7-161 呂蒙の一日 外伝:孫権の一日


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33 名前:呂蒙の一日1/6 投稿日:2006/07/30(日) 15:34:25
コケッコー!
どこかで鶏が鳴く声を聞きながら起床。
横では陸機が大口開けてよだれ垂らしながら爆睡中だ。
その無邪気な寝姿に苦笑しながら顔を上げれば、
側では曹操が真剣な顔で果物を取り分けている。
「おはよう呂蒙」
「お、おはよう……です」

彼のことを何と呼べばいのかわからない。
陸機は敬愛込めたきらきらした目で「曹操殿!」と叫ぶ。
あいつは本気で曹操に傾倒しているらしく、
彼に対する態度はあからさまに呂蒙に対するそれとは違う。
孫尚香は親戚の叔父さんに話しかけるような気さくさで「曹操さん」と呼ぶ。
黙っていると小柄な文官にしか見えぬ曹操とさばさばした性格の孫尚香は
意外にウマが合うらしく、
一度ふたりでどの果物が甘くて美味いかを真剣に議論していた。
孫尚香が持っていた謎の液体が身体を洗うものだと教えたのも曹操で
(西域から来た商人に貰っていた”石けん”とやらにそっくりらしい)
近くの湖に行き、交替で身体を洗ったのは昨晩のこと。
数日分の汚れと逡巡をぬぐいさるように、呂蒙はやけくそになって身体を擦ったのだ。



34 名前:呂蒙の一日2/6 投稿日:2006/07/30(日) 15:35:06
朝食に果物を食べる。
温州蜜柑、山葡萄、茘枝が主な収穫物だったが、
なぜか曹操の皿(大きな葉で代用している)だけ蜜柑が多い。
「蜜柑が大好物なのだ」
照れたようにその理由を話し出す彼に、いい歳した男が何言ってんだ!と呂蒙は唖然としたが、
「それならば僕の蜜柑と曹操殿の山葡萄を交換ですよ!」
と言い出した陸機にはもっと驚愕した。
「おい、陸機。俺は茘枝が好物だ」
「意外ですね」
試しにそんなことをほざいてみたがその一言で終わる。なにこの違い。
「ねえねえ子明、私の茘枝と貴方の山葡萄交換しない?」
孫尚香に至ってはそんなことを言ってくる。
おまえら俺の話聞いてないだろ?



35 名前:呂蒙の一日3/6 投稿日:2006/07/30(日) 15:36:04
食後は車座になって陸機の「歴史講座」を拝聴する。
この中では最も後世代に生きた陸機による、滅亡と再生の物語である。
いや、物語ではなくそれは歴とした真実なのであるが。
呉の滅亡のくだりでは涙が止まらなくなった。
なんてことだ。俺が死んだ後、国はそこまで乱れてしまったのか。
陸遜が死んだ辺りなど噴飯ものである。
破竹の勢いで杜預が進軍して来た時など失禁しそうになった。
波にもまれるように消滅してしまった呉を思うと、慟哭が喉をつく。
しかし、その呂蒙の猛りが激しく場違いと化してしまったかのように、
臣下の司馬氏に国を奪われた魏の実質上の創設者と言えば、
ふんふんと頷いてまるで他人事のようなのだ。

「そうか、陸機も苦労したんだのう」
「そうなんですよ! 最後なんて八王の乱っていう
くだらない皇族同士の権力争いに巻き込まれてあぼーんですよ」
「そ、そ、曹操……殿、あんたは自分の作った国が無くなったと聞いて、悔しくないのか」
耐えきれずに呂蒙がそう問うと、曹操は一瞬きょとんとした顔をし、次には笑みを見せた。
「それは仕方ないことだろう」



36 名前:呂蒙の一日4/6 投稿日:2006/07/30(日) 15:37:35
仕方ない?
仕方ないで終わらせていいものか?
確かにこの状況で何をどう藻掻いても何がどうなるものでもない。
出自など関係ないと陸機は言う。
曹操には少し頭が固いと言われた。
確かにそれが自分の欠点だろう。それでも、どうしても感情を捨て去ることは出来なかった。
此の期に及んでも己は関羽を嫌い抜いており、
間接的に陸遜を憤死させたらしい孫権に対する忠信と不信がまぜこぜになり、
司馬一族を始めとする”晋”の連中に出会ったら殺してやりたいと思う……

「子明、なんか浸ってるとこ悪いんだけど」
我に返ると孫尚香が悪戯っぽい目つきで下から顔を覗き込んでいる。
「あなたすごく不器用だったのねえ」
午後一番で武器を作ることになり、四人はそれぞれ棒きれを手にしていた。
手頃な太さの棒を拾ってくると、今度はその先を尖らせるべく細工をする。
剣や戟と言った便利なものが無いので、
仕方なく木片をうまく剣のように使い、削り取るように加工していたのだ。
ふと見れば呂蒙の手にする棒きれの先は割れてめちゃくちゃになっている。
「か、考え事をしていたからな」
「考え事って? なに?」
「いや、別に言うほどのことではないが」
孫尚香は理知的な瞳をゆっくり瞬かせた。
少し離れた箇所で仲睦まじく話を交わしている陸機と曹操をそっと見やり、
声を潜めるようにして彼女は囁く。
「なんだか子明、今朝からおかしいわよ」
「いや、至って普通のつもりだが」
「何か葛藤してるみたい。あれなの? 曹操さんといるのが辛いの?」



