7-211 Fellows and Followers

278 名前:Fellows and Followers 1/6 投稿日:2006/08/31(木) 23:05:22
洞窟の中に9人、流石に多少窮屈だ。うち1人はロープでぐるぐる巻きになっている。お世辞にもエレガントな縛り方ではない。
雨は徐々に弱まり、昼にはすっかり晴れ上がっていた。そろそろ移動出来るだろうが、気がかりな点が多々あり、
こうして顔突き合わせて問答している。参加しているのは7人。

まず、先程完膚なきまでに叩きのめされた筈の阿会喃が突如何事もなかったかのように起き上がり襲い掛かってきたことだ。
これが腹を抉られ体中の骨を折られた者の動きなのか!? この執念は一体どこから来ているのだろう?
人知を超えた力がそこに働いているのだろうか。半ば強引に気絶させて縛り付けておくのが精一杯だった。
彼の荷物を漁っていた司馬懿が怪しげな黒い本を見つけ、更にその中に自分を含む何名かの名前を発見したので、
おそらくこの本が何らかの関連を持っていると推測した。が、最初に襲い掛かってきた理由としては兎も角、
この異様なまでの動きの解釈材料にはなり辛い。
とりあえず、余りに怪しいので阿会喃にこのまま持たせておくのは危険と判断し、没収する。

また、突如現れた(多分誰かをつけていたのだろうけど)楊儀が、「お前、『不思議な仲間』だな! そうに違いあるまい!」
と言って太史慈から離れようとしない。本人は迷惑だろうが危害を加える訳でも無いので、この件は後回しにしたいところだったが、
意気揚々と放つ「お前がいれば魏延も真っ二つよ!」という台詞に、洞窟の奥の方で反応する気配。
意識が朧で、安静を余儀なくされていた姜維である。

その姜維の容態は正直思わしくない。今後長距離の移動は避けた方が良さそうだが、かといってこのまま全員がこの場に
滞留している訳にもいかないだろう。ならば彼らが取り得る最善の策は――いっそ一纏めで行動する事を止める、と言う結論だった。
確かにある程度の人数がいた方が何かと便利だろう。だが、それも度を超えての多人数ではただの的である。怪我人を抱えているなら尚更だ。



279 名前:Fellows and Followers 2/6 投稿日:2006/08/31(木) 23:06:35
「では、目的に合わせて3つに組を分けるべきだな」
全員が、いや、7人が頷く。
「……とは言え、どんな組合せにしても何らかの不満は残るな」
司馬懿は言う。例えば3組に分けるとして、目的に合わせて分ければ戦力の心許無い組が出来る。バランスを重視して分ければ
目的の定まらぬ組が出来てしまう。いっそのこと2組にするべきかとさえ思ったが、未だ諸葛亮の所在は知れず、3組に分割するのは
「手分けして捜す」という意図も若干含まれていた。それに正直、魏延には現在超乗り気な楊儀に接触して貰いたい、出来ることなら。
となると、想定出来る分け方は、

1)馬岱、馬超(当初の目的通り、世界の謎に迫るべく諸葛亮を探索、結果を2に報告)
2)陸遜、司馬懿、姜維(↑に同じくだが、移動を制限される為、当面1が探索を追え調査報告を寄越すまで、待機)
3)太史慈、李典、楊儀(諸葛亮他を捜しつつ魏延を倒す(つもりで接触))

になるのだが――これは目的の面でも理に適ってそうだが、致命的弱点を抱えている。2班の現時点の戦闘能力である。
そのことを、先ず陸遜だけに耳打ちした。
陸遜はまず己の手持ちの武器を見た。献帝の部下達が持っていたのと似たタイプの飛び道具。先手さえ取れれば不利ではないと考える。
司馬懿の持ち物はどうだろう。重火器と、馬岱の初期支給物である暗視鏡。
そして洞窟。下手に動かなければそうそう見つからないだろう。あとは常に警戒を払えば、少なくとも先手は取れる筈。
――行ける。
「司馬懿さん、それで行きましょう」
陸遜が覚悟半分、自信半分に言うので、司馬懿も大きく頷き、そのことを紙に書く為に鞄から参加者リストと鉛筆を出したのだが……

