26 名前:1/3 投稿日:2006/07/07(金) 20:49:16
生きていた頃は日々の糧として山賊暮らしをしていた彼にとって
今回の事など横光三国志における自分の扱いの様にどうでもよかった。
かつて己を殺した男に対しての復讐の念もないわけではなかったが
死したとき植えつけられた「勝てるわけねえ」という圧倒的な敗北感と
山賊時代の己の友が崇拝してやまなかった男の同僚である事(後で知った事だが)を考えると
「復讐なんて考えても無駄なだけだな、それよりゃあまた山賊でもやっか」
という短絡的、かつ楽観的な将来の展望に復讐の念はかき消されていった。
そんな彼が、大きなバッグを持って城から出て行ったときのことだ。
彼が太陽の光を眼にした瞬間、爆音が辺りに響き渡った。
「げえっ!」
何が起きたのかもわからないまま、とりあえず彼は言いなれた気がする驚声をあげる。
瞬間、少し離れた所にいた1人の男が彼に向かって『黒光りする筒状の何か』を向ける。
開催の時寝ていた彼にはそれが機関銃だと知るはずがない。
玩具か?と一瞬彼は思ったが、筒状の物を己に向けた男の羅刹の様な形相と
次の瞬間響いた『タタタタ』という軽い、しかしなぜか恐怖を覚える音に
そんな考えは吹き飛んだ。
「あわわ!」
言いなれた気がする言葉を発すると同時に、彼は必死にどこかへ走り出した。
彼は走った。とにかく、必死で走った。何も考えなかった。
あの羅刹の男が黒い筒を向けて追ってきているかと思うと
後ろなんてとても振り返れなかった。
27 名前:2/3 投稿日:2006/07/07(金) 20:50:20
どこまで走っただろうか。自分が今どこにいるのかさえもわからない。走りすぎた。
もう少し遠くまで行けば、海が見えるんじゃないかと思うほど走った気がする。
実際はそれほど走ってはいないのだが。
羅刹の男は追ってこない。
もしかすると、自分なんてどうでもよかったのかもしれない。
安心した彼は激しい呼吸、咳き込みと同時に、ふと一言発した。
「な・・・なんなんだよ、ありゃあ・・・」
爆音。黒い筒。羅刹。そして、殺意。
かつて生きていた頃にも殺意と殺し合いはあったが、あれは違う。
あんな筒を向けられたら、あれはただの惨殺だ。圧倒的な力による殺戮だ。
思い出してもゾッとする。自分が弱くなってはじめて感じる何か。
あるいは彼自身山賊であった時略奪した村民も、それを感じたのだろうか。
「うおおーッ!すまねえ!すまねえッ!」
そう考えると、彼にも自戒、自責の念が押し寄せる。
だが、その念と同時に『もしかしたら、俺にもあの武器が?』という考えが浮かぶ。
「へ・・・へっへっへ・・・だとしたら・・・俺の時代が・・・」
自責の念はどこへやら、彼は己のバッグを開けた。
だが中には黒い筒はない。どこを探しても無い。かわりに服のようなものが出てきただけだ。
「つ、筒は!?俺様の黒筒・・・」
『そんなものねーよ』と彼が思うまで、少々時間が必要だった。
太陽を眺めながら落ち込む。この平野に誰もいなかったのが彼のせめての幸福だろうか。
涙を流しながら、彼は己の支給品である『ナース服』を手に取り、咽び泣く。
「こんな服・・・こんな服なんて・・・こんな服なんてよぉ・・・」
だがどうした事だろう。『意外とこれ、悪くないんじゃね?』な発想が出てくる。
ピンクに輝くキュートなカラーが彼のハートを直撃したのだろうか。
涙が止まった彼に、『第二の人生』が描き出された気がした。
28 名前:3/3 投稿日:2006/07/07(金) 20:50:57
「そうだ・・・俺は嫁さんを探そう!この服が似合うくらいとびっきりのべっぴんさんを!」
もう彼の頭の中に山賊も趙雲も羅刹も献帝もいない。
彼―裴元紹―の頭の中には、ナース服を来た『理想の嫁さん』が住み始めていた。
@裴元紹【ナース服】
※理想の嫁さんを探す。現在地は江夏の辺り。
爆音、羅刹の男等は>>21の激戦区の誰か
最終更新:2007年11月18日 10:26