家のはずだ。
張飛を運び終えて、劉禅は家の中を見渡した。筵を売って生計を立てていたというだけあって、あまり広くはないし、奢侈な部分はまったくない。
なるほど、父の逞しさは、ここで育っていったのだな……
物思いに耽っている劉禅に、突然大きな声が聞こえてきた。どこに音源が隠してあるのか、耳につんざく大音量だ。
その粘っこい声質は、昨日から死亡していった者の名前を淡々と告げていった。
夏侯淵、曹仁、典韋といった名だたる猛将が死んでいた。それに周瑜や荀攸、沮授といった知恵の優れた者も死んでいた。
蜀の人物では、陳到がその身を散らしていた。彼もまた、趙雲に次ぐと言われた優秀な人物だった。
放送の大音量にもかかわらず、張飛が起きる気配はない。相変わらずのうるさいいびきに、劉禅は少しうんざりする。



297 名前:桃園を後に 2/3 投稿日:2006/09/01(金) 19:55:28
鬼のごとき武勇を持っていても、神のような頭脳を持っていても、その最後があっけなかった人物は歴史上腐るほどいる。まず、目の前の張飛がそうだ。
張飛が持っていた武器は、単なる鉈だった。どんなに眺めても、何ら変哲もないものだった。いくら張飛でも、こんなもので銃に対抗するのは難しいだろう。
鉈を手に持って眺めているうちに、これを張飛の腹に突き刺したい衝動にわき上がってきた。元の世界で、張達と范彊がやったように。
朝はもう訪れていた。家の中に、明るい光が差してくる。光が鉈に辺り、まぶしく反射した。
張飛を殺すこと、そのことに劉禅は迷いはしなかった。
いかほどの豪傑であっても、この様子では、いつ足を引っ張ってくれるかもわからない。
ましてや豪傑が次々と死んでいくこの状況、腕力はさほど頼りになるとは思えない。
今のうちに殺してしまおう。こんな奴など、さっさと殺してしまえばいい。
劉禅は寝転がる張飛へと、静かに歩み寄っていた。手に持つ鉈を、胸の前に構えながら。
やがて、つまさきに張飛の体が当たるくらいの距離につく。張飛は相変わらず、いびきをかいて、目を開けたまま眠っていた。
「劉禅様?」
背後の戸口の方から、聞き覚えのある声が聞こえたとき、劉禅は鉈を突き下ろす直前だった。
「劉禅様ですか?」
劉禅はまず、胸の前に構えている鉈は背後からは見えてないだろうと考えた。しゃがみ込み、元のように鉈を巨体のそばに置くと、劉禅は振り返った。
「子龍、叔父上を起こすのを手伝ってくれないか? 私一人では、骨が折れる」



298 名前:桃園を後に 3/3 投稿日:2006/09/01(金) 19:56:36
張飛はなかなか起きようとしなかった。起こそうとすると、何かをわめきながら手足を暴れさせるのだ。
趙雲、劉禅、それに魯粛の三人がかりで押さえつけ、張飛はようやく起きあがった。ただし、魯粛の顔には赤い跡がついてしまったが。
「こちらは呉の魯粛殿です。こころよい人物ですよ」
劉禅がなぜ張飛がこの三人に起こされたかを説明し、それから趙雲が魯粛と出会った経緯や、どれほど信用に値する人物かを熱弁を振るって話してくれた。
張飛にとって、呉の人物は十分に警戒し、恨むべき相手だ。しかし魯粛は、関羽より前に死んでいるし、親蜀派に属する人物だった。
それに魯粛のことより、趙雲の方がよっぽど気になっていた。なんだ、その格好は―――
「ああ、これはある男に着せられたものでしてね。その男はどこかに失せましたが」
趙雲の隣の魯粛が、なんだか複雑な顔をしている。その時の張飛に、趙雲が女になっていたことは聞かされていない。
魯粛が提案した。
「とりあえず、もう少しだけここにいましょう。劉備殿も関羽殿も、まだ来る可能性はあります。
いよいよという時になって、冀州へ行きましょう。ここから冀州は、遠くはありませんから」
待てるだけ待つ、というのは張飛の意向にも添うものだったので、賛同することにした。
それから張飛以外の三人は、なにやらいろいろと話し込み始めた。張飛は参加する気にはなれず、外に出て義兄達の来訪を待ち続けた。
やがて、限界の時を迎えた。二人は来なかった。
「長兄………雲長兄ぃ………」
張飛は桃園の桃を三つ取り、荷物へ加えた。三人集ったときは、これを一つずつ分けて食おう、と。
一同は冀州へ歩き始めた。太陽が高くなっていた。


<<皇帝と鬼武者とナースと外交才能零/4名>>
劉禅【バナナ半分、モーニングスター、オルゴール、吹き矢(矢9本)、光学迷彩スーツ(故障中)、救急箱、閃光弾×2】
張飛【鉈、桃三個】趙雲【ナース服、化粧品】魯粛【圧切長谷部】
※冀州へ。冀州へ着いたあとどうするかは決めていません。
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