白紙だと思った参加者リストの裏には、びっしりと文字が書かれていた。どうやら間違って陳宮の鞄を開けたようなのだ。
「こ、これは……」
思わず目を通した司馬懿と横から覗き込んだ陸遜が、感嘆の声を漏らす。果たしてそこに書かれていたのは、始まってから
その命を散らすまでの間の出来事――といっても2日間だが――が仔細に綴られているようだ。平たく言えば、日記である。
き、気になる……中身が非常に気になるが、とりあえず後回しにすることにした。



280 名前:Fellows and Followers 3/6 投稿日:2006/08/31(木) 23:08:16

鉛筆の跡が走った参加者リストの裏紙を見つめる十四の瞳。

「……ちょっと待ち。この3って何ですか、3って。我々は関係ないむぐ……!」
李典の口を楊儀が押さえ付けた。何が何でもこの2人を不思議な仲間として連れて行くつもりらしい。
「すみませんねぇ。一度遭遇してコテンパンにのされてくれば落ち着くんじゃないかなーと思うので」
割と無責任に言う陸遜に、何故アンタが言う、と馬岱は思った。……敢えて「つもりで」と注釈したのはそういう意味か。
(もっとも、本当は単に厄介払いしたいだけじゃないのかと思ったのは激しく内緒である)
大体、突然出てきて「不思議な仲間と一緒なら魏延を倒せるに違いない!」って、楊儀はどっかで頭が温かくなってるんじゃ
ないのか、と、そもそもその点に突っ込みたい。激しく突っ込みたい。
(しかし直後にこのように隊を分けた事に対してあらゆる意味で後悔するが、この時点では未だ知る由も無い――)


最初に楊儀達が意気揚々と――といっても多分李典は余り乗り気じゃない――洞窟を後にする。
もっともこの3人は特に当てがある訳でもなく(居残り組が最後に魏延と遭遇してからかなりの時間が経っており、
涼州も雍州も禁止エリアになったことから考えて、少なくとも魏延はもうこの付近にはいないと判断はしたようだ)、
結局当初太史慈達が目指していた呉郡を再度目標とすることにした。

そして馬超と馬岱――思い当たる節があるのかと問うた際、「主戦場にもいない、蜀にもいないとなれば、もしかしたら
出身地にいるかも知れない」という答えがこのふたりから帰ってきた。……冷静に考えると、良く今まで失念していたものだ。

この場を離れる組に、もし何かが判れば早急に、何も手掛かりがなくても3日以内に必ずここに戻る、という条件を課していた。
それはほぼ全員の目的が「情報収集とそれによるこの世界の謎の解明、そして事態の終結」で一致した為だ。通信機器など無い訳で、
まめに再会して情報交換を怠らないように努めたい。



281 名前:Fellows and Followers 4/6 投稿日:2006/08/31(木) 23:10:22
洞窟には3人、いや4人が残されていた。
ロープでぐるぐる巻きになっている阿会喃。今は気を失っているようだが(重々註するが、何故斯様に酷い重傷を負いながらも
まだ普通に動けるものなのか、やはりあの怪しい本の所為なのか?)、もし今意識が戻られたら、かなり危険だ。
……今のうちにどっかに棄ててきませんか? と陸遜は提案するが、司馬懿はこう懸念する。名指しで私を追って来た以上、
生半可な処置の仕方ではまた必ず負ってくるだろう。ならば、いっそのこと――

司馬懿と陸遜が生唾を飲んで鞄の止め具に手を掛けたその時だ。

突如、バネのように阿会喃の身体が跳ね、身の自由を奪っていたロープを一瞬に引き千切る。
そして己の持ち物であった刀を手に、何の迷いも無く、司馬懿に襲い掛かろうとする。
呆気に取られる間など無く、ふたりは身構えた。陸遜は何一つ躊躇わずに機関銃を乱射したが、その標的は易々とかわしてくれる。
大体もとより、彼にとっては陸遜は眼中に無いのだ。
手にした刃が鋭い光を放つ。空を切る音を陸遜の銃が追うが、追いつかない。一体どういうことなのだ、この身体能力は!
「くっ……!」
避けている最中に、司馬懿は転倒した。直接吹き込まなくても充分に湿った土に足を取られたのだ。
その隙を見逃さず、狂気に包まれた阿会喃が飛び掛る。もはや陸遜の銃弾に腕や足を多少突付かれても気にも留めていない。

