7-188 MERCY and HAPPINESS

147 名前:MERCY and HAPPINESS 1/6 投稿日:2006/08/11(金) 03:34:13
【Disfragmentation】
あまりにも突然な、あっという間の出来事で、状況を把握するだけでも苦心した爆風の跡。
突如飛来した弾頭に陳宮がその命を奪われ、他の者も傷を追った。

油断があった故の事だが、完全に不意を突かれた。陳宮はほぼ即死、それを庇おうとした姜維も重傷を負う。
結局二進も三進も行かず佇んでいた。平たく言うと、彼らはとても混乱していて、疲れていた。
落ち着くまで誰とも遭遇しなかったのは不幸中の幸いと言えよう。

ややあって全員が落ち着いてくると、見るも無残な陳宮の姿と、方々に散らばった道具の類に改めて気付く。
四人は先ず、陳宮を茂みの奥に移動させ、木の葉や草で覆い隠した。辺りの土は乾いて固く、それを掘る道具もなかったからだ。
(董卓を放置したのは単に気が回らなかったようで、他意はない)
そして、気休め程度に傷の手当てをする。勿論道具などない。文字通り気休めでしかないが、しないよりは遥かにマシだった。
それが終わると、周囲のアイテム諸々を片付け始めた。失われたものもあれば、残されたものもあり、それは各々が拾った。
昨日殆ど手を付けられなかった為に食料もまだ残っていたが、とても食指が動く気分ではなかった。

陸遜は少し離れたところでその姿を保っていた紅い花を見つける。それはかつて陳宮が腰に着けていたものの一部である。
(本来頭に着ける物のような気がしたが敢えて突っ込まなかった。)僅かに焦げていたが、まるで咲き誇るように残っていたのは
奇跡とも思えた。何かの守り神でも宿っているような気がして、陸遜はそれを拾った。

武器を分配する段において、姜維は最初頑なに武器を持つ事を拒んでいたが、ふとミョルニルに目を留める。
誰が試しても静電気すら起きなかったミョルニルをおもむろに手に取り、暫し眺めた後、何か思うところがあったらしく、
私が持っていても宜しいですか? と皆に同意を求めた。無論、反対する者はなかった。



148 名前:MERCY and HAPPINESS 2/6 投稿日:2006/08/11(金) 03:35:56
【香水のひ・み・つ】
司馬懿がとある物に気付く。運良く燃え残った陳宮の鞄だ。
中を探ってみると、上部に突起の付いた小さな瓶が入っていた。試しに押してみると、霧のようなものが噴出した。
清々しい香りが漂う。しばしば陳宮の周りに漂っていた匂いであった。
それを嗅いだら、何だかとっても幸せな気分になって来た。今までの苦労など何処かに吹き飛んでしまいそうな程に。
「むう、この中に入っている水を嗅ぐと、どうやらとても気持ちが落ち着くようだな。ははははは、もうどうでも良いわ」
それは落ち着くのとはちょっと違うんじゃ、と突っ込もうとした馬岱の鼻先に、司馬懿が小瓶の霧を吹き付けた。
「ふはははは、貴様もその辛気臭い顔をどうにかせぬか、ほれ」
霧を手で払ったが若干吸い込んでしまった馬岱は、何故か一層不機嫌な顔になった。しかしその直後、顔と手の甲を掻き始めた。
「何か痒いんだけど……」
見れば鼻と腕に湿疹のようなものが出来ている。
その様子を見ていた司馬懿は少し考え、そして結論に至る。
「ふむ、どうやら貴様はこの水が体質に合わぬようだな」
「合わぬようだ、ってそれで済まさないでくれよ、痒くてしょうがないだろ!?」
「ふはははは、少々強く吹きすぎたようだな」
司馬懿は豪快に笑うが、馬岱の方は今にも泣きそう且つキレそうだ。妙にイライラして、次の瞬間、右の拳が――

ばきっ。
「馬鹿者、何をする!」
「何をって、アンタが悪いんじゃないかよ! どうにかしてくれよ、このぽつぽつとかぁ!」
「……ううむ、貴様が何かとキレ易いのはこの水が原因だったか……」
左頬を押さえながら司馬懿はぶつぶつとひとりごちた。



