7-195 遭遇

195 名前:遭遇 1/3 投稿日:2006/08/17(木) 19:30:41
開始当初から、幽州を目指していた関羽だったが、彼はまだ并州にいた。
人が避けそうな、深い山岳地帯を選んで進んだのが間違いだった。
二日目の昼のこと、并州北部の険しい山の中を歩いていたら、突如として、歩いていた崖沿いの道が崩れ落ちた。
関羽は抵抗する暇もなく、崖下へ転がり落ちていった。
途中、崖の急斜面に細々と生えていた木の幹にしがみつき、九死に一生を得たが、
上を見上げても歩いていた道はすでに高く、下を見下げても深い崖底の一面に荒い巨石が転がっている。
周りを見回してもこの木のようなとっかかりになるものは特になく、そのまま時を過ごさなければならなかった。
寒い夜を堪え忍ぶと、明るい日が斜面に降り注いできた。しかしすぐに雨雲がやってきて、陽を覆い被し雨を降らせてきた。
激しい、まるで殴っているかのような大粒の雨。関羽は雨の音に混じって、崖が震動する音を聞いた。
夕方になり、関羽の掴む木が根を張っていた地盤が、ずるり、と崖から滑っていった。木も関羽もともに落下していく。
落下しながらも崖を見上げると、次々と、岩や土が音を立てて落ちていくのが確認できた。まるで、滝のようだ。
関羽は木の幹を背に、地面と衝突した。体全体に激しい痛みが走った。上空からは、土の滝が落ちてくる。



196 名前:遭遇 2/3 投稿日:2006/08/17(木) 19:31:57
気が付けば、闇の中にいた。全身がズキズキと痛いが、生きていることはわかった。
体は動かない。大きい重量感が、足の先から頭までのし掛かっている。
これは死ななかった事を感謝すべきなのか、生き埋めになったことを怨むべきなのか。
両腕に思いっきり力を入れてみる。痛みとともに筋肉が膨張し、腕が締め付けられる感覚が訪れる。
そのまま上へ持ち上げようとする。成果は、カラ、コロリ、とわずかな音が聞こえただった。
やれやれ、こんなあっけなく、自分は終わってしまうのか。ここでも三人のうちで、真っ先に。
カラ、ゴロリ
ん? もう力は加えていないが。
ジャリ、ゴロ、ガラガラガラ………
空気の流れが、わずかな光が、身に触れたのを感じ、関羽は目を開けた。
「関羽の旦那ぁ!」
闇の中に、男がいた。



197 名前:遭遇 3/3 投稿日:2006/08/17(木) 19:35:37
どこかで見たような、見ていないような顔で、どこかで聞いたような、聞いていないような名前。
それが裴元紹だった。
「とりあえず、礼を言おう」
「いや、いいっすよ。しかしビビりましたよ。だっていきなり、関羽の旦那が崖下へひゅーって落ちていってたんすから」
旦那、旦那、とこっちにやたらと擦り寄ってくるが、こんな下品な男と親しくなった覚えは特になかった。
まあ、武器は持っていなかったし、危害を加える気はなさそうだ。なにより自分を助けてくれたのだから、無下には扱えない。
「それで、旦那はどこに行こうとしてたんですかい?」
「幽州だ」
一瞬にして裴元紹の顔が萎縮し、苦悩に顔をゆがめ、両手で頭を抱えたが、それでもパッと顔を上げると。
「あんま行きたくないけど……でも旦那のためなら行くっすYO! 行けっていわれたれら、たとえ火の中水の中あの子のスカートの中ですYO!」
「いや、迷惑がかかるなら行かなくとも……」
「心配しないでいいっすYO! この裴元紹、嫁さんを失った以上、旦那に一生ついていく所存です!!」
正直言って、ついてきてほしくなかった。限りなく足手まといになりそうだし、っていうか嫁さんとはなんなのか。ともあれ、命の恩人の願いを断るわけにもいかない。
関羽は立ち上がった。足が、痛む。特に大きな傷はなかったとはいえ、痛みはいつまでもまとわりついていた。
「これから幽州のある所まで、一時も休まずにいかなければならん。義兄と義弟が、すでに待っているはずだ」
「へえ、玄徳様に、翼徳様ですね」
「ついてこれるなら、ついてくるといいだろう」
関羽は大股で、北へ歩き始めた。裴元紹は急いで関羽を追いかけていった。

<<三界伏魔大帝神威遠震天尊関聖帝君と下僕/二名>>
関羽[全身打撲]【方天画戟】 裴元紹【なし】
※夜、并州のどこかのようです。雨は止みました。楼桑村へ向かいます。

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最終更新:2007年11月17日 18:37
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