馬鹿だ、私は馬鹿だ。敵は最も身近に在ったというのに――司馬懿は現状と判断の浅はかさを呪った。

目の前を鋭い一閃が走ったその刹那、司馬懿と凶刃の間を遮るものがあった。
小さな槌。それは今まさに司馬懿の身を抉ろうとした刃を真正面から受け止め、鈍い音を発した。
槌を持つ手の先を辿れば、もはや立ち上がるのがやっとの意識で辛うじて立つ男。――ミョルニルを持った姜維である。



282 名前:Fellows and Followers 5/6 投稿日:2006/08/31(木) 23:11:31
まさか瀕死の男が真っ向から向かってくるとは思っていなかったから、さしもの阿会喃も僅かにたじろぐ。

 このミョルニル――陳宮どのの不思議な力(今となってはそれが何であるか確認する術も無く)に呼応してその姿を変えました。
 私には何の力もないですが、想いだけは――真実を求めたい。そして――誰かを、護りたかった。
 私はかつて、陳宮どのを護れなかったのです。

脳裏に、あの夜の事が過る。あの時、僅かでも躊躇した己を恥じたものだった。

 お願いします。もしこの世界に、想いを受け取る器と言うものがあるならば。
 今、彼らを護る術を、私に、下さい……!

白銀の槌が通った軌跡の延長線上、青白い稲妻が空間を走り抜け、狂人の身を貫く。

その場にいた全員が、一瞬でも己が目を疑った。果たして、阿会喃はその場に崩れ落ちる。黒い煤がその身を覆っていた。
姜維は突如右腕に重みを感じた。そこにあったのは、ミョルニルの元ある姿。
それを確認したかどうかの辺りで、彼もまた膝を折る。端整な唇の端に緋色の線が伝う。それは彼の身を流れる命の源。
司馬懿と陸遜が走ってくるのが見えた。きっと何かを伝えたい筈なのに、声が出ない。視界が薄ぼやけてくる。
ミョルニルを杖にして立ち上がろうと試みるが、それは叶わない。真横に倒れるが、彼自身は気付いて無い。再び昏倒状態に陥ったのだ。
そのミョルニルには――ひびが入っていた。まるで己を振るった男の命を削った代償であるかのように。




283 名前:Fellows and Followers 6/6 投稿日:2006/08/31(木) 23:13:40
「そ、そんな……」
陸遜が半ば泣きそうな顔になる。こんなときに何も出来ない自分がもどかしい。ただ見守る事しか出来ないのか?
おそらく司馬懿も同じ想いのようだったが、沈痛な、しかし陸遜よりは幾許か冷静に、彼は小声で言う。
「……何か我々に出来る事がある筈だ。考えるんだ――」
その頭脳こそが、彼らの最大の武器であるはずなのだ。


<<楊儀くんと子義マンセー/3名>>
太史慈[スタンド使い]【ジョジョの奇妙な冒険全巻】 李典【SPAS12】 楊儀【MDウォークマン】
※(極めて漠然と)魏延捜索中。ついでに諸葛亮も捜索中。楊州へ。3日以内に戻ってくる予定。

<<馬家の従兄弟/2名>>
馬超【高威力手榴弾×7個、MP5、ダガー、ジャベリン】馬岱[香水アレルギー]【シャムシール・ロープ・投げナイフ×20】
※諸葛亮捜索中。陸中へ。傷などはほぼ回復しているようです。3日以内に戻って来ます。

<<めるへんトリオ/3名>>
陸遜[左腕裂傷]【真紅の花飾り、P90(弾倉残り×3)】
姜維[危篤]【ミョルニル(ひび入り)】※大変危険な状態です。何らかの対策が講じられなければ……
司馬懿【赤外線ゴーグル、付け髭、RPG-7(あと4発)、香水、DEATH NOTE、陳宮の鞄、阿会喃の鞄】※何故か鞄コレクターになった模様。
※漢中より少し南の洞窟に滞在中。
※ミョルニルは元のサイズに戻りましたがひびが入っています。使うのは危険かも知れません。
※香水には嗅ぐとハッピーになる効果。但し体質に合わない人がたまにいます。※陳宮日記の内容は今のところ内緒。

【阿会喃 死亡確認】
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最終更新:2007年11月17日 19:09
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