37 名前:呂蒙の一日5/6 投稿日:2006/07/30(日) 15:38:25
自分は曹操が嫌なのだろうか?
陸機のように懐くことは出来ず、
かといって孫尚香のように天真爛漫に接することも出来ず、
混沌たる世界に落とされてまで、
以前の記憶……前に立ちはだかっていた強大なる敵としての姿……が忘れられず、
それで気持ちが定まらぬのであろうか。

彼は悪い人間ではなかった。
たかが一日二日共に行動しただけだが、
さすがに才能豊かな人間を集めて一代で国を興した人間だけあると感心させられることが多い。
彼は年長であるからと言って場を支配しようとすることもなく、
見下した態度を取ることもない。
陸機の質問には父親のように答えてやり、孫尚香の不安を一言で取り除く。

……過去にこだわっている己が、ひどく矮小な人間に思えてくるのだ。



38 名前:呂蒙の一日6/6 投稿日:2006/07/30(日) 15:39:30
午後三時。
曹操が袋を持って立ち上がる。
三人がそれを待ち望んでいたかのように手の平を上にして差し出すと、
順にころんとした小さな四角形が載せられた。
午後三時のおやつタイム。
もちろん食べるはちろるちょこ。

。*・゜゚・*:.。..。.:*・゜この芳醇な香りヽ(´▽`)ノ゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*

呂蒙はゆっくりと手の中に収まったものを見た。
おお! 大好きなきなこもちだ!
陸機はシナモンオレ、孫尚香はいちごプリン、きなこは俺だけだ!
思わず曹操を見ると、彼は微かな笑みを浮かべて親指を突き出している。

(操・∀・)b

……そうか!! 曹操の奴、俺がきなこ味を好きだからって、わざわざ…!!
「そ、曹操殿、ありがとう」
「礼には及ばぬ。これは皆のものだ」

ちろるちょこが入った袋を掲げる曹操を、三人はきらきらした瞳で見上げていた。



39 名前:外伝:孫権の一日1/3 投稿日:2006/07/30(日) 15:40:45
そんな様子を遠くから眺める男がいた。
孫仲謀。碧眼紫髭の江東の風雲児である。
孫権は片目を擦った。慣れたつもりではいるのだが、
どうにもこの隻眼ってのはひどく眼に負担がかかる。
いままで両の目で見ていたものをひとつで済まそうとするのだからそれも当たり前だろうが、
その事実にぶち当たる度に無力感に囚われるのだ。

二心同体であるという董衡&董超から武器を奪い、しばらくは行動を共にした。
奴等は虞翻を、自分は他の呉将を待とうと考えていたのだが、
暇ゆえに様々な感情が胸に過ぎるうち、ある種の不安に苛まされるようになった。

果たして、ここで呉将が来るのを待ち受けていいのだろうか。
孫権は生前を思い出した。
豪族の集合体であった呉をうまくまとめたとの自負はある。しかし、それは晩年に少し乱れた。
……あの頃のことはあまりよく覚えていない。
ただ、こうしたら良かれと思ってやったことが悉く裏目にてしまったのだ。
己を恨んでいる人間がいないとも限らないではないか……



40 名前:外伝:孫権の一日2/3 投稿日:2006/07/30(日) 15:42:17
武器を奪ったまま彼らと別れ、しばらく辺りをうろついた。
仮眠を取り、南に向かおうと漠然と足を運んでいたところ、人影を見た。
最初に目が入ったのは尚香だった。
我が妹よ! 飛び出しそうになって慌てて堪えた。
他にも人がいる。呂蒙、そしてなぜか曹操。もう一人若い男。彼は、彼は誰だ?

「祖父はそれで憤死したそうです」
「なんだって、そんな、殿がそんなご判断を」
「老人特有のボケじゃないですか?」

若い男は孫権にとって耳の痛い二宮の乱について説明していた。

 ……祖父はそれで憤死したそうです……

祖父? 祖父とはなんだ?
藪に隠れたまま男の顔を見ようと片目をこらす。
距離はあるのだが、日の光があるために輪郭は掴める。

……孫権は思わず口を押さえた。
陸遜だ。
あいつは陸遜だ!



41 名前:外伝:孫権の一日3/3 投稿日:2006/07/30(日) 15:43:01
妹がいる。大事な家臣がいる。
それでも、前には出て行けなかった。

どうしようもない思いを抱えたまま、孫権は藪に潜み続けた。
奴等が早く移動することを祈りつつ。





<<ふたりの詩人とひとりのアモーと弓腰姫/4名>>
曹操[治りかけの打撲]【チロルチョコ(残り80個)】、陸機【液体ムヒ】
呂蒙[鼻にかすり傷]【捻りはちまき】、孫尚香【シャンプー(残り30回分)】
※棒を加工して武器を作りました。
※さらに南下して落ち着ける拠点を作ろうと考えています。

@孫権[右目負傷・失明]【防弾チョッキ、日本刀、偽造トカレフ、空き箱】
※上記パーティ移動まで藪の中に潜んでいるつもりです。
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