149 名前:MERCY and HAPPINESS 3/6 投稿日:2006/08/11(金) 03:37:13
【手を伸ばせば届きそうなところに】
「……はっ、もしかすると、この香る霧を浴び続けていたら我々も陳宮どのの様に『魔女っ子』になれるかも知れんな!」
「なれる訳ねぇだろ! て言うか、 な り た い のかよ!?」
こればかりは声に出して馬岱は突っ込んだ。
「何を言うか凡愚め、魔女っ子になればミョルニルが使えるようになるかも知れないではないか!」
「それは大いに判るが、もしなれるとしてもさすがにアンタは止めとけよ」
「な、なんだと、それはどういう意味」
「はい、はい、そこまで、どうどう」
傍観していた陸遜が間に割って入った。彼は司馬懿の手から香水瓶をもぎ取り、
「それにしても、これは使いようによっては下手な武器より強力かも知れませんよ。大体、誰もが予測し得ないですからね、
 ただの霧吹きと思いきや、このような効果がある……なんてね。なるほど、そういうことでしたか」
「何がだ」
「どう見ても武器じゃない道具を支給されていた件について、ですよ。最初に気にされていたのは馬岱さんですよ、お忘れですか?」
「いや……覚えてたけど」
香水瓶を見つめて大袈裟に納得する陸遜に指摘されるまで、馬岱は自分が指摘したことについては忘れかけていた。
「普通じゃない――武器としての用を為さない諸々の存在は、使い方に工夫が要る、つまり力だけでは生き残れない、
 ということを言われているのではないか、と僕は思いますね。
 単純な膂力や生命力だけではなく、知識や判断力なども問われている、と考えるのが妥当です」
得意気に語る陸遜を見て、こいつもハッピーミスト食らってんのかな、と馬岱は思ったが、言われてみれば彼の推測は
ほぼ理に適っているものに感じられた。

単純な殺し合いではなく、機転を利かせられる者が求められている。目的は見当が付いた。あとはそれが示す『動機』に、
もう少しで届きそうな気がするのに。手を伸ばせばそこに真実があるような気がするのに――それは、まだ見えない。



150 名前:MERCY and HAPPINESS 4/6 投稿日:2006/08/11(金) 03:38:37
【Encountering】
「……ん? 誰かこっちに来る」
馬岱がこちらにゆっくりと近づきつつある人影に気付く。どうやらここでの戦闘の跡を探して来たようだ。ずっと気にして見ていたが、
その顔が判別できる距離まで近くなると――それは馬超である訳だが、
「アレは……アニキじゃないか! ちょっと様子を見てくる」
言うが早いが、馬岱はひとりで走って行ってしまった。思わず司馬懿と陸遜は顔を見合わせるが、やがて完全に遭遇状態と
なったふたりがとても親しげだったので、半ば安心したのだった。馬超を連れて戻って来た馬岱は、疑問に先回りして、
こちらは兄上――本当は従兄ですが――と説明した。

「岱が無事そうで何よりだ」
「兄上こそ」
言葉は少なくとも、その内に込められたものは互いに感じ取る事が出来た。馬超は馬岱の消息が気になっていたから、
素直に嬉しかったのだ。馬岱としても、最後に見たときと比べて馬超があまり乗り気ではなくなっているように見受けられ、
こっそりと安堵した。あとは状況を確認さえ出来てしまえば、脳裏に浮かんだ不安など霧散してしまう。
そう、状況を確認さえ出来れば。
それを問われて、馬岱は手短に昨晩の事と現状を説明する。俄かに馬超の顔が曇る。自分の事は棚に上げて、述懐する。

 やはりここは戦場なのか。限りなく面妖な世界でありながら、常に死と隣り合わせなのだ。ならば尚の事、
 私は岱の傍にいるべきだろうか。

その旨を皆に伝えると、勿論馬岱は快諾したが、奇妙な事に陸遜と司馬懿も即答で承諾した。不思議に思って馬超が問うと、
多くの人間、とりわけ様々な陣営の人間が寄り集まるという事は、確かに敵を増やすことにもなるが、味方も増えるものなのだと。
ましてや、我々の目的は「ただ生き残る事」ではなく、「真相を突き止める」ことだから、頭数は多い方が有り難いのです、
と陸遜は答えた。さらに、この状況下では少しでも信頼に足る方が良い、例えば誰かひとりととても親しいとか……と付け加えた。
(それに、今あなたを敵に回すのはリスクが大きすぎます、と、これは頭の中だけで呟いた)



151 名前:MERCY and HAPPINESS 5/6 投稿日:2006/08/11(金) 03:40:27
【Innocent Wish】
そうと決まれば、もともと行き先は決まっていたようなものだったし、これ以上ここにいても意味も無い。
どうせ同じく危険を伴うなら、早速準備をして移動した方が良さそうだ、という結論に至る。
「とりあえず、そこの馬鹿者を叩き起こせ」
と言って、司馬懿はミョルニルを抱えたまま眠っている姜維の肩をぺたぺたと叩く。頭を叩かないのは一応良心か。
あの、姜維さんは寝てるんじゃなくて気絶――陸遜が突っ込もうとしたのは当然無視した。
ここのところの悪夢に苛まれる様子は微塵も見せずに緩やかに目を開けた姜維の脇で、立て膝で視線を落とした司馬懿は、
「ようやく起きたか馬鹿めが。……今日はうなされてなかったようだな」
と。言い回しは辛辣だが、後に振り返って陸遜が言うことには、声色はこの上なく心配そうだったという。

優しい夢を見ました、と姜維は言った。言葉尻に疑問を投げかける皆の視線を受けて、更にこう繋いだ。
「誰かが――誰かは判らないんですが、“もう自分の為に無闇に人を殺してくれるな”と、私に語りかけるのです。
 その声を聞いていたら、今まで渦巻いていた厭な気持ちがすっと消えて行くようでした」
本当に表情は穏やかそうだったが、容態そのものはどう見ても宜しくなさそうだ。
それについて率直に司馬懿が聞くと、僅かに首を左右に振り、ぼそっと言った。
私は魏延どのにどうしても問いたいことがあるのです。それまでは――。それだけを言って、再び彼の意識は落ちてしまった。
今度は呼び掛けても強く刺激を与えても目覚める様子がない。穏やかな呼吸がその命の在り処を示してはいるが、思わしくは無い。

仕方が無いですね、と言うや否や、陸遜と馬岱と馬超は無理矢理司馬懿の背に姜維の身体を背負わせて、
「……ってちょっと待て、何故私なのかッ!? 私は力仕事など向かん! ちょ、待……重ーっ!」
「判って無いですね、馬岱さんと馬超さんは敵に遭遇した時に武器が持てないと困るでしょ?」
「それは判るが、それをいうならお前もじゃないのか陸遜ッ!? おのれ、待て……」


明けぬ夜はない。今朝も例に漏れず、既に夜は明けていた。



152 名前:MERCY and HAPPINESS 6/6 投稿日:2006/08/11(金) 03:41:41
「そういえば、我々の外見年齢から察するに、世代考証が滅茶苦茶ですね……不自然ですよねぇ」
そんな疑問が陸遜の脳裏を掠ったが、とにかく何もかもが可笑しな世界にあって、それはさして重要な事ではないな、と思った。


<<めるへんカルテット/4名>>
陸遜[左腕裂傷、若干幸せ?]【真紅の花飾り、P90(弾倉残り×4)】
姜維[昏睡、頭部損傷]【魔法のステッキミョルニル】※容態は芳しくないです。
馬岱[軽症、香水アレルギー(顔及び手に発疹)]【シャムシール・ロープ・投げナイフ×20】
司馬懿[軽傷、かなり幸せ]【赤外線ゴーグル、付け髭、RPG-7(あと4発)、香水】※陳宮の鞄を所持しています。
※「もう5人で歌えない」ということでユニット名が変更になりました。
 「そもそも既にめるへんな人がいないんじゃないのか」とか「まだ4人で歌う気か」とかは禁句。
※ジャベリンは馬超が持っています。
※ミョルニルは、魔法のステッキと化した時点で魔女っ子しか使えない(=現時点で誰も使えない)ので、
 現在はただのファンシーなステッキです。殴ったらそれなりに痛いかも知れません。
※香水(ゴスロリセットの一部)は、嗅ぐとハッピーな気分になれる成分が含まれています。但し、稀に体質に合わない場合があり、
 その場合は発疹が出たり、怒りっぽくなったりします。ちなみに浴び続けていると魔女っ子になれ……る訳が無い。司馬懿は試す気満々です。

@馬超【高威力手榴弾×7個、MP5、ダガー、ジャベリン】
※カルテット(というか馬岱)に同行します。現時点では好意的です。


※いよいよ益州へ。誰かがいるかも知れないと信じて、漢中を経由して南下の予定です。本日中には着けるかな?
 移動速度は極めて遅いです。今好戦的な誰かに遭遇すると大変ピンチです。
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最終更新:2007年11月17日 18